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No.11180の一覧
[0] 城塞都市物語[あ](2009/10/11 14:02)
[1] エックハルト公爵家伝[あ](2009/09/24 22:14)
[2] 子爵令嬢手記[あ](2009/09/24 22:14)
[3] 軍師公爵帰郷追記[あ](2010/07/14 20:32)
[4] 公妃誕生秘話[あ](2009/09/30 21:50)
[5] 隻眼騎士列伝下巻[あ](2009/09/24 22:15)
[6] 名人対局棋譜百選[あ](2009/09/30 21:51)
[7] 弓翁隠遁記[あ](2009/09/26 12:36)
[8] 従者奉公録[あ](2009/10/03 15:50)
[9] 小村地獄絵図[あ](2009/11/01 20:33)
[10] 迷走研究秘話[あ](2009/11/01 20:28)
[11] 王公戦役[あ](2009/11/01 22:05)
[12] 城塞会議録[あ](2012/01/09 20:51)
[13] ナルダ戦記[あ](2012/05/01 00:46)
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[11180] 従者奉公録
Name: あ◆2cc3b8c7 ID:80292f2b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/10/03 15:50
【新米貴族は大忙し】


いつの世も成り上がり者に対する目は厳しい。
同じ地位に上がられた人々の多くは下賤の輩と侮蔑の視線を送り、
何か不手際をしようものなら、それ見たことかと嘲弄の声を大にする。

また、下の者達はいままで同じだった者が自分の上に立つことが許せず、
少しでも偉そうな態度を見せれば、最初から上に立っていた者以上に反発し、憎むようになる。


立身出世の道は決して平坦ではなく、その先に幾多の困難が待ち受ける歩みにくい道なのだ。



◆◆



『なんで僕がよりによってエリカさんの下で働かなくちゃならないんですか?
 それが正騎士叙任の条件だと言うなら、僕は見習い騎士のままで構いません』




ゼスクの後を継いでルーデンハイム准子爵に叙せられたエリカを無役の平騎士にする訳にも行かず、
エックハルト騎士団内で副武官長付きの騎士長の役を与えたまでは良かったのだが、
女騎士長に仕えたいなどと言う奇特な騎士は全く居ないため、騎士長のエリカに仕える
従者の選定は大いに難航していた。


本来ならば、こういった事態を打開するために別邸における最高権力者のレオンが主導して
エリカ付きの騎士を強引に選定すればことは足りたのだろうが、
『アイスダガー』の一件から始まって、ゼスクと組んで事あるごとに自分に苦杯を
舐めさせてきたエリカの手助けをするほどレオンは聖人君子ではなかったので、
騎士団内で起こった微妙な人事問題について積極的に関ろうとせず、新武官長に一任していた。



こうして、絶対的な前任者の後を継いだだけでも大変な新任別邸武官長ロベール・ヨーク子爵の手に全てが委ねられる。
だが、いきなり武官長としての強権を発動して強引にことを進めれば、プライドだけは高い騎士達の反感を買い
今後の組織運営に支障をきたすことは目に見えていたので、
アーキスなどの一番格下の騎士達に見返りとして正騎士への昇任をチラつかせたりしながら、
就任早々に起きた厄介な問題を何とかし穏便に済まそうとしていたのだが・・・




『御用件がそれだけでしたら、失礼させて頂きます!』





誰でも思いつくような目の前にぶら下げたニンジン作戦がそうそう上手く行くわけも無く、
プンスカプン!と言った感じで部屋を出て行くアーキスの後姿をヨーク子爵は見送りながら、
続く8人目の候補者を呼ぶか、今日はもう諦めて問題を先送りにするか真剣に頭を悩ませることとなっていた。





◆◆



『あっ、エリカさん・・・』



勢い良く武官長の執務室から飛び出したアーキスは先程までの話題の中心だった
騎士の略装に身を包んだエリカと鉢合わせてしまい気まずい思いをすることになった。

そんな『出来過ぎた気まずい偶然』に動揺したアーキスは目の前の少女にどう声を掛けるべきか
容易に判断を下す事が叶わず、ただ押し黙って二人の間に何ともいえぬ沈黙が漂いかけたが、
俯きかけた顔を再び上に向けてアーキスをほんの少しだけ見上げる少女によって、その沈黙は破られる。




「その、武官長にちょっと話が有って・・、聞き耳立てる心算はなかったの!
 でも、私のこと話してるのが聞えちゃって、あの、ほんとごめんなさい・・」




話している途中からエリカは既に涙目になって潤んでいた大きな瞳からポロポロと涙を零す。
アーキスは涙を溢れさせ続けるエリカを前にして再び動揺しておろおろとするだけで、
彼女を泣き止ます方法をどうやっても思い浮かべることが出来なかった。


そんな、かわいそうなアーキスにエリカは容赦ない追い討ちを仕掛ける。
一度攻勢に転じる好機を得たら徹底的に仕掛けろという師の教えを彼女は良く理解していた。




「うぅ、良いの・・・、私みたいなドジでノロマな子に仕えるなんてみんな嫌だよね
 気にしないで、独りぼっちでも負けないから!でも、女の子だから涙が零れちゃう」



『私なんて不幸な女の子なのかしら』発言で善良な少年の心を容赦なく抉るという戦法に打って出たのだ。
この戦法は非常にアーキスに対して有効であった。
騎士たる者はか弱き女性の味方で無ければと考える真直ぐな心根を持ったこの少年は
全てエリカに仕組まれていたと気付く事も無く、聞かせる心算の無い自分の言葉によって
目の前の少女を傷つけてしまったと強い罪悪感を持ってしまう。


アーキスはする必要も無い贖罪を行うためにエリカの従者となる事を誓ってしまう。
その結果、自分がどのような酷い目に遭うか深く考えもせずに・・・




『分かりました。僕がエリカさんの従者として仕えます。勿論、ずっとじゃないですよ』

「うん、それでいいよ。アー君ありがとう!」




自らの望む最良に近い回答を得た少女はさっきまで泣いていたのが『嘘』のような笑顔で
アーキスに飛びついて喜んだ。
一方、急に元気になった少女に抱きつかれた哀れな少年はエリカの勢いにタジタジになりながら、
自らの決断を早まった物だったのではないかと後悔の念を早くも浮かび上がらせていた。





◆◆



「誰も成り手がいないってのは、ある意味、気に入った相手を自分で探せるってこと
 そんなに悪いことじゃないわ。人事権も無いただの騎士長が選好み出来るんだしね」
 
『ふ~ん、そんな考え方も確かに出来なくないわね。それで、エリカは人が良いのが
 取柄のアー君が従者候補として武官長の部屋に呼ばれるまで張り込んでいたって訳ね?」



ミリアの問いに『そういうこと』と得意満面の笑顔で答えたエリカは、
自分がどういう立場にあるか良く理解していた。『平民上がりの上に女』という事実が
ゼスクのような後ろ盾が無い状況ではどれだけのハンデになるかということを。

もっとも、そういうことを見越して次期公爵のレオンに猫を被って媚を売ったりして、
自身の地位の強化を図るのが得策だと分かっていながら、
虫が好かないという感情的な理由でちょこちょことレオンに逆らっているあたり、
エリカはまだまだケツの青い未熟な部分も多分に残していたと言える。

現実の厳しさを理解したうえで自己を客観視した結果を元に最良の選択を取れるような
『賢明な大人』とはまだ程遠い小癪な小娘であった。



『これからは准公爵夫妻付きの侍女から変わって、騎士長として武官勤めになるのよね?』

「な~にぃ、私と一緒に仕事出来なくなっちゃうのをミリアは
 悲しんだり、寂しがったりしてくれたりする訳?嬉しいなぁ~」


『うん。凄く寂しいし、悲しいかな。でも、休みの日とかは一緒に遊びに行けるよね?』




そんな小癪な小娘の友人がエリカの職種変更を惜しむ発言を続けてしたので、
ニヤケ顔をしながらミリアをからかうエリカだったが、予想外にかわいい返答をされて
ちょっとグっときちゃったのか『当たり前じゃない』と言いながらミリアにぎゅっと抱きつく。


城塞都市グレストンで出来た初めての友ミリアはエリカが平民だろうと、貴族だろうと関係無しに
親愛の情を向けてくれる最高の親友であった。

ただ、感動して抱きつく鍛錬後のエリカに『なんか、汗臭い』とその場の雰囲気を
ぶち壊す発言を何の気なしにしてしまう欠点だけは相変わらずで、
『ワタシミリアダイスキ』と棒読みで言うエリカに力一杯抱きしめられながら、
潰れた蛙が出すような声を上げさせられていた。





【女騎士と従者】


本来なら三人ほどの従者が付く騎士長という役職であったが、成り手が居ないのと
エリカが『若輩で経験に乏しい自分には従者一人でも過ぎたる処遇』と固辞して
殊勝な態度を見せたため、エリカに従う従者は正騎士アーキスただ一人となった。


どうやら、別邸で誰よりもかわいい顔をした少年の前には、受難の日々が手薬煉を引いて待っているようである。



◆◆



『エリカ様、今日の予定ですが・・』


アーキスが延々と今日の騎士団の予定をエリカに説明をしているのだが、
彼女に聞く気はさらさら無く、全て右から左へと聞き流していた。
どのみち聞いた所で、女騎士長にたかだか正騎士の小所帯に大した仕事が回ってくることは無いのだ。
そのため、不真面目と言えば不真面目であったが、エリカの態度を従者は咎める事なく、淡々と予定表を読み上げてく。



「それで、今日の私達はなにすればいいの?な~んにも無いんだったら
 お昼寝して暇潰すか、ミリアやシェスタさんの所に行こうと思うんだけど?」

『いえ、一応仕事はちゃんとあります。別邸の中庭に生えている
 雑草が伸びているので、それを引き抜いて処理しろという命令です』


「えぇ~、この前は庭の掃き掃除で、その前は門の前のドブさらいでしょ
 いくら鼻抓み者の女騎士長だからって、この仕打ちはないんじゃない?」

『では、こんな仕事はやらずに命令を無視なさいますか?』


「ううん、ちゃんとやるわよ。それも徹底的にね!雑務ばっかりだけど、一応は
 必要な仕事だし、それに、元々似たような賃仕事もちょっと前までやってたから
 平気よ!勿論、アー君に無理に手伝え何て言わないし、私一人でもやるからいいよ?』


『いえ、手伝わせて頂きます。主人にだけ嫌な仕事をさせる訳にはいきません!』




扱いに困る女騎士長のエリカに与えられる騎士団からの役割は簡単な雑事処理係であった。
来る日も来る日も、ただひたすらに掃除やら武具等の整理などをし続ける毎日。
現武官長が、騎士団を自発的に辞めるのをエリカに期待しているのは明らかであった。

だが、そんな上司の意図にムカつきはしても、もともと田舎で賃仕事に励んで
小銭を稼いでいたエリカは与えられた単純作業に参ること無く、それを楽々とこなしていたが、
一応は貴族階級の端くれで、かっこいい騎士に憧れているアーキスには辛い日々の連続であった。
そんな従者の思いに何となく気付いたエリカは『気にしないで、一人で出来るもん!』と
度々、強がっている振りをして、『雑務でなくかわいそうな少女を助ける行為』であると
アーキスに思わせる事によって彼の心が折れないように気を使っていた。


エリカなりに自分に同情して従者として自分に仕えてくれる心優しい少年に感謝しており、
自分のせいで騎士としてのプライドを傷つけられていることを申し訳無くも思っていたようである。






『はぁ、だいたい抜き終わりましたね。後の雑草を袋に詰めて捨てるまでは
 僕の方でやりますから、エリカ様は先に武官長への報告をお願いできますか?』


「うん、分かった。じゃ、お言葉に甘えて武官長の所に報告に行って来るね
 それと、こんな事ばっかりでごめんね。あと、いつも手伝ってくれてありがとう」




日が傾き始めた頃、ようやく公爵家別邸の中庭に生える雑草の処理をあらかた終えた二人は
西日に照らされた影響か、頬を紅く染めながら後始末と報告といった
それぞれの仕事を果たすために一先ず分かれる。



そんな疲れの中に気恥ずかしさを隠した自分達の姿を、
少し離れた場所から眺めている不埒者が居るのには気付くことはなく・・・








別邸の武官達は、エリカがただの侍女として武具やら何やらを低価格で調達していた頃は喜び大いに感謝もしていた。
だが、女騎士として故人となったゼスクの養女として准子爵というそれなりの爵位を得て
エリカが自分たちのシマに上がり込んで来ると、多くの騎士団員達は手の平を返したような排他的な態度を彼女に取り、
その彼等の浅ましい姿は、地位の高さと人間の出来が必ずしも一致しないということを
エリカに身を持って理解させる大きな助けとなっていた。


また、この経験は地位や家柄などと言った背景よりも能力や経験と言った物を重視するという
彼女の傾向をより強めさせることになり、彼女の成長を促す一助ともなっていく。



野に咲く花は北風に負けぬ強さを少しずつ身に付けていく・・・






【温室の薔薇と野薔薇】



レオン・エックハルト准公爵とエリカ・ルーデンハイム准子爵・・・



両者共に城塞都市グレストンにその名を馳せた存在として後世に知られることになるのだが、
現在において後者は前者と比べるべくもない知名度しか持っていなかった。



そんな有名なレオンと無名なエリカの現在の関係は『仲が悪い』の一言で表す事が出来た。


その直接的な原因はエリカが『クレト』という盤上遊戯で名手レオンを陥れ、
エックハルトの至宝として伝わる『アイスダガー』を巻き上げたことにあったが、

理論派としても知られる大軍師マシューの薫陶を厚く受けたレオンと違って、
エリカは実戦派の権化とも言える養父ゼスク・ルーデンハイムの薫陶を厚く受けており、
その性質が正反対であることや、エリカの敬愛するシェスタをレオンが突然横から現れて
嫁にして掻っ攫っていたことに対する不満などといった大小様々な要因が折り重なって
エリカのレオンに対する敵意とレオンのエリカに対する隔意を生みだしていた。




◆◆


『やぁ、エリカ君。騎士長になっても色々と苦労しているようだね?』

「いえ全く苦労などしておりません。ただ、どこかの意地悪な盤上遊戯狂いの男が全く
 配慮をしなかったため、従者が中々決まらずに要らぬ苦労をした者もいるそうですが」


『まぁ、どこぞの性悪に騙されて酷い目に遭う騎士の事を思うとその男も良心が咎めて
 要らぬ配慮をする気にはなれなかったのかも知れないし、一方的にその男を悪し様に
 言うのは性根の真直ぐなエリカ君らしくない、少し軽率な物言いだと私は思うのだが』



「そうでしょうか?」 『そうだよ』



武官長に任務完了の報告をした帰りにレオンと廊下で偶々会ったエリカは、
どぎつい嫌味の応酬を終えるとレオンの爽やかな笑みに負けない朗らかな笑みを浮かべていた。

そんな内心とは真逆の笑みを自分に向けてくれる少女の姿に溜息を吐きながら、
レオンはもう何度目になるか分からぬ提案を彼女に持ちかける。





『さて、下らぬお喋りに時を費やすのは人生を浪費することと同意だ
 本題に入らせて貰おうか、今日こそ『コレ』の勝負を受けてくれるね?』



そう言って手に持った『クレト』の駒をエリカの目の前にチラつかせる。
実のところ、レオンはエリカに『クレト』の勝負で一敗地に塗れて以後、
再三再四と彼女に再戦を挑んでいたのだが、その度にエリカに断られてイライラを募らせていたのだ。

そして、このイライラが未だ小娘に過ぎぬエリカ如きに名声を欲しい侭にする若き天才が
ただの小娘に過ぎぬエリカに隔意を持つ一番の原因であった。




「レオン様、申し訳ありませんが、お断りさせて頂きます」

『執拗に再戦を避けるのは敗北を恐れて逃げるという事かな?
 やはり、正々堂々と勝負して私に勝つ自信が君には無いと見える』



何度目か分からぬエリカの断りの言葉にレオンはついつい大人気なく
実力では勝てないと分かっているから逃げるのだと、目の前の少女に安い挑発を仕掛ける。
天賦の才を優れた先人達に鍛えられ、同年齢以下の人間に遅れを取ったことが無いレオンは
年少の少女を相手に負けたままで居られないほどの『子供ぽっさ』は残していたようである。


彼の愛する妻のシェスタであれば、そんな少年じみたレオンの負けず嫌いな所も
かわいいところですと笑って惚気たりしそうであるが、彼に冷やかな視線を向ける少女に
同じような理解を求める事は限りなく難しそうであった。
エリカは気に入らない奴を満足させるために下らない遊びに付き合うほど『寛容な大人』ではないのだから・・・



「どうやら准公爵者様は勘違いをなさっておいでのようです。そもそも『死人』と
 『クレト』が出来ない故、私はレオン様からの申出をお断りしているだけです
 その駒を用いた遊戯は戦場を模したもの、詰まらぬ意地でさっさと投了もせず
 討ち取られる寸前まで打ち続けた者に、捲土重来の好機が来るとお思いですか?」




慇懃無礼なエリカに皮肉タップリの笑みと言葉で嬲られたレオンは
普段から『クレト』こそが、最も戦場を模す事に成功した至上の遊戯と広言していたため、
エリカの言を『たかだか一敗地に塗れただけではないか』と一笑に付す事がどうしても出来なかった。



長い廊下を鼻歌交じりに歩き去る少女とその場にただ立ち尽くす男、
二人の進む道は重ならぬまま、その距離を増して行く・・・




◆◆



「どうやら、待たせちゃったみたいで悪いわね」



エリカの謝罪を受けた従者は首を振ってその必要は無いと答えた。
もっとも、それ以外の点では色々と言いたい事があったので、
エリカが二の句を告げようとするのを遮って、無鉄砲な主に諫言を行う。


『エリカ様、レオン様に何であんな態度を取られるのですか?只でさえ別邸内での
 立場が良いと言えないのに、自ら立場をより危うくするような真似は控えた方が・・・』

「やだっ!」


『やだって、子供じゃないんですから』

「だって、キライなんだもん!」



口を尖らす子供みたいな主の態度にアーキスは頭を思わず抱えていたが、
そんな従者の苦悩を見ても、エリカは諫言に耳を傾ける気には全くなく、
諫言から続く説教が始まる前に話題を強引に転じ、その話を終わらした。


当然、その流れに釈然としない気持ちになったアーキスだったが、
少し擦れて大人びた所のある彼女にしては珍しく自然な子供っぽい姿だったので、
ついつい、ちょっとかわいいかもと思ってしまい主に対する追撃の手を迂闊にも緩めてしまう。



レオンとエリカの関係と違って、此方の二人の主従関係は中々良好な物になりそうであった。








エリカの従者アーキスは非常に義侠心厚い人物として今に伝えられている。
血統重視の厳しい身分制の中、男社会である騎士団に入って不遇を受けていたエリカを助けんと
自ら従者として名乗り出た点からもそれが良くお分かり頂けるだろう。




彼はエリカと並ぶ心根の優しさを持った騎士道精神に溢れた好人物であり、
エリカに対する不当な扱いに強い憤りを感じていたことは間違いない事実である。

その証拠に、エリカの従者選定問題について激しく武官長とぶつかり、理不尽なエリカに
対する仕打ちに怒りを爆発させて、別邸武官長の執務室から飛び出した記録も残されている。


だが、どのような素晴らしい美談にもケチを付けたり、それを汚そうとする愚者は後を絶たないもので、
エリカがアーキスを嵌めて強引に自分の従者とした主張する者達もいるが、
これは事実無根で荒唐無稽な与太話であろう。


正しい歴史知識に基いて公平な目で当時の騎士団という物を見れば、
その意見が如何に間違っているかは直ぐに分かる。


この当時のエリカの騎士団に置ける地位は騎士長である!
少なくとも別邸副武官長の地位にでも就いていなければ、人事権を振るうことなど到底不可能なのだ。


間違いなく、アーキスは美しくも可憐な不幸な聖女を救うために自ら進んで
彼女の従者となることを望んだのである。

彼が従者になって以後、騎士のプライドがズタズタになるような雑務を
エリカと共に耐えて全てやり遂げたという記録からも、彼の高潔な決意が本物であった事が窺える。



アーキスが取るべき選択肢を巧妙に奪い取られてババを引かざるを得なかったという話は



嘘!そう、真っ赤な嘘でインチキ話なのだ!!




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