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No.11180の一覧
[0] 城塞都市物語[あ](2009/10/11 14:02)
[1] エックハルト公爵家伝[あ](2009/09/24 22:14)
[2] 子爵令嬢手記[あ](2009/09/24 22:14)
[3] 軍師公爵帰郷追記[あ](2010/07/14 20:32)
[4] 公妃誕生秘話[あ](2009/09/30 21:50)
[5] 隻眼騎士列伝下巻[あ](2009/09/24 22:15)
[6] 名人対局棋譜百選[あ](2009/09/30 21:51)
[7] 弓翁隠遁記[あ](2009/09/26 12:36)
[8] 従者奉公録[あ](2009/10/03 15:50)
[9] 小村地獄絵図[あ](2009/11/01 20:33)
[10] 迷走研究秘話[あ](2009/11/01 20:28)
[11] 王公戦役[あ](2009/11/01 22:05)
[12] 城塞会議録[あ](2012/01/09 20:51)
[13] ナルダ戦記[あ](2012/05/01 00:46)
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[11180] 城塞会議録
Name: あ◆2cc3b8c7 ID:c4b08d6b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/01/09 20:51
【踊らぬ会議】

ロネール侵攻の報を受けた副総督以下、グレストンで要職に就く文官と武官達は悉く総督府に参内し、
この危急の事態にどう対応するか協議せんとしていた。
もっとも、周囲を高く堅固な城壁で囲まれた難攻不落を誇るグレストンが陥落するなど
到底ありえないと言うのが彼等の共通認識であったため、そこで行われる協議は過度な緊張感とは無縁であった。
参内した高官達の殆どは勝利がほぼ約束された防衛戦で確実に得られる軍功や利権を
如何にして自分、若しくは自分の陣営に呼び込むかを考えていた。
その結果、繰り広げられる議論は侵攻に対する防衛策についてではなく、
誰が戦の総指揮官となるか、誰が兵站の責任者となるかといった点に集中し、
約束された武功と利権を浅ましく狙う人々の論戦は白熱することなる。


「総督閣下が居られぬならば、副総督のエックハルト公爵が防衛戦の総指揮官として
 卑劣なロネールの鼠を討ち果たす任に当られるのが、道理というものではなかろうか?」

「いや、そもそも此度の件は総督閣下や副総督閣下が出られるほどの事態ではあるまい
 ロネールの一部隊が侵攻してきた程度で、お二方の名を出すのも憚られるというもの
 ここは僭越ではあるが臣に、対ロネールに関する差配を一任しては頂けないだろうか?」

「ふんっ、戯事を申すな!先の外征で縮み上がって逃げる事しか出来なかった
 青なり瓢箪に誰が任すか!貴公が指揮官になろうものなら、寄せ手の大将が猿でも
 一日も持たずにグレストンは不落の名誉を返上せねばならなくなるのが必定という物」


大きく分けて総督派、副総督派に分かれるグレストン上層部による議論は大方の予想通り盛大に紛糾する。
頭に血が上った者同士が口汚く罵り合いながら。とても貴人とは思えない醜態を晒していた。
そして、そんな状況を苦々しく思いながらも議論の推移を見守る総督派の筆頭と目されるローウェン侯爵は、
エックハルト公爵とその息子の准公爵レオンの発言を黙して待ち続けていた。
小物が幾ら吼えた所で何の決定もされないのは既に分かりきった事実。
それにバカ正直に対応して、肝心な論戦で使うべき気力を失うような愚をおかす気は彼には無かったのだ。


「中々、活発な議論に勇ましい意見も見られ、実に結構であると私も思う
 だが、敵の侵攻に対する方針は定むるのに悪戯に時を費やすのも忌避せねばならぬ」
 
一向に口を挟もうとしないローウェン、最大の政敵を一睨みしてから口を開いたのは、
副総督派の領袖たるエックハルト公爵その人であった。
彼が重々しくゆっくりと言い聞かすような言葉を紡ぎ始めると、喧々としていた場は瞬く間に静まっていく。
そして、これから放たれる公爵の言が議論の結論になるような予感を派閥の違いに左右される事なく出席者達に感じさせていた。


「皆が総督閣下や私が出るほど事を荒立てる必要はないという意見には
 私も同意する点が多々ある。だが、些事と軽んじて大禍を招くようでは
 本末転倒であろう。故にそれなりの地位もあり、経験を積むべき人物に
 ロネールの侵攻に対する防衛戦の指揮を執って貰いたいと私は考えておる」

そう言って周りの者を見渡す公爵に取り巻きの一派が口々に賛同していく、
そして、取り巻きの一人が経験を積ますべき若き英雄はレオン殿以外に居らぬと口火を切ると、
この言に続けと副総督派の人々は大いに盛り上がりを見せる。
彼等はその勢いに乗って自分達の未来の旗頭に有利な形で衆議を決せんとした。
これに対する総督派の人々も大軍師マシューの直弟子にして天才の誉れ高いレオンが推されては、
異を唱える理由を探すのも容易ではなく、歯噛みしながら納得せざるを得ないと観念したのか、
巨大なエックハルト家に睨まれるのを怖れたのか分からぬが、
この提案に異論を唱える『総督派』の貴族は一人も居なかった。
そんな自分の陣営に有利な状況と流れが作られ大いに満足したエックハルト公爵は
その表情に勝ち誇った笑みを早くも浮かび上がらせていた。
そして、沈黙を続ける負け犬のローウェン侯爵に何か意見は無いかと声を掛けようとしたのだが、


「経験を積ませるという名目なら、フィリオ・グレストン公爵こそ適任であろう
 次期総督のグレストン公が陣頭に立たれれば、兵達の指揮も高まると言うもの」
 
彼の叔父にして五星将軍筆頭の『副総督派』の重鎮でもある筈のオーフェル・エックハルト侯爵が
孫娘の婚約者でもある総督の一人息子を推し始めたのだから、場の流れは変わる。
副総督派のNO2が公然と総督派の次期旗頭を持ち上げ始めるものだから、
つい先程まで『レオン!レっちゃん!ホォッア、ホァアァアアッ!!』と腰を浮かすほど興奮していた者達も、
気を削がれて振り上げた拳を下ろして力なく椅子に腰掛けるしかなかった。
このある意味造反ともいえる予想外の流れを前に、力無き者は発言することは叶わない。
会議は沈黙に支配されることになり、一時的な膠着状態に陥る。

この重苦しい膠着状態の中、会議の参加者達はこれを打破した者が
衆議を決することが許されるのだろうと頭ではなく、感覚的なもので理解し始めていた。


「フィリオ殿にレオン殿、両者共に推され期待される得がたき人材であります
 ここは片方に全てを任すのではなく、未来の総督閣下と副総督閣下の両名に
 ロネールの狂犬退治を任せては如何か?無論、万全を期すために経験豊富な
 副総督閣下に五星将軍の方々による補佐が当然、必要であるとは思いますが」

「心配は無用じゃローウェン!俺を含めた五星将軍揃ってフィリオ様の補佐のために
 骨を惜しまぬ事を約束しよう。無論、レオンの面倒も一門としてしっかり見させて貰う」

「戦歴長く経験豊富な両侯爵が二人の前途ある若者を補佐して頂けるならば
 何も心配はあるまい。総督より全権を与えられた副総督として、ここに命じる
 公爵と准公爵の両名は協力して軍を率い、ロネールの攻勢を見事撥ね返して見せよ!」


『はぁ、頑張ります』 『非才の身ではありますが、必ずや勝利を掴んで見せましょう』

最も口数少なく、一番効率的に論議を操ったのはローウェン侯爵。
それに乗ったのか、元々示し合わせていたのか容易には分からぬが、
その存在感をさらに高めることに成功した五星将軍筆頭オーフェル。
年長の叔父と憎き政敵にまんまとしてやられた形の副総督は論議の締めで、
何とか存在感を示して威厳を保つのがやっとであった。

この三者の含みが十分過ぎるほど篭った発言を会議に参加した者達は居心地悪そうに聞き終えた後、
落とし所として大将、副将に選ばれた若き未来の権力者の歓心を少しでも買おうと
薄っぺらな祝辞を次々と代わる代わる掛けて行く。
それに対し、大将に推されたフィリオはどこか頼りない感じでたどたどしく応じ、
レオンの方は対照的に如才なく応じて見せ、早くも持った才覚の違いを周囲の人々に印象付けていた。


こうして、様々な思惑の入り混じった勝利を既定のものと考えて行われた会議は
妥協と微妙なバランスを元にして生まれた結論を出して終わりを迎えた。
敵が強大で苦戦が必死となった際にどうするのか?そういった事態の想定を全くすることなく・・・




【権力者の卵達】

フィリオ・グレストンとレオン・エックハルト、城塞都市グレストンの最高権力者と言ってもよい
高位高官に就く人物を父に持つと言う共通の境遇にある二人は、
会議が終わると纏わり着く取巻きから逃げるように揃って席を立ち総督府を後にしていた。
総督派と副総督派といった両派は殊更に二人の対立を煽ったりもしていたのだが、
当の二人は無駄に争う気など無く、同年という事もあって、お互い良い友人付き合いを続けていた。

フィリオはアウゲンの無気力さを良くも悪くも受け継いでおり、優秀な友人を羨む事はあっても、恐れ憎むことは無かった。
また、レオンも年少の頃から王佐の才、マシューの姿に憧れを強く抱いていたので、
一見して凡庸そうな友人を凌いで己が上に立とうという野心を持つことは無かった。
二人はどちらかを蹴落とし、一方に対して優位に立てという周囲の願望を裏切続けていた。


「やれやれ、あのまま未来のお爺様が余計な事をしなければ、誰に気兼ねする事も無く
 ずっと寝ていられたのだが、中々、世の中というモノは上手く行かない様に出来ている」

「まったく、君は幼少の頃から変わらないね。誰よりも美味しい果実が
 目の前に生っているのにもぎ取ろうともしない。その無欲さは賞賛に値するが、
 時と場合によっては、それが欠点にもなるということをよく覚えておいて欲しい」

レオンは友人の清々しいまでの無欲さに心地よさを感じながらも、それが持つ危うさを忠告せずにはいられなかった。
人は何かを強く求めるとき信じられない力を発揮することを
自分に何度か苦杯を舐めさせた少女のやり様から学び取っていたのだ。
そして、その力によって気の良い友人がいつか窮地に立たされるのではないかと、
ふと根拠の無い不安が彼の明敏な頭脳の中をよぎったが故の忠告だったが・・


「レオンの昔から考えすぎる癖は相変わらずだな。だけど、心配は無用だよ
 私は無欲なんかじゃない。無気力な怠け者だからね。楽が出来るなら
 とことん楽をしたいって薄汚い欲望で心の中はいまもどろどろしているよ
 果実を目の前に何もしないのは、君が取ってくれるのが分かっているからさ」

「ふぅ、どうやら無駄な忠告だったようだね。しかし、ロネールを相手にするより
 これから私に振られる仕事の量をどうにかするのを考える方が厄介になりそうで・・」

「頭が痛くなるかい?天才軍師殿」

「いや、もう馴れたよ。それに、上官が回す厄介毎を何とか成し遂げるのが
 部下の役目だからね。司令官フィリオ様のためなら労力は惜しみませんとも」 

「まぁ、よろしく頼むよ」


二人は下らない会話を暫し楽しみながら街路をゆっくりと歩いていたが、
お互いの屋敷に向かう道が分かれる岐路に辿り着くと、近いうちの再会を約して分かれる。
出来る事なら久しぶりに酒でも酌み交わしながら、積もる話に花を咲かしたいところであったが、
家に妻と婚約者を残した両名は悠長に道草をする余裕など与えられていなかった。
全く性格も素養も違う二人だったが、しっかりと首に紐が付けられているトコだけは同じのようだ。




「おっそい!フィリオが全然帰ってこないから、もうぷんぷんだよ!」

「いや、面目ない。会議が長引いてしまってね」

「言い訳するな!!」


良い感じのボディブローを婚約者に入れたイライザは腰に両手を当てながら、
脇腹を押さえながら蹲るフィリオを見下ろす。
そんなご立腹の少女にこれ以上の言い訳は火に油を注ぐだけと日頃の付き合いで
嫌というほど理解している彼はさっさと頭を下げて彼女を待たせた事を謝した。
その物分かりの良すぎる態度、聞き分けの良すぎる、ある意味諦めた様に見える彼の態度は、
イライザに自分の婚約者は政略結婚という逃れられぬ運命を受入れているだけなのだと勘違いさせ、
彼女の怒りを爆発させる事に繋がっている事に残念ながら気付いていないようであった。
エリカと同い年のオーフェル・エックハルトの孫娘イライザは
目の前の何処か抜けたやさしい青年に既にベタ惚れの心配性な女の子であった。


「まぁ、良いわ。どうせ、会議でも何も言わずに寝入ちゃったかして、
 そのまま誰も起こしてくれなくて、帰りが遅くなったとか何かでしょう?」

「半分当たりで半分はずれだね。最初は気持ちよく寝ていたのだけど
 後半は厄介ごとに巻き込まれてね。君のお祖父さんの御蔭で私は名誉ある
 グレストン防衛の総司令官に祭り上げられてしまったのさ。驚いたかい?」

「何それ、絶対だめ!私が今からお爺様に言って辞めさせてあげるわ
 ナイフやフォークもまともに使えない貴方が剣を持って戦うなんて
 死に行くような物よ!首吊と同じ!そんな危ない事はしちゃだめっ!」

信じられない発言を未来の愛する伴侶から聞かされたイライザは
半ばパニックを起こしたような勢いでフィリオが戦場に立つことに反対する。
女の自分に普段から良いようにやられている気弱な青年が戦場に立つなど、
考えただけでも恐ろしい結果しか思い浮かばず、
そのような暴挙を愛する人が行うのを彼女は黙って許容するなど到底出来そうになかった。


「大丈夫だよ。誰も私の槍働きなど期待してないから。お飾りとして戦場に立つだけさ
 一番後方で何をする訳でもなく、ふんぞり返っているだけの誰にだって出来る無意味で
 安全な役目を果たすだけだよ。どうだい?何も出来ない才なき私に相応しい仕事だろ?」

「嫌い!そんな言い方する時の貴方の目、私は大嫌い・・・
 でも、少しだけ安心した。あんまり危なくないんだよね?」

「あぁ、約束する大事な婚約者を不安がらせることはしないさ
 それに嫌なことを言って済まなかった。どうか許して欲しい」

皮肉な笑みを浮かべる次期総督を約束された男の言葉は少女の激しい拒絶によって、
それ以上、続けられる事は無かった。温室で真っ直ぐ過ぎるほど素直に育った少女には
何も望まず何も期待されぬ者の空虚な光りを放つ瞳は直視するのに耐え難い物であったようだ。
そんな少女の反応に、ついつい大切な人に自分の最も深い部分を不用意に見せてしまっていたことに気が付いたフィリオは
直ぐに、どこか憎めない人懐こい笑みを浮かべながら、婚約者の不安を鎮める為にやさしく抱きしめた。
総督の息子ではなく、『情けないフィリオ』に真っ直ぐな視線をいつも向けてくれる
大事な婚約者には不安そうな顔より、屈託の無い笑顔を見せてほしかった。




「レオン様お帰りなさい。長い会議でお疲れでしょう?
 直ぐにお茶を用意しますから、少し待っていて下さいね」

「あぁ、頼むよ。気を遣わせて済まないね」
「ふふ、気になさらないで、愛しい旦那様のためですから」


柔らかい笑顔をその場に残しながら、お茶の準備のために部屋を出て行く
美しい伴侶を見送ったレオンは大きく息を吐き出しながら椅子に座る。
権力争いを繰り広げる父や伯父に政敵のローウェン侯爵に利権に群がる人々、
彼等の醜悪な姿をまざまざと見せ付けられ、やがて自分も同じようになるのかと思うと、
体に襲いかかる疲労感は一気に増し、立っている気力が失われてしまった。

無欲で全てを諦めたような友人の姿はレオンに尊敬する師の姿を想起させ、
晩年の大軍師マシューがその才と残された時間を自身の栄達のために使うのではなく
自分を含めた後進の育成と諸国放浪の旅に出た理由が何となく分かったような気にさせていた。


シェスタの煎れてくれた紅茶の香りと味を愉しみながら、レオンは重苦しい考えに捕らわれていた。
もっとも、それで周囲の様子に気が回らなくなるほど彼は迂闊ではなかったので、
しきりと、そわそわして何かの話を切り出そうとしている妻の機先を制止、
自分と同じか、それ以上に行き汚い人生を平気で歩みそうな少女の見舞いに行ってやるように促した。


動き始めた歴史の歯車の音を聞きながら、レオンは自分が進むべき道に一人思いを馳せていた。







法暦1300年代以降の城塞都市グレストンは総督家グレストンと
副総督家エックハルト家の対立の歴史と言っても良い。

ただ、強い世襲制の中では従のエックハルト家は主になることはどうしても叶わず、
主を傀儡にして実験を握る事しか出来なかったらしい。
このような状況は他の封建国家の至る所で見られ、まぁ、特筆するほどのことでも無いわね。

実際、エリカが城塞都市を訪れた頃からの総督アウゲン・グレストンは
この頃には政務に全く関心を示さず、副総督ヨハンス・エックハルトの権勢はかなりのものだったらしい。
まぁ、ロネール侵攻に対する会議録を見る限り、
事前に結託していた当時の総督派重鎮、総督府守護職ベルトラム・ローウェンと
彼にとって目の上のたんこぶになりつつあった一門の五星将軍筆頭オーフェル侯爵に言いようにやられたみたいだけど。

まぁ、これはエックハルト公爵を攻めるよりもローウェンの政治手腕を褒めるべきね。
アウゲンではエックハルト公の増長を抑えられないと見切りをつけて、
オーフェルの孫娘を次期総督のフィリオ・グレストンと婚約させて
取り込んだ手腕は鮮やかといって良い物だったらしい。
外見上はエックハルト家がグレストン家に楔を打ち込んだように見えるのに、
実際は、本家のエックハルト公爵と分家のエックハルト侯爵家の間に亀裂を入れたのだから、
きっと、この縁談を聞いた時の断れないヨハンスと受けたくてしょうがないオーフェルの顔は
見事なほど好対照で見物だったと思うわ。



はぁ、それにしてもこの資料、パパの書斎に置いてあったせいか、パパの臭いがする。
あぁ、パパの臭い最高ぉおお!!もう、我慢できないクンカクンカしちゃいますぅう!
あっ、ここの染みってもしかしてパパがページを捲った時についた手垢!!
これは永久保管よっぉ!!いや、この部分を細かく刻んで食すという選択肢も捨てがたい!
もう、リリカどうすればいいのぉっ!?あぁっもう興奮が止まらなぃいいい!!





ふぅっ・・、
それにしても、この当時のエリカは子爵と言っても何の力も持っていなかったようね。
いくら傷を負って治療と疲労のため静養していたとしても、
会議録の欠席者欄に記載すらないのは明らかに不自然だわ。
その他の欠席した子爵以上の貴族の名は悉く記されているのに
エリカ・ルーデンハイムの名だけは抜け落ちている。
ロネール侵攻の一報を届けた功労者であるにも拘らず。
やはり、当時の男性優位の考えは相当根強いものだったようね。


「リリカー!父さんの靴下片方しらないかー?」
「え~、リリカわかんな~い」


やばっ、興奮の余りもう片方を持ってくるのを忘れたのは拙かったわね。
とりあえず、これは鞄に入れて学校に持っていこうっと・・・





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