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No.1309の一覧
[0] ロボットになった男[パブロフ](2005/03/11 19:13)
[1] Re:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2004/10/13 00:29)
[2] Re[2]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2004/11/07 07:06)
[3] Re[3]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2004/11/09 18:10)
[4] Re[4]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2004/11/13 20:19)
[5] Re[5]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2004/11/22 00:12)
[6] Re[6]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2004/11/24 00:33)
[7] Re[7]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2004/11/28 18:08)
[8] Re[8]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2004/12/01 06:59)
[9] Re[9]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2004/12/04 13:26)
[10] Re[10]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2004/12/09 20:28)
[11] Re:削除[パブロフ](2004/12/14 18:18)
[12] Re[2]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2004/12/23 23:59)
[13] Re[3]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/01/06 19:38)
[14] Re[4]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/01/15 10:00)
[15] Re[5]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/01/19 00:45)
[16] Re[6]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/01/25 01:58)
[17] あとがき忘れてた・・・・。[パブロフ](2005/01/25 02:09)
[18] 例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/01/30 20:59)
[19] Re:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/02/04 20:24)
[20] Re[2]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/02/13 17:04)
[21] Re[3]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/02/20 20:04)
[22] Re[4]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/02/23 07:10)
[23] Re[5]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/03/01 23:00)
[24] Re[6]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/03/11 19:23)
[25] Re:ロボットになった男[パブロフ](2005/03/11 19:21)
[26] Re[7]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/04/04 23:05)
[27] Re[8]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/04/12 00:31)
[28] Re[9]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/05/04 18:51)
[29] Re[10]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/05/14 18:40)
[30] Re[11]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/05/24 20:27)
[31] Re[12]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/06/05 09:35)
[32] Re[13]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/06/06 22:08)
[33] Re[14]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/06/12 23:12)
[34] Re[15]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/06/19 20:11)
[35] Re[16]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/07/09 23:22)
[36] Re[17]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/07/11 20:54)
[37] Re[18]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/07/18 19:38)
[38] Re:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/07/22 07:04)
[39] Re[2]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/08/15 21:26)
[40] Re[3]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/08/23 23:19)
[41] Re[4]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/09/08 02:40)
[42] Re[5]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/09/10 09:21)
[43] Re[6]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/09/13 20:35)
[44] Re[7]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/10/01 20:45)
[45] Re[8]:例えばこんな話もアリ[パブロフ](2005/10/14 22:59)
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[1309] Re[12]:例えばこんな話もアリ
Name: パブロフ 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/06/05 09:35
 一瞬で世界に色が戻った。町に上がった火の手は、小さな物では留まらない。次々と小爆破の連鎖を起こし、町の主要住宅街を避けながらも、大規模施設を破壊していった

 耳を劈く轟音。御厨にはその劈かれる耳が無いが、生身の人間には堪るまい

 道が遮断され、町の各所が碁盤の目の如く隔離される。芸術的なこの爆破工作は、一瞬でこの狭苦しい視界の中を、混乱の二文字で満たした


 「このッ! 手前の仕業かぁ!!」


 御厨がハッ、とした瞬間、御厨のレンズを覗き込んでいたラドクリフの背後に、一房と言わず、流れるような金の髪が翻った

 ホセだ。その形相を悪鬼の如く歪め、彼は、御厨が知っていた彼の善人そうな面の皮を捨て去って、ラドクリフに躍り掛かっていた


 だが、御厨の常識を覆すその身体能力でも、まだ遅い


 「ホセ、と、言ったか。………君に白兵戦は十年早い」


 ラドクリフは振り向こうともせず、僅かに身を逸らす。その最中も、やはり御厨のレンズを覗き込んだままで

 そして、後ろに目が付いているのかと疑わせる程、正確な動作でホセのツナギの襟首を掴むと、慣性の法則を捻じ曲げて、真横に投げ飛ばした。まるで蛇の様な、鞭の様な、剛柔たる滑らかな躍動で


 正に豪腕。相対重量比率も骨格強度も無視して、ラドクリフは右腕一本でホセを掴み上げ、あまつさえ投げ飛ばしたのである

 もう一度言う。どれ程軽く見積もっても、間違いなく七十㎏あるホセを

 ラドクリフは、右腕一本、それのみの力で、投げ飛ばしたのだ


 「殺す時は、相手を上回る速さで殺せ。闘犬のようなプレッシャーは賞賛に値するがね」


 ホセが、もんどりうってコンクリートに叩きつけられた。肩口から地面に突っ込んで一転。素人には不可能な受身を取りながらも、慣性に流されて二転。急激な負荷で体内の血液循環が上手く行かないのか、ホセは呻き声を上げる


 「ぐぅぬ…ぁあ! …野郎、SPSを着込んで……用意がいいな…!」


 レイニーが駆け寄るのを、ホセは手を振って制し、直ぐ近くで修復中のまま待機状態にあるメタルヒュームの脚部を掴むと、自力で立ち上がった

 それを尻目に、ラドクリフは懐からインカムを取り出し、装着。指で二、三度弾いて、感度を確かめる

 焦りは無い。滲み出る余裕と慇懃さが、まるで貴公子然としていた


 「流石に私も、生身丸腰のまま敵地に潜入する程、馬鹿ではないさ」


 そう言い放って漸く、ラドクリフは御厨のレンズから視線を外し、たった今燃え上がり始めた町並みを見遣った

 その時に、御厨は感じた。それはラドクリフの視線が外れた事に対する、安堵


 「作戦開始を伏して待つ、我が信頼する混成中隊総員に告げる。…余り無用な被害は出すな、非戦闘員への攻撃も許さん。君達は、私の命令一下で一糸乱れぬ動きをする、スパエナの最精鋭だ」


 最後の一言には、彼らしからぬ怒気と、力が籠められていた


 「…トゥエバの外道どもとは違うと言う事を、頭の奥に刻み込んでおけよ」


 ラドクリフは一瞬で荒れ狂った気配を消し去り、悠々とレイニー達を振り仰ぎ、腕を振って崩れまくった敬礼をする

 そして、唖然とする二人をそのままに、身を翻した


 「では総員、状況開始!」


ロボットになった男


 「ホセ! 貴方、大丈夫なんでしょうね?!」

 「レイニー………さん。いえ、それが……ちと、投げられた時に…」

 「……色々突っ込みたい所はあるけど、今は止めとく。…怪我しているならメディカルルームに行きなさい。薄情かもしれないけど、今は連れて行ってる暇がないわ」」


 そう言い放つと、レイニーはいつも大事そうに被っている帽子を脱いで、ツナギの懐に押し込んだ

 そして、ホセが何か言う前に、近場の放水ホースから水を大量に噴射させる。それをこれでもかとばかりに被ったレイニーは、僅かに水を口に含んで、思いっきり咽た

 激しく咳き込みながら、一度ホセを見遣り、次に御厨に視線を移す。何時如何なる時も気丈なレイニーが、ともすれば泣き出しそうな瞳で


 (レイ…ニー?)


 御厨の視線の先で、漸く落ち着いたレイニーが一発、自分の頬を張って気合を入れた

 濡れた髪をまとわせる、水もしたたる良い女、レイニー・ミンツは、その身を翻したかと思うと、一直線に駆け出していた。

眼下の、燃える町並みに向かって


 (レイニー!!!)


 ホセが一瞬唖然とし、すぐさま大声を張り上げる。その時にはレイニーの後ろ姿は、最早サッカーボール大にまで小さくなっている


 「レイニーさぁぁぁああん! 貴女一体、どこに行かれるおつもりなんですかぁぁぁああ?!」

 「ゼランの守備隊宿舎よ! このまま放っておくなんて、出来る訳無いでしょうが!!」

 (…………………………たった一人でかッ?! 馬鹿ッ!)


 この暴れライオンが! 御厨は、先程まで身を凍らせていた恐怖すら忘れて、思わずそう叫んだ


 一度、二度と頭を振り、気を取り直したホセがこめかみを押さえる。感じたのは呆れか、驚愕か。御厨には彼の内心は読めない

 そんな事よりも、レイニーの事の方が、御厨には重要だったのである


 「とんだじゃじゃ馬……ですが、私の本職にしてみれば、……………都合が良いかも知れねぇなぁ…」


 ホセの呟きは、御厨の集音気には届かなかった。彼は、どこにも怪我を負った風もなく立ち上がると、一度火の灯った御厨を見遣り、そして背を向けた


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 (くそぅ! 畜生! どうする、どうするんだ! 御厨翔太!)


 場は混乱を極めていた。激しい爆音が鳴り響いたおかげで、基地の所属人員は全て眠りから叩き起こされ、今基地の内外に犇めき合っている

 工兵しか居ないのが、余計に災いした。彼らは軍備縮小とやらでその力を大きく削減された実戦部隊と違い、古参の名に恥じぬ腕と経験を持つ優秀な整備員達だが、基本的に戦闘部隊よりも階級が低い

 上意下達の旨をどんな組織よりも重要視するのが、軍隊だ。整備兵である彼らには、この様な突発的な有事に対応・処理するだけの権限がないのである

 勿論、そのような事態に対して指揮に当たる人間が居ない訳ではあるまい。だが、それらしい人物からの命令は、未だ彼らには下されていないようだった


 「おい、どうすんだこの状況」膝を着く御厨の直ぐ傍で、年若い工兵が呻いた「迎撃、しなくても良いのか?」

 「無茶言うなよ、勝手に動いたら、下手すりゃ敵前逃亡で銃殺刑だぜ? それに見ろ。砲声が聞こえるだろう? この基地から一歩でも出れば、もう戦場だ。……裏方の俺達がどうこう出来る状況じゃない」

 「だがよぉ………」

 「だがよぉ、じゃねぇ! ………最悪の場合、俺達全員皆殺しか、良くて捕虜って可能性も在るんだからな…」


 そんな声が稼動状態の集音気に飛び込んできて、御厨は激烈に気を吐いた

 血反吐と共に、魂か既に無い臓物でも吐き出しそうな程、強烈に。御厨の中では、焦りと、葛藤と、恐怖と、自虐と、…それら全てがない交ぜになって、まるで混沌の海の如き様相を呈していた


 (戦場?! 戦場だと?! レイニーは飛び出して行ったぞ! レイニーは、…脇目も振らずに、飛び出していったぞ!)


 どうする、どうするんだ、御厨翔太。再び自問自答を繰り返す

 今更自分一人が行った所で、状況が好転する可能性は皆無に等しい

と言うか、この芸術的破壊工作のお陰でまともな防衛戦力が動いていない今、御厨だけでは速攻囲まれて叩かれて潰されて終わりだ

 早い話、動きようがない。理屈で言えば、そうだ

 だが、自分はそんな人間だっただろうか。御厨の中に疑問が一つ増えた。自分はそんな、理屈に合わせた行動が取れる冷静な人間だっただろうか

 違う筈だ。ならば何故今更、賢しげに動こうとするのか。何故自分は、今直ぐここを飛び出して、驚愕で唖然とする工兵達を尻目に、レイニーを探しに行かないのか


 恥を覚悟で言ってしまうのなら、御厨は怖かった。死ぬかも知れないと言う恐怖は勿論、人を殺すと言う感覚、火砲で貫き、突撃銃で貫き、己が拳で貫くと言う感覚が、今更ながら、うねる荒波の如く御厨の脆弱な心を押し流していた

 更に言ってしまえば、ここには死神ラドクリフも居るのである。ダリアと言う光の影に隠れ、或いはその光にのっかかっていた部分が、この土壇場で曝け出された


 御厨は思う。平凡ではあるが、平和に生きていた時の事を、だ。それは本の数ヶ月前の記憶である筈なのに、遥か遠い昔の事の様に感じた


 あまり熱心に学を修めていない御厨だが、アルバイト先のゲームセンターを中心とした彼のライフスタイルは、それなりに充実した物であったと思える

 バイトの古参であるが故に、新人の指導に回る彼は、その事に何とも言えないこそばゆさを覚えた物だった

 その上で皆から「ボス」と呼ばれるのは、殊更恥ずかしい。だがそんな記憶すらも、今では尊い事の様に思える。あぁ、そういえば、半年位前に入った子は、御厨の事を「ボス」と呼ばなかった


 その記憶には、御厨の今までの「生」が詰まっていた。それと今ある現実の落差を改めて直視させられ、御厨は更に葛藤した


 (俺は…行くべきなのか。それ以前に、俺が行く事に意味はあるのか)


 その時御厨は、ふと視界の中に見知った顔を見つけて、意識を戻した

 何の事は無い。御厨自身、この混乱の空気に中てられ、半ば茫然自失の状態なのだ。彼を責める事はできまい

 御厨の意識を引き戻した、彼の良く知る顔とは、ボルトの物だった


 (ボルト!)


 御厨は焦った。ボルトが素人目にも拙いと解る程の出血で、全身を真っ赤に染め上げていたからである

 頭、肩、胴、足。元々着ていたであろう服は、それが一体どんな服なのか判別出来ない程損傷し、彼自身も脇腹を押さえ、右足を引き摺りながら歩いていた


 それは、御厨の知るボルトには似つかわしくない姿だった。いつも威風堂々としていた彼がこんな事になるなど、一体だれが想像できようか


 歯を食い縛りながら丘陵を登ってくるボルトを見つけ、工兵の一人が悲鳴を上げた


 「主任…? ッ! う、うぉ、ち、血ぃ?! 大丈夫ですか?! おめぇら何ボーっとしてやがる! とっととボトル主任を助けねぇか!」


 一人の悲鳴で、他の工兵達がわらわら集まり、状況を悟ったか一気に走りだす

 眉を顰めたのはボルトだ。彼は走り寄ってくる工兵達を見て顔を引き攣らせると、肩を貸そうとする若い工兵の頭を、グイ、と押しやった。助けなど要らないと言うのだ


 「あんまり騒ぐな…、傷に響くだろうが」


 ボルトは荒い呼吸ながらも静かに言うと、歩みを止めないままに、御厨の所まで来てしまった

 ボルトの威に圧されたのか、工兵達は周りを取り巻いて同じように歩くだけだ。一種奇妙なパレードの様で、御厨は何とも言えない気分になる


 ボルトは御厨の脚部に背を預けると、そのままズルズルと座り込んだ。血液が付着したが、そんなものは御厨の気にも止まらなかった


 「…状況は解るな?」

 「は、はい。ついさっきゼランの住民を対象に、スパエナからの戦闘宣言電文が出されましたから…」

 「なら話が早い。俺達の当面の敵は、スパエナのドーリガン第三混成中隊って訳だ。…強ぇぞ。資料を見たがな、練度だけで言やぁ、トゥエバの特選海軍と張るだろうよ」


 ボルトの問いかけに、取り巻く輪の中から二十歳を少し過ぎたくらいの工兵が歩み出る。ボルトは荒い呼吸のまま目を瞑って、話を続けた

 見る見る顔色を蒼白に変えていく工兵。余程絶望的な事だったのか、周りの者達も同様だ。皆一様に、顔色を悪くしている

 ボルトはそれを見て、苦しげながらも口を歪ませて笑うと、声を張り上げた


 「落ち着けとは言わんが、黙って聞け! 重要な事だ!」


 四肢をふらつかせて、ボルトが立ち上がろうとする。顔面蒼白の工兵が、それでも能動的に動いて、ボルトに肩を貸した

 またも押し退けようとしたボルトは、工兵の目を一瞥すると、今度は押し退けたりしなかった。「すまん」と呟いて、素直に肩を借りる


 「コネリー司令は南部宿舎にて戦死なされた! トゥエバの増援が何時来るか解らん以上、指揮系統の混乱が回復するまでとてもじゃないが待ってられん!」


 ボルトが肩を貸す工兵に、小声で尋ねた「…レイニーは?」


 「解りません。少なくとも、この基地に居ないのは確かです。アタッチランプは消えてましたから」


 ボルトはそうか、と返すと、頭を振った


 「……俺達の判断で撤退するぞ! 指揮は俺が取る! 責任も、俺が取る! この場に居る誰一人、無駄死にする事は許さん!」


 御厨は思った。この男は、本当にどんな時だって堂々としているんだな、と

 力強い、心強い。ボルトは混乱していた工兵達を、一瞬で静めて見せた。きっと彼は、目前に死の刃が迫った時でさえ、一歩も引かぬに違いない

 ボルトの声の一つ一つが、御厨の鋼鉄の胸を打った


 「俺達は生きてんだ! やれる所までやらなきゃいけねぇ! 異存ある奴、居るか?!」


 誰も何も言わなかった。勿論異存など、ある訳がない

 工兵達は皆、ボルトを信じるだろう。ボルトの気概に心を預け、信念に命を預けるに違いない


 (そうだ。俺も逝くべきなんだ。脇目も振らず、レイニーを探しに)


 自問が氷解を始める。いや、覚悟定まっていくだけか。答えは、遥か前に出ていたのだから


 「もう一度聞くぜ! 異存ある奴、居るか?!」


 ボルトがもう一度吼えた時、異変が起こった

 爆音が轟いたのだ。激しい振動を起こし、大気をビリビリと震わせ、爆音と共に丘陵の森が爆ぜたのだ。そこは、御厨とレイニー、ホセが一様に嫌な気配を感じ取った、あの森である

 それが、木っ端微塵と消え去った


 代わりにそこに存在していたのは一機のメタルヒューム。炎の色に中てられて解り辛いが、都市迷彩色を施した、カルハザンもどきだ

 唐突。余りにも唐突。あのボルトですら、この唐突な状況に顔を歪ませる事しかできなかった


 カルハザンの外部スピーカーを通して、若い男の声が聞こえてくる


 『異議あり、だ。むざむざ逃がす訳には行かないからな』


 御厨の奥底で、彼の心を縛っていた物が、バキバキと音を立てて外れていく気がした


 (もう、怖いなんて言って逃げるな、御厨翔太。俺は、戦うぞ)


 “やれる所までやらなきゃいけねぇ”そうだろ? ボルト


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー必殺の不発弾


 「金色の若獅子の信念」


 基地内通路

 ダリア「ぅあ~~、疲れたぁぁ。訓練所が自販機に近い理由、やっと解ったよ」

 レイニー「ちょっと少尉、後がつかえてるんだから早くしてよ。ここを利用するのは整備班も一緒なんだから」

 ダ「あ、あぁ、御免。……………って、あッ! うわったった!」

 チャリーン (小銭の落ちる音)

 ダン! (横合いから何者かの足が音速でそれを踏みつける)

 ダ「………………………………………………」

 レ「………………………………………………」

 ダ「………………………………………ミンツ技官、足どけて」

 レ「………………………………………………」

 ダ「………………………………………………足、どけて」

 レ「………………………………………………ピーピーッピピッピーピ」

 ダ「………………………………………………下手な口笛吹くな」

 過酷な環境下で育ったレイニーは、少々金に汚い


 「アンジーと言う男」


 基地内食堂

 ダ「あぁ! アンジーさんがオペレーターのアルマさんナンパしてる!」

 ホレック「いや、ナンパって……食事に誘ってるだけじゃないの? あれ、それがナンパなんだっけ」

 ダ「そっかー、………アルマさん、美人だものね。結構お似合いかも」

 ホ「でも……………アルマさんって確か、既婚だった様な…………」

 ――ぐぅおぉぉぉぉあぁぁぁぁ!! (何者かの悲鳴)

 ダ「………………………………うぇぇ! 肩! 肩が極まってるよ! アレ!」

 ホ「す、スーパーサブミッション!」

 その時、二人はアンジーと目が合った

 アンジー「…………!………ッ!………ッ!!」 (縋るような視線)

 ダ「ど、どうしよう! た、た、たた助けないと!」

 ホ「そ、そんな事言われたって?!」

 ズルズルズルズルズル (何者かが引き摺られていく音)

 ――待て! 俺が悪かった! この通り反省してる! 話し合えば解る筈だ! …え? いや、ちょ、待ッ! ぐぅおぉぉぉぉあぁぁぁぁ!! (何者かの悲鳴)

 ダ「うわ、あぁぁ、アレは明らかにオーバーキル(殺しすぎ)でしょう…」

 ホ「『畜生!・・・・・俺は・・・・・・俺はまた何もできないで!』」 (序章七話参照)

 アイオンズ・ジャコフ。陸戦隊当時、パイロット適正ありとの調査報告書を受け、同期のハヤト・イチノセと共にMHライダーに転向する

 数多の戦場を駆け抜けた歴戦の兵士も、美女の関節技には滅法弱い


 「“死神”より強いヤツ」


 スパエナ国 リガーデン侵攻軍 司令部駐屯地

 ラドクリフ「…宜しい。受理した。ルナイアス・ターレス中尉、貴官の第三混成中隊配属を認める」

 ルーイ「ハッ! 有難うございます!」

 ラ「早速着任挨拶と行きたい所だが、箱舟防衛戦で痛打を被ったのが後を引いていてね。主要人員は、皆出払っている状況なのだ」

 ル「………………………………………………………………」

 ラ「雑事は暫し後と言う事になるので、少し他の事でもやって貰うか…」

 ル「………………………………………………………………」

 ラ「ではさっそく………………? どうした? ターレス中尉。私の顔に何かついているか?」

 ル「いえ、ただ………………………………これから自分は閣下の直下隊、つまり閣下の指揮下に入る訳ですよね」

 ラ「そうだが」

 ル「『指揮』と言う字を、よく『死期』と言う字に変換ミスしませんか?」

 ラ「………………………………………………(何が言いたいのだ?)」

 ル「………………………………………………………………」

 ラ「………………………………………………………………」

 ル「………………………………………………………………」

 ラ「……………………(この中尉、私を測ろうと言うのか? …解せんな。この期に及んで、一体私の何を測ろうと言うのか…)」

 ル「………………………………………………………………」

 ――ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ (ルーイ 威圧)

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ (ラドクリフ 威圧)

 ラ「………………………………………………………………」

 ル「そういえば閣下は、密命を受けてダリア・リコイランと言う女性士官を追っているようですが」

 ラ「…………一応部外秘なのだがな。…………それが?」

 ル「いえ、ただ、「まるでストーカーね」等と思っただけです」

 ラ「(ブチィッ!)ターレス中尉、君は上官侮辱罪で、三日間の禁固刑だ」

 ル「がびーん!!!!」

 死神よりも強い(かも知れない)女(容姿と年齢の明言は避ける)、ルーイは

 一歩戦場から遠退けば、ただの間抜けである


ーーーーー必殺の不発弾 了

これは作者の妄想です。ありそうでなさそうな微妙な話なので、どうかご信用なさらないでください。


……………というテロップを流さなければ、駄目なような気がしてきました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


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