今日はケミストリが忙しいらしいので、久しぶりに臨時PTでも行くかな。
先ずは掲示板を確認。
ん? BOSS狩り会開催?
何かのイベントかな?
レベル不問、全職募集、非公平PT…… ねぇ。
行ってみるかな。
「皆、今日は良く集まってくれた!
俺が今回のBOSS狩り会の主催者、レーニーだ!
先ずイベントの主題は、BOSSを狩る事だ!
最初のターゲットは村長を予定している!」
おお、村長に挑むのか。
30人くらいいるし、狩れるかな?
「第一の注意点だが、家に帰り着くまでがBOSS狩り会です!」
「滑ってるぞー!」
「先生! 飛ばしすぎです!」
「オヤクソクキター!」
メンバーもかなりノリがいい…… のか?
「冗談は置いておいて、今回の狩りは非公平PTを4組で開催します。
故に経験値は、敵にダメージを与えた率によって振り分けられます。
それでは回復役が不利になりますので、レア以外のドロップ品は全て回復役に振り分けます。
もしレア品が出た場合は、イベント後にオークションを開きます!
また死亡した場合は、町に死に戻りしないでください。
高レベルの司教、複数に参加してもらっていますので、その場で蘇生致します。
但しその時に生じるデスペナは自己責任とさせていただきます。
質問のある方はいますか?」
それから何人かが質問した。
村長以降の狩りは、村長戦での実力に応じて決めること。
手加減はいらない、全力で狩れ!
イベントの終了は状況を見て、夕方ごろに適当に〆。
他PTが狩っているBOSSには、原則手を出さない事。
などなど。
さて、久しぶりだよオーク村。
「もう直ぐ湧くはずです、がんばりましょう!」
湧き時間の確認をして、ちょうど良い時間帯に来たんだから、そろそろ湧くはずだが……
「いたぞー! 村長発見!」
お、いたか。
MPも満タンだし、抜刀術いきますか。
ザッシューーーーーン!
「うををををおおーー!」
「抜刀斎発見!」
「TUEEEEEEEE!」
もちろん1撃では死なないので、後衛に廻って弓を連射。
死にたくないしね。
「オークガードを召喚したぞ!」
…… MP無いからシャワーアロー撃てないっす。
ボルケーノ、メテオスウォーム、サイクロン等の大魔法が、一瞬にしてオークガードたちを壊滅していく。
ちなみに凍らせるとBOSSはテレポートして逃げるので、ブリザードは使われない。
正に地獄絵図と言った処か。
何が凄いって、それでも死なない村長さん。
とは言え、多勢に無勢。
『geeeroorrrorrroooo』
終に村長さんも死んでしまった。
「おつー」
「おつー」
「おつー」
「おつー」
「おつかれー」
範囲攻撃が無い分、ミノたんよりは楽だった?
ちなみに残念ながら、レアは出なかった。
「これならイケる!」
レーニーのその一言でラビリンスへGO!
俺たちの目的はBOSSなので、一番奥まで一直線に向かう。
流石に30人もぞろぞろと行くと目立つな。
「よーし、次がBOSS部屋だ!
ここは死に戻り連中がいるから、人が途切れてから狩るぞ!」
人が居ないのを確認して、BOSS部屋に突入。
前はなかなか人が途切れる事もなかったらしいが、今は朝から入って夕方まで粘るPTが大半だ。
中途半端な今の時間は、人が途切れやすい。
「突撃!」
もちろん今回も抜刀術。
ザッシューーーーーン!
「よっしゃナイスぅ!」
「抜刀斎カコイー!」
ミノたんは範囲攻撃があるので、思い切ってこのまま刀で斬り続ける事にした。
ザザザザン! ザザン! ヒラリ。
よし、いける!
…… 来たよ、範囲攻撃。
だが1発なら!
回復チームの頑張りもあって、何とか持ちこたえている。
「スゲーな、抜刀術だけでなく、クリ100%かよ」
「正宗とクリ装備のお蔭でね」
度重なる範囲攻撃で何人か死ぬが、強制的に蘇生が入る。
ちなみに俺は攻撃力が高い為に、回復チームが優先して回復してくれる。
『bummmmoooooooooooooooo!』
お、倒した!
流石に30人のスパルタフルボッコの前には、ミノたんも堕ちるしかない。
しかし残念ながら、ここでもレアは出なかった。
「最後の〆はデュラハンにいくぞ!」
俺はデュラハンは知らなかったので聞いてみると。
霧の森にいる馬車に乗ったBOSSで、森の適正レベルは85前後。
ちょっときつめだが、デュラハンはレアのドロップ率がいい事でも知られている。
主催者的には、オークションでもう1つ盛り上がりたい、と言った処か。
デュラハンは逃げながら魔法や召喚で戦うらしい。
俺は久しぶりに月白に乗って槍を構えた。
移動には基本、月白に乗っているんだけど、狩りで一緒するのは久しぶりだ。
クリティカル率は少し下がるが、突進しながらの抜刀術(槍)は、クリティカルさえ決まれば刀以上だ。
前衛は基本的に騎乗している。
BOSSが出るまでは、騎乗したまま森で狩りをする。
待ち時間を潰すのと、BOSS戦で減った経験値を補充する為だ。
でも死んで更にデスペナを受ける人もいる。
俺にとってもキツイ狩場だが、周りに高レベルも多いので、結構フォローしてもらえる。
「出たぞー!」
俺たちは一斉にデュラハンに向かって突っ込む。
デュラハンは逃げるが月白はグラニだ、速さには自身がある。
突撃+抜刀術で突きかかる。
ズッシャァァァア!
よし、クリティカル来た。
「いいぞ! 追撃しろ!」
でも流石に上のレベルのボスだ。
魔法の連打を受けて殺されちゃったYO。
すぐさま蘇生されて、月白に再度跨る。
が、近づくのは怖いな。
そうだ、もう馬上弓修得してるから弓で遠距離攻撃しよう、うん。
ビシビシと弓を撃ちながら気付いたが、MPが回復し始めている。
そうか、死んだからMP回復の停止がリセットされたんだ。
ビシ! ビシ! ビシ! ビシ! ビシ!
お、MPが満タンになった。
よし、2度目の抜刀術は弓バージョンだ!
ビシューーーーーン!
『gaaaaaaaagggguguuuaaaaaa!』
お、止め刺しちゃった。
流石に抜刀術2回のダメ…… 前のBOSSも入れると4回分と、止めのポイントは大きかった。
レベルが80になったよ。
さっき死んだばっかなのに。
そしてレアアイテムもゲット!
もっとも、これはオークション行きだが。
「今回はレアアイテム、妖精の剣が出ました。
よって、BOSS狩り会の参加者によるオークションを開催します。
オークションによって得られた金額は、全員に平等に配布されます!」
妖精の剣は片手剣で、ぶっちゃけ要らない。
せいぜい高く売れる事を祈るのみだ。
まあオークションもそれなりに盛り上がったが、30人で分けると、やはりそれなりの金額になった。
さて、夕飯までにはまだ時間があるな。
道場で活法スキルを取った後、俺は考えた。
MP回復POT(大)を使えば、俺の場合MPは最大まで回復する。
ソロでBOSS狩れるんじゃね?
村長は無理だろう。
毒きのこなら間違い無くいけるが、あまり面白くない。
…… 船長に挑戦してみるか。
死んでも80になったばっかだし。
やって来ました幽霊船。
「すいません、船長の湧き時間判りますか?」
俺はPT狩りしている人たちに聞いてみた。
「あ、後20分くらいかな」
「ありがとうございます」
とりあえず船長の湧きポイントに行って、狩り始めた。
「なあ! そこBOSS出るよ?」
親切な人が注意してくれた。
「あ、BOSS待ちです」
「? でもソロっしょ?
もしかしてタイマン?」
「うん、挑戦してみる」
「おー! スゲー!」
…… いつの間にかギャラリーが集まり始めた。
「がんばれよー、即死したら笑いモンだぞー」
何てことを言われているうちに…… 湧いた!
今回はMP回復を幾つか持ってきているとはいえ、何発で沈むか判らない。
とりあえずは普通に攻撃して、ヤバそうだったら抜刀術の連打かな。
…… 結構避けれる!
おおー、がんばれー!
ババババッ!
ま、魔法攻撃とは卑怯なり!
「がんばれー!」
お、ギャラリーが多いだけに辻ヒールがかかって来た。
「ありがとう!」
だが辻ヒールに頼っていてはタイマンの意味がない!
行くぜ抜刀術!
スッパァアーーーーン!
「ウオオォォォォ!」
「スゲーーー!」
ここでもギャラリーが沸いた。
結構いい気分だな…… フフリ。
更にMPを回復して……
スッパァアーーーーン!
更に! 更に!
スッパァアーーーーン!
その度に沸きまくるギャラリー。
でも最後の方はオヤクソクっぽく沸いてた。
繰り返すこと数回。
ついに船長が倒れた。
「おつー」
「おつー」
「おつー」
「タイマンおつー」
「ありですー。
辻ヒールもありでしたー。
あ、トライデントきたー!」
「おお、おめー」
「おめー」
「おめー」
「ありー」
トライデントは海神殿のBOSSを倒しても得られるそうだが、ドロップ率は船長共々非常に低い。
レベル80から使用できる三叉の槍で、ゲーム内でも最上位レベルの武器だ。
馬に騎乗した状態での相性がよく、騎乗中は通常攻撃が範囲攻撃になる。
これはラッキー。
でもソロか合戦でないと使わないんだよな。
次の日もケミストリは忙がしかった。
どうやら製造職とアルケミストの受け入れ準備に付き合っているらしい。
ケミストリは修復素材の件で関係してくるからな。
同じ様に暇してたポトフがいたので、今日はポトフとペア狩りだ。
アルトはレベル80になったので、今日はスキル取りに行くらしい。
やって来たのは通称オーガー街道と呼ばれる道。
道のあちこちにオーガーがうろついている。
「そう言えばアルトって魔術師だよな。
後衛2人でどうやってペア狩りしてるんだ?」
「あ、私が壁します。
アルトちゃんは火力特化なんです」
確かに魔術師よりは司教の方が硬いな。
「ポトフは80になったらスキルは何を取るの?」
「”教化”スキルを修得するつもりです」
「教化スキルってどんなの?」
「自分に対して敵がアクティブになり難くなるんです。
その辺は盗賊の隠身と似ていますね。
他にも敵のタゲを無効化したり、一定時間モンスターを味方に付けたり…… です」
「でもそれだと、壁が出来なくなるんじゃない?」
「いえ、こちらから攻撃すればタゲは取れますから」
なるほど。
「ですから、タゲは少しこちらに廻してもらっても大丈夫ですよ?
私はローブの下にチェインメイルも着てますし、騎士スキルの鉄壁も修得していますから」
「そうなんだ、ペア特化って感じ?」
「いえ、蘇生の出来る司教は、自分が死なないことが一番大事ですから。
高レベルになると、基本的に防御力を高めることが第一になりますね」
ふーん、そう言うものか。
「よし、今日中にポトフをレベル80にするぞ!」
「ありがとうございます」
「ティルなノーグは順調に、当初予定していた40名を入会させました。
更に入会希望も増えている様ですので、順調と言っていいと思います」
と、チルヒメが報告してくれた。
「パンドラでも研究室の拡張とアルケミスト5名の追加、及び定員枠の拡張が済みました。
アルケミストの内3名は、低いレベルで熟練度の引き上げを行う製造職タイプです。
また他の2名もレベルをカンストしていますので、今後は熟練度上げに専念するそうです。
実質は私の熟練度が一番低い状態ですが。
先任と言う事で、私がアルケミストチームのリーダー的役割をさせてもらう事になりました」
これはケミストリ。
「工房と倉庫の拡張、それから製造職の受け入れはどうなってる?」
俺の質問にゴン爺が答える。
「工房は拡張できるだけの経験値が溜まっておるので、拡張をよろしく頼む。
それから、職人の受け入れは人数分の枠を確保してから一斉に、じゃの。
倉庫の拡張はその後でええじゃろ」
「じゃあ、今から工房を拡張するけど、問題ないよな」
一応、皆に確認してから拡張の操作をする。
ポチっとな。
「拡張した。
後はまた経験値が溜まるのを待つだけだが……
そろそろ俺たちも経験値をギルドに入れないか?」
俺の意見にキールが答える。
「正直、僕たちが入れても大した足しにはなりませんが。
一応1%ずつくらい入れておきますか」
反対意見も出ないようなので、経験値の1%をギルド経験値に入れる事になった。
「ところでヨシヒロ殿、自分は今度、肝臓殿と共にレクイエムの合戦に誘われたでありますが。
出撃してもよろしいでありますか?」
レディが言って来た。
「うーん、レクイエムか…… 相手は同盟ギルドじゃないよね?」
「違うであります」
「大丈夫だよね? チルヒメ」
「そうですね、一応バーリンさんには話しを通しておきます。
それから出るのであれば、花鳥風月を初めとする他のギルドにも、バランス良く出る必要があるでしょうね」
「その辺を考慮して、出る所を決めてくれれば問題はないよ」
「了解したであります」
会議が終わって庭園に行くと、早速エリーゼのBGMが聞こえてきた。
なんか本当に音楽が好きなんだな。
「やあ、ヨシヒロ。
今度、職人組が入ればここも40人近くなる。
中堅ギルドって感じになってくるよね」
「ん、あるるかん。
まあ、人数的にはな」
「なんだ、自覚してないのかい?
格は一流所と肩を並べてるよ、このギルドは」
「…… まったく実感ないよ」
「それも君らしいよ」
「そうだ、あるるかん。
今度、攻速装備とか言うの作って欲しいんだけど、出来るか?」
「出来る事は出来るけど、サムライの場合は飛鳥の布っていうアイテムがいるね。
たぶんギルド店か露店を廻れば買えると思うけど、高いよ?」
「レアアイテムなのか?」
「と言うより収集イベントアイテムだね。
色々な鳥のモンスターがドロップする羽根アイテムを、数百枚ずつ集めてNPCに交換してもらうんだ」
「俺でも集められるかな?」
「レベル的には可能だけど…… まあ、頑張るしかないね。」
こういう時にギルドはありがたいね。
ファイアーバードの羽根はチルヒメに手伝ってもらって、3日で集まった。
奴等にはブリザードが面白い様に効く。
BOSSのフェニックスには偶に殺されたけど。
ロック鳥はミッシェルに手伝ってもらった。
2人でシャワーアローを撃ちまくった。
ラウンドバードは月白とトライデントの出番だ。
範囲攻撃で、TUEEEEE! した。
最後にデス娘とドッジに肝臓を連れて、嘆きの塔でハーピー狩り。
知っていれば溜めてたのに。
漸く手に入れたよ、飛鳥の布。
それまでの裃と見た目は変わらないが、確かに攻撃速度に+修正がある。
それに回避力にも+修正がある。
防御力も若干上がっている。
「これ、すごいな! いいのか?只で」
「布は用意してもらったし、後の材料も只で手に入るからね。
気にする必要はないよ」
「ありがとう!」
こうなると弓もレアが欲しいよね。
聞いてみると、エルヴンボウってのを、デュラハンが落とすらしい。
…… あれはソロじゃ無理。
レア探しは一旦諦めてケミストリとペア狩り。
いつの間にか彼女もホムンクルスを作っていたが、直接は狩りの役に立たないらしい。
何でも錬金の支援に特化させたとか。
その分、彼女が用意した薬の効果は上がっているそうだ。
2人でラビリンスに入ってみた。
今回はケミストリが回帰の札という物を作っているので、死に戻りしなくてもギルドアジトに帰れる。
空いている狩場を探して奥に進んでいくと、喧嘩しているPTがあった。
…… 見た顔が多いな。
いや、同じレベル帯でIN率も一緒だから、不思議じゃないか。
ポップルにビーン、ロンリーまで居る。
それに知らない女の子が1人の4人PT。
…… 何となく原因が判るのは気のせいか?
どうやら言い合っているのはビーンとロンリーの様だ。
「おー、ヨシヒロ。
久しぶりー」
ポップルは我関せずと言った感じで、こっちに声をかけてきた。
「おー、ポップル。
喧嘩か?」
「それがさー、今回は聖騎士とハンターに魔術師と司教が居て、バランスがいいと思ったんだけどよ」
「司教がハンターの娘を口説いて、魔術師が切れたって感じか?」
「すげぇな、何で判ったんだ?」
「いや、ビーンともロンリーとも組んだ事があってな」
聞こえてくる言い合いで、ビーンが前と同じような事をやったのは直ぐに判る。
効率厨のロンリーが黙っているはずもない。
「ハンターの娘が、中の人は男だって言えば済むような気もするが」
「済まなかったらどうするんだ?」
「…… アッー」
「少なくとも、体は女だから」
「正真正銘、女です!」
ハンターの娘に突っ込まれた。
「もういい!
俺は1人で戻るからな!
お前らは死に戻りでもしてろ!
回復も無しで狩れないだろうがな!」
あ、ビーンが切れたみたいだ。
PTから抜けて…… 消えた?
「どうやら時空神の司教だったみたいね」
ケミストリが言うが、なるほど時空神と言うだけあって、テレポート系の魔法が使えるのだろう。
「まったく…… 回復が聖騎士だけでは狩りはきついな。
帰還の扉を開くが、いいよな。」
ロンリーが言った。
「いや、どうせならこのまま狩らないか?
ヨシヒロもどうだ、合流しないか?」
「んー、俺はいいけど。
どうする? ケミストリ」
「私も構わないわよ」
「しかし司教がいないんだぞ?
全滅するのがオチだ。
悪いが俺は抜けさせてもらう。」
「私も今日は嫌になっちゃったから帰るわ。
ロンリーさん扉よろしく」
ロンリーとハンターの娘は結局帰るようだ。
ポップルが俺たちのPTに移って、2人は消えた。
「じゃあ改めて、ここで狩るか」
ロンリーもビーンも相変わらすの様だな。