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No.1318の一覧
[0] 遠い国から[kuruto](2005/04/18 00:30)
[1] 遠い国から 第一話[kuruto](2005/04/18 00:21)
[2] 遠い国から 第二話[kuruto](2005/04/18 00:27)
[3] 遠い国から 第三話[kuruto](2005/04/18 00:32)
[4] 遠い国から 第四話[kuruto](2005/04/20 03:51)
[5] 遠い国から 第五話[kuruto](2005/04/21 02:21)
[6] 遠い国から 第六話[kuruto](2005/04/21 02:15)
[7] 遠い国から 第七話[kuruto](2005/04/22 02:53)
[8] 遠い国から 第八話[kuruto](2005/04/26 18:22)
[9] 遠い国から 第九話[kuruto](2005/05/01 04:03)
[10] 遠い国から 第十話[kuruto](2005/05/01 21:31)
[11] 遠い国から 第十一話[kuruto](2005/05/02 19:20)
[12] 遠い国から 国力調査レポート[kuruto](2005/05/08 19:13)
[13] 遠い国から 十二話[kuruto](2005/05/22 01:27)
[14] 遠い国から 第十三話[kuruto](2005/06/14 20:19)
[15] 遠い国から 第十四話[kuruto](2005/07/11 14:03)
[16] 遠い国から 第十五話[kuruto](2005/09/06 03:31)
[17] 遠い国から 第十六話[kuruto](2005/10/10 22:13)
[18] 遠い国から 第十七話[kuruto](2005/11/20 11:37)
[19] 遠い国から 第十八話[kuruto](2005/11/21 11:40)
[20] 遠い国から 第十九話(仮UP) 正式版は家に戻ってから[kuruto](2009/01/02 03:03)
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[1318] 遠い国から 第十一話
Name: kuruto 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/05/02 19:20
各地を巡察して情報を集めるのに三月ほど掛かった、その後には情報を解析しないといけない。
「この量の情報を二人で解析しないといけない、っちゅーのはある意味拷問だな」
巡察から帰ってきて三ヶ月、報告書を上げるため議長府にエマと二人でカンズメになっていた。
帰ってきてからと言うもの、モナリンとボバルドーが「早く報告しろ!」とうるさいうるさい。
「締め切りに追われる漫画家か小説家か、俺は・・・・」
最初はエマでさえ情報を見せるなと言う始末、流石に爆発して怒鳴ったが

「マスターの意思は私の意思、マスターがしゃべるなと言うなら死んでも喋りません」と、言う言葉と、バナリーの取成しでなんとかなった。


田中敬一郎おそらく23歳・・かな?、近頃オーバーワークで過労死しそうな男。


「こんな良いメイドさんもって無かったら速攻逃げてるな、うん」


遠い国から 第十一話 「謀略」


「それでは、これから調査結果を報告させていただきます」

俺は各氏族長を前にしてグラフを張り出した、グラフだけでB5用紙合計18枚の苦心作だ。
「色々ご質問が有ると思いますが、質疑応答は最後にさせて頂きます。ご依頼は南部の復興でしたが・・・・それに一番影響を与える外部要素、
このグラフはエルフ王国を除いた三国の国力推移グラフです」
グラフは赤、青、黒の三色で右肩上がりに記されていた、赤と青はほぼ同じ右肩上がりだが黒はグラフの端まで行った所で1/10位の位置にしか
いってない。
「ご覧のグラフには天候不順による凶作、紛争等の国力の低下、疫病などによる影響は含まれておりません。純粋に時間経過による国力推移
のみの記述とさせていただきました」
エマを除いた全員が愕然としている。
「赤が王国、青が帝国、黒が連合の国力を示しております。なお連合の勢力には南部問題が解決しつつある、と言う事を加味して算出させて
頂きました」
言葉にならないうめき声が室内を満たした、まあ此処まで圧倒的な現実見せ付けられたらそうなるだろうねー。

「各色の下にある破線は概算の最大軍動員力を示していますが、ご覧の通り、帝国、王国供に十年後には連合の戦力の倍を動員する事が
可能と試算されます」
その時コーレンが席を立って言った。
「それはあくまで戦争が起こらない場合の計算じゃろう、王国、帝国供に紛争後に2.3回は戦っておるのだぞ!」
この三ヶ月、伊達に情報解析に費やしていたわけではないのだ、この反論は予想通りでしかない。
「これまでの戦いは、両国供に紛争による痛手から回復しきれていないこの国は、無視してよい要素でしか無かったのです。
しかし連合南部が復興し、連合が国威を回復すると無視できない要素となるでしょう。ある意味皮肉な事ですが、現在の南部の現状が今まで
連合の安全を保障してきたのです」

立ったまま言葉に詰まったコーレンをそのままにして回りを眺めた。

「以上の事から南部の復興は、成し遂げた時点、復興が成されつつある時点で外的要因、要約すれば王国もしくは帝国の介入。
両国のうちのどちらか、もしくは両方の軍事侵攻を招きかねないと判断、ご依頼の件は達成不可能と判断させていただきます」
そういってこの頃見慣れた機密保持誓約書を差し出した。
「誓約書には既にサインをしております、ご確認を」
そう言った後、資料はそのままで私物をまとめてカバンに入れた。エマと供に会議室を出る時にバナリーが声を掛けてきた。

「此処まで調べんたんじゃ、このまま行けばどうなるか、最後に教えてくれんか?」

これも当然予想できた事だったので即答した

「最短で三年、おそらく六年後にはどちらかの国の領地になっておるでしょうな、今の政策を続けるとすれば」

そう言い残してエマと会議室を後にした、後の判断は彼らのする事だ。
「しかしマスター、少し実直に言いすぎたのではないですか?これでは彼らが暴発する可能性も・・・」
この頃、非常に的確な助言を与えてくれるようになったエマを見た、突撃エルフの名は取り消しだな。
「まさにその通り、しかし彼らも危機感を持たなきゃ碌に動かんだろう。仲良くケンカできる時間は既に終わっているのだと理解してもらうには、
アレくらい言わなきゃダメだろう」
「しかし、政略、政争は貴族の特権であり義務でも有ります、余りこき下ろすのも哀れかと」
うん、その二つは政治の華だな、しかしそれは国の戦略に沿っての話だ。国家の行く末、中、長期国家戦略を打ち立てた後成されるべき事なんだ。
しかし奴ら、中期国家戦略どころか、戦略のせの字すら理解してないぞ」
「その事については私も彼らと同じです、戦略とはなにか?私もぞんじません」
「この件が片付いたらレクチャーしてやるよ、その代わり今晩は黒鶫のパイが食べたいな」
「了解しました、マスター」
念の為に付け足した。

「首都の兵から目を放すな、脱出の準備は怠り無く、な。余剰の資金は宝石などに換えておけ」


会議室は重たい雰囲気に包まれていた、バナリーは前に張り出されたままのグラフをじっと見つめ、他の四人は羊皮紙に書き込まれた資料の数字を
確かめていた。
「どうじゃ、数字に間違いはないか?コーレン」
「ざっと目は通したが・・ない、人間の増加率に関しては・・・桁が大きすぎてわからん・・・」
グラフを見つめていたバナリーが振り返って言った。
「様は、彼の報告にはそう大きな間違いはないと言う事じゃな」
返事は重たい沈黙のみだった。
「まあ、言われれば解る、人間はポコポコ子供を生むからなあ。20年もたてば、2~3倍に増えるから・・・」
モナリンが後を継いで言った。
「こっちは百年かかってようやく倍、と言う所じゃ。数では勝負にならんわな」
「三年から六年、か、どっちにつくんじゃ、ついたとしたとしても生き残りは難しいぞ」
「どちらに付くにしろ戦後、中途半端に大きくなった我が国は、邪魔だろうなあ」
「他に手は無いのか!なにか手は!」
部屋はさらに深い沈黙に包まれた、今度は誰にも先は見えない。

「とりあえず今日は散会して明日もう一度やろう。注意しておくが、あの魔術師には手を出すな、会議の決定が出るまでな」
結局氏族長会議からの連絡は一週間後に来た、いつ来るか解らない刺客にドキドキしながらメイドライフをエンジョイしてたのだが。
当初の予定ではニ、三週間掛かると思ってたので驚いた。年食ってる割には動き早いな、あの爺さん達。
「如何致しましょう、使いの者は返事を持ち帰る為に門で待機しておりますが?」
連絡の内容を要約すると「生きてこの国出たけりゃ、もっと詳しい事聞きたいし、お前も知恵をだせやゴルァ」と言うものだった。
「エマ、返事は「僕怖がりなんでそこまで行けません、代わりに家に招待します、護衛は二人まで、こっそり来てね」と、文面はまかせる」
「了解しました、マスター」
そう言ってエマは部屋を出て行った、この頃非常に出来たメイドっぷりである。やはり日頃のメイド教育の賜物だな、教育バンザイ。
しかしエマにかかる負担も大きくなっている。王都で商売するようになってから、小さいながらも屋敷を買った。掃除、洗濯は人を雇ってやらせては
いるが、それ以外は全てエマ一人に任せている。メイドの増員も考えた方が良いか?
「ま、しかしこれでコソコソ逃げ出す可能性は少なくなった・・・かな?」
危険なので人任せにできず、一人でこっそり庭に仕掛けたSマインは外れだった。ま、会談が片付くまではムダにはならんか。


「さて、この度は我が家にようこそ皆さん、狭い館ゆえ御不便をお掛けするかも知れませんがご容赦願いたい」
「おぬしが不安がるのもわかる、わしらもちと言い過ぎた、気にするな」
コーレンが卓上のエールを飲みながら言った、他の四人は沈黙している。
「さて、わしらがこうして貴様の所に足を運んだのは他でもない、前回の話の続きじゃ」
会議冒頭、コーレンがすぐに本題に入った、よほどに余裕が無いと見える。
「その件は前回達成不可能だと言う事でお断りしたはずですが?」
さて、彼らはどこまで話を詰めたんでしょうかねえ、オラ、なんだかワクワクしてきたぞ。
今度は今まで黙っていたバナリーが口を開いた。
「人をやってお主の仕事を一通り目を通させてもらった、職人達にも話を聞いて此処に来たのだよ」
その後をコーレンが引き継いだ
「前回の我々の依頼は「南部の復興」と言う事だった、しかし今現在最大の不安要素は連合の存続に変わった」
「つまり今回は依頼内容が変わったわけですね」
「そうじゃ、あの後皆で資料を調べ上げ試算した、町の商人達からも話を聞いた」
そしてモナリンが後を継いだ。
「北部は王国、帝国両方と国境を接しておる、軍の動きはある程度つかみやすいのじゃ。しかし半年前から帝国の一部隊がうちの国境に張り付いておる、王国の部隊に対する行動は碌に行っておらん」
その後はボバルトーだった。
「我々はこの百年、南部問題に対して最大限の努力をしてきたつもりじゃ、しかし国外の情勢悪化は著しいものがある」
最後に口を開いたのはエラストーだった。
「事は連合存続に関わる、そしてそれに対して対策も練った。しかし決め手に掛けるのだ、どうしても人間の考えが理解しきれん」
そういった後室内は沈黙に満たされた、問題は理解したが異民族相手に苦労してる・・・と言う事か。
そしてバナリーが重い口調で言った。
「ある鍛冶氏から聞いた、おぬしは不可能な事は最初に言い切るが、それ以外の事については利が無ければ口を開かないそうだ」
「魔術師の契約は等価交換、ですからな」
「そう、あの会議で貴様は「南部の復興は不可能」と言ったんだ、南部の、とな」
そう言うとバナリーはエールを空にした後に身を乗り出して聞いてきた。
「では連合全体の生き残り、自治権の確保はどうだ、南部は何百年掛かるかわからんが連合が消えるよりはマシだ」
そう言って俺をじっと見つめた、周りを見ると他の4人もぐっと身を乗り出している。
「正直に言うがわからん、わし達には方法が見つからなかった。だから聞く、お主にそれができるか?」
バナリーの両目は血走っていた、碌に寝てねえな、この老人会。
「それに対する私の報酬はどうなるのでしょう?一国を救うに値する対価は?」
「連合の国家付き魔術師、かつ宰相、どの道おぬしに任せるならそれくらいの権力と報酬は必要じゃろう」

俺は静かに目を閉じ、椅子に座りなおしてエマに言った。

「エマ、資料を張り出してくれ」

「了解しましたマスター」


「ご覧になっている地図は、私が現在の情報で作ったこのグドランド大陸の各国の領域、国力を書いたものです」
この大陸の地図に国境線を引き、国力を数字で書き込んである。
「現在の国力比は、仮に連合を1と仮定した場合、帝国と王国は1.8:1.5と言った所でしょう」
さらに手書きで四角のマスを書き一本線を立てた。
「現在帝国側が国境に貼り付けている兵力は地元領主の陽動でしょう、戦力も千に届かないはずです」
そこで皆に振り返って言った。
「問題はなぜ帝国が国境に兵力を貼り付けているのか?と言う事になりますが、実は先に王国側が領内で大規模に軍を動かしました。
それに対応するために軍を召集、王国側に動かす・・か既に動いているかのどちらかでしょう」
なぜ王国側で軍が動いたかは言うまでもないわな。
「敵対する可能性は少ないが、いざと言う時の足止め、この部隊の作戦目標はそんなものでしょう」
でなければ派手に動いて挑発してるわな、貼り付けるだけでも金が掛かるだろうに。
「幸いな事に帝国は王国側に対抗する形で軍を展開してるはずです、現段階で帝国がこちらに侵攻する要因はありません。
裏で条約でも結んでなけりゃ侵攻中に王国に横を衝かれるのが関の山でしょうな」
「それは確かだ、帝国も王国もこちら側に付けと使者を立ててきおった、返事は引き伸ばしてる真っ最中だがな」
バナリーがそう言った、王国側もどうやら治まりが付かなくなったらしい、典型的なパターンだな。
「おそらく両国は使者を立て戦争を回避する方向を模索してるでしょう、王国側も準備を整えて軍を動かした訳ではないはずです。
放置しておけば8割の確立で互いに矛を収めるでしょう」
「それは我々も考えた、だが事が収まっても両国の我らに対する不審は増す、確実にな。だが負ける方に付くわけにもいかん」
エラストーだった、エールを飲みながら赤い目をこっちに向けている、ご苦労さん。
「そうですね、味方じゃなければ敵、そう考える者はどこにでもいます」
「おぬしが会議で演説するまでは中立を固持する予定だったのじゃよ」
コーレンが額をもみながら言った、ベストではなくベターな戦略を取る予定だったと言う事だ。

「結論から申し上げると連合を二つに割ります、北と西は帝国側、中央と東は王国側で戦闘に参加すると言う事です」

何気ない様に言った、すかさず耳栓をする。暫くすると怒号と喚声が部屋を満たした、ありがとう、イヤーウ○スパー。

暫くして、皆が言う事言って落ち着いたのを確認した後耳栓を取って言った。
「南部はこれまでどおり、中立を守っていただきます、実働戦力がありませんから」
大声でわめいていた中で唯一人、沈黙を守っていたバナリーは言った。
「それで、ワシは何をすればいいんだ、使えるものは何でも使うって評判の魔術師がワシを遊ばさせる訳がないだろうに?」
やっぱり、こやつできる。
「今回の作戦目標は唯一つ、両国に多大なダメージを与える、と言う事になります」新たに地図にマスを合計四個、上に一本線をひいた。
「両国にそれぞれ義勇軍扱いで参戦、ただし歩兵は使いません、騎馬隊のみの投入と言う事にします」
皆がいぶかしげな目で見つてきた。・・・野郎に見つめられてもうれしくともなんともねえな。
「無論騎馬隊だけでは兵力的に大部隊とはならないでしょうが、作戦的に機動力が鍵を握ります、したがって補給部隊もナシです」
「それでどうやって戦えと言うのだ、兵を飢死させる気か?」
ボバルドーが「話にもならん」といった風に肩をすくめた。
「要約しますと騎馬隊を傭兵扱いで参戦させる、面倒はまかせる、ただし自由に動く、王国とこっそり話すならうちのバナリーがいいんじゃない?と」
部屋に今までと違ったざわめきが満ちた。一人目をつむり、黙って聞いていたバナリーがこちらを見据えて言った。
「つまり兵は出すが俺たちの行動に口出しするな、自由に動く、飯は食わせろ、給料は出せ、と言う事か」
「まさにその通り、領地配分などで後にも尾を引きません、実際に味方となってるんだから大きく出れない。前回の負い目がある帝国は言う事なし
ですし、王国側も納得するでしょう」
「だが騎馬隊だけでは碌に戦果を上げられんかもしれんぞ、その時はどうするのじゃ?」
モナリンが心配そうな顔つきで言った、戦場に一番近いから死活的問題でもあるわな。
「先ほども申しましたとおり、こちらの部隊に関しての命令拒否権のワイルドカードが参戦の第一条件、第二条件は同族を相手に戦いたくないので
それは各国軍に一任する、と、第三にこちらより強い敵に遭遇した場合は・・・」
「遭遇した場合は?」バナリーを除いた皆が身を乗り出して来た。

「逃げます」

「それじゃワシらは何をすれば良いんじゃ?多大なダメージを与えるのではなかったのではないか?」
コーレンがあきれた様子で聞いてきた。
「両国の後方地域に対して焦土作戦を行います、敵兵力の少ない所を狙い襲撃、燃やして灰にしてしまいます。
無論虐殺なんて時間が掛かるだけですから、敵騎兵に捕捉されない為にも「神聖帝国騎士団が来るぞ、逃げろ。」とかいって民間人を逃がし、
畑、村、町に火を付けます。まあ、略奪しない野盗みたいな物ですな。
優勢な敵兵が居た場合、畑だけでも燃やして各国主力部隊に逃げ込み押し付けます。必然的に騎馬隊は全て軽騎兵編成です」
誰もがあきれた表情を浮かべた、バナリーでさえあきれている様だった。そしてコーレンが言った。
「ま、確かに暴れれば面子も義理も果たせるが、そんな事ばかりしてどうするのだ?最悪臆病者とそしられるぞ?」
「敵が皆そういう風に認識してくれれば言う事は有りません、まあそのうち誰かが気付くでしょうが」
皆が目を合わせて不可解な表情を浮かべている、ま、この時代にそんな認識ある奴が少ない事を喜ぶか。
「主力が前線で膠着、小競り合いをしている間に両国の後方は焼け野原、食料は近くで調達できない為補給路は伸びます。
勝利を求め、戦力を増やせば補給の負担が増すだけ、我々の騎馬隊に対処するには主力の騎馬隊を割かなければならない。」
そこまで言った時皆の顔色は愕然とした物になった。
「耐え切れなくなった所で、連合から十年分割払い程度で両方に糧秣を提供してやれば完璧ですな」
室内のあちこちから声にならないうなり声の様な音が響いた。
「まあここまで来ると、主力が決戦を挑むかどうか五分五分ですが、決戦をしないのであれば両国の間をバナリー氏が主導で和平を執り成せば
済みますし、決戦すれば両国供に疲弊するだけです、どちらに転んでも損は無いでしょう」

「なんともまあ・・・・」心底別の意味であきれた口調でモナリンがつぶやいた。
「戦争を起こして利益を得るのは非常に難しい、しかし戦争の当事者でなければぼろ儲けできる・・・と言うわけか」
バナリーがしみじみとつぶやいた。
「しかしえらく悪辣だな・・・・・」
エラストーが答えた。室内が沈黙した、確かにこの方法であればドワーフの権力の維持どころか拡大も無理ではないだろう。
しかしどれだけの人間が惨禍に巻き込まれるのかと考えると言葉が出なかった。
「いわゆる弱者の戦い方、と言う物です。ただこれで稼げる時間はたかが知れてますので第二の手を打ちます」
「第二の手?」
皆がいっせいにこっちを見た、中には「まだ足らんのか?」といった風の表情を浮かべてる者もいる。

「作戦の第一段は先ほど申した通り、両国を適度に疲弊させるA作戦、通称「フリーダム」、両国の紛争終了をもってこの作戦は終了となります」
「それでは足らんのか?」
エラストーが言った、こんなんで世界が平和になったら戦争自体起きてねえよ。
「第二作戦は現在グドランド大陸南西に存在する、アークラント大陸で発足した統一国家、この統一戦争から逃れてきた没落貴族を
帝国か王国辺りで担ぎ上げて亡命政権を樹立させ、私掠船を仕立てて挑発を行います。これをB作戦、通称「ブリティッシュ」とします」
悲鳴のような唸り声が聞えた。
「そしてその脅威に対抗する為に王国、帝国両家に婚姻関係を結ばせその連合に参加、グドランド大陸連合帝国を結成するC作戦、
通称「ハプスブルグ」、この三つを纏め統一国家生存戦略「ラグナロク計画」として上奏します。どなたか反対意見などは?」

静まりかえった室内に声を出す者はいなかった。

グドランド大陸統一戦争の事実上の幕開けだった。そして同時に氏族連合820年の歴史上初の異民族の宰相が誕生した瞬間でもあった。


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