とある屋敷の中、女の子達の声が飛び交う。「しっかし、ご苦労だったわねえキリハ。大変だったでしょ?」「ううん、そうでもなかったよ?」キリハの家の中、テーブルを中心において、3人がそれを囲むように座る。。いのとサクラとキリハ、いつものくの一3人組で談笑している。ヒナタは本家に用事があるとかで、来れなかった。キリハの家は、波風ミナトが四代目火影に成ったと同時に移った家だ。日向本家までとは言わないが、それなりに広い家である。「それにしても、さあ」果汁水を飲みながら、いのがキリハに質問する。「五代目火影は綱手様になるんだ・・・ねえキリハ、綱手様ってどんな人?」自来也と大蛇丸を見たサクラだ。三忍の最後の1人について、なにか心配があるよう。おそるおそる、といったふうに訪ねる。「うん。まあ・・・・・・・・・・・いいひとだったよ?」「その間は何!?」突っ込むサクラに、キリハはあははと笑う。「大丈夫だよ? ・・・・強いし」「念押しが必要なの!? っていうか大丈夫って何に対しての保証なの!?」あと強さと人格関係ないわよね! と叫びながら、サクラが頭を抱える。どうも大蛇丸の一件がトラウマになってしまっているらしい。いのがため息をつきながら、言葉を挟む。「うるさいわよサクラ。で、キリハ・・・・強いって、実際に力を見る機会があったってことよね。あんた、またやらかしたの?」「・・・今回は向こうから来たんだよ。音の連中だった。それにしてもまた、って人聞き悪いなあ。来るのはいつも相手のほうからだって」正直、対忍者という状況での戦闘が多すぎる。一介の下忍では、有り得ない回数だ。普通、もっと弱い相手・・・せいぜいが、山賊を相手にするぐらいなのに。「ふーん、でも人間相手に戦闘した後だってのにアンタ、嬉しそうにしてるわねえ。何かあったの?」「・・・え?」とキリハが自分の顔をつねる。「何か嬉しいことでもあった? ・・・たとえば、待ち人に会えた、とか」いのが悪戯な笑みを浮かべる。「・・・うん。実は。あのね、驚かないで聞いてくれる?」キリハが俯きながら、何か落ち行かない様子をみせる。おずおずとしているそれは、まるでヒナタのようだ。やがて、意を決したようにがばっと顔を上げた後、言う。「うん?」いのは、果汁水を口に含みながら返事をする。「・・・あのね。むしろ・・・いのちゃんの方の待ち人に会っちゃった」てへ、と舌を出しながら、爆弾発言。「ぶっ!?」それを聞いて驚いたいのは、思わず口に含んでいた果汁水をはき出す。「眼があ!? 眼があああぁぁぁ!?」果汁水の噴射攻撃を顔面に受けたサクラが、眼を押さえて床を転がる。眼球にグレープフルーツはきつかったようだ。水遁・愚冷腐負流痛の術。「ど、ど、どど」「ど?」いのは立ち上がり、キリハの肩を掴んで、力一杯前後に揺らす。「どういうこと!? 何で!? ホワイ!? どうやって会えたの!? ていうか何で黙ってた!?」錯乱するいの。キリハはがっくんがっく揺らされながらも、至福の表情を浮かべてほやー、と笑いつづける。「うふふふふふ」「え!? 何笑ってんの!? どういうつもり!? ・・・あんた、キリハ、もしかして!?」「え? いやあ、まあ、それはないけどねえ・・・うん、格好良かったなあ。ぬふふ」「何で頬染めてんのよ! ああもう、いいからきりきり説明しなさい!」「うう・・・ハンマーで頭叩かれたみたい痛い・・・」サクラは泣きながら、ハンカチで顔を拭いていた。カオスだった。もう、いのの正面には座らないとサクラのみ席替えをした。話を仕切りなおす3人。「で、そこで助けてもらったわけね?」「うん」「・・・・はあ。まったく」会えなかった無念さもあるのだろうが・・・いのが、キリハの方を向き、心配そうに声をかける。「あんたも、もう少し用心しなさいよ? 下忍のあんたが中・上忍クラス複数相手に乱戦とか・・・正直、正気の沙汰じゃないわよ?」「うん、確かに・・・危なかった」と、貫かれた手の方を見る。「うん?どうしたの・・・って、医療忍術の後じゃない。あんたまさか」「ちょっと痛かった」てへ、と笑うキリハに、いのの拳骨が降る。「みぎゃ!?」「・・・・アンタは!」怒るいのと言い訳するキリハ。いつもの、幼なじみのやりとりだ。昔から無防備なところがあるキリハに、いのが注意する。何十回も繰り返されたやりとり。「シカマルに同情するわ」「うん? いのちゃん何か言った?」「何も言ってないわよ」それでもこの笑顔見ると怒る気なくすよのねえ、といのがため息を吐く。「で、その人の名前は聞いたの?」「えーっと・・・聞けなかった」間が空いた上での返答。それにひっかかるものを感じつつも、いのは問いつめない。「言えないなら言えないでいいわよ。どうみてもA級ランクに匹敵するの任務だったんだし。言えないっていえば、無理に問いつめないわ」「でも・・・」いのに悪い、という顔をするキリハ。それに、いのが腹を立てる。「お互い下忍になったんでしょ? そんな事もあるわよ。私としてはひっっっっっっっっっっっじょーーーーーーーーーーに聞きたいことではあるけど・・・我慢するから」「あはは・・・」苦笑しか返せないキリハ。その隣で、サクラが別の話を切り出す。「そういえば砂隠れとの休戦協定、今日だっけ?」「そう、今日。火影就任から2日経ったし、まあ言い頃合いなんじゃない? もちろん、含む気持ちはあるけど・・・」「それでも、今揉めるのは得策じゃないよ。そこらへんはみんな分かってるから」「でも、使者に来るのが・・・あの、我愛羅なんだよね」中忍試験の時に起こった出来事を思いだし、サクラがため息を吐く。「でも、前に比べると格段に落ち着いていたってアスマが言ってたわよ? 使者を迎える時に見たらしいけど・・・人柱力だっけ。その力を随分と使いこなせていたようだって」「へえ、何かあったのかなあ」「それは知らないけど・・・テマリにでも聞いてみようかなあ」「・・・へ? いのちゃん、テマリさんと仲いいの?」「はあ!? 仲なんて良くないわよ! あんな奴と!」「そういえば、本戦の試合終わった後・・・いの、喧嘩してたよね。何かあったの?」サクラの質問に、いのはああと手のひらを叩きながら、答える。「大したことじゃないわよ。言ってなかったっけ? テマリとアタシはね・・・・」「うん」「何?」二人はストローでちゅーちゅー果汁水を飲みながら、答えを待つ。「所謂、あの人を巡る恋のライバルなのよ!!」「ぶっ!?」と、キリハが口に含んでいた果汁水を正面に吹き出す。「眼があ!? 眼がああああああ、あああぁぁぁ!」果汁水・蜜柑が全力でサクラの眼球に直撃。サクラは眼を押さえながら、床の上をのたうち回る。「ど、ど、っっどお」「うん?」「どういうこと!? 何てお・・・」「・・・お?」訝しげに、いのが呟く。「お、お、お」「続きをいいなさいよ」「・・・眼・・・・柑橘・・・・全力で・・・・」二人とも、サクラはガン無視である。やがてキリハは、何とか答えを口に出す。「・・・お・・・大蛇丸」「なぁ・・・・何てこというのよ! キリハ、アンタ、ちょっとそこに直りなさい!」嫌な想像をしてしまったのか、いのが立ち上がり激昂する。それを見て、キリハがすばっと後退する。「いや、御免なさい! ついノリで・・・ん?」と、手を前にしながら、後ずさるキリハの背中に、何かがぶつかる。「あ、シカマル君だ」「・・・何やってんだ? お前等」床で転げ回るサクラと、殺気を放ってこちらを睨むいの。シカマルのその明晰な頭脳をもってしても、その状況は理解できなかったらしい。「へえ、あの人に会ったのかキリハ」「うん。シカマル君と同じ、二回目だね」「・・・一回目はほぼ気絶寸前だったらしいじゃねえか。しかも死ぬ寸前だったとか。サクラとサスケから聞いたぞ」キリハの言葉に、シカマルが不機嫌そうに答える。「そうよ、キリハ。このむっつり、随分とアンタの事心配してたんだから」何でもない風に言うんじゃないの、とキリハを叱るいの。「・・・ごめんなさい」と素直にシカマル頭を下げるキリハ。「・・・まあ、お前が無事だったらそれでいいんだけどよ」と頬を若干染めながら横を向くシカマルを見て、いのとサクラがひそひそ話す。「あんなに慌ててた癖に、ねえ」「やっぱりそうなんだ。で、幼なじみのいのから見て、あの二人はどうなの?」「暖簾に腕押し。糠に釘。柳に風に、水遁に火遁」全て手応えなし、という意味である。「うるせえぞ、そこ」聞こえてはいなくても、何を言われているか、気づいたのだろう。また不機嫌そうに、シカマルが言う。「でも、格好良かったんだよ? 大蛇丸とも渡り合ってたし」「・・・ま、あの人だからな」うんうん頷くシカマル。「・・・時にシカマル君。シカマル君は、あの人についてどう思っているの?」「え? っと・・・だなあ」「うん」「まあ、憧れるよな。男の俺からしても、魅力的だと思うし」あの背中が良いよなあ、と言うシカマルに対し、キリハは慌てながら告げる。「同性愛は駄目だよ!? 非生産的な!」「己の言動に責任もってるのかお前・・・ていうか、そんな言葉、誰から教わった?」「え!? お・・・」「お?」「お父さん、とも言えないし・・・」極々小さい声で、キリハが呟く。「ん? 何か言ったか? 聞こえねえぞ」シカマルが聞き返すと、キリハは慌てながら何とか答えを探す。「えっとね。お、お、お・・・」「お?」口に茶を含みながら、シカマルがからかうように笑う。「・・・大蛇丸」「ぶはっ!?」「今度は熱い!?」ほうじ茶を全身に浴びたサクラが、床の上を転げ回る。「・・・よりによってあの大蛇丸がそんな事言うわけねえじゃねえか! むしろ推奨するわ!」オカマの三忍は随分と有名らしい。「だよねえ」えへ、と困ったように笑うキリハに、シカマルはすぐ引き下がった。「まあ、それも言いたくなかったらいいんだけどよ・・・」「このチキンが」「何か言ったか、いの」「いいええ、ちっとも?」心底おかしそうに笑ういのに、シカマルがよりいっそう不機嫌となる。「医者をー!? 医者を呼んでー!」隣では、火傷したサクラが空に手を伸ばしながら叫んだ。「で!?」「いや、でっていうか」三人ともサクラに拳骨を喰らったのか、頭のてっぺんから煙が立ち上っていた。怒るサクラの気を紛らわそうと、シカマルが話題を変える。「そういえば、火影の執務室前でサスケを見たぞ?」「・・・サスケ君が? そうなんだ、退院したんだ」何者かの襲撃にあって、入院していたサスケの事を聞いて、サクラが安堵のため息を吐く。見舞いに行くと、何故か面会謝絶だと言われた。肋骨が折れていただけらしいので、サクラはそれを訝しみ心配していたのだ。「ああ。なんか、自来也様と会っていたみたいだぜ。相変わらずのつんけんした態度・・・いや、いつも以上に険悪な空気を撒き散らしてた」「そうなんだ・・・」サクラがため息を吐く。キリハが、ぼつりと呟いた。「誰に襲われたんだだろう・・・それに、4日前だったっけ。木の葉の森の外れの方で、大きな爆発があったのって」「ああ。戦闘の後らしいな。起爆札を使った後らしいのが見つかったってアスマが言ってた」「ああ、それ私も聞いた。でも、見回りの中忍の人が爆発音を聞いて辿り着いた時には、誰もいなかったって」「そう、なんだ」「戦後の処理も終わっていないのに・・・あ、そういえばカカシ先生と会ったよ。今日退院だったんだね」「ああ・・・正確には昨日だったけどね」後半だけ、小さい声で呟く。「何言ってるんだキリハ? 『まっくのうち!まっくのうち!』って・・・何だそれ?」何かの名前か?と首を傾げるシカマルの隣、サクラが不思議そうに呟く。「そういえばなんか、カカシ先生の顔に青痣ついてたけど、アレ何だったんだろ」「まあ! それはおいといて!」と、強引に話を断ち切って、キリハは提案をした。「これからお昼、食べに行かない?」九頭竜に、というキリハの言葉に、全員が頷いた。「あれ? 無いね、屋台。」「あ、ほんとだ。どうしたんだろう・・・」「ここ最近、休んでる日ってあったっけ?」「定休日は今日じゃないよ。それに休むなら前もって言ってくれてた筈だけど」首を傾げて不思議そうにするキリハ。「どうしたのかなあ・・・・・・っ!?」4人とも背後に何かを感じたのか、素早く振り返った。「っ我愛羅!?」「・・・と、確か、テマリだったっけ?」キリハとサクラが驚いたように呟く。「一応年上なんだから、さんを付けろよデコ助野郎」「そうよ、デコ助野郎うおっ、眩しっ!」呆れたように言うテマリと、しみじみと諭す風にサクラの肩を叩き、即座に仰け反るいの。「あんた等・・・いい加減にしないと挽肉にしてくれんゾ?」肩を震わせながら殺気を放ち怒るサクラ。ブラッドがヒートしている様子だ。デコから火が出そうとはこのことだろう。テマリはため息を吐きながら、言う。「それに、一応命の恩人だろう?」「いや、その原因が横にいる状態で言われても・・・・」サクラがじと眼になる。「・・・正直すまん」急に、我愛羅が頭を下げた。だが、すぐに頭を上げて言う、「と謝っても、今更意味が無いことは分かっている。これからは行動で示すこととしよう」同盟は成ったのだから、と我愛羅は真剣な表情で言う。「・・・言いたいことは山ほどあるけど、何もかもがも・・・今更、だしね」肩をすくめながら、いのが呟く。「ここで俺たちが諍いをおこして、木の葉と砂の同盟を台無しにするわけにもいかないしな」シカマルがいのの言葉に同意する。「・・・それより、だ。ここはラーメン屋じゃ無かったのか?」「え? そうだけど」我愛羅の言葉に、キリハが応えた。「小池メンマさんのラーメン屋だよ。ラーメン屋台九頭竜。あなた、知っているの?」「知っている、というか・・・」我愛羅が、キリハの方をじっと見つめる。「な、何?」聞き返すキリハに、我愛羅は首を振って答えた。「・・・いや、何でもない。ラーメン屋だが、今日は休みなのか?」おかしいな、と首を傾げて言う我愛羅に、テマリがフォローする。「そんな筈ないと思うけど。前にきたときはこの曜日で開いていたから」「臨時休業みたい。何かあったのかな」何気ない言葉に、我愛羅が舌打ちをする。「やはり、あの時聞こえた声は・・・」「え、何?」呟く我愛羅に、テマリが聞く。「何でもない・・・まあ、休みなら仕方ない」いくぞ、という言葉と共に、我愛羅とテマリは去っていった。「・・・どうしたんだろ」「知らないけど・・・なんか、最後の方、焦ってたみたいだよ?」我愛羅の方が、と呟くキリハ。「ここにいても仕方ないな。ひとまず、街の方に戻るか」「うん」「どうしたの、我愛羅?」「・・・大至急だ。5代目火影に会う」「え?」「伝えなければならんことがある」急ぐぞ、と二人は走り出した。火影執務室「・・・失礼する」木の葉の忍びに通されて、我愛羅が執務室に入ってくる。「何だ? 本日の会見をする予定は無い筈だが」「・・・大至急、話したい事がある。『とある友人』の事で、だ。悪いが、人払いをしてほしいのだが」一呼吸おいて、綱手が答えた。「・・・分かった・・・下がれ、お前等」「綱手様?」訝しむシズネに、綱手はいいから、と退室を命じた。「で、どういう用件だ? お前の要件、人柱力に関する事のようだが」眉間に皺をよせながら、綱手が我愛羅に訪ねる。「・・・先ほど、だ。2時間程前の・・・そうだな、12時ぐらいだったか」「ああ。何でも、お前の自信のチャクラが大きく乱れたそうだな。報告には聞いている」まったく、という風に呆れる綱手に、我愛羅は真剣な表情で答える。「別に、言い訳をしているんじゃない。あの時、チャクラが震えたのには原因がある」「・・・原因?」腕を組んて聞き返す綱手に、我愛羅は自分の頭を差して、いった。「聞こえたんだ・・・・・ただ一言」我愛羅にしては珍しく、恐怖に震えたかのような表情になる。「『殺す』と」「・・・何?」「氷より冷たい声だった。そしてその一言で、たった一言で、俺の中にいる守鶴が・・・まるで恐怖に震え上がったかのように、暴れ出した」「・・・それを証明するものは?」「無い。だからうずまきナルトに会って確認しようと思ったのだが」「そういえば、知っているんだったな」「会いに行ったのだが、いなかった。どうも今日は店を休んでいるらしいな。臨時休業だと聞いたが」「ああ。確かに、そうだが・・・くそ」綱では、胸を抑えながら毒づく。「・・・どうにも、いやな予感がするな」「まずはうずまきナルトと至急連絡を取って欲しい。あと、こちらでも対応するが・・・他の里の人柱力にも確認を取るべきだ。あの声、ただ毎じゃない」「たった一言で、尾獣を震え上がらす、か」お前が、そういう事でつまらない嘘をつく奴にもみえないしな、と綱手は了承の意を示す。「分かった、至急・・・・」と、呟いた時だ。遠くで、遠雷のような音が聞こえた。「何だ!?」「・・・爆発による揺れ、か。かなりの規模みたいだが」急ぎ、窓の外を見る二人。「煙が・・・あそこ、か。くそ、妙な予感が収まらん」胸を押さえながら、綱手はシズネを呼ぶ。「至急、現場に急行しろ。上忍も何人か連れて行ってかまわん」「承知しました」木の葉の少し外れの森の中。そこは、爆風によって辺りの木々が蹂躙されていた。「ここで爆発が起きたのか・・・」シズネとアスマと紅、他中忍複数名が、現場に到着する。「かなりの爆発だったようね・・・何かしらの建築物・・・家、かしら。あったようだけど、全て吹き飛んだようね」「その割には、延焼の類は起きていないようだな。不幸中の幸いだったか」「それにしても、この辺りに家なんてあったでしょうか?」「どうも誰かの隠れ家みたいだな。それにしても・・・この有様は、なあ。容赦ってもんが無いやり方だ。これをやった奴は、相当にアレな野郎だぜ」「・・・まあ、火遁ではないようだけどね。何かの秘術かしら・・・・・・あれ、これは?」紅があるものを見つけ、立ち止まった。「箱?」吹き飛び損ねたのだろうが、あちこちぼろぼろになっている。その焼け焦げた箱を、慎重に開き、中のものを確認した。「これは・・・」「で、見つけたのはこれだけか」「はい。他のものは全て吹き飛んでいました。手がかりになりそうなものは、これだけです」「そうか・・・」「失礼します!」そこに、キリハが執務室に入ってくる。「おお、きたか」「はい。あの・・・皆さんは?」「ああ。先ほどの爆発跡を調査していた者達だ」「とはいっても、ねえ。何もかも吹き飛んでいたし」派手すぎるわよ、とアンコが愚痴る。綱手が頭を抑え、愚痴るように言う。「手がかりがこれだけっていうのもな・・・・キリハ?」どうした? という言葉は繋がらなかった。キリハの眼は、一点だけに固定され、動かなくなっていたからだ。蒼白になっていく顔色。驚愕に染まっていく表情。「っ!」焼け焦げたそれに走りより、手に持って間近で確認する。そして変わり果てたそれを確認すると、信じられないといった風に呟く。「嘘だ・・・・」何とか原型を留めていた球型。焦げた表面の隙間に残るは、星空の下で遊んだ時に見た、あの模様。「・・・・・・嘘だ!!!!!!!!!」慟哭が響き渡る。涙がその球に落ちた。それは、あの時4人で遊んだ時に使った、手鞠の成れの果ての姿だった。突然の悲痛な叫びに、その場にいた全員が狼狽える。そして、その慟哭が冷めやらぬ内に。「失礼します!」1人の暗部が、慌てた様子で火影の執務室に入ってきた。「至急、報告します!!」「今度は何だ!」綱手は声を荒げ応答する。「・・・うちはサスケが失踪しました! 里内の何処にも・・・その姿を確認できません!」「何・・・・!?」「何だって!?」また、その場にいた全員が驚愕する。「・・・確かか?」嘘であってほしいと、聞き返す綱手。「はい」だが、答えは覆らなかった。「・・・分かった。下がれ」綱手は頭を抑えながら椅子に座り、呟いた。「何が起こっているんだ・・・?」