早急に人員補給の必要アリ。
ということで作戦を決行しました。
とあるVRMMOのはなし2
とりあえず運命を信じて、パンを咥えて街中を10周ほど疾走して見ました。
すると、ある曲がり角で出会いがあったのです。
「フッ!」
「あっ」
バナナを咥えて腰を深く落とし、矢のような肘打ちを繰り出す銀髪オッドアイの彼女との出会いが。
しかしその攻撃はあらかじめ張ってあった防御魔法に受け止められ、僕のブレーキは間に合わずそのまま彼女を撥ね飛ばしました。
数秒遅れて空を舞っていたバナナが頭に刺さり、物悲しさを誘います。
「・・・・・・大型トラックと人型トラックって似てるよね。字面が」
「・・・・・・転生して・・・・・・たまるか・・・・・・」
潰れたヒキガエルのような有様でしたが、まだ生きてました。
それはさておき、僕は重要な案件に気付きます。
「常識的に考えてここはパンチラシーンなのでそこの所よろしくお願いします」
「わーーーぎゃーーーズボン破くなー!」
面倒な女です。
とりあえず出会いは出会いなのでハンカチを口に詰め込み肩に担いでパーティー部屋にエスコートしました。
「もうやだおうちかえるー!」
唾液でべとべとになったハンカチをようやく吐き出し、開口一番そうのたまいました。
成る程、部屋に入って最初に見えたのは首輪に繋がれた少女の姿。
しかも遠い眼をして口の端から垂れたよだれが銀色にキラリ。
凄く・・・・・・拉致監禁の現場です・・・・・・。
「げへへ、お嬢ちゃん無事に帰れるとおふぉふぇふぇふゅん」
泣き叫ぶ姿にちょっとゾクゾクしてきたのでもう少し弄ろうとしてみたら、
おチヨさんに口に竹槍突っ込まれました。ちょっと喉に刺さって痛いです。
チヨさんの手厚いフォローによって落ち着きを取り戻した彼女と自己紹介し合い、
まだ少し怯えの残る彼女を観察。
中性的容姿に銀髪オッドアイ、黒尽くめの服装。テンプレ過ぎて既に使われる事の無い主人公像。
しかし・・・・・・何というか・・・・・・普通。あまりに普通の小娘。オーラとか皆無。
これはもしや。
「コスプレ」
「・・・・・・!!(ビクンッ)」
反応アリ。
「物語の予感。インパクトある出会い」
「・・・! ・・・・・・!!(ビクンビクンッ)」
アリアリ。
つまるところ、パンを咥えて走り回る僕を見て、
主人公になりたい地味な女の子が勇気を出して、
強烈な印象を与えるべく演出として出会い頭に攻撃を放った、と。
いい。とてもいい。
誰も彼もが死に近いこの世界で、
それでも夢とか希望とか捨てられない人は僕の大好物なのです。
流石古典の王道出会いパターン、いい拾い物である。
この娘はわしが育てる。
ということで我がパーティの期待の新人、『厨ニ志望』ヨザクラ。
一言どうぞ。
「え? あれ? なんで私もう入ることになってんの?」
運命です。