「・・・ラーメン!」「俺の名だ。地獄に落ちても忘れるな」 小池メンマのラーメン風雲伝「暗闘~黒板に隠された秘密の塩」より抜粋それから、一週間後。訓練が終わり、4人は宿に戻ってきた。約束の日になったので会いに来たのだが、肝心の本人がいない。代わりに、「・・・エロ仙人!?」「ネギ・・・」(っち。一服もられたか)壁によりかかって何とか立っているエロ仙人。(説得するって言ってたじゃん)あまりのアレっぷりに思わずカンクロウ弁になってしまう。「はあ・・・」ため息を吐いてやる。何やってんですかチミは。嫌味を言おうとすると、シズネさんが慌ててた様子でやってきた。「自来也様!? ・・すいません、綱手様は・・・」「すまん。ワシも一服もられて、この通りの様だ」二人の話を聞く。シズネさんの方は、止めようとしたが腹に一撃くらって気絶させられたらしい。自来也の方は無味無臭の薬を飲み物に混ぜられたらしい。ま、確かにそりゃ気づけんか。手出したら藪蛇になりそうだったし、放置しておいたけど、それが裏目に出たか。(それも仕方ないことだな)あれこれ手を出す気もない。細かい所まで気にして動き回るのは性分に合わないし。それに、基本他人の俺が割り込んでどうにかなるとも思えんし。(でも、ここはまあ俺がやるしかないか)「・・・取りあえず、シズネさんは自来也さんの治療お願いします・・・俺は先に行ってますから」「春原さん!?」「キリハも、此処に残っててくれ。相手が相手だし・・・じゃあ行こうか」「・・・いいのか、の?」自来也が聞くが、俺は肩をすくめて答える「まあ、仕方ないでしょ」状況が状況だ。でも、これだけは言っておこう。「これっきりだからな・・・いこうか、マダオ、キューちゃん」「「応」」これで自来也に借りは作れた。後は、約定を完全に認めさせるまでだ。付きそうのはこれっきりにする。隠れ家の場所もばれてはいないし、木の葉に戻ってからはラーメン屋でしか顔を合わせないようにしよう。後は、次代火影である綱手とも約定を定めるだけだ。頼まれたのもあるが、元々そのためについてきたのだし。ギブアンドテイクという奴だ。それで完全に安心できる訳でもないが、留め金にはなる。馴れ合いはゴメンだ。そもそも、俺と自来也では守るものが違う。俺にとっては、ラーメン。自来也にとっては、木の葉隠れの里。道の途中で接しはすれど、何れは分かたれる。当然だろう。目指す場所が違うのだから。接点は作るが、属しはしない。それが互いにとっての最上だろう。俺は、忍び稼業で生きていくつもりは無い。期待されても無駄だ。暁対策に向け、互いに協力はするが、それだけだ。三代目にも告げた。戻る気は無い、と。そして、恐らくはピンチな状況に陥っているだろう、綱手の元へ急ぐ。「あっちだな・・・」場所はすぐに分かった。戦闘の余波か、何か向こうから破壊音が聞こえてくるからだ。ちなみに、キューちゃんは幻術への対処策として、俺の中に戻っている。外に出ているのはマダオだけだ。「・・・ちょっと待って欲しい」「?」そのマダオが、何か意を決した声で俺に提案する。「せっかくの男同士ですぞ。もったいないとは思わない?」「・・・イヤな響きがするな。で、何が言いたい?」「それは・・・・」「フフフ、相変わらず、血に対する恐怖は抜け切れてないようねえ・・・」震える綱手を見て嗤う大蛇丸。だが、急に何かに気づいたかのように、右の方を見る。「ちっ、新手か・・・・!」飛んできた手裏剣とクナイを、カブトが弾く。そのまま、綱手から距離を取る。そこに、二つの影が降り立った。「「そこまでよ」」「アナタは・・・!」「君は・・・・!」こちらの姿を見て、大蛇○とクスリメガネが驚く。「「ロジャー・サスケ・・・!」」ともう1人。警戒の態勢を取る大蛇○とクスリメガネ。「「でも・・・・」」と前置きして、二人は俺とマダオを指さす。心なしか、その指は震えていた。「「・・・何故、女装しているんだ(の)!?」」「・・・は?」背中しか見えてない綱手が、何それ?といった風に呟く。「ついに来た、やっと来た。新世代超ヒロイン伝説でござる」「いくわよ、ロジャー子」別名ナル子とも言う。その口には艶やかな紅が引かれていた。「ええ、お姉様」マダオの口にも、紅が引かれていた。グラサンとのコラボレーションが良い感じにキモさを引き出している。これが、マダオの提案した作戦であった。大蛇○はキモイ。超キモイ。対峙するのに、多大な精神を使う。それに、力量も凄い。超ヤバイ。これは、それに対抗するための画期的な策である。化け物を倒せるのは、より強い化け物だけ。つまり、オカマを倒せるのは、より強い化け物だけ!『いや、その理屈はおかしいんじゃ・・・』いやだってこの世界の強い忍者って、人としての大切な何かを捧げてるの多いし。存在の引き算ってやつで、力と尊厳を等価交したんだよきっと。『本気か?』全部冗談です。いや、意表をつくのと、時間稼ぎが狙いですけど。ここで大蛇○を殺るわけにもいかんし。音の残党に破れかぶれに攻めてこられても困る。あと、音の里はできれば対暁戦の時に利用したい。それまでのまとめ役が必要だ。「・・・・何なのよ、アンタ達」「いやねえ、他人行儀で。同じオカマ同士じゃない。もっと奔放になりましょう!?」俺の言葉に、クスリメガネは大蛇○とこっちを見た後、虚空を見上げながらため息を吐く。「・・・何か、帰りたくなってきた」心底疲れた声を出すクスリメガネ。曇っている眼鏡が余計に哀愁を誘う。「ふふふ、何か言っているわよお姉様」「きっと照れているのよ」「いや、もう、それでいいよ・・・」諦めの声を出すメガネ君。「それで、何のよう? いつもとは違った格好だけど・・・目的はあの死の森の時と同じかしら?」大蛇○が聞いてくる。確かあの時は少女の盾、と言ったか。でも。「いや、今回は助ける相手が少女じゃないので趣向をこらしてみました・・・どう?」といいつつ、背後の綱手に紙を投げる。書かれている内容はこうだ。『自来也、シズネ、キリハは後で来る』「お前・・・・!」こっちの正体に気づいたのか、背後の綱手が驚いた声を出す。あと殺気も出してくる。いやだって少女じゃないじゃん。「巫山戯ているの・・・!?」大蛇○が怒りの声と共に、殺気を放ってくる。「いつにない真剣な声ね・・・でもアナタに言われたくないわ」「それぐらいで怒るなんて、典雅ではありませんわね。オフォフォフォフォ」もう誰がだれやら分からない。『・・・はあ』心の中のキューちゃんはまた眉間を抑えている。小じわになるよ。『誰のせいだ』油断した自来也のせいです。キューちゃんと話していると、大蛇○が動き出しました。「もう、いい・・・全員、死ね!」宣言と共に、森の中から口寄せの蛇が現れた。その数、3体。どれも、大きい。(前もって潜ませておいたのか)唸りを上げて、襲いかかってくる蛇。俺は避けようとするが、咄嗟に身体が動かなかった。(金縛りの術か。だが!)「甘いわ!」大蛇の牙が届く前に、力任せに術を振り切る。(くそ、良いタイミングで術を使ってくるな)下忍でも使える基本忍術。下忍レベルなら拘束はされないが、カブトレベルの術者に使われると一瞬だが硬直してしまう。今のはちょっと危なかった。(舐めてかかれんな)そういえば、多対多の戦闘は始めてになる。(まずは、影分身を使っておくか)「影分身!?」驚く綱手の前に、護衛として一体置いておく。(潜んでいる暗部がいつ襲ってくるとも限らんからな)前に追撃出来なかったツケがきている。一方、大蛇○の方は口寄せの蛇を前面に出して、自身はこっちに近づいてこない。腕を使えない今、勝ち目は無いと見たか。慎重になっている証拠だ。力量を知られている故の対応だろう。油断の欠片もない大蛇○。手傷を負っているにしても、そう容易く御しきれる相手ではない。3体の蛇が織りなすコンビネーションも厄介だ。螺旋丸を使うにしても、一瞬だが溜めが必要になる。その隙もない。(百戦錬磨ってことか)腕が無い程度、やり方次第でいくらでもカバーできるか。引き出しの多さは現存する忍びの中でもトップクラス。機を待つしかない。マダオの方はカブトを抑えている。「こっちだよ!」「なんの!」こちらはガチの近接戦闘だ。基本、チャクラのメスを武器とした近接戦闘が得意なカブトは、もちろん体術のレベルも高い。ガイみたいに体術専門の忍びほどではないが、通常の上忍よりも高い。だが、マダオもさるもの。身体能力やチャクラ量は本来のものと比べ大分落ちているが、腐っても元4代目火影だ。忍界大戦を生き延びた猛者。こちらも、潜ってきた修羅場の量が違う。上忍にしても速いカブトの猛攻をしっかり目と勘でとらえ、回し受けで凌ぎ、逸らし、避ける。(受ければ斬られるからな)手のひらでカブトの攻撃する腕の側面を引っかけ、攻撃の軌道を外側に逸らし続ける。あれだと、連続攻撃もし辛い筈だ。攻撃を逸らされると言うことは、重心が崩されるのだから。防戦一方にはなっているが、時間稼ぎはできている。勝つことはできなそうだが、負けもしないだろう。「っとお!」森の方から飛んでくる、複数のクナイと手裏剣群を避ける。護衛の忍びだろう。気配を察知するに・・・3、の、4人か。木の葉崩しの後だし、音隠れの方もあの戦争における消耗が酷いということだろう。(どれも中の上といった力量だけど、この人数なら何とかなるか・・・!?)「春原さん!」「綱手様!」後方から、シズネとキリハの二人が駆けつけた。(やばい!)それを見た音隠れの暗部が、一斉に手裏剣とクナイを投げつける。そこからは一瞬。マダオと視線を交錯して、目配せだけでスイッチ。俺がカブトを抑え、マダオはキリハの方を対処する。シズネさんの方は対処できるだろうとしての判断。キリハに飛来する手裏剣とクナイに向け、マダオはクナイと手裏剣を投擲して弾き落とした。投擲術の腕は落ちていないらしい。神業だ。(そういえば、飛雷神の術を有効に使うために、投擲術は徹底的に鍛えたと言っていたな)流石の腕である。「隙あり!」よそ見をしている俺に向け、カブトがチャクラのメスを突きだしてきた。「見せたんだよ」だが、そのよそ見はフェイクだ。隙見せは誘い。実際は、注意を逸らしていない。突き出された手を左手で外に逸らしながら、左足を一歩踏み出す。そして、右の掌底で顎をかち上げる。かこん、という打撃音。カブトの視界が上にそれる。同時、左足を震脚しながら、左の掌打をカブトの腹に繰り出す。「ぐっ!?」こちらは反応され、ガードされる。だが、威力は殺せなかったのか、後方へと吹き飛ばされる。一方、あちらではマダオが大蛇○の口寄せ蛇を抑えていた。そして、キリハとシズネさんが近寄ってきた音の暗部と対峙。「ふっ!」仕込み針による毒弾を受け、1人が倒れ伏す。そして、後方から忍び寄った1人は、気配を察知したシズネさんの忍法・毒霧の術を真正面から受けて、こちらもまた倒れた。(やっぱり、毒使いは初見の相手だと強いな)一撃受けたら終わり、っていうのが容赦ない。一方、キリハの方は。「つっ!?」防戦一方だ。だが、手を貸せる状況ではない。シズネさんは残りの1人と対峙しているし、マダオも蛇の相手でせいいっぱい。こっちも、カブト相手では気を抜ける状態ではない。互いに油断なく対峙している今、一瞬の隙が致命傷になっていてもおかしくない。ある程度のレベル、致命打を持つような力量に達する者同士の死合では、互いの地力の差など、一瞬の隙があれば埋まってしまう。(チャクラのメスによって心筋とか肺を裂かれるのは不味いしな)呼吸が出来ない状況では、追撃もかわせないかもしれない。だから、俺は目の前のカブトに集中する。それに。「死ね!」突き出された暗部のクナイ。「死なない!」それを、キリハが手のひらで受け止める。「ぐうううっ!」血が吹き出るが構わず、そのままその暗部の腕を力任せに引き寄せる。そして、空いているもう片方の手のひらを突き出した。「あれは・・・・!」成り行きを見守っていた綱手が、驚きの声を上げる。一週間前に約束した、あの術だ。「螺旋丸!」正真正銘、全力全開の螺旋丸が、音の暗部を吹き飛ばした。(本当に、やった・・・)修行の段階では五分五分だったのに。それを、実戦でしかも掌を貫かれ激痛に耐えながらも完成させるとは。本番に強いというレベルじゃない。これが天性か。思わず笑みが零れる。『油断するな!』(分かってるよ)気は抜いてないから大丈夫・・・・!?「一体、行ったよ!」マダオが相手していた蛇が、一体こっちに来た。(ちい、マダオの攻撃能力が乏しいと見て・・・!)残りの二体で十分だと思ったのだろう。一体を、こちらに向けてきたか。「だが甘え!」と螺旋丸を繰り出そうとするが、また身体が動かない。「同じ手を食うか!」先ほどより速く、その拘束から抜け出る。そして蛇の突進を跳躍して避けた後だ。再び正面から向かい、螺旋丸を発動する。「これで終わり・・・・!?」そして、螺旋丸を繰り出そうとした時。蛇の中から、残りの1人が飛び出てきた。「大蛇丸様、万歳!」そして俺は、音忍が全身に纏っているものを見て戦慄する。(大量の、起爆、札、まずっ・・・・!)避けきれない。一瞬後、爆音と共に、視界が閃光に染まった。~キリハside~「春原さん・・・・!」口寄せの蛇も巻き込んだ、自爆。あの爆発の規模だ。避けられたとも思えない。「他人の心配している暇はないよ!」呆然としている私のところに、カブトさんが襲いかかってきた。「くっ!」まともに相対しても勝てるとは思えない。そう判断し、木の葉瞬身を使って距離を取る。(悔しいけど、私じゃかなわない)カカシ先生に匹敵するレベルと聞いた。(自来也のおじちゃんが来るまではもたせないと・・・!)と決めたが、それも無理そうだった。(速すぎる・・・!)瞬身後の所を捉えられた。間合いを詰めてくるカブトさんを見て、私は悟った。(この間合い、逃げ切れない・・・!)「殺った!」勢いのまま突き出されたメスが、私の胸を貫いた。「・・・・!?」その直前、カブトさんの動きが不自然に止まる。「隙あり!」混乱していた私は、咄嗟に掌打を突き出す。「ぐうっ!?」それを避けられず、吹き飛ぶカブトさん。「くっ、今のは、金縛りの術?」「お返しだ」驚くカブトさんの後方、まだ漂っている爆風で起きた煙の中から、声がする。「春原さん!」生きていたんだ、と安堵のため息を吐く。だが、煙が晴れた先、現れたその姿を見て、硬直する。「・・・・・・・・・え?」息が止まったかのように錯覚する。あちこち跳ねている、金髪の癖毛に、青い瞳。「はっ!」私の隣に降り立つ。その姿を見て、鼓動が早くなる。小さい背丈に、何処かで見た顔立ち。夢にまで見た人の姿が、あった。~side out~危なかった。発動前のなり損ないの螺旋丸を盾代わりにしないと、結構なダメージを被っていただろう。まあ、余波で変化が解けてしまったけど。(仕方ない、か)隣で硬直するキリハを見て、苦笑する。(ま、遅いか速いかの違いだし)「説明は後だ」取りあえず今やる事は一つ。まず、口寄せの術で例の布を取り出す。途端、カブトが警戒の態勢に入る。「一度殺されても」それを聞いたカブトが、詠唱の間に逃れようと、俺から距離を取ろうとする。(大蛇○から要注意術として、事前に詳細を聞いていたんだろうが)「今に見る夢は同じなり、以下省略!」「ええ!?」事前知識が仇となったな!術の発動に、詠唱は要らないんだよ!「精霊麺!」不意をつかれたカブトは避けきれず、封印術を組み込んだ布に腕を拘束される。「キリハ!」隣のキリハに視線を送る。「はい!」キリハは俺の呼びかけに応える。そして、一緒にカブトの元へと走り出す。そして、横並びに走るキリハに、左手を差し出す。「いくぞ!」「・・・了解!」握手するためではない。キリハは俺の呼びかけに応え、怪我をしていない右手の方をこちらに差し出す。これは、そう、訓練中に冗談で語った、双子の協力技だ!互いにチャクラを放出し、回転させ、留める。大きさは二人分、その更に倍だ。喰らえ!「「双龍・螺旋丸!!」」螺旋の大玉が、封印の布ごとカブトを吹き飛ばした。