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No.713の一覧
[0] 狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/05/13 22:17)
[1] 狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/05/13 22:19)
[2] 狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/05/13 22:19)
[3] 狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/05/13 22:21)
[4] 狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/05/13 22:31)
[5] Re[4]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 05:58)
[6] Re[5]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 05:59)
[7] Re[6]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:01)
[8] Re[7]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:04)
[9] Re[8]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:08)
[10] Re[9]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:11)
[11] Re[10]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:13)
[12] Re[11]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:16)
[13] Re[12]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:25)
[14] Re[13]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:29)
[15] Re[14]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:32)
[16] Re[15]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:36)
[17] Re[16]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:40)
[18] Re[17]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:44)
[19] Re[18]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:46)
[20] Re[19]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:50)
[21] Re[20]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:53)
[22] Re[21]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:57)
[23] Re[22]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:38)
[24] Re[23]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:40)
[25] Re[24]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:42)
[26] Re[25]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:43)
[27] Re[26]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:46)
[28] Re[27]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:47)
[29] Re[28]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:48)
[30] Re[29]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:50)
[31] Re[30]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:52)
[32] Re[31]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:54)
[33] Re[32]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:56)
[34] Re[33]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:58)
[35] Re[34]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:59)
[36] Re[35]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:03)
[37] Re[36]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:05)
[38] Re[37]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:07)
[39] Re[38]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:10)
[40] Re[39]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:12)
[41] Re[40]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:14)
[42] Re[41]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:21)
[43] Re[42]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 21:10)
[44] Re[43]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 21:17)
[45] Re[44]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 21:23)
[46] Re[45]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 21:33)
[47] Re[46]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 23:07)
[48] Re[47]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 23:22)
[49] Re[48]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 23:55)
[50] Re:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:04)
[51] Re[2]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:10)
[52] Re[3]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:16)
[53] Re[4]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:21)
[54] Re[5]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:26)
[55] Re[6]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/11/12 04:26)
[56] Re[7]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:34)
[57] Re[8]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:42)
[58] Re[9]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:46)
[59] Re[10]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:52)
[60] Re[11]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:57)
[61] Re[12]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 02:04)
[62] Re[13]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 02:09)
[63] Re[14]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/09 02:11)
[64] Re[15]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/20 23:49)
[65] Re[16]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/09/30 23:05)
[66] Re[17]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/09/30 23:15)
[67] Re[18]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/09/30 23:33)
[68] Re[19]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/09/30 23:49)
[69] Re[20]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/09/30 23:54)
[70] Re[21]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/10/01 00:10)
[71] Re[22]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/10/31 12:51)
[72] Re[23]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/10/31 13:26)
[73] Re[24]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/10/31 13:33)
[74] Re[25]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/10/31 13:38)
[75] Re[26]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/06/01 23:08)
[76] Re[27]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/06/01 23:09)
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[713] Re[47]:狂った歯車の上で
Name: 灰ネコ◆4eccae54 ID:967ae51a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/08/03 23:22









「なんで…サスケ君がここにいるの?」



サクラは重く、悲しい声でその言葉を紡ぐ。それが深く、そして痛々しくサスケの心を抉る。



サスケは耐えた。



「俺の…意志だ」



本性を曝け出さぬよう努めて耐えた。



逆に今度はその態度がサクラの心を深く、そして痛々しく抉った。



照り付ける太陽、それとは無縁の空気が二人を繋ぐ。風は無い。機能までは止まること無かった風も彼が去ると同時に消えてしまった。あの殺気だった風すらも。



「嘘…でしょ? そう…言ってよ」



もう涙は出てこない。もう流せる水分など血しか残っていない。もしそれが出せるというのなら二人とも、もう流していた。



二人とも目が充血している。何時間泣いていたのかも覚えていない。涙は止めたのではなく止まってしまったのだから。心の中では未だ泣いている。



女々しい、大いに女々しいと訴える。それでも心の中で涙が止まることは無い。



どれだけ苦しんだ。その理解者はもうそこにはいない。いるのは境遇者。理解は出来ない同郷の者達。



「何時も…誰かに睨まれているような気がしてた」



それは彼が監視の為に渦巻かせていた風、私怨のみ込められた怨風。



「……………」



サクラは答えない。否定しない。なぜなら彼女もそれを感じていたのだから。



「急にそれが無くなっちまってさ…落ち着くどころか嫌な予感しか感じられなかった」



普通ならば安心するだろう。誰からの視線が消えたのだから。だが、サスケは気付いていた。あの糸が引くような粘執な視線を、あの怒気を孕ませた視線が誰のものかを。



「不安でさ…外に出たんだよ。そしたらナルトに会った」



これは誰にも言っていなかったこと。言ってはいけないこと。誰も止めようとしなかったからナルトは出て行ったと思っている者は考えようも出来ないこと。なぜなら既に止めようとしていた者がいたのだから。



「ッ!?」



サクラは自分以外に、ヒナタと己以外にあの夜に出会った者がいるなんて思いもしなかった。



そしてこの里で唯一ナルトを止められると思っていたサスケがここに残って彼が里を去ったという事実を冷静に理解した。



「届かなかった…俺の手は全然アイツに届かなかった」



右腕、それを左手で握り締めてサスケはそう零した。力を込めすぎて白くなった腕は震えていた。



彼に折られ、自身の兄弟にも砕かれ、何度も挫折し立ち上がってきたサスケの腕は悲しいほどに覇気が込められていなかった。



「俺が今ここにいられるのはアイツの、ナルトの気まぐれなんだよ」



ナルトのことをよく知っているだけに確信はあった。気分一つで生かすか殺すかを自由に決めていた彼がサスケを生かした事自体が気まぐれ以外に他に無いことに。



「それで…いいの?」



サクラはもう心に余裕なんて無かった。ある筈が無い。彼がこの里を嫌っていた理由の一欠けらは自分自身にもあるのだと思っているから。



「じゃあ…なんでサクラは残ったんだ?」



サスケにも心に余裕なんて残ってなかった。ある筈もない。幾度も殺されかけ、最後には生かされてここにいるのだから。心が発狂してしまう。



「そんな…資格なんて……ないわ」



「俺も…さ」



「「結局は逃げたんだから」」



分かっていた。二人とも痛いほどに理解してそして己を許せていなかった。



解っていた。二人とも限界まで我慢し続けてきて結局、我慢なんて続かなかったのだから。



そして二人が今理解したこと、それは、


「慣れない事なんてするもんじゃない、な」



「うん、うん!」



初めて笑った。昨日から醒める事の無い悪夢がようやく醒めたから。目覚ましの切っ掛けなんてちっぽけな物だった。



理解者がいた。謎を解くための、仲間がいた。



一人じゃ解けない問題も、二人いれば解けるもの。彼が置いていった問題も二人の前では少し難しいだけの問題だった。



「笑おうよ」



「ああ」



資格なんて自力で手に入れる物だ。そして、二人は手に入れた。もう乗り越えられなかった壁は乗り越えた。



怖かった悪夢が晴れた時、答えは四方へ広がっていた。







狂った歯車の上で







「シカマルの話と随分と話が違うじゃねぇか」



ああ、確かに話が違う。なんだ? 今のこいつの力強さは。



何かが漲ってる。そう、一番最初にアカデミーで痛めつけた時みたいな…そう、なんか自信が漲ってんだ。



あれから一欠けらすら見ることの無かった自信に溢れたサスケの顔。



あの後に何が起きた? さっぱり分からねぇ。



「どんな話を聞いたか知らないが、興味ない」



「あっそ」



こっちもそれほど興味ねぇや。今のサスケの方が面白い。叩き潰すのが。



やっぱりうちはサスケはこうじゃなきゃいけねぇ。潰し甲斐があるってもんだ。



「お前もオレを連れ戻しに来たってクチか?」



「そう、思うか?」



んな訳ねぇだろ。



「違うね」



「決着を付けに来たんだ」



だろう、な。



なんとなくそう感じてた。お前の眼を見たときから。



決算、ってのが正しいんだろうな。最後の最後、それが今って訳か。



「何のだよ。昨日、ちゃんと終わらせたじゃねぇか」



腹切られて半泣きのお前の顔、笑えたぜ。



だからシカマルの頼みを断ったんだろ? な?



「ナルトは…そう思ってるのか?」



「あ?」



今、何て言った? おい、何哀れんだ眼でこっち見てんだよ、糞野朗。



エリートの坊ちゃんが調子に乗ってんじゃねぇ、カス。



「ナルトは…あんなのが決着だと思っているかって俺は言ってんだよ!」



「ああ、悪いか!? あれが決着だったんだよ、オレとお前のなッ!」



叫んだ。



なんでか知らないけど、なんとなく分かってた。



オレ、本当は逃げてたんだ。リーに言った逃げるが勝ちとか関係なくて、背中を見せてたんだ。



だけど、もう遅い。



「小せぇな」



サスケがそう呟いた。



ネジがオレに最後に言ったように、哀れ、そんな感じに。



「今、なんつった?」



「小せぇんだよ、お前の生き方そのものが」



なんか冷めた。



オレはいつから大そうな生き方を選んだんだ? 一度たりとも選んじゃいねぇ。



「悪いのか? 小さく生きててよ」



生きていられるってのが当たり前になってるお前には分かんねぇだろうな。エリートだし。



「俺等が知っているナルトはそんな生き方をしちゃいなかった」



「どこのナルトだよ、オレは知らねぇなぁ」



どこの世界のナルトだよ。お前等が知っているのは違うナルトなんじゃねぇか? オレは一度だってお前等にそう見せたことねぇよ。



いつだってちっぽけで汚く生きてたよ。それのどこが大そうなんだよ。



今度は逆だ。オレはお前等が哀れに見えるぜ。



真実を知らずに勝手に勘違いしてやがる可哀相な奴等だ。はは、本当に可哀相だね。



ギリッ、と歯軋りが聞こえた。



はは、馬鹿みたいだ。見ていて滑稽だよ、ホントに。



「んじゃ、サクラを証拠人にして決着でもつけてみる?」



あまりにも可哀相過ぎて哀れだよ。お前がな。



「おい、左近達も証拠人になってくれよ」



そう言って後ろでニヤついていた四人に話を振る。そこから乗り気な声が聞こえてくる。



それを聞きながらオレはやっと居場所みたいなもんを感じられる。気楽なんだよ、こいつ等と一緒だと。



肩肘張る必要も無くってよ、素でいられるからさ。疲れなくて済む。



「んで、決着ってのはどうする? エリートさんよ」



こう馬鹿にしているとすればするだけサスケが小さく見えてオレが大きく見えてきやがる。それがオレに安心と快感を与えてくれる。



「後悔するなよ」



はっ、エリートがよく吠えるじゃねぇか。



「そりゃオレの台詞だ、坊や」



心地よい殺気だった。それに身を任せて時には全てをぶっ壊したいと思った。



オレは今まで逃げていたって言ったな? だけどそれも今回で本当に終わらせてもらうよ。



逃げるんじゃない。進むんだ。



この両手で這ってでもな、オレは進むんだよ。醜くくて見苦しいだろうけどよ。それしかねぇんだよ。



進むんだ。



ずっと止まっていたことに理由があった。



憧れちまった。化け物に。圧倒的な力に。オレの唯一一緒にいてくれたアイツに。



目を閉じた。鳴けよ、そう願った。アイツの鳴き声はもう聞こえなかった。後ろを振り返けば、アイツに笑われるような気がした。振り向けばアイツに笑ってもらえる。だから、振り向かなかった。進まなければならなかった。猛々しく、腕を振るっていた、人を殺していた、敗退など考えもせずに、ただ本能に任せて狂っていたアイツは最高にかっこよかった。



目を閉じた先に何がある? 幸福か? 安穏か?



真っ暗な先があるだけだった。迷わずに歩き出した。走り出した。不安な心を偽った。逃げ出したいと、元に戻りたいと頭を垂れていた本心を殺した。心の箍は失せなかった。心を押しつぶす枷は外れなかった。



―――オレは、何だ?



オレは化け物だ。



閉じた口の変わりに喉を掻っ捌いて叫びたかった。勝手に勘違いして今のオレを否定しようとしている大勢の同郷の奴等に。



だからか、ああ、それは本当に、



「ああ、そりゃオレの台詞だ、坊や」



ああ、ただじゃ終わらせない。アイツの手足を切り落としてでも、心臓を踏み躙ろうとも、オレは音の里へ行ってやる。



思い出す、まだオレに中にいた頃のアイツを。



お前は頑張ったよな…一度リタイヤしちまったけど、もう一回オレも頑張っていいかな?



頼むから鳴いてくれよ、オレの為にさ。







ナルトは一瞬泣きそうな顔をした直後に飢えた獣のような顔つきになって地を駆けた。



「左近…ナルトの動き見えたか?」



次郎坊からの質問に簡潔に答える。



「見えねぇ」



見えたのは最初だけ、足の裏に溜めてあったチャクラを性質変化で風に変えてその勢いで走ったくらいだ。まるでジェット機みたいだ。



中忍試験の際でも異常な速さで動いていたが今も同じくらいに速い。体内門を開けてねぇってのにやってらんねぇよ。



うちはサスケが殴られるたびにいい音が奏でられていく。拳の芯がしっかりと決まって心地よい打撃音だ。



速さと力強さだけなら君麻呂を上回ってるぜ。呪印を使っていねぇってのにこの強さは次元が違った。俺達四人で木ノ葉の上忍二人が限界なのを一人で出来そうな勢いだ。



ナルトが拳を振るう度に空気が揺れる。ナルトの拳がうちはサスケにヒットする度に聞いたことが無いほどの綺麗なリズム隊が構成されていく。



いい音楽だ。次郎坊の腕力だけの拳じゃ絶対に奏でられない音だ。



だが、徐々にそのリズム隊の切れが悪くなってくる。あれがカブト先生の情報に書いてあった写輪眼って奴か。まさかこんなに速い動きを見れるようになるなんて思ってもいなかった。これじゃ俺等のどの攻撃も当たりやしねぇじゃねぇか。



「うぜぇんだよ、テメェのそのスカしたその眼がよ!!」



やっと動きを止めたナルトは片手にアイアンナックルを持っていた。そして睨まれているうちはサスケの両腕は腫れ上がって見るも無残だった。



「あの攻撃を両手でガードしてたっていうのかよ」



多油也の驚きも理解できる。ありえねぇ反応能力だ。



「チッ!」



ナルトは舌打ちをしてアイアンナックルを一振りした。



それだけで大地が裂けた。知らない内にアイアンナックルから青い刀身が具現していた。



生意気にいい武器を持ってやがる。しかもほぼ無意識にあんな高度な性質変化と形状変化を行使してやがる。



確か飛燕といったか、その技でどんないい音奏でるかが楽しみだ。



うちはサスケも変化があった。痛そうに腫れ上がった右腕にチャクラが集まり回転しだす。それは瞬く間に小さな暴風となっていた。他国では有名な技だ。確か螺旋丸といったか。



あれはどう見ても超高等忍術だ。中忍試験の時とまったく別人みてぇに強いじゃねぇか。



そしてナルトとうちはサスケの右腕が交差する。



ナルトはうちはサスケの右腕毎切り落とすつもりで振るっていたが、うちはサスケは違った。



ナルトがぶれない様正中線をなぞる様に腕を振るった筈なのに、急にブレた。うちはサスケの手を見る。血が舞っていた。深い裂傷を確認したがうちはサスケの顔は笑っていた。まるで秘密にしていた策が成功したように。



そしてナルトの腕はうちはサスケのすぐ横を通過して幾本の木を切り倒していた。それだけでも物凄い切れ味だというのが分かる。



だが、それいじょうにうちはサスケはナルトの飛燕を逸らすためだけに螺旋丸を使って右腕を捨てやがった。



「て、テメェッ!」



「その飛燕に勝てる術はない。だが、それ以外には勝てるッ!」



バチ、バチチッ!! と一瞬でうちはサスケの持て余していた左手が放電し始めた。



性質変化を完了させるのが速すぎる。なんつう速度で千鳥を完成させやがるんだ。



うちはサスケの千鳥に気づいたナルトは急いで周りに旋風を作り出す。まるで台風だ。それがナルトと重なるくらいの狭さで物凄い回転をし出す。性質上の決まりで雷より風の方が強い筈、ナルトの性質は風か。



強すぎた旋風はナルトの肌を切り裂いていく、そしてうちはサスケの千鳥を完全に相殺した。だが、



「まだ終わらねぇッ!」



ズブ、とうちはサスケの突きがナルトの身体に刺さったのが見えた。雷は相殺した、それでもあのロック・リーやナルト並に鍛え上げたうちはサスケの突きを受け止められるほどにナルトの体は鍛えられていなかったようだ。



「くそったれッ!!」



ナルトは自身の腹に突き刺さったうちはサスケの腕を左腕で殴って体から離した。その際に嫌な音が聞こえた。折れたかは分からないがかなり危ないだろう。その状態でナルトが痛烈な蹴りをうちはサスケに見舞った。



その反動でナルトの傷口から血が吹き出す。



吹き飛んだのを見届けてもう一度だけ、ナルトが飛燕を構える。



手ごたえはあっただろう。遠くから見ている俺でさえそう感じた。無理矢理な体勢であったがそれでも十分な威力だった。



ナルトの呼吸音だけが聞こえる。そして俺の呼吸音も、どうやら俺はこの戦いに飲み込まれていたようだ。



それくらいにこの戦い…いや、この演奏は素晴らしかった。









届いた。やっと届いたんだ。



俺はナルトに突き出した左手を見つめた。ナルトの血で汚れているはずなのにそれは誇らしげに力強かった。



俺は近づいていたんだ。高すぎて見えていなかったナルトを、今は間近でみている。



感想は簡潔だ。



やはり、強い。集中が少しでも途切れれば一瞬であの世行きだ。あの飛燕はもう止められないな。所詮は一度きりの対処法だ。



それにあの時に切られた右手はもう使うことは出来ない。感覚がなくなってる。



これでお仕舞い? んな訳ねぇよ。やっと追いつけたんだ。右手なんかを庇って終わらせたくねぇ。



俺とナルトは対等だ。そうじゃないだなんて一度でも思ったことはない。



ナルトが手を怪我したくらいで勝負から逃げるか? 想像も出来ねぇよ。



これで終わらせる。ナルトをふん縛ってサクラとヒナタの前に見せてやる。そして今度こそちゃんと第七班で任務を達成してやる。



それが今の、俺の目的だ。










血を修復するにも内臓もやられているから外だけ修復しても内出血で逝っちまう。



痛覚を閉じて呼吸が治まるのを待った。痛みが引いていくのを感じて視界が明瞭になっていく。



あの蹴りで終わるような奴じゃない。そうだったならば波の国でもう死んでいる。



奴は、どこだ。吹っ飛んだ先を確かめずに傷を確認しちまったのが仇になった。



クソッ、やっぱりオレはまだ駄目だ。こんなところでチンタラしていたらいつまでたっても音の里へなんか辿り着けやしない。



オレは早くこのくだらねぇ決着とやらを終わらす為に旋風を最大限に展開させて人影を追った。



仲間である左近達四人と十メートル近く東方で隠れているサスケと更に数十メートル先にサクラを見つけた。人影だけでは確認が出来ないから白眼も使った。



サクラは問題じゃない。だが、なんだ…あのサスケの顔は。



殺されかけているってのに、なんであんな笑顔なんだ。



わからねぇ、わかりたくもねぇ。



秘策でも、いや、アイツはそんなに策を練るような奴ではなかったと思う。ならば最後に今までのことを思い出して幸せに浸っている、それも在り得ない。



まぁ、どうでもいいか。



次で殺すことになる。



「おい、気付いてんだろ」



驚いた。サスケの方から現れるとは思ってもいなかった。



草むらから現れたサスケの表情は最初と同じようにギラついた目で正面からオレを見てくる。少し、眩しかった。



「……ああ」



言葉が生まれない。何を言っても無駄だとしか思えない。それくらいに今のサスケはすごい。



なにが凄いって、そりゃ在り方だ。



何を言っても無駄。何をしても無駄。全てがアイツの前では無駄なんじゃねぇかと思えてくるほどに思えてくる。



飲み込まれるな、そう思っても、もう遅い。



とっくに飲み込まれちまった。



「これが最後だ。もうチャクラもそんなに残ってない、それに右手の感覚も残っていない」



「だったら…」



逃げちまえよ。そう言うつもりだったのに、サスケが構えだしたらそんなこと言えなかった。



オレも理解した。ああ、これが本当に最後なんだ、と。



やっぱりだ。オレは何だかんだいってオレはサスケと戦うのが嫌いじゃなかったと思う。面白かった。



自分がどれだけ強いか、それだけを見せたかったのが最初、徐々に近づいてくるに連れてこのスリルを楽しんでいた。



絶対に勝つ、負けるはずがない。そう願掛けして戦い勝って、オレは快感に酔っていた。



それを楽しいといわずになんと言う。これが楽しいということだったんだ。





「ああ、いいぜ」





殺してやる。最後の勝負もオレの勝ちで嘆いて死んでくれや。



「俺とお前は対等だ、か…」



オレはサスケがよく言っていたことを口に出していた。何度も言われた。そして何度も否定した。



才能が違う。環境も違う。考え方も違う。全てが違ったというのにアイツは同じだと言った。



嫌味だと思っていた。いや、思っている。なんでこうもオレに付き纏いたがるかな。すんげぇ、迷惑だ。



だけど、つまらなくは無かった。



「サスケ…お前は強いよ」



「知ってる」



否定くらいしろよ。ったく、面白みもねぇなぁ。



だが、強いってのは本当だ。確かに、強いよ。



だけどよ、



「オレはもっと…強い!」



試してなかったなぁ、呪印の第二形態。



体中の皮膚が引っくり返るように、いや、別の何かに覆われるような感覚。それは呪印に飲み込まれていくような虚脱感。



虚脱しているというのに、身体の内側から無意味な破壊衝動が突き抜けていく。まるで、無理矢理アドレナリンを作り出しているような、無理矢理に脳内麻薬を分泌しているような暴走感。



「ああ…それも知ってる!」



サスケが構えた。左手には千鳥、血を垂れ流している右手には螺旋丸。昨日の戦いとはまったく違うものがあった。



白眼が伝えていた恐怖や戦闘への拒否を今のサスケからは伝わってこない。それが更に千鳥と螺旋丸を凶悪にしてしまっている。今まで踏み出せなかった一歩をこいつは今踏み出したんだ。



だけど、こりゃ、いい。呪印のおかげで今のサスケでさえ怖くねぇ!



右手に持ったアイアンナックルに有りっ丈のチャクラを突っ込んだ。



アイアンナックルの先端が付圧に逆らえなく欠けていく。んなもん関係ねぇ。



もっと強く! もっと鋭利に! もっと、もっと、もっと最強に!



アイアンナックルの許容量を超えたのか、更にひび割れていくアイアンナックルを握り締めて飛燕を振り出した。そこから現れた刀身は今まで以上に黒く、堅く、強かった。



試し切りに大木を切る。今まで感じていた多少の抵抗、それすらも感じさせない鋭利さは最高、格別。



目の前のサスケは左右の手を交差して構えた。互いに近づいていく螺旋丸と千鳥が共鳴しているのか、螺旋丸の色が徐々に雷を伴った金色に光り輝いていく。



完全に一つになった千鳥と螺旋丸が光ならばオレの飛燕は闇だった。



最後までムカつく野郎だ。オレと対極の色ばかりじゃなくオレが欲しがっていて結局覚えられなかった忍術の遥か上の術まで覚えやがった。



だから有りっ丈の声で叫んだ。



「さっさと死ねッ!!」



「まだ、死ねねぇんだよッ!!」



そして、色と音が無くなった。















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