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No.10769の一覧
[0] 龍と紅の少女たち[PTA](2010/01/27 01:16)
[1] 一章・01[PTA](2009/10/06 17:55)
[2] 一章・02[PTA](2009/11/12 00:08)
[3] 二章・01[PTA](2009/09/15 17:16)
[4] 二章・02[PTA](2009/09/15 17:17)
[5] 二章・03[PTA](2009/09/15 17:17)
[6] 三章・01[PTA](2010/01/27 01:14)
[7] 三章・02[PTA](2009/08/22 23:00)
[8] 三章・03[PTA](2010/01/27 01:15)
[9] 三章・04[PTA](2009/09/15 17:17)
[10] 三章・05[PTA](2009/10/08 00:44)
[11] 間章Ⅰ[PTA](2009/10/08 00:45)
[12] 間章Ⅱ・前[PTA](2010/01/28 01:07)
[13] 間章Ⅱ・後[PTA](2010/01/28 01:05)
[14] 間章Ⅲ・前[PTA](2010/02/26 00:16)
[15] 間章Ⅲ・後[PTA](2010/02/26 00:15)
[16] 年表・人物表[PTA](2010/02/26 00:35)
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[10769] 一章・01
Name: PTA◆8ee8c2cb ID:3b1076ac 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/10/06 17:55


王国歴772年


たまに、動物の中に、人語を解し、人と同じように魔術を操り、人と同じように人を誑かし、人と同じように人を食べる動物が現れる。

それはもはや動物ではなく、人はそれを“魔物”と呼ぶ。


どういったメカニズムで魔物が産まれるのか、細かいところまでは今でもよく分かっていない。

しかし、どうやら人を食べた動物の中から一定確率の割合で、魔物が産まれるらしいことまでは判明している。


熱心な神学者などは、それは神の子である人を動物が食べることによって悪魔へと身を変えるからだ、などと説明しているが、いざ自分が魔物となったことによって、そんな訳ないということがよく分かった。


どうやら動物が人を食べると、その人の知識・記憶までも食べてしまうことがあるらしい。

今現在竜であるところの私に人間だった頃の生前の記憶が宿っていることからも、確固たる現実をもってかかる理論は実証済みである。

学会で発表すれば世紀の大発見と呼ばれるかもしれない。

しかし、私のように人格まで食べてしまったという例はかなり稀少なのではないだろうか?



今私は、私を貪り喰った竜の体から、見るも無惨な姿になった私の遺体をぼんやりと眺めている訳だが、その腐敗具合からいって、どうやら私の自我が目覚めるまで私が死んでから大分経っているようだ。


それと同時に、私はこの竜の事情も薄ぼんやりと了解するようになった。

何だってこんな廃鉱山に竜がいたのか不思議でしょうがなかったが、この竜(今では“私”であるが)、どうやら群れからはぐれた迷子の地竜のようである。


地竜は本来日光が届かない程鬱蒼と生い茂った山林の山奥などに生息する竜の一種であり、肉食でもあるが、その主食は果物や植物といった草食であって、凶暴であらゆる動物を喰い殺す火竜とは違い穏和な動物である。

元々この廃鉱山があるストント山の裏手にある山林に少数のグループで生息していたようだが、ある日山肌に見つけた鉱山への入り口に興味本位で入ったのがこの地竜の運の尽き。

ついでに私の運の尽きでもある。

地竜はそのまま迷子となって一週間鉱山内を彷徨い続けていたところ、偶然出会ったのが間抜けにものこのこ独りで鉱山を散歩していた私であったようである。


賢く気高い竜が人を喰うことなど滅多にないと聞いていたが、極限まで空腹状態になっていたのであれば、致し方ないといったところである。



などと、自分が死んだ事情なのに、冷静かつ客観的に考えることができるのは、私がこの竜に生まれ変わったから、というよりは、“私”という記憶をこの竜が受け継いだから、といった方が正しいのかもしれない。

つまり、正確にいえば、“私”は竜に生まれ変わったのではなく、私はずっと竜であったが、この記憶の持ち主たる目の前の人間を食べたことによって、私の自我が“私”になっただけであり、産まれてからずっと私は竜であったのであるから、人間の死についてそこまで感慨が持てない、のかもしれない。

まあ、私がまだ現実をうまく受け入れていない、という可能性も捨てきれないが。



しかし、これからどうしたものか、将来の見通しはなかなか暗いものではある。

今の私にはクロール・ロックハートという人間(だった)記憶がある訳だが、体が竜になってしまった以上、もはや人間の生活には戻れないだろう。


両親は私の死を悲しむだろうし、長兄は私のことを嫌っていたからざまあみろと嘲笑うかもしれないが、可愛がっていた年の離れた弟はきっとわんわん泣いてくれるはずだ。

工房の親方なら、いつもの苦虫を噛み潰したような顔をして、黙殺しつつも責任を感じてくれるかもしれない。

幼なじみのカトレアは、きっと私のことを馬鹿馬鹿いって罵倒するだろうな。


しかし、竜の体になって最も悲しいのは、もう鍛冶の仕事をすることができない、という事実である。

この世に生を受けて22年、石のことだけを考えて生きてきた訳で、それ以外の生き方など何も分からない。

人間だった頃に請け負った最後の仕事も、私にとって特別な意味を持つものだったので、それを終えずに死んでしまったのはひどく心残りではある。


まぁ、終わってしまったことを悔やんだところで始まらない。

竜になってしまったというのであれば、これから竜として生きる他ないのである。

いや、もう竜ではなく、“龍”か。



古来、あらゆるお伽噺や冒険物語、英雄譚に出てくる知恵ある竜。

この世で最も気高く、この世で最も誇り高く、この世で最も神聖な生き物。

それこそが“龍”である。


私も1匹の地竜として人間の記憶と知識を得たのであれば、地龍と名乗っても誰も咎めはしまい。



とりあえず、落ち着ける場所を探さなくてはならない。

今現在の私の体の大きさは3メートル近くあり、全身黄土色の鱗に包まれた立派なものであるが、天井が4メートルもないこの坑道内においてはいささか窮屈なものである。


クロール・ロックハートの遺体には申し訳ないが、私は私のための生きる道を探すべく、この場を去らねばならない。



こうして私は、この世に産まれた最も新しい知恵ある竜として、ストント山の鉱山の奥深くへと足を踏み入れた。



====



王国歴773年


あれから1年近く過ぎただろうか。

今私は鉱山の奥深くにある、ある広いホールのような場所で暮らしている。


そこは、3メートル近くある私の体であっても優に10体以上入れるくらいの大きさの楕円状に開けた場所であり、中央には地下水が湧き出ているとても快適な居住スペースである。

しかも、過去に起きた大規模な落石事故の名残であろうか、10メートル以上遙か上空にある天蓋には大きな穴が開いており、そこから優しい日光の光がホール全体に射し込んでいる。

そのお陰か、地下水が湧き出ることによって出来た湖の周辺には大小様々な植物が生い茂っており、まるで鉱山内にできたオアシスのようでもある。

おかげで私は水と食料にそこまで困ることなく、この鉱山内で生きていくことが可能であった。

もっとも、今や私は魔物たる龍である。食料を口にせずとも、暫くの間は身体から湧き出る魔力を媒介にして生きていくことが可能なことがこの1年間で判明した訳だが、それはともかく。

この広い廃鉱山内のオアシス。ここが今の私の居住地なのであった。


あの日、新しい住む場所を探して鉱山内の探索を開始した後、3日も経たない内に私も迷子となり、光届かない深い闇の中、複雑な迷宮と化した鉱山内を連日連夜彷徨い続けた時はさすがの私も泣くかと思ったものである。

龍の身体は夜目も利くらしく、深い暗闇の中でも何とか物を見ることは可能であったが、行けども行けども代わり映えのしない坑道を歩き続けて1週間程経った頃だったか。

人間だった頃に比べて異常に発達した私の聴覚が水の流れる音を察知した時は、天の助けだと感じた。

その音を頼りに坑道を進み続けることさらに1日近く経った頃、ついに私は光差す不思議な空間に出たのであった。

それが、このオアシスだったのである。


私はここを自らの身体にちなんで“地龍の巣”と名付け、以後ここに腰を据えることにした。


地龍の巣での暮らしを始めてから、まず私が始めたことは自らの身体に慣れることであった。

なにせあの日この身体に喰われて死ぬまでは私は人間だった訳で、人間だった頃の記憶が地龍となったこの身体との齟齬を自覚し、うまく身体を動かすことができないでいた。

坑道を彷徨っている間は、この身体には狭すぎた道をただひたすらに歩くことしかできなかったが、地龍の巣は私が一通り暴れても大丈夫な程の大きさがある。

私は彷徨い続けた鬱憤を晴らすかの如く、それからというもの地龍の巣の中で自らの身体の操縦の訓練を始めた。

大きな顎と牙での噛み砕き方、前脚についた鋭いかぎ爪での切り裂き方、強靱な後脚を利用して四足歩行の仕方、そして、身体から溢れ出る魔力の操り方である。


魔物は人間と同じく魔術を操る。

詳しい理由は不明だが、人間を食べることにより、人間の魂をその体内に取り込み、人間の魂でのみ生成可能な魂の力たる魔力をも自らの力とすることができるのでは、と一般的に言われている。

自らが魔物となった私自身にも理屈は分からないが、龍となった私の身体には大量の魔力が宿っているらしい。

しかし、元々人間だった頃の私には魔術の才能が全くなく(と言うよりも、魔術の才能がある方が元々稀少ではあったが)、その手の勉強・訓練を全く怠って生きてきたので、持て余す程の自らの魔力の扱いに困っていたのであった。

しかし、龍となった私が誰かに教えを請う訳にもいかず、私は地龍の巣にて身体訓練と並行して魔力操作訓練を行わなければならなかった。


そもそも、古来より話に伝わる“龍”は人間以上の魔術の使い手と言われており、神話の時代まで遡れば、“龍”こそが人間に魔術を教えた祖であるという説もあるくらいである。

新米とはいえ龍となった私が魔術の一つや二つ使えなくては龍の名折れである。


こうして、約1年間私は闇雲に地龍の巣の中で身体を動かし続けてきた。

それは、身体を動かしていないと気が変になりそうだったから、とも言えるが。

生き甲斐であった石いじりができなくなり、また、石さえいじっていればそれで満足であった私といえども、1年間近く誰とも話すことなく生きていくのは存外精神的につらいものがあった。

下手すれば、これから気が遠くなる間、私は独りで生きていくことになるかもしれなかった。

龍の寿命がどれくらいなのかは分からないが、お伽噺に出てくる龍達は何百歳も生きてきたと聞く。


なかなか、残酷な魂の牢獄である。



====



王国歴774年


時折、家族や友人達のことを思い出す。


両親の商売はうまくいっているだろうか。

今度、大きな交易に乗り出すと息巻いていたのだが。

兄は、独立した後うまくやれているだろうか。

やれているのだろうな。私と違い、商才に恵まれた人だったので。

弟は、少しでも泣き癖が治っているといい。

いつも泣いては私の後をついてきてばっかりだったから。

カトレアは、もう結婚したかもしれない。

彼女には、王都に住む大きな貴族の婚約者がいたはずだから。

みんな、私のことをまだ覚えているだろうか。

時折、思い出してくれたなら、嬉しいのだが。


ここ1年間何も考えずに訓練をしてきたから、身体の操縦にも慣れ、魔力の操り方も大分板についてきたようにも思う。

龍の身体のままでバク転宙返りも出来るようになったし(戯れにやった時は轟音と地響き鳴り響いてまた大規模な落盤が起きるかと真剣に心配したが)、魔力の循環による身体機能上昇、生命機能上昇、さらには他者への魔力供給による生命機能促進まで可能となった。

おかげで、植物の生長を劇的に早めることに成功し、ますます食料関係で困窮することはなくなった。


また、魔力調合による品種改良にも暇つぶしがてらに着手し、何とか不格好ながらも果物らしき物がなる木までこのオアシスに植え付けることにも成功した。

なかなか、やりがいのある仕事だった。が、改良の余地はまだまだある。

私の当面の目的は、ここを甘い香りが漂う果物園にすることである。

桃に林檎や梨、葡萄。夢は広がるばかりである。


さらに、特筆すべき変わったことと言えば、ここ1年の間に複数の人間らしき者がストント山の廃鉱山に入ってきた様子がある、ということである。

ここ地龍の巣にまで到達した者はまだいなかったが、異常に発達した聴覚と嗅覚が彼らの痕跡を感じ取ることができた。

まさか、生前の私のような暇人で変人が心のオアシスを求めて鉱山に入り込んだ訳ではあるまいし、その目的が気になるところである。

それと同時に、人恋しさに是非彼らとコミュニケーションを取りたいところではあるが、今や私は忌むべき魔物たる龍である。

コミュニケーションを取ろうものなら、あっという間に駆除対象として私に襲いかかってくることが容易に想像できてしまう。

悲しいものである。


もう一つ変わったこと。

私の背中に翼のようなものが生えてきたことである。

地竜はもともと地上に生息する穏和な竜の一種であり、空を飛ぶなどと聞いたことはなかったのだが、そこはそれ、“龍”になった私に常識は通用しないのか、なぜか背中に翼が生え始めたのである。

あるいは日々持て余すほどに沸いてくる無尽蔵の魔力が私の身体の成長に特異な影響を与えたのかもしれないが、とりあえず、来るべき日にそなえて、私は空を飛ぶ練習もする必要があるようだった。



====



王国歴775年


私の地龍の巣・果樹園化計画も順調に進み、遂に林檎(らしきもの)を作り出すことに成功した。

どうも私は石いじりの才能の他に、土いじりの才能もあったようである。

もっとも、それは私が地龍となったからかもしれないが。

また、私の背中の翼も順調に成長し、2メートル近い大きさとなり、自在に動かせるまでになった。

まだ、空を飛ぶところにまではなっていないが、それも時間の問題であろう。


さらに、翼の成長に合わせて身体も当初の頃と比べて一回り近く大きくなり、今や4メートル近い立派なドラゴンである。

これではもう狭い坑道に入っていくことはかなわず、私はこの地龍の巣で飼い殺しの憂き目にあうようであった。

いつか私はここを魂の牢獄と評したが、なかなかどうして正鵠であったといえよう。


そして、ようやく1年くらい前から何度かこの廃鉱山に入ってきていた人間達の正体が判明した。


彼らはトレンディア王国がクロムフルの町に派遣した王国兵のようであった。

その目的は――クロール・ロックハートの仇たる“私”の討伐である。

私の家族は、私が思っていた以上に、私のことを愛していてくれたようである。

事情を説明すると、次の通りである。


3年程前、私がストント山に出かけたまま行方不明になった時、最初は誰も心配しなかったそうだ。

周囲に稀代の変人と思われていた私である。また鉱山に出かけて独りで何かやっているんだろう程度にしか騒ぎにならなかった。

しかし、1週間が過ぎると、さすがに工房の親方を始め、周囲の人間は不審に思い始めたらしく、事故にでも遭ったのではと、ストント山に捜索隊を派遣した。

そして、数日に及ぶ捜索の結果、遂に鉱山内に放置されていた私の無惨な遺体を発見するに至ったのである。

明らかに凶暴な何者かに喰い殺された跡があった私の遺体を見て、町はストント山の廃鉱山には魔物が住んでいると思ったらしい。

しかし、元々廃鉱山に好きこのんで出かける阿呆は私くらいのものだったので、そのまま放置する方向で町議会にて決まりかけていた折に、私の両親が魔物の討伐を言い出したそうだ。

費用・懸賞金・国への兵士派遣の要請、全て自分たちが負担するから、と。


なお、驚くべきことに、その費用の提供は両親から独立して同じくクロムフルの町で商人をやっていた長兄も自らの資産から出してくれたらしい。

あんなに、私のことを嫌っているようなそぶりしか見せず、口を開けば商人の子であるのに石にしか興味を持たない愚鈍な奴、と悪態しかつかなかった兄が、である。

家族間の愛情はとかく、不思議なものである。


ともかく、そうしてストント山の廃鉱山に巣くう魔物の討伐隊が結成された。

その多くはクロムフルの町からの要請を受けて派遣された王国兵と、少数の懸賞金目当ての傭兵で構成されており、何度も迷宮と化しているこの廃鉱山内を探索しているそうだ。

まこと、ご苦労なことである。


何故私がそんなことを知っているかというと、今まさに私の目の前に3人の討伐隊の兵士が死体となって転がっていることが、その理由である。


その日、私は林檎もどきの木の魔力による品種改良によって桃の木の養殖に精を出していたのが、暫くして私の耳が無粋な数人の足音を捉えた。

しかも、明らかにこちらに向かってきているものだったので、ついにここを発見する者が出たか、と私も感慨深い気持ちになったものである。


彼らに会った時、私は彼らを紳士的に迎えるつもりだった。

龍に転生したとはいえ、私も生前は人間だったのだから、人間と殺し合うようなことは極力避けたかった。

しかし、彼らは地龍の巣に足を踏み入れた時、まず植物が生い茂る異様なこの空間に驚き、その奥で鎮座する私の身体を見かけて再度驚き、何かを納得した様子を見せた後に、4人揃って私に襲いかかってきた。

トレンディア王国兵の甲冑を身にまとっていたから、彼らが王国兵であることは私にもすぐに分かったのだが、私が問答無用で襲われる理由が分からない。

そこで、私はここ3年間人と出会った時に備えて研究してきた魔力の波動による念話を試みたのだが、私の声を聞くと彼らは恐れ戦き、私のことを魔物と評してさらに激しく襲いかかってきた。


今思えば自明のことであって、人語を解する竜を見つけて恐れを抱かない者がいるはずがない。

私も約3年ぶりに人と接することができて、動揺していたのだろう。

生きていた頃は冷静沈着、が信条だったのだが。


ともかく、鉄より堅い私の鱗を破れるはずもなく、しばらくは剣や斧を振りかぶり襲いかかってくる彼らをあやしていたのだが、彼らが私の果樹園にまで手を出したのがまずかった。

果樹園はたった独りこの場所で生きてきた私にとって子供同然の存在である。

それが無惨に切り倒されたのを見たとき、私の頭の中が白く弾けてしまった。

気付けば、4人の内3人を爪で切り裂いて殺してしまったらしい。


仲間の血を浴び腰を抜かして命乞いをする兵士が1人残っていたので、彼から事情を聞くことにしたのだが、これがまた難儀した。

私が念話によって話かけても怯えるばかりでまるで会話にならなかったのである。

しょうがなく小1時間かけてこちらに害意がないことを説明して、ようやく事情を聞くことができたのであった。


その後、生き残った彼には二度とこの地に足を踏み入れないよう強く言い聞かせて帰り道を教えて送り返したのだが、彼がこの迷宮のような廃鉱山を抜けて帰ることができたのかは不明である。

まあ、ここに来るまでに長い時間をかけてマップを作って来たはずだろうから、大丈夫だと思うが。


両親達に私が龍となって生きていることを伝えてもらおうかとも思ったが、やめておいた。

信じてもらえるとも思えないし、人間としての私は死んでしまった以上、私のことは早く忘れて彼らの生を生きてくれるよう祈るばかりである。


それにしても、勢いとはいえ人間を殺してしまった訳だが、何の感慨も沸かないのが不思議である。


私はもう身も心も魔物となってしまったのだろうか。




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