「あ・・・」「いいから・・・しゃべるな」傷は酷いが、何とかもちそうだ。「何者だ・・・それに、どこから現れた?」今し方俺に蹴り飛ばされた君麻呂が、こちらを睨みながら訪ねてくる。うん、間一髪だった。白からの中継で状況を聞いた後、やむを得ず使ったのだ。足止めを頼む事も思いついたが、止めた。札は見せない方がいいとの判断だ。(・・・飛雷神の術を使わんと、間に合わんかったな)前にラーメンを食べに来たとき・・・背中を叩いた時、一応マーキングしておいたのが役に立った。『・・・チャクラごっそり減ったから、短期決戦でいかないと不味いことになるかも』(そこそこの体調で使ってもこれか。まあ、前よりは大分ましだが)どうにかせんといかんか。それよりもまず。(・・・白、治療を頼む)『了解です』多由也を安全な場所へ移す事が先決だ。そして、背後の4人を最速で倒す。「てめえ、無視してんじゃねえ! 質問に答えろ!」「・・・・」答えず、煙玉を使う。「!?」直後に影分身を使い、多由也を運ぶ。見た限り、急所は外れているから、白の所まで連れて行けば大丈夫だろう。(応急処置程度だが、掌仙術が使えると聞いていたし)任せるしかない。いざとなれば、綱手に借りを作ってでもどうにかする。じゃ、やりますか。「・・・さてと」一息いれて、意識を変える。『負けるなよ?』当たり前っす。・・・ちょっと、怒ってるし。『随分と優しいことじゃのう』賢く生きられないような・・・ああいう多由也みたいなタイプは、好きだからね。だから。「殺し合おうぜ、音の4人衆!」ここはガチでぶっ飛ばします。~宣告と同時だ。煙の中からクナイが一つ、空に向けて飛び出した。「!?」それに釣られ、視線を上へと移す4人。だが、何かに気づいたのか、君麻呂が叫んだ。「気を付けろ!」直後、煙の中から今度は手裏剣が飛び出した。真横から弧を描き、4人の元へと飛来する。「くっ!」その表面に付いている起爆札を視認したと同時に、上へと跳躍。回避する。「ぐうっ!?」爆発。「そこ、ぜよ!」そして即座に反撃に移る。鬼童丸が後ろに飛び退きながら、蜘蛛穿弓・凄裂を発動。矢を番え、煙の中に佇む影へと撃ち放った。凄まじい速度で放たれた矢は、標的へと吸い込まれ、「命中・・・!?」爆風が消えると、そこには巨大な矢に貫かれたナルトの姿があった。口から血を流している。だが、「・・・覚悟はいいか?」一言呟いた後、ボンと煙を立てて消え去った。「なっ」分身体の言葉に気を取られ、しかも直後に消えた事に驚こうとした瞬間だ。「影ぶんし「愚か者め!!」」その頭蓋を打ち砕かんと、上から勢いよく手刀が降ってきた。「ガっ!?」避ける間もなかった。落下エネルギーが上乗せされ、そしてチャクラで強化された振り下ろしの手刀が、鬼童丸の頭部に直撃。そのまま前のめりに倒れたまま、起きあがらない。気絶したようだ。だが、残心は怠らない。気絶を確認したあと、ゆっくりと残りの3人の方へと向き直る。「ちっ、投げたクナイに化けてやがったな!?」左近が叫ぶ。フェイクで上側に投げたクナイ。注意をそらすための囮に見せたが、アレこそが本命。手裏剣と、それに付けられた起爆札に注意を集中させて、上からだ。裏の裏を付いたのである。加え、爆発音と爆風がが注意力を散漫にさせてくれる。「一人目・・・次!」ナルト(変化モード)は左近の言葉に答えず、今度は次郎坊へと肉薄する。「崩掌!」まともに当たれば、大樹をも破砕する次郎坊の一撃。だが、当たらなければどうということもない。「見える!」元々が、相手の攻撃を正面から受け止めず、逸らして防ぐ事に特化した拳法。次郎坊が使う大威力低速度を信条とする羅漢拳との相性は抜群と言える。大きな力も、当たらなければ意味がない。次郎坊の掌打、その腕の側面に掌を引っかけ、円を描く軌道で外へと逸らす。少し前、カブトに対しても使った技。同時、その勢いを利用して、逆の手で顎をかち上げる。だが、ここからは、前回と違う。「ふっ!」かちあげられた後、もとの位置に戻った顎へ、左右の掌打を交互に叩き込む。「・・・!?」左右に脳が揺らされ、一瞬だが脳震盪を起こす次郎坊。そこからは、一瞬だった。「憤!」まず懐に踏み込み、渾身の震脚と同時、崩拳。「破!」鳩尾への一撃に硬直する次郎坊。間髪入れずにその側面に回り込み、震脚とともに鉄山靠をぶち当てる。「覇ぁ!」そして、とどめ。体勢を崩し、がら空きになった背中に向かい、一歩、震脚。・・・背面は脂肪が薄く、筋肉にも守られていない。前面よりは、背骨や臓器までの距離が近い。急所と言える。そこに、渾身の双掌打を叩き込む。「ガアアアッ!?」震脚による打撃と、チャクラによる強化を併用した三連撃。「10年早いんだよ!」コマンドが難しい、アレである。・・・そして、実践するのも難しい。体重移動と震脚を会わせるタイミングがシビアすぎるからだ。少しでもずれると、手打ちだけの打撃になってしまう。「二人目、だ」「「・・・・」」一瞬にして、二人を撃破したナルトに、警戒態勢を取る左近と君麻呂。対峙しながら、数秒間にらみ合う、そして、君麻呂が眉間に皺を寄せながら、訪ねる。「何故、邪魔をする?」「・・・・・」ナルトは、答えない。「お前が誰だかしらないが・・・多由也とは何の関係も無い筈だ。あの女に家族はいない。味方する人間などいないはずだ・・・お前は、何者だ? 何故、僕達の邪魔をする?」その問いに、ナルトは空を見上げる。「・・・夢をみようと思った」「何?」「ゴミのような世界で・・・それでも、夢をみようと思った馬鹿者がいた。だから俺は戦う。命を賭けて」視線を元に戻す。その中には、とある意志の光が灯っていた。「確かにあの少女は一人なれど、今此処には似たような夢を見ている者がいる・・・同じような志を持つ友がある。だからこの一戦だけは、少女のために」両手を広げた直後、印を組む。「一心不乱の友情のために! 俺は少女に手を貸そう! 理由などそれで十分だ、貴様らなどに俺の心友は殺させん!」「音隠れの里を、大蛇丸様を敵に回す事になってもか!」「だからどうした!」印を組み終え、術を発動する。風遁・大突破。「くあああああぁぁぁ!」念入りにチャクラを篭めた、暴風に左近が飛ばされていく。だが、君麻呂は地面に刀を突き刺し、耐えている。そして暴風が収まった。目と目が合う。・・・飛ばされた左近はすぐに戻ってくるだろうが、それまでは、1対1。「さあ、踊ろうか!」「ほざけ!」君麻呂が呪印を発動させる。同時、ナルトは神速で踏み込み、君麻呂へと間合いを詰める。「舐めるな!」迎撃に、椿の舞を繰り出す。連続刺突。それを、ナルトは掌で逸らす。「どうしたあ!?」「くっ!」防ぎきった後、円を描くように走り、また激突。だが、君麻呂の体術が変化する。柳の舞。風に揺れる柳のように、流麗かつ不規則な連続体術が繰り出される。だが、ナルトはその流れに逆らわず、動きに合わせて運足を組み、舞の切り返しの一瞬を狙い、掌打を当てる。「破!」それは骨の膜に阻まれ、ダメージにはならない・・・筈だった。「ぐっ!?」だが、そこは九尾流。外部の硬度に関係なく、そしてチャクラを使わず、特殊な打撃法を用いることで、ダメージを与える事ができるのだ。元より、内部を破壊するのを目的とした拳理を持つ拳法(六話参照)。その意味では、君麻呂の天敵と言える拳かもしれない。一歩下がった君麻呂に、ナルトは追撃しようとするが、「!?」悪寒を感じて、飛び下がった。直後、君麻呂の全身から、骨という骨が飛び出す。「唐松の舞」放射状に、骨が飛び出ていた。防御用の舞だ。その姿はまるで、「・・・ハリネズミかよ、ちくしょう・・・でもな!」その姿をと、戻ってきた左近を見て、ナルトはにやりと笑う。「こういうのはどうだ!?」印を組み、再び風遁・大突破を使う。「またかああああああぁぁぁあ!」左近がまた吹き飛ばされた。戻ってきて着地した瞬間を狙われたので、避けられなかったのだろう。「・・・僕には通じない!」先ほどと同じ状況だ。だが、ナルトは表情を崩さない。「こっからがお楽しみだ!」風が止まないうちに、「我愛羅、技を借りるぜえ!」と叫びながら、素早くまた印を組む。「風遁・封刃縛風!」直後、風が変化する。ハリネズミ状に広がった骨に、風の乱流が絡みついたのだ。「・・・なっ、動けない!?」尖った骨に、風が複雑に絡みあう。巻き取られた君麻呂は、動きを封じられた。「はあっ!」そしてまた印を組み、今度は地面を両手で叩く。同時、君麻呂の直下から、爆発するような勢いで上昇気流が吹く。「ぐっ!?」その下から吹き上げる爆風に耐えきれず、君麻呂が宙に浮かされる。更に絡み合う風の中、ナルトが懐から起爆札を取り出し、叫ぶ。「仕上げだ!」唐松の舞を解いて骨の膜で防御してはいるが、風は未だ君麻呂を束縛している。そして放たれた数枚の起爆札が、風に乗って君麻呂の元へと運ばれた。そして風の中心部、君麻呂の元へと起爆札が届いた瞬間、ナルトは両手をパンと叩き合わせ、叫ぶ。「風・塵!封・爆・札!」術名を叫んだと同時、幾重にも重ねられた起爆札が、一斉に爆発した。「くっ・・・」爆発が収まった後、全身から煙をあげている君麻呂が、地面に倒れ伏す。「爆発によるダメージは防げても、爆圧の衝撃によるダメージは防げないだろ」我愛羅さんの言葉です。骨で防御した結果、外傷はないだろうが、内部にはダメージが残っている筈だ。爆圧も、ある程度は内に向かうようにした。四方八方の爆発による衝撃だ。脳震盪のせいで、視界は今ぐちゃぐちゃになっているだろう。「俺の勝ちだな・・・・ん?」と、何かに気づいたように、遠方を見る。「暗部か。くそ、こんなときに」呟き、焦るようにきびすを返す。・・・全部、嘘である。先ほどからカラータイマーが鳴っているのである。チャクラが限界なのである。思ったよりてこずったのである。(仕方ない、といった風に逃げよ)これもハッタリだ。虚勢とも言う。みっともないし。苦手意識を持ってくれれば良し。「じゃあな」その場をひとまず去った。(ひとまず、白の元へと戻るか)『そうだね』本当に疲れたよ・・・