「・・・麺のメンマのラーメンは、銃弾よりも強いのさ」 劇場版・小池メンマのラーメン日誌「美味という力」より抜粋翌日。何故か俺はキリハの修行を手伝うことになっていた。「ワシは綱手を説得するから」らしい。あのガマじじい、いつかコロス。(みえみえ過ぎて嫌なんだよ、あのエロ仙人の気遣いは)「よろしくお願いします、春原さん!」でも、勢いよく頭を下げるキリハに今更無理だとも言えない。(・・まあ、仕方ないか)了承はしたんだし。報酬は後でせびるが。高い酒とかで。「うん、じゃあ始めようか、キリハ」名字ではなく、名前で呼びます。「名前で呼んで」と言われたので。それなんてフラグ?それはともかくキリハさん。額当ての上に鉢巻きを巻いているけど、それはダサイのでよしなさい。「え、でも特訓なんだから・・・」お約束はいいから。ていうか誰が教えた。もしかしてガイか。あるいはリーか。大穴はカカシか。「分かりました・・・」としょぼくれて、鉢巻きを外すキリハ。やっぱり天然なのか。ま、まあここは気を取り直して。「じゃあ、始めようか」・・・とは言ったものの。何を教えたらいいのやら。(どうしようか、マダオ)(うーん、まずはアレを教えたら?)アイコンタクトで確認。ああ、あれか。その方が早く修得できるかもな。「えーと、手の平の中心部に何か書いて、チャクラの集中点を示すっていう方法は知ってる?」「はい。自来也のおじちゃんに教えて貰いました」「で、だ。あれに工夫をこらすとこうなる」俺はキリハにその書いた文字を見せる。「『麺』、ですか」「そう、麺」頷き、俺はキリハから少し距離を取る。「そして、これに魂を注ぎ込む感じで・・・!」チャクラを放出し、そしてスープをかき回すかのように回転させ、その場に留める。「凄い・・・」「とまあ、こんな感じ。まあ、これはあくまで補助用だけど、実戦でも使えるよ。手のひらにさらされと書けばすむことだけどね」愛用の筆を取りだして言う。「イメージしやすいように、力を注ぎ込みやすいように、何かを書く・・・キリハも、何か書くかい?」「えっと」首を傾げて考えるキリハ。「じゃあ・・・これで」「これは、うずまき?」螺旋ともいう。ペロペロキャンディーの中心のアレ。「はい。『螺旋』丸ですし。あと、母と・・・兄の名字が『うずまき』だと聞いたので、私はこれにします」少し悲しそうな顔で、それでも笑うキリハ。うう、胸の奥が痛むぜあとマダオ。鼻水垂らして泣くなきめえ。(だってだってだって!)急に乙女になるな。え、何、キュンと来たから仕方ない?知るかヴォケ。「・・・それじゃあ、サラサラサラリと」手のひらに渦巻きをかく。くすぐったいのか、キリハの肩が跳ねる。「はい。じゃあ、乾くまでちょっと待ってね・・・あ、あと構えについてなんだけど」「構え、ですか?」「そう。キバ戦で使った時の構え。右脇に抱え込むかのような構えだったっけ。あれがいいね。逆に、こういう構えはよくない」と左手で右手首を掴み、右手の手のひらを上に向ける。これじゃあまるで操気弾。死亡フラグになっちゃいます。あと、口に出しては言えないが某カ○シ上忍と同じになっちゃうし。(・・・かませ犬属性?)あ、ほんとだ。良いところに気がつきましたね、マダオ君。「キバ君と戦った・・ああ、中忍試験予備戦の、あれですか。」「そう長い間留められない以上、発動から当てるまでの時間は短い方がいいし。そして、抱え込む事で相手の視線を防げるから、術の正体を悟られにくい」「そうですね」「あと、邪道だけどこんな方法もある」まず影分身を発動する。「あ、影分身の術」「そう。それで、こうやって」原作のナルトと同じ方法だ。チャクラを出す役と、抑える役を2分する。「分割思考、展開・・・なんちて」「いや、思考は分割できてないでしょ。それに、本格的にやるにはミニスカニーソが必要になるけど・・・はく?」「きめえ」「噛むぞ?」「すんません」笑顔で八重歯剥き出しにするキューちゃん。即座に謝るマダオ。「あの・・・」あ、ゴメン話がそれたね。「まあ、こんな方法もあるって事。おすすめはしないけどね。馬鹿みたいにチャクラ使うし、発動時に影分身が必須になるようじゃあ、使い所が限られてくるからね」「そうですね。1人で発動できた方が、使い勝手が良いです」不満顔で頷くキリハ。「・・・あと、そういう方法では勝った事にならない?」「はい。螺旋丸は以前から練習していた術ですから、1人で完全に発動できるようにならないと・・・勝った事にならないです」真剣な表情で手のひらのうずまきを見つめる。「意地じゃの」「意地です」むん、とガッツポーズをして気張るキリハ。「じゃあ、墨も乾いたようだし、やってみようか」「はああぁあ・・・!」キリハ頑張ります。完成一歩手前までのレベルには至ってるけど・・・もう少しって事か。全力で放出すると、未だに留めきれてない感じ。でも、うずまきマークが効果あるのか、前にみたアレよりは大分コントロールできている。「全力で放出し、留める・・・!」が、失敗。「きゃあ!?」抑えきれなかったチャクラが散乱し、その余波の風に弾き飛ばされる。だが懲りずに、また立ち上がり続ける。それを少し離れた場所で見ている。まあ、1人で集中するのが一番だからね。チャクラコントロールが肝の術だから、これ以上こっちが教える事もできないし。あとは、本人の感覚と技術次第。まあ、それにしてもだ。「懐かしいなあ・・・」「そうだねえ・・・」失敗して弾き飛ばされるキリハを見て、自分の修行時代を思い出す。1人森の中、必死に頑張ったもんだ。あと、『麺元突破・螺旋砲弾』の術の開発中の時にあったことも思い出した。「最初、失敗して酷い目にあったもんなあ・・・」「あれはもう局地的な台風そのものだったねえ・・・」分かりやすくいうと空子旋だった。風龍のケツ触ってないのに・・・。余波で部屋がえらいことになるし、もう散々だった。「しかし、見ているだけっていうのもな。時間がもったいない」「こっちも、何か術の開発でもする?」「そうだなあ」「案としては、こういうのあるんだけど、どう?」言うと、マダオは印を組んだ後、両手を上げて術の名前を言う。「ばーりーあー」言葉と共に、術を発動。激しい風の壁が、マダオの周囲を包んでいく。成るほど、確かに使える事は使えるだろう。だがしかし!「人生守りに入ってるやんけー!」術が切れたマダオの顔面に、ドロップキックをかます。「チグリス!?」反応できなかったマダオが顔面に蹴りを受け吹き飛んでいく。俺は倒れ込むマダオに駆け寄り、襟元を掴んで引き起こす。「てめ、そんな事で視聴率取れると思っとんのか!芸なめとんやないで!」怒りのあまり、関西弁になってしまう。「もっと派手に!そんでもって漢気でも女の柔肌でもええから、色気を前面に出す方向で!・・・ということで、キューちゃんが見本を見せてくれるようです」無茶振りする俺に、キューちゃんは真っ赤な顔で「せんわ!」と怒鳴る。「えー・・・」俺とマダオはキューちゃん白けた視線を送る。「そもそもこの外見でそんなこと出来るわけなかろう!」と、自分の胸を叩くキューちゃん。「えーっと、本来の姿ならできるの?」「当たり前じゃろう」ふふんと胸を張り偉ぶるキューちゃんだが、無い胸を張られても痛ましいだけだ。おいたわしや。(・・・ってそれどころじゃなくて!)「マジで・・・!?」あの大きい狐の姿で色気を出す?え、どういう事?「む、そういえば一度も戻った事なかったのう・・・やってみるか」「ちょ!?」こんなところで!?と叫ぼうとするが、時既に遅し。「変化!」ボンという音と共に、キューちゃんの姿が煙りにつつまれる・・・アレ?(大きくならない・・・?)と不思議に思う時間もなかった。煙が晴れた先には、「どうじゃ」桃源郷が存在していた。背が高くなっただけではない。長く美しい睫に、切れ長の赤い瞳。顔には、健康的な白い肌の上に、天上の桃のような美しさをもつ、形よく色もいい整った唇が浮かび上がっている。腰まで伸びて風に棚引く、絹のような金の髪を手でかきわける。仕草が色っぺえなおい。小さくなく、そして大きすぎない、着物の上からでも分かる美しい胸元の稜線。折れるかという程に細く、たおやかな腰。其処には、この世全ての美そのものが顕現していた。だが、「あ」呟きと共に、変化が解けた。煙が晴れた先。そこには、子供ながらに大人なセクシーポーズを取っている童女キューちゃんの姿があった。髪も元に戻ったので、手が空しく虚空を彷徨っている。何か盆踊りのワンカットみたいなポーズ。夏だなあ、って言ってる場合じゃねーや。「「「・・・・・」」」あまりの状況に、3人全員が固まる。(なんか、何ていったらいいのか分からねえ・・・!)子供セクシーポーズみたいな何かを取ったまま、赤い顔で固まるキューちゃん。予想外の事態に驚いているのか、微動だにしない。今の自分がどう見えてるのか、分かっいるようだ。爆発する火山の前のように赤い顔をするキューちゃん。迂闊な事はいえない。噴火は嫌で御座る。フォローについて、マダオとまたアイコンタクトで会議する。(お前言えよ)(やだよ)(俺が言うとまた噛まれるだろ)(いいじゃない。それも一つの愛の形っていうことで)(それは食料に対する愛なんじゃないか?)(食べられる男。いいじゃないかちぇりーぼーい)(ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!)会議らしく、脱線した。意見がまとまらない。そこに、キリハが何かあったのかと駆け寄ってきた。「何やってるんです・・・うわー、キューちゃんかわいー」と、キリハは顔を真っ赤にして固まるキューちゃんの頭を撫でる。「うーん、でもキューちゃんにはちょーっと早いかなあ」キリハは苦笑しながら、キューちゃんの頭をポンポンと叩く。「・・・う」「う?」「うわーんちくしょう、全員狐のうんこ踏んで死んでしまえーー!」キューちゃんはいつぞやの俺の口調をまねて、泣き真似をしながら森の方へ走っていく。「え、え、どうしたんですか?」いきなりの逃亡にキリハが焦る。「いい。何も語るな。言ってやるな。追ってやるな。武士の情けだ」忍者だけど。キリハの肩をポンと叩いて、目頭を抑えながら首を振る俺とマダオ。「え、でもここらへん熊が出るって聞いたんですけど、大丈夫ですか?」「・・・あー、それはあぶないねさがしてこよう(棒読み)」キリハの心配を聞いて、すぐさま後を追おうと走り出す。まあ熊より強いキューちゃんだから食われる心配はないけど、離れすぎるのもまずいしね。「・・・って、え?」ところが、キューちゃんはすぐに戻ってきた。片手で何かを引きずっている。「熊、取ってきたぞ」「うそお!? ってか早いね!?」襲ってきた所を、八つ当たりも兼ねて返り討ちにしたらしい。うん、弱肉強食だね。ということで、その日の特訓が終わった後。夜飯は、熊を材料とした即席ラーメンとなりました。他の材料は街で購入済みです。火力調節役はキューちゃん。昼頃から長時間煮込んでいます。熊で元の出汁を取ってラーメン、これぞ熊元(熊本)ラーメン!「熊本って何処さ」「肥後さ♪」「肥後って何処さ」「熊本さ♪」「だから熊本って何処さ」「船場さ。船場山には狸がおってさー♪・・・っていらんこと思い出した」狸を撃ったのは鉄砲どころか風の砲弾でしたが。でも砂狸さんの相手はもうしたくないでござんす。煮ても焼いても食えんし。むしろ泥団子になるし。もう戦う事はないと思うけど、次対峙する時があれば自分、木の葉隠れの里でちょっと隠れます。(あ、そういえば砂隠れの里で塩取ってきてないなあ)守鶴で思い出した。・・・いやな思い出し方だなあ。「それ、何かの歌ですか?」「へ? ・・・そう、童歌の一つで手鞠歌・・・って言っても分かんないか」「テマリ歌?」「そう、テマリの歌・・・って違う」思わずテマリ=猟師、狸=守鶴で考えてしまったじゃないか。そんな姉弟で繰り広げられる火サスな展開は心底ゴメンです。「手鞠ってこれさ」忍具口寄せの応用で、自作の手鞠を口寄せする。「これをこうやって、つきながら歌うんだ。やってみる? 息抜きも大事だからね」「はい」スープを煮込んでいる間、鞠つきで遊びました。優勝は、ジョン・ウー監督作品並にアクロバティックな鞠つきを披露したマダオに決定。歌も何故かロック風になってました。肥後ってここさー、イエイ!じゃないって。「自重しろマダオ。動きは凄かったけど」だがマダオは親指を立て、笑いながら歯を煌めかせ、言う。「心はいつでも15歳。愛されるボクでいたいのザヴォィ!?」ボディが甘いぜ! と、突っ込み待ちのマダオに一撃。続いて、キューちゃんとのツープラトン攻撃だ。「いくぞ!」キューちゃんがマダオの肩を掴み、こっちに飛ばしてくる。「ちょ、ちょ、ちょ!」そこを。「直径10mm! 氏ね、マダオ」飛びつき、足でマダオの首を挟み、地面に投げる。フ ラ ン ケ ン シ ュ タ イ ナ ー 。完全にきまった。頭から地面に突っ込んで、マダオは死んだ。「死んでないから・・・」「ち」しぶといな。「あはは、仲いいんですねー3人とも」一連の光景にを見た後で、俺たちの仲が良いと断定するキリハ。やっぱり天然なのか。さあ、出来上がったので食べましょう。「あ、美味しいですね意外と」「うん」店で出される洗練された味じゃないけど、野性味があっていい。野菜もあれこれ入れたから、栄養も抜群だ。なんか熊鍋ラーメンみたいになったけど、旨いことは旨い。「おかわり!」疲れて腹が減ってたのか、キリハがもの凄い勢いで一杯目を食べ終わりました。「はい。今日一日頑張ったから大盛りね・・・螺旋丸だけど、一週間以内に出来そう?」「・・・正直、わかりません。ですが、やってみま・・・いえ、『やります』」「その意気だ!」じゃんじゃん食べて!とどんぶりに大きい肉を入れます。食べ終わった後、全員で寝ころびながら夜空を見上げる。「綺麗ですねー」「そうだねー」マダオが星座について色々と説明している。キリハは興味を引かれたのか、その説明を受けながら「そうなんですかー」とわくわくした声で相づちをうっている。(『父親』っていうのは、こういうものなのかね・・・)前世も今も親父というものを知らない俺に、二人の姿は眩しく映った。横目で見ていた二人から目を正面に戻し、1人空の星を見続けている。すると、「ん?」不意に、手が握られた。横を見ると、キューちゃんが悪戯な表情を浮かべている。これはキューちゃんの手か。「そんな顔をするな。似合わんぞ」「悪かったね」といいつつも、手を握り返す。すると、キューちゃんはそういえば、と前置きしてある事を質問してきた。「・・・昼前のあれ、どうじゃった?」昼前のあれ・・・というと、童女セクシーポーズ事件?「そっちじゃない」「痛い」思いだし笑いしていると、手に爪が立てられた。そっちじゃないとすると、本来の姿という、あの美女姿の事か。「・・・うん、綺麗だったよ。今まで出逢った誰よりも綺麗だった」「・・・そ、そうか」ストレートな言葉が返ってくるとは思わなかったのか、キューちゃんの頬が桃色に染まる。でも、本当に綺麗だったし。「・・・でも、持続はできないみたいだね」「ん、まあ、そのようじゃのう・・・」(・・・ん?)何か、キューちゃんの返答に含まれたものを感じる。(何か知っている、いや感づいている?)それで、それを知られたくないのか、そういう感じがする。「キューちゃん?」「ん、なんじゃ?」「・・・いや、なんでもない」何を隠しているのか知らないが、言うべき時がきたら自分から言ってくれるだろう。(ここで追求する必要はない、かな)今は黙って、星の煌めきと手の温もりを堪能しよう。(本当、贅沢な時間の使い方だな)流れる風の音と共に、夜は更けていった。