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No.1318の一覧
[0] 遠い国から[kuruto](2005/04/18 00:30)
[1] 遠い国から 第一話[kuruto](2005/04/18 00:21)
[2] 遠い国から 第二話[kuruto](2005/04/18 00:27)
[3] 遠い国から 第三話[kuruto](2005/04/18 00:32)
[4] 遠い国から 第四話[kuruto](2005/04/20 03:51)
[5] 遠い国から 第五話[kuruto](2005/04/21 02:21)
[6] 遠い国から 第六話[kuruto](2005/04/21 02:15)
[7] 遠い国から 第七話[kuruto](2005/04/22 02:53)
[8] 遠い国から 第八話[kuruto](2005/04/26 18:22)
[9] 遠い国から 第九話[kuruto](2005/05/01 04:03)
[10] 遠い国から 第十話[kuruto](2005/05/01 21:31)
[11] 遠い国から 第十一話[kuruto](2005/05/02 19:20)
[12] 遠い国から 国力調査レポート[kuruto](2005/05/08 19:13)
[13] 遠い国から 十二話[kuruto](2005/05/22 01:27)
[14] 遠い国から 第十三話[kuruto](2005/06/14 20:19)
[15] 遠い国から 第十四話[kuruto](2005/07/11 14:03)
[16] 遠い国から 第十五話[kuruto](2005/09/06 03:31)
[17] 遠い国から 第十六話[kuruto](2005/10/10 22:13)
[18] 遠い国から 第十七話[kuruto](2005/11/20 11:37)
[19] 遠い国から 第十八話[kuruto](2005/11/21 11:40)
[20] 遠い国から 第十九話(仮UP) 正式版は家に戻ってから[kuruto](2009/01/02 03:03)
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[1318] 遠い国から 第十五話
Name: kuruto 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/09/06 03:31
近頃連合首都ポルソールでは人間の数が増えてきた、戦争難民である。
過去の戦いでも発生していたので特に目新しいものでは無かったが、今回は過去に
例の無いほどの数が流入しつつあった。それも王国、帝国両方からである。
今学校が終わった後、通りで果物を売る少年もそうした難民の一人だった。

「そこのおっちゃーん、休憩に一つどうだい?元気が出るよー」
本当は学校などに行きたくなかった、しかし学校に行って就学証を貰わないと家計の手助けに
道で果物を売る事もできない。就学証のない物が商売をすると最悪町を追放処分になるのだ。
なんでも偉い人が
「四則計算すらできない奴が商売するか?つか商売相手にしようとするか?普通?」
と言ったのが始まりらしい。
自分が追放されると家族が困る、だからしぶしぶ学校へ通い、終わった後町で果物を売り
家族の生活費の足しにしていた。
「甘くておいしいトリンが二個で銅貨1枚だよー」
昨日の売り上げは少しの差で妹に負けた、連続で負けるわけにはいかない。
そんな時だった、右手の立派な屋敷から大勢の人が出てきた。馬車が止まっている所を
見ると客が帰るのだろう、しかし彼の視線は一人の女性にくぎづけとなった。
茶色の長い髪、透き通るような白い肌、灰色の目、そして今まで見た事が無いほど
整った顔立ちに長い耳、エルフだった。
帝国に住んでいたいた頃、領主様の結婚で町にまで行った事もあるがそこで見た女性達
とは比べ物にならない、今まで見た中で一番の美人だった。
彼女は馬車の中を確認した後一人の男に声をかけた。
「準備が整いました、マスター」
それに答えたのは黒い髪のまだ若い人間だった、これにはさすがにあぜんとした。村長の話では
エルフは気位だけは高いと聞いていたからだ。それが目の前で一人の人間をマスターと呼んだ。
どこかの騎士のような体格ではない、だが貴族だとしても妙だった、ここはドワーフの国では
なかったのか?最終的に彼の疑問を解決したのは、館の主と思われるドワーフとその横の人間の
貴族と思われる壮年の男だった。
「今日は非常に有意義な話ができました、また近いうちにお会いできたら光栄です、魔術師殿」
「いえ、こちらこそすばらしい朝食を頂いてしまって、また前向きなお話がしたい物ですな、では」
そう言うとその人間は馬車の中に入り、続いてエルフの女性を乗せ進みだした。
彼はなかば口をあけながら馬車が通り過ぎるのを見続けた。結局彼を正気づかせたのは母親だった。
「なにぼうっと突っ立ってんだい、で、どれだけ売れたんだい、また負けてたらお前の分のパンは減らすよ!」
その言葉で正気に戻った少年は母親にここ数年で一番の覚悟を決めて言った。
「母ちゃん、俺魔術師になるよ、そんでもってマスターになるんだ!」
「…何いってんだいこの子は、さあ、早く残りの品を売っちまいな、仕入れもタダじゃないんだよ!」
今までは周りの大人の言うままに生きてきた、だが今は違う、人生の目標ができたのだ。


「うおおおー、俺はやるぜー!」



「エマ、この後の予定はどうだっけか?」
馬車に乗って距離が離れた所で体勢を崩して言った、ここら辺ならば見られる事も聞かれる事もないだろう。
なんか叫び声が後ろから響いてきたがま、どーでもいいだろう。
「この後は南方部族の王国派の貴族と王国の外務大臣、ソノート卿との遅めの昼食になっております」
「くそう、つまらん仕事ばかりだ、俺を太らせて美味しく頂くつもりか?エマ、他にこう血湧き肉踊る展開は
無いのか?爺ばかり相手にしてたら俺も老け込んじまうぞ」
「今日の晩餐会は、エルフ王国から外務担当が一人来る予定になっております」
「うお、女性か?それ」
「…私が故郷にいた頃は男性でしたし、まだ引退する年でもないはずです」
「くそっ、まーた男かつまらん…だがしかし、俺は今日ひとつの真理を発見した」
「それは…新しい魔術かなにかですか?」

田中敬一郎二十代後半、今では閣下と呼ばれ、いつのまにか王国帝国両方から重要視されている男…



「男にもててもうれしくともなんともない、と言うことだ!」
「…」
「せめてコガネ餅でも持ち込んできたら悪代官ゴッコができるのだがなー、つまらん話だ」


だが、彼は現代人だったのです。





遠い国から 第十五話 「返還」





「かような訳でして、閣下、わが国は真相究明の為に最大限の努力を行っております。が、しかし貴国の派遣した
帝国側の戦力を問題視する者も数多く、それが最大の問題となっておるわけです」
あの後、多少の休憩を挟み王国側の影響と利益を多大に受けているドワーフ貴族の館で遅めの昼食を取っている。
目の前で熱弁をふるっているのは王国のソノート卿だ、王国の騎士団が大打撃を受けてからしつこいのなんの。
まあ必死になるのはわかるが正直うっとおしい、だがこれを生ぬるい目で見守るのも結構楽しい今日この頃。
「ぜひ帝国に派遣した兵力に関して再度御一考願いたいのです、さすればわが国と貴国で新しい平和を作れるでしょう」
「お話は良く分かるのですが正直難しい、我が国の兵はみな誇り高き者ばかりなのです」
ふふふ、これが古来から日本で受け継がれてきたジャパーニーズハラゲイ。そう簡単にイニシアチブはとらせませんよ、と。
「敵に背を向けるくらいなら散兵線の花と散る事を選ぶ者たちばかりです、ピロール領の乱が良い例ですな」
「むう…」
「目の前の戦いをほうりだして帰還、いわんや今まで敵として戦っていた者と間をおかずに肩を並べて戦うと言うのは…」
「お待ち下され、閣下、ならば一時撤退させてしばらく休暇を出すというのはいかがでしょう?」
旗色が悪いので慌てたのだろう、王国派のドワーフが口を挟んできた、確か名前はモールだったかポールだったか?
「なら君は彼らに言えるのかね?撤退しろ、と」
「…」
「そうだろう、彼らはよほどの戦果を上げるか理由がない限り戦い続けるだろう、それがドワーフだ」
余計な口を挟みやがる、自分がどの国に属しているか忘れているのだろうか?それとも忘れがちになるくらいの
金額があったのだろうか?畜生、少し分けやがれ。
「まあまあ閣下、私も別に今すぐとは申してはおりません、そう慌てる事はないでしょう」
場の雰囲気を読んだのだろう、すぐに話の方向を変えにかかってきた。ここら辺の話の運び方は帝国より数段上だな。
「しかし閣下、このまま両国の関係が離れるのも悲しい事です、どうでしょう?両国を行き来する商人の数を増やすなど」
「それは素晴らしい事ですな、交流が深まれば自然と関係は改善するものです」
時々経済問題で悪化しちゃったりするけど。
「そういえば閣下は大商人として成功された方でしたな、どうでしょう?何人かご紹介頂けるとありがたいのですが」
「ほう、ただ一概に商人と申しても色々おりますからな、畑違いの者を紹介しても申し訳ない、どのような人物を紹介すれば
良いのかあらかじめお教え頂ければ手間が省けるのですが」
「そうですな、穀物を扱う商人はいかがでしょう?何せ有り過ぎて困る事もないでしょうし」
今回の目的はこれだったらしい、予想よりちと早かったなあ。
「おお、なんと言う事だ、本当は喜んでご紹介させて頂きたい所なのですが」
ちとオーバーアクション気味に苦悩するふり、外交にオスカー賞が無いのが残念だ。
「なにか問題でもございますか?別に急いでいる訳ではないのですが?」
「いえ、朝お会いした東の方々に仲介を頼まれた矢先の事なので、どうしたものか、と」
「なんと!」
今まで落ち着いていたソノート卿はとたんに顔色を変えた、東の方々の意味を確実に理解したようだ。
ふと横から視線を感じ、その方向を見るとエマがあきれた眼差しで見つめているのに気付いた。
彼女は朝、側に控えて話を聞いていたっけ。ふふふ、俺に恋するとヤケドするぜお嬢さん。


ホントの所を言うと朝会った帝国の奴が王国騎士団に勝った、身代金ガッポリ、と自慢ばかりしやがるので
「そんなにお金が有るなんてお羨ましい、でしたらどうです?良い小麦扱ってる商人でも紹介しましょうか?」
そう愛想で言ったら是非と言われたのだ、ま、嘘じゃないよな。向こうが紹介しろと言ったのには違いないのだから。
紹介する予定の商人に実は俺が経営する穀物問屋の番頭がいたりするのは愛嬌だ、うん。


なんだかんだあったが結局、帝国のやつらよりも先に紹介する事で落ち着いた。

「閣下、ありがとうございます、これからもぜひ良いお付き合いをお願いいたします」
「とんでもない、こちらこそお願いしますよ、両国の友好の為にも」
とりあえずがっちり握手、俺の懐のためにも良い関係を続けたいと思うナリ。上客のヨカーン。
「つきましては閣下、我が国から友好の為の品を用意させて頂きました」
そう言うと隣室に案内された、もしかしてコガネ餅だろうか?もしそうなら悪代官ゴッコだ!無論越後屋はソノート卿。
しかし俺の予想は良い意味で思いっきり外れた。


「こ、これは…」
絶句した俺の前には本やら雑誌やらゲームやら、無論この世界に有る物ではない。
「さすがに魔術書関係は駄目でしたがそれ以外は全て取り寄せました、お納め下さい」
そう言うと多少生暖かい目で俺を見ながら道をあけた。がそんな事はもはやどうでも良かった。
「おお、エマが4巻そろってる、シャーリーも有る!この世界に来て二番目に素晴らしい事だ、おお、フロイデ!」
とりあえずエマを呼んで見つけた五冊を持たせた、表紙を見て複雑な表情を浮かべているがそれは後回し。
おもむろにソノート卿の手を両手でがっしり握って言った。
「有難う、本当に有難う、あなたは良い人だ!!」
「いや、閣下にここまで喜んで頂けると我々も苦労したかいが有りました」
相変わらず視線は妙に生暖かいが気にする事はないだろう、どうせ字わからないだろうし。



結局、その後すぐに荷馬車の手配をして屋敷を後にした。なにせしばらく暇を潰すのに困る事はない。
一度読んだ本ばかりだが必要にして十分だ、むしろ現在は暇を作る方が難しい。
「よもやこんな時に、こんなに簡単に目標の一つを達成できるとは、まさに神風!」
「しかしマスター、部屋に入ってからソノート卿の態度が少し気になるのですが?」
エマがコミックを持て余しながら話しかけてきた。うむ、俺も多少の引っかかりは覚えた所だ。
「確かに気になる点ではある。が、今は気にしないで良いだろう。なんにせよめでたい。あ、そのコミックの順番はこうだ」
そう言ってコミックを順番に並び替えた。
「これが一巻目で、2.3.4と続く。こっちの巻は別の話、と、文字は読めんでも絵で雰囲気はつかめるだろう。聖典だ」
そう言うと座席に深々と腰掛けながら体を伸ばした。
「さーて、今日は御大祭りでも開催するか」
「いえマスター、その前にエルフ王国の使者との晩餐がございます」
「…伸ばせない…か」
「さすがにこの時点でのキャンセルは非礼すぎるでしょう、申し訳ございませんが祭りはその後にして下さい」
「…なんか冷たくない?この頃?」



結局、あの生暖かい眼差しの意味は資料を整理しはじめて3日後にわかった。


「あ、エロイ本もいっぱい…」



ポルソールの東の郊外に大きな屋敷がある、昔はある貴族の屋敷だったが三年前から空き家だった。
しかし一年前から人の手が入り、今では常に百人ほどの使用人がいる美しい屋敷になっていた。
一見した所は瀟洒な作りの貴族の屋敷だが、他の貴族の屋敷と大きな違いが一つあった。
それは使用人が皆メイドだった事である。

そして今この館の主人が乗った馬車が正面玄関前に止まった。
すぐさま馬車から玄関までメイドが二列に並んで主人を迎える体勢を整えた、そして馬車から一人の
エルフが降り立ち声を張り上げた。
「マスターのご帰宅です!」
その声にメイド達は一斉に腰を折り主人を迎える最後の体勢になった、そう、使用人が皆メイド。
それが一番の違いだった。そして馬車から降りてきた男はおもむろにポツリとつぶやいた。
「ここがあの女のハウスね」
主人の怪しげな言葉にもびくともせず、メイド達には頭をさらに下げた。
「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」」
別名、メイドの館とも言われる現宰相の館だった。



館の中は戦場に近い緊迫感に包まれていた。

「客間、他の部屋共に準備完了しました」
「キッチン、問題ない?」
「今の所問題なし、三十分以上時間にズレが出るようならすぐに連絡する事」
「ハウスメイド各員はもう一度階段をチェック、オールワークスは窓をチェック」
「ゲストが乗った馬車と思われるものを視認しました」
「パーラー、ハウス、オールワークス、作業を切り上げ正門に集合」

んーやっぱり良いよなあ、こういう秩序と統制の保たれた集団の動きと言うものは。見ていて気持ちが良い。
教育に半年しかかけてないが我ながら上出来、ま、エマも頑張ったからなあ。
ゲストの乗った馬車を迎えに正面玄関に出た頃には、すでにメイドが達が整然と並んでいた。
馬車が止まり御者だろうエルフの青年が戸を開けると、中からドレスを着た金髪のエルフが出てきた、女性である。
「ロミ…」
めずらしく動揺を表に出し、エマはそうポツリと漏らした。
「お久しぶりニア、いえ今はエマ…だったかしら?」
そう言った金髪のエルフは改めてこちらを向き言った。
「初めてお目にかかります、閣下、私エルフ王国外交担当官ロウィーナ・ザムシューと申します」
俺は金髪のエルフの胸部とエマの同一部を見比べ言った。

「エルフの新型は化け物か…」


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