<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

オリジナルSS投稿掲示板


[広告]


No.1318の一覧
[0] 遠い国から[kuruto](2005/04/18 00:30)
[1] 遠い国から 第一話[kuruto](2005/04/18 00:21)
[2] 遠い国から 第二話[kuruto](2005/04/18 00:27)
[3] 遠い国から 第三話[kuruto](2005/04/18 00:32)
[4] 遠い国から 第四話[kuruto](2005/04/20 03:51)
[5] 遠い国から 第五話[kuruto](2005/04/21 02:21)
[6] 遠い国から 第六話[kuruto](2005/04/21 02:15)
[7] 遠い国から 第七話[kuruto](2005/04/22 02:53)
[8] 遠い国から 第八話[kuruto](2005/04/26 18:22)
[9] 遠い国から 第九話[kuruto](2005/05/01 04:03)
[10] 遠い国から 第十話[kuruto](2005/05/01 21:31)
[11] 遠い国から 第十一話[kuruto](2005/05/02 19:20)
[12] 遠い国から 国力調査レポート[kuruto](2005/05/08 19:13)
[13] 遠い国から 十二話[kuruto](2005/05/22 01:27)
[14] 遠い国から 第十三話[kuruto](2005/06/14 20:19)
[15] 遠い国から 第十四話[kuruto](2005/07/11 14:03)
[16] 遠い国から 第十五話[kuruto](2005/09/06 03:31)
[17] 遠い国から 第十六話[kuruto](2005/10/10 22:13)
[18] 遠い国から 第十七話[kuruto](2005/11/20 11:37)
[19] 遠い国から 第十八話[kuruto](2005/11/21 11:40)
[20] 遠い国から 第十九話(仮UP) 正式版は家に戻ってから[kuruto](2009/01/02 03:03)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[1318] 遠い国から 第六話
Name: kuruto 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/04/21 02:15

なにか解らないが、良い香が辺りを漂っていた。


暗くてはっきりしないが、あの魔術師が目の前に居るのは解った。


あの時もみ合った後から記憶が無いが、間違いなく目の前の魔術師の仕業だろう。


まだしびれる体を動かして魔術師をにらみつけた、正直どう話したら良いのか解らなかった。


兄の遺骸を冒涜され、無力にもここまで逃げてきた事になる。名誉を回復しないと領地の父に申し訳が立たない。


塔の守護者として百年余、結果野良犬のように追い立てらている、何と無様な事か。




私の名はニア・ラミシール、無力なただのエルフだ。







遠い国から 第六話 「契約」







ニアを荷台に放り込んで、念のため手足を結束バンドで括って荷馬車を走りに走らせた。


真正面からぶつかったら死、追いつかれても死、文字通りのデッドヒートだった。


陽が落ちてからようやく丘の上で夜営の準備をした。


逃げてきた方向を重点的に見張ったが、兵に追いつかれた気配はしない。


ま、この時代に夜間行軍なんざ自殺行為に等しいだろうが念の為、だ。


未だに目覚めないニアにちょっと不安を覚えたが、息をしてる様だったのでシュラフの上に寝かせた。


焚き火はまずいので、この世界で初めてバーナーで湯を沸かした。コーヒーかスープか迷ったが結局スープ


にする事にした、コーヒーは朝の方が良いだろう。





粉を湯に溶かしていると目が覚めたのだろう、ニアが体を起こしてこっちを見ているのに気がついた。


「おはよう、お姫様、手荒く扱ったのは謝るが自殺は俺の目の届かない所でやってくれるとありがたい」


カップにスープを注ぎながら言った。


「・・・なぜ止めたのですか」


暫く言いよどんでいた彼女がポツリとつぶやいた、とりあえずスープを一口啜った。


「等価交換だ、君には小屋に泊めてもらった借りがある、ただそれだけだ」


無論嘘だが、正直な事を言ったら即死フラグだろう。


飲み終わった後、残りのスープをカップに移しニアに手渡した。





「私は兄を弔うために志願して、塔の守護者になりました」


スープを飲みながら彼女はポツリポツリと語り始めた。


「本来は兄の代わりに私が、小さい領地ですが継ぐ事になっていました」


そういって彼女はまた一口スープを飲んだ。


「父は未だに領地を治めています、とうに隠居する年なのに・・・」


彼女はスープを飲み干して俺に返してきた、こういう話は素面じゃやってられない。


水で濯いで今度はジョニ黒を入れて彼女に手渡した。


「兄を弔い次第領地に戻って父の後を継ぐつもりでした、しかし兄は墓を暴かれ辱められた!」


そう言った彼女はカップを煽って咽た。



「・・・・これは何ですか?」


「ただの酒だ、お子様にはちと強すぎたかもしれんがな」


俺は答えながら瓶を煽った、美味いよな、コレ。



「父にあわせる顔が有りません、ラミシールの名は汚されたのです」


ちびり、ちびりと飲みながら彼女は続けた。


「父にあわせる顔っつーても、国境にはおそらく手が回ってるぞ」


俺は飲みながら答えた。


「会うどころか、生き残る事、それ事態が問題だと思うのだが?」


バックパックのポケットに有った柿ピーを食べながら言った。


「このまま生き残れなかったら汚名確定だぜ?」


袋を彼女に手渡しジョニ黒をさらに飲む、やっぱ酒のなかじゃコレが一番だな


「鳩の野郎が考えていた手は、一見うまい手の様に見える、だが穴だらけだ」


目が夜の闇に慣れ、怪訝そうな表情の彼女の顔が見えた、どうやら理解してない様だ。


「まず第一になぜ兵士八人で先行したのか?死んだ兵の遺族にとっちゃ大問題だわな」


考えさせるよりも問題を把握させる方が大事だろう、この際一気に言ってしまう事にした。


「第二に俺の師匠に話が行ったとしよう、確実に信じないな、理由があるから」


実は召還されて後は帰るだけなんて、鳩の想像の域を超えてるな、うん。


「第三に、君の父上がこの話を信じると思うかね?ん?」


彼女はむきになって答えた、多少酔ってるのかも知れない。


「絶対ありえません!そんな与太話を信じる父上では・・・・」


「そう言う事だ」


もう一口だけ飲んでから一気に言った。


「必然的に疑いは鳩の野郎にかかる、事は国を跨いでの問題だ、そうなると奴の手には負いきれなくなる。


エルフからはそんな事は無いと言われ、師匠からも絶対に無いと断言され、証拠はないわ一度埋葬された後は


有るわ、真っ黒だな」




瓶をしまいながら問題をまとめる。




「俺達が死んでいれば問題にならない、逃げようとしたので殺しました、抵抗したので殺してしまいました。


証拠も何も無い、文字通り死人に口無し、だ。しかし生きてると困る、公正な場で取り調べられたりすると


奴は身の破滅だ、だから必死になって俺達を追いかけ殺そうとする。解るか?」


彼女も話の重要性に気付いたのだろう、カップを空にして俺の話に聞き入っている。


「この話の終着点は四つしかない、第一に師匠の所に駆け込む、奴らは手の出しようがなくなる、俺の師匠は


強大な魔術師だ。第二に君の父上の所に駆け込む、その先は国家を介したやり取りになる、コレも奴らには


手の出しようが無くなる。そして第三が俺達の死だ、全ての問題はおそらくそれで終わりだ、師匠も、君の父上も


どうしようもなくなる、なにせ死んでいるんだ、死人を蘇らせたりできない限りどうしようもない」


俺は一旦そこで話を止めた、暫く辺りが静寂に包まれた後、おずおずと彼女が聞いてきた。


「あの、第四の、最後の終着点はなんでしょうか?」


ここではっきり言って置かなくてはならないだろう、彼女には彼女の、俺には俺の立場が有ると言う事だ。




「それを今の君に話す事はできない、なぜなら運命共同体ではないからだ。端的に言うと利害が衝突する


可能性が有る、そういう相手に自分の持ち札を全てさらすような事はできない」


彼女は一旦固まった後俺に食って掛かろうとした、それを片手で止めながら説明した。


「この場で俺が目指すべき行動は第一か第四になる、君が同行してる場合においては第二も有りだろう


反対に君の場合は第二、第四の目標を目指すべきだと言える、当然俺が同行していれば第一も有りだ」


彼女はそこまで聞いた後に言った。


「それで問題無いと思いますが?」


やはり彼女は甘い、蜂蜜練乳ワッフル並みだな。


「問題は二人が別行動とった場合、どちらかが敵に捕まった場合に問題が発生すると言う事だ」


一旦間をおいて一気に言った。


「たとえば君の父上を頼って君が捕まった場合、私は身動きが取れなくなる、反対に私の師匠を頼った場合も


私が捕まるか死ぬかすると君は動きの取りようが無くなるだろう、そして最大の問題は二人が別行動を取った


時に私の目指す第四の目標が敵にばれる恐れが有る事だ」


彼女は怒った表情で言った。


「貴方は私が裏切るとでも言うのですか!」


やっぱりだだ甘だ、サッカリンも混ぜてやがる・・・・・。




「人間、生きてる限り歌わせる方法なんていくらでも有るんだ、君は人間の汚い所にまるで無知だ、無知すぎる」


反対に穢れを知らないと言えなくも無いが、世の中を泳ぎ渡るには余り有利ではない事は確かだ。


「いったい私にどうしろと言うのですか!」


彼女は半分泣きそうな表情で怒鳴るように言った。


「魔術師には絶対の法則が有る、これは術の行使にも関わる事だ、解るか?」


「・・・・等価交換、ですか?」


「その通り」





彼女は暫く考えた後に言った。


「いくらお支払いすれば良いのですか?名に掛けて、出来る限りお支払い致しましょう」


「解っていない、君はまったく理解していないニア!この場で金で雇える様な者を君は信じる事ができるのかね?」


「ではいったい何をお支払いすれば良いのです、宝石ですか、地位ですか?それとも強力な魔法具ですか?」


「・・・それらは総じて金を払えば買える物でしかない、根本的に同じだ」


馬鹿を相手にするのは予想以上に疲れる、もし彼女が気が付かなかったら悪いが見捨てよう。





「もう私には支払うべき物が・・・私には・・・・私自身を売り渡せと言うのですか貴方は!」


おおう、ぎりぎりで気付いたようですよ、このお嬢さん。


「見損ないました、貴方が奴隷を欲しがるとは!」


・・・ちとずれてるんだよね、この人、ま、ぎりぎり及第点かな?





「正確に言うと私が欲しているのは絶対的な命令権だ、身内の死体にケリを入れられたくらいで下を見て100人は


くだらない敵兵に単身で突っ込むようなバカは足手まといでしか無い」


彼女は納得のいかないような表情をしている、ここで気付くようなら最初から気づいてるわな。


「俺が君なら必死に逃げて、相手を越える力を手に入れて、彼が得意の絶頂の時に横から思いっきり叩きつけ粉砕する、


そう、完膚なきまでに粉砕する、自己の絶対的有利状況を得てから、だ、俺は死体よりも生者に価値を見出す、


なぜなら前者は歴史に名を残すだけだが後者は歴史に名を刻む事が出来るからだ、その為にはあらゆる手段を取る、


そう、あらゆる手段だ!他人に下げずまれ塩を撒かれても生き残る!そして最終的には全てを見返す、そう、全てだ!!」


一旦息をついでから言った。


「自殺志願者に背後を任せて戦うなんて御免こうむる、まだ誰も見ていない所で抹殺し敵に対して不確定要素としての


要因を与える方がはるかに有利だ、俺は生き残りたい、だから今の状態の君を抱え込みたくない」





少しの間、辺りを静けさが包み込んだ、耳が痛くなるような静寂だった、そしてニアは言った。


「・・・私の価値は脱出を依頼するくらいしか無いのですか?私の存在を掛けてならばもう少し価値が有る様に思えるのですが?」


「・・・・例えば?」


「貴方風に言えば彼の完璧なまでの抹殺、破滅、かの者には哀れな最後が似合うと思うのです」


彼女は俺の目をじっと見つめていた。


「俺は故郷に戻るため師匠の所に戻るつもりだった、しかし俺の故郷では奴隷制度は違法だし俺自身も好みではない」


そして彼女の目を見返しながら最後の条件を伝えた。


「俺が故郷に戻るまでの間の君の存在、それが報酬だ、多少故郷に戻るのは先になるだろうが君には十分その価値がある、


俺個人でも少々借りがあるのでな」





それが契約の最後の確認だった、そしてそれは彼女の口から伝えられた。


「それでは正式に依頼します、魔術師ケーイチ、報酬は私の絶対の忠誠、私の真名はニア・ラミシール・ヴェガ・ジャルマーラ」


「忠誠と言う表現は余り好きでない、奴隷はもっと好きでない、だから君は今日から私に使えるメイドだ、ニア・ラミシール


・ヴェガ・ジャルマーラ」


「私の全ては既に貴方の物、お好きなようにマイマスター」




今の流行は「ご主人様」の方なのだろうか?ふとそう思った。



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.033071994781494