目覚めよ、と呼ぶ麺あり。 ~小池メンマのラーメン日誌、序の前 「始まりはいつもスープ」より抜粋走り続けて数分。ようやく、キリハ達はサスケに追いついた。でも、「ガアアアアアアッ!」そこには、暴れ回る我愛羅の姿もあった。異形を剥き出しにして暴れ回る我愛羅に、サスケは苦戦しているようだ。「キリハと、サクラ!?」そこに、二人は割り込んだ。勢いをつけた蹴りで、我愛羅を吹き飛ばす。そこからは乱戦となった。3人は連携を駆使して幾度か攻撃をするが、尋常じゃない速度で飛び回る我愛羅を捕らえきれない。仮に攻撃が当たったとしても、その堅い砂の壁に阻まれて、ダメージを与えることができない。それに、回避にも気を配る必要があった。あの砂に一度でも掴まれたら、そこで終わりになるからだ。「くそっ、こいつのチャクラは無尽蔵か?それに、何だこのチャクラの質は・・・」「・・・サスケ君、ここは分が悪いよ。一端退こう」「・・・断る。それに、退いたとしても追ってくるぞ、コイツは」サスケの言葉を聞いて、キリハが呻く。確かに、今背を向けたら追ってくるだろう。この速度からいって、逃げ切れるとも思えない。何とか、隙を見て逃げ出すしかないのだが。「ギャハハハア!その程度かァ!?」「くそっ、化け物が・・・!?」サスケ君が忌々しげに呟いたと同時だった。辺りに響く炸裂音。同時、我愛羅から、幾本もの砂の槍がこちらに向かってくる。「っ!?」突き出された砂の槍。それを、三人とも何とか避けきった。「何て威力・・・!?」だが、その威力に戦慄する。後ろにあった巨木に大穴が空いている。あれが直撃すれば、身体にも風穴が空くことだろう。そのまえに、何とかしなければならない。「キリハ!サクラ!連携の五だ!」サスケが二人に告げる。同時に、手で合図をする。直後、サスケが我愛羅との距離をある程度詰める。中距離で攻撃を繰り返し、我愛羅の攻撃も避ける。写輪眼を持つサスケが相応しい役どころだ。「サスケ君!」そして、掛け声と同時に、サクラが我愛羅に向かって光玉を投げる。視界を眩まされた我愛羅。その動きが、一瞬だが止まる。「そこ!」「もらった!」その隙を狙い、全員でクナイを投げつける。「ソンナモノハキカネエ・・・!?」直後、突き刺さったクナイに付けられた起爆札が爆発。我愛羅が吹き飛んだ。「爆発は防げても、衝撃は防げないでしょう・・・!」「ひとまず、退くわよ!」煙の向こうに消えた我愛羅を確認し、下がる三人。「ああ、・・・っサクラ!上だ!」サスケが叫んだ。「オソイゾォ!」サクラは、サスケの言葉に反応して、上を見上げる。だが間に合わない。我愛羅は膨れあがった腕を振り上げ、サクラの脳天めがけ、降りおろす。間合いと腕の速度を認識した瞬間、サクラは硬直した。避けようにも間に合わないと悟って。我愛羅から伸びる、その振り上げられた巨腕が、サクラに叩きつけられる----「キャッ!?」「コレハッ!?」寸前に、我愛羅とサクラは横から吹く風で吹き飛んだ。「あなたは、砂隠れの!?」いのと試合をしていた、テマリ。見れば、その姿はぼろぼろだった。「・・・勘違いするな、お前等を助けた訳じゃない・・・っ!」痛そうに、脇腹を押さえる。先ほどの試合で痛めた箇所だった。「・・・我愛羅!もう止めろ!それ以上暴れると、元に戻れなくなるぞ!」テマリが、我愛羅へ向かって必死に叫ぶ。「ウルサイ!黙れ!今更なんのようだ!俺はもう戻れなくてもいい!強い奴をこの手で殺せれば、それで良い!」化け物とは違った語感。化け物と混ざっていない、素の我愛羅が言っているのだろう。「生きている実感を感じられれば、何でも良い!どうせ、お前も俺の事を化け物だと思っているのだろう!」「違う!」「口では何とでも言えるな!暗殺されようとした時も、姉さんは何も言ってはくれなかった!怖いんだろう、俺が、化け物だから。死ねば良いとでも思っていたんだろう」「違う!確かに私には何もできなかったけど、そんなことは思っていない」「は、どうだか!あの時の事を忘れたのか!?あの夜、里の少女と一緒に姉さんを殺そうとした俺を・・・憎んでいるんだろう!」「何度も違うと言っただろう、我愛羅!話しを聞いてくれ!」「ウルサイ!どうせ、俺は化け物だ!化け物には相応しい生き方がある!化け物の俺が、姉弟とは言ってもお前達と一緒にいれるものか」拒絶の言葉と同時、我愛羅は術を発動する。風遁・無限砂塵・大突破「きゃあっ!?」「くっ!」「くそっ!」二人の剣幕に硬直していたキリハとサスケ。そして、近くにいたテマリ。我愛羅と近い距離にいた、3人が吹き飛ばされ、その勢いのまま木へと叩きつけられた。「・・・・・ッ!」激突した衝撃に、呼吸が出来なくなる。痛みに、全身が硬直する。風に飛ばされて遠ざかっていたサクラが戻ってきた。そこでみた光景は、禍々しい黒が所々に入っている、砂の塊だった。「・・・クタバレェ!」キリハとサスケの方向へ向け、今正に放たれんとする、砂の槍。しかも、さっきより巨大な塊となっている。「危ない!」サクラが叫ぶ、2人は反応する。サスケは反応できたようだ。回避体勢に入っている。あれならば避けられるだろう。だが、キリハの方は違った。先の試合で内臓を痛めているせいか、動けない。痛みにまだ硬直している。サクラはキリハに向けて手を伸ばすが、届かない。離された距離は、あまりにも遠かった。サスケも無理だった。避けるので精一杯。迫り来るキリハの窮地に、気づいた時は遅かった。「キリハァ!」「キリハ!」~キリハside~(あ、これ死んだかな)どこか人ごとのように、心中で呟く。動こうにも身体は動いてくれない。知らず、口からは血が零れていた。木に激突した衝撃で、痛めていた内臓のダメージが更に広がったみたいだ。鈍い、だが大質量の痛みが全身を硬直させる。世界が遅くなったかのよう。ゆっくりと、私に向けて、砂の槍が近づいてくる。でも、目は閉じない。死ぬその時までは。(ゴメン、シカマル君。約束、果たせそうにない)ここにいない、先ほど約束した幼なじみに謝る。ぶっきらぼうでも、優しいシカマル君のことだから、私が死んだらきっと泣くんだろうなあ。それに、律儀だから約束は守ってくれてるんだろうなあ。心の中でもう一度謝り、もう一つの未練ごとを呟いた。(・・・せめて、兄さんに一度でもいいから会いたかったなあ)一度で良いから、会いたかったのに。その呟きも適わない事となる。そう、思っていた。「そこまでだ!」どこかで聞いた、誰かの声が私の身を包むまでは。眼前で、爆裂する衝撃。そこで、私の意識は途絶えた。~~~キリハを襲う砂の槍。それを、螺旋丸で砕いた後、安堵のため息をつく。(・・・・間に合った!)危なかった。しつこすぎるクスリメガネに、時間を掛けすぎた。肩で息をしながら、我愛羅を睨み付ける。『間一髪だったね』気配を探る。道中みつけた、シカマル、ヒナタ、キバの気配。シノはシビさんが回収しているのを、気配で確認した。カンクロウは砂の中忍が回収していった。そして、今ここにいる、サクラ、サスケ・・・そして、キリハ。テマリも、いた。(全員、生きているか)それを確認した後、サスケとサクラに向けて、伝える。「キリハを頼むぞ、うちは、春野」影分身が、キリハを担いでサスケの元へと運ぶ。「・・・キリハを助けてくれた事は感謝する。だが、てめえ、何者だ?」「今は名乗る名は持ち合わせていない。時機がくれば、必ず話すよ。だが、今優先すべきはその部分じゃない」「・・・ちっ」「すいません、足止めを頼みます・・・!」サスケがキリハを担いで、後方へと下がっていく。「ああ、任された」背を向ける。サクラはそれを確認したあと、サスケについて下がろうとする。そこに、安心させる一言をつけ加える。この少年、少女が、後ろを、俺の無事を気にしないように。「・・・だが別に、倒してしまっても構わんのだろう?」その言葉に、背後の二人がきょとんとする気配を感じた。『行ったね』「ああ。後は、こいつをどうにかする必要がある」テマリは影分身を使って避難させた。ここから先の戦闘、近くにいれば確実に巻き添えとなる。誇張ではなく、四方半里にいて無事にすむとは思えない。「で、何笑ってるんだ?」心底可笑しそうに、我愛羅は腹を抑えて笑い転げている。「・・・ッハハハハァ!倒すだと?よりにもよって、この俺を倒すだと!?」直後、空気が変わった。我愛羅が、更なる変質を遂げる。「・・・ヤッテミロォォォォォォォォォォォ!」雄叫びに似た声。『・・・・完全に覚醒したか・・・・!』キューちゃんの叫びが木霊する。見上げる程に大きくなった、眼前の敵。それを前にして、俺は叫ぶ。「それがどうした!」跳躍し、辺りでも一際高い丘へ立つ。見上げる程に高い巨体が名乗る。『・・・・・ワガナは尾獣ガ一尾、守鶴!ワレにアラガオウトスル、オロカシイニンゲンヨ!イチオウ、名ヲキイテオコウカ!』「応!」呼び声に答え、きゅうびのチャクラを放つ。全身に、凶暴なチャクラの奔流が流れ込んだ。以前対峙した時とは違う、正真正銘の全力全開だ。「俺の名はうずまきナルトォ!麺を追い求めるラーメン探偵!あとついでに九尾の人柱力!」チャクラの勢いそのままに。世界よ震え、といわんばかりに全力で震脚。開幕のベルを鳴らす。「いいか守鶴!よく聞け、我愛羅!お前の選択は、二つに一つ! 一、ラーメン食ってぶっとばされるか、二、ぶっとばされてラーメン食うかだ!」異端とされる者が二人。ここに、舞台は整った。「加え、我が友の意志を汲んで!そして、遠い昔に去った、亡き少年の代役となって!」だから、開幕の口上を告げよう。「麺の意志の名の元に!今からお前をぶっとばす!」直後、世界が激震した。