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No.713の一覧
[0] 狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/05/13 22:17)
[1] 狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/05/13 22:19)
[2] 狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/05/13 22:19)
[3] 狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/05/13 22:21)
[4] 狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/05/13 22:31)
[5] Re[4]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 05:58)
[6] Re[5]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 05:59)
[7] Re[6]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:01)
[8] Re[7]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:04)
[9] Re[8]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:08)
[10] Re[9]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:11)
[11] Re[10]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:13)
[12] Re[11]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:16)
[13] Re[12]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:25)
[14] Re[13]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:29)
[15] Re[14]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:32)
[16] Re[15]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:36)
[17] Re[16]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:40)
[18] Re[17]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:44)
[19] Re[18]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:46)
[20] Re[19]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:50)
[21] Re[20]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:53)
[22] Re[21]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/22 06:57)
[23] Re[22]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:38)
[24] Re[23]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:40)
[25] Re[24]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:42)
[26] Re[25]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:43)
[27] Re[26]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:46)
[28] Re[27]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:47)
[29] Re[28]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:48)
[30] Re[29]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:50)
[31] Re[30]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:52)
[32] Re[31]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:54)
[33] Re[32]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:56)
[34] Re[33]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:58)
[35] Re[34]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 14:59)
[36] Re[35]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:03)
[37] Re[36]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:05)
[38] Re[37]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:07)
[39] Re[38]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:10)
[40] Re[39]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:12)
[41] Re[40]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:14)
[42] Re[41]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/07/23 15:21)
[43] Re[42]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 21:10)
[44] Re[43]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 21:17)
[45] Re[44]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 21:23)
[46] Re[45]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 21:33)
[47] Re[46]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 23:07)
[48] Re[47]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 23:22)
[49] Re[48]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/03 23:55)
[50] Re:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:04)
[51] Re[2]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:10)
[52] Re[3]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:16)
[53] Re[4]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:21)
[54] Re[5]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:26)
[55] Re[6]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/11/12 04:26)
[56] Re[7]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:34)
[57] Re[8]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:42)
[58] Re[9]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:46)
[59] Re[10]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:52)
[60] Re[11]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 01:57)
[61] Re[12]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 02:04)
[62] Re[13]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/08 02:09)
[63] Re[14]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/09 02:11)
[64] Re[15]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/08/20 23:49)
[65] Re[16]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/09/30 23:05)
[66] Re[17]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/09/30 23:15)
[67] Re[18]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/09/30 23:33)
[68] Re[19]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/09/30 23:49)
[69] Re[20]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/09/30 23:54)
[70] Re[21]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/10/01 00:10)
[71] Re[22]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/10/31 12:51)
[72] Re[23]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/10/31 13:26)
[73] Re[24]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/10/31 13:33)
[74] Re[25]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2007/10/31 13:38)
[75] Re[26]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/06/01 23:08)
[76] Re[27]:狂った歯車の上で[灰ネコ](2008/06/01 23:09)
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[713] Re[32]:狂った歯車の上で
Name: 灰ネコ◆4eccae54 ID:1b2f5d2f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/07/23 14:56








オレがリーを初めて見た時はまだリーの第一印象は『おちこぼれ』だった。

噂に違わず本当に落ちこぼれだった、術を使えない、ならば今期オレが担当する班に入れるわけが無い、そう思っていた。

しかしリーは特別試験を通して合格をしてきた。それは生半可な努力では出来ないと知っている分驚きは大きかった。

プライベートなどには干渉する趣味など無いが覗いて見るとリーの生活は自分への虐めとも言えるほどの修行であった。

限界という言葉を知らないかのように体力が無くなろうとも縄跳びや腕立てなどをする姿は尊くも思えた。

何回跳ぶのであろう、そう思いながら既に千を超える回数リーが縄跳びを跳んでいる事に気付く。千百回を越えた辺りで躓いた。無意識のうちに走り寄りそうになったのを堪える。

『う……く…うう……』

聞こえてしまった。リーの嗚咽を、それからは足を止める作業が億劫に感じいつの間にか姿を現していた。

『リーよ……もう休憩か?』

リーは泣いていた。目標に辿り着けなかったから悔しいのだろう。そう、オレは感じた。

『…何の用ですか…ガイ先生…この前の任務での失態なら、もう詫びた筈です!』

服の埃を払い次に決めていた丸太蹴りを実行する。しかし先ほどの覇気をまったく感じられない。

見ていて痛ましくなってくる、まるで昔の自分を見ているようで。

『確かにお前はネジとは違う…忍術や幻術の天才でもなければ体術の天才でもない……』

ビクンッ、とリーの肩が一瞬震えた。蹴りの芯がどんどん下降していく。そしてついに止まった。

『……だがな、凡人が天才に勝てないという道理はどこにもない。確かに生半可な努力では達成できないだろう…』

なんて自分勝手な話だろう、自分のことでないから理想論を語れるのかも知れない。もしかしたらリーには本当に才能は無く商才があるかもしれないというのに。

オレは最後の言葉を紡ぐ。それは言ってはいけない言葉、それは同情と取られるかも知れない、そう分かっていながらも言わなくてはいけないと思うから言うのだ。
 
『…けどな、リー。お前もネジを越える力を……その可能性を秘めている天才なんだぞ…』

リーの揺れていた腕が止まった。

『気休めなら……気休めならやめてください!』

自分が天才? なにを言っているんだ、散々アカデミーでも裏では教師が辞めさせようとしていたことを知っている。そんな自分が天才? なら同じ天才であるネジにも勝てる見込みが無いのに。この人は冗談でいっているのか? そう伝えてくるリーの瞳が痛々しい。

『気休めでも何でもないぞ……何故ならお前は………努力の天才だ』

だから言ってはいけなかった。それでも止まれない。オレは最後の言葉をリーに伝えた。

その瞬間だった。

少しずつ熱くなっていたリーがピタリと動きを止めた。

《努力》それは今までずっと信じてきた自分の心の支え。

丸太を握っている腕が震えてくる。

『…果たして…それは本当でしょうか?』

リーがやっとの事で口に出せたのは自分を否定する言葉だった。

最初の自己紹介の時から弱音を一度も吐かなかったリーがこんなにも追い込まれている事に気付いていたがどうすることも出来なかった自分が恨めしい。

『…僕は…そう信じてやってきました…ネジより、2倍も3倍も修行すれば…きっと強くなれる。そう信じてやってきました。だけど、本当の天才には敵わないんじゃないかって…最近思い始めました』

リーの腕の震えが止まらない、気が付けば手の皮が切れて血が流れていた。知らない内に手に力が入っていたようだ。

《たとえ忍術や幻術が使えなくても……立派な忍者になれる事を証明したいです! それが僕の全てです!》

辛いだろう、自分の全てと宣言した事が達成できないかも知れないなんて、どれほど怖いだろう。

ネジと闘うたびにそう思わされるのだろう、それがどれだけ惨めで辛いのかカカシと最初闘った時に痛いほど味わった。そして乗り越えた。

『努力が本当に報われるモノなのか…それが知りたくてネジに挑戦してもずっと同じ…まるで歯が立たないんです……! 任務の時も、未だに足が震えるんです!』

リーの涙腺は決壊し涙が止まらない、丸太に支えてもらわなければ地面に伏せることになるだろう。

『幾ら努力しても僕は強くなれないんじゃないかって……怖くて怖くて堪らないんです!! 僕は……どうしたら……』

ああ、コイツは昔のオレだ。自分に自信を持てなくなっているあの頃のオレだ。

強くなったじゃないか、アカデミーで馬鹿にされていたあの頃と比べられないほどに強くなったじゃないか! 何故自分の成長に気付けない? オレには分かる、お前が強くなっていっていることが! 

『自分を信じない奴なんかに、努力する価値はない!!』

自分の力を信じられないような奴に力など必要ではない、過ぎた玩具になるのがオチだ。

お前にはお前のすべき事を完遂して欲しい。立派な忍者になって欲しい!

リーの目が見開いた。



『お前は俺に良く似てる…昔は、この俺も五指に入るほどの落ちこぼれだったが、今じゃ、天才エリート、カカシとの勝負でも勝ち越している程だ』

最初はボロボロで今さっきのリーと同じような状態であったことはいい思い出なのかもしれない。

リーにはわかる、落ちこぼれだった者が天才に勝つという事の意味を。それはリーの可能性を示しているということ。

『《たとえ忍術や幻術が使えなくても立派な忍者になれる事を証明したい》ってな……それがお前の忍道だろ? 良い目標じゃないか……誰よりも頑張る価値のある良い目標だよ』

オレも心が洗われる様だった。心の周りにこびれついた汚いものが剥がれていくのを感じた。ずっと心に溜め込んでいたものが涙となって目から流れ出る。

『だから、お前も自分の道を信じて突っ走ればいい! 俺が“笑って見てられる”ぐらいの強い男になれ!! 良いな、リー!』

リーはもう大丈夫だ。こいつは強くなる、誰よりも。

『オッス!!』

リーは最高の笑顔で答えてくれた。









狂った歯車の上で









「今が自分の道を信じて突っ走る時! そうですよねガイ先生!」

体が充実しきっている。

今やっと分かった。

本当の僕がここにいる意味が。

ナルト君は本当に強い、それこそが僕の目標であった!

それを超える、そしてこんな僕でも立派な忍びになれることを夢見てきた。

それだけじゃなかった。

僕の夢は何時だってガイ先生の隣にある!

「自分を信じない奴なんかに、努力する価値はない!!」

それを夢だと信じられない僕に努力する価値はありはしないんだ。

上で観戦しているガイ先生を見る。

先生は笑っていてくれた。

先生が笑って見てくれてる、それだけで僕はもっと強く蘇る事が出来る……! 更に強く、もっと強く! 誰よりも強く!

「今こそ、自分の忍道を貫き守り通す時なんだ!!」

笑ってみていてください、ガイ先生。





「ガイ! あれは」

「ああ、お前の想像通りだ」

「…ガイ…お前!」

お前、あの子にこんな術まで教えていたのか!

今もリーのチャクラが跳ね上がっていく。それは人間というカテゴリーを越えそうになるまで。

「じゃあ…下忍のあの子が…八門遁甲の体内門を…」

「そうだ…開ける」

顔色一つ変えずにそう言ったガイを衝動的に胸倉を掴んでしまう。

「ガイ、門を開けばどうなるか分かっている筈だ!」

お前には担当としての責任を知らないのか。

この術を一度発動させただけで未来を摘む可能性も高い。

「……あの子には、その才能があったんだ」

久しぶりに頭に来た。

殴りかかりそうになったがアスマや紅が止めに入ってくる。

「才能があったからって限度を知れ! 裏蓮華だけは教えてはいけない術だろう!」

「止めろカカシ!」

アスマが手を離さない。

力を抜くとアスマも手を離してくれたが納得はしていない。

「あの子がお前にとって何なのかまで詮索するつもりはないし、私情を挟むなとは言わないが…限度ってモンがある……見損なったぞ、ガイ!」

オレは踏んではいけない地雷を踏んでしまった。

ガイから普段からは感じさせない空気が流れ出した。

「お前が……あの子の何を知っている…最初から何でも出来たお前があの子の何を知っているんだ!」

今度はガイがオレの胸倉を掴んできた。

鍛え方が違う。振り解こうにも相手の力の方が圧倒的に強い。

「《たとえ忍術や幻術が使えなくても立派な忍者になれる事を証明したい》、これが誰の言葉だか知っているのか? これがどれほど大事な言葉なのか分かっているのか?」

もう誰もガイを責める者はいなかった。

誰も責められる筈が無い。こんなに痛々しいガイをオレは今までで見たことが無い。

「あの子には死んでも証明し、守りたい『大切なモノ』がある…だから、オレは…それを守れる男にしてやりたかった…それがあの時からのオレの『すべき事』となった」

ガイは握っていた袖を離して再びリーの戦いを見始める。

「…ガイ…今、あの子は八門遁甲の幾つまでの門を開けられる」

袖を直してオレも再び試合に戻る。

「五門だ」

ガイからはそんな簡潔な返事が返ってきた。

その数字に背筋が冷たくなるような感じがした。

「努力でどうこうなるものじゃないぞ……あの子、やはり天才か」

忍術も幻術も使えなかった落ちこぼれが天才と呼ばれる、それはどれだけ滑稽なことだろう。

しかし、ガイは自信をもってこう答えた。

「ああ、リーは天才だよ」

そしてガイは笑った。







「おい、五門ってどういうことだ。八門遁甲ってことは八門まであるんだろ? 全部開けるとどうなんだよ」

断片的な会話ばかりでまったく話についていけていないシカマルがガイに問う。

「チャクラの流れる経絡系上には頭部から順に身体の各部には
 開門・休門・生門・傷門・杜門・景門・驚門・死門と呼ばれるチャクラ穴の密集した八つの場所がある…
 これを八門と言うんだ。この八門は身体の流れるチャクラの量に常に制限を設けている、体を壊さないようにね。
 さっきリーが出した蓮華はその制限の枠を無理矢理チャクラで外し、本来の数十倍の力を引き出す事を極意とする。つまりチャクラのリミッター外しだ。
 それがたとえ…力と引き換えに術者の身体が崩壊しようともね。因みに表蓮華は一の門・開門を開けるだけだ。
 それだけで体中がボロボロだ」

ガイの説明は己もそれを使ったことがあるだけ精密な説明となっている。

「ちょっと待てよ、人間が日頃使っている筋肉は一割未満だ。それを何倍にも底上げすると肉離れじゃ済まねぇぞ」

「そうだ…この技は、例えるなら硝子の剣だ。切れ味は絶大だが長くは保たない。八門全てを開いた状態を八門遁甲の陣と言われ……少しの間、火影すら上回る力を手にする代わり…その者は必ず……死ぬ」

ガイの鎮痛な表情に誰も口を出すものはいなかった。

「じ、じゃあナルトはなんで同じことやってんだよ!」

「は?」







リーは体内門を開くとは思っていなかった。違うな、思いたくなかった。

リーほどの実力者が体内門を開く、それはどれだけの恐怖となるか。

もともと格上の相手と互角異常に戦う為に覚えた体内門、それなのにリーがそれを使うということは差が開かないということ。

たとえ30を100に底上げをしたとしても相手が100を300にも400にも上げてきたら勝ち越すことなど不可能だ。

それでも、勝たなければならない。

先生の助手に不可能なことなど無いのだ。あってはならないことだ。その為に苦行を甘んじて受けてきたんじゃないのか?

オレに後悔という概念は存在しちゃならない。

「後悔すべく生き方に、存在する意味なんか無い!!」

脳の抑制を外せ、血を沸かせろ。肉を紡ぎ合わせろ。

どうせこの体に未練などない。どうせなら盛大にぶっ壊して後から取り替えればいいだけだ。

リーの背後がチャクラによって陽炎のようにぼやけている。

先生、見ることは出来ないと思いますが、オレは最強です。誰にも負けない、誰にもこの命、貴方以外に譲るわけにはいけないんです。

「オレは先生の助手だッ! どんな相手にだって負けられねぇ!!」

第四、傷門…開ッ!!

チャクラの噴出によって髪が逆立つ。尋常でない量の血が体中を躍動する。身体中の血管が破れていくのを感じながら腕に力を込めた。


この腕はオレのじゃない。先生の道具だ。それに敗退など存在しない。

リーも同じように傷門を開いたようだ。そしてやってくる。人間なんてちっぽけな殻から抜け出した化け物がオレに向かってやってくる。

「うおおおおっ!!」

「ハァァアァッ!!」

誰も近寄らせないチャクラの奔流、知覚出来ぬほどの速度、カウンターを合わせる事の出来ぬ攻撃。全てが必殺の領域である。

一手一手が一秒にも満たない刹那の世界でオレ等は殺しあう。

オレは、脳神経が灼きつくかと思うほどの速度でリーへ向かって飛び込んでいった。







ナルトまで体内門を開いていた。そして今までに見たことが無い表情で第三の門まで開いて見せた。

「…どういうことだ、カカシ」

ガイの表情は凍り付いていた。

「…分からないんだ。ナルトは心を開いてくれない」

そうだ。俺に心を開いて見せたことは無い。

何にしても俺には興味が無いようにしていた。写輪眼は俺に何も教えてくれない。

「オレは先生の助手だッ! どんな相手にだって負けられねぇ!!」

そしてナルトは更に門を開いた。

今までも底が見えなかった。そして今でも見せてはくれない。

先生という人物は俺ではない。アイツは一度だって俺に対してそう呼んだことは無かった。

呼んで欲しかった。かつて俺が四代目に対して言っていたように。

俺よりもはやくナルトを理解し救った人がいるということか。そうとしか思えない。

そして、ナルトは地面を穿ちながら地を駆けた。

「うおおおおっ!!」

「ハァァアァッ!!」

二人の膨大に膨れ上がったチャクラが弾け合いぶつかり合い会場を揺らし続ける。

辛いだろう、呪印を制御しながら戦うということはこれ以上に無いほどに苦痛だろう。それなのにナルトは辛いという表情を一つも作らずに戦い続ける。

写輪眼でも微かにしか写りもしない速さで二人は戦っている。





初速は圧倒的にナルトが速い。それはあの鬼才が生んだとしか思えないチャクラを使った歩法が全てを凌駕するからだ。

しかし、持久力及び二足目からの速さではリーが勝っている。それは弛まぬ努力が成しえた強力な脚力がりーを支えているからだ。

お互いの間合いに入った。そして空気ごと貫くかのようなリーの掌低がナルトの面前へ突き出される。掌低なのは強度の問題なのだろう。あのスピードから拳を突き出して相手の体に当たったとしても相手と同時に自身の骨が砕けてしまう。

それはナルトは、

「両目を閉じている!?」

ナルトは両目を閉じた状態で皮一枚で首を逸らして避けた。

どうやったらそんな芸当が出来るというんだ。見えているのか? 目を閉じているというのに。

避けた体制のままナルトの腕が蛇のようにリーの腕に絡みつく。

これも一体どうやったら出来るのかもわからない。第3予選のツルギミスミという選手と同じ技ではないか。

あれは修行をすれば得られる技ではない。ナルトは俺と出会うまではどんな生き方をしていたんだ。

ナルトが絡み付けた腕でリーの腕を折ろうとする。そしてリーが阻止しようと剃刀のような鋭利な蹴りをナルトに放つがナルトは巻かれていた腕の慣性に身を任せ体を反転させリーを逆に蹴り上げた。

「――――うおおおおッ!!」

ナルトが一気に空中まで吹き飛んだリーを追いかけるかのように跳びあがった。そして一気に飛び越し天井に両足で着地し会場に向けて、リーの死角である真上から雷のように落下していった。

「ッ!?」

リーはナルトから発する膨大なチャクラから居場所を察知次第に腕に巻かれていた包帯でナルトを拘束する。ナルトも空中で身動きが取れない状態であったからリーが自在に扱う布に絡め取られた。

「俺に布など意味が無い」

一瞬ナルトの唇が歪む、淡い光の線がナルトの体中を駆け巡り、包帯が細切れになって地に落ちた。

写輪眼でしっかりと見ていた。メス状のチャクラの塊がナルトの体中をあの一瞬で駆け巡っていたのを。

ナルトは失速するどころか加速してリーの後頭部に流星のような蹴りを叩き出した。

一直線に地面に叩きつけられたリーは倒れ付したのだろう。あまりの威力で砂煙が立ちリーの状態がうまく見えない。動体視力をそこまで鍛えていない下忍達ではいきなり大きな音と共に砂煙が立ったようにしか見えないだろう。上忍でもやっと眼で終えるような攻防だった。写輪眼を持っている俺だからブレもせずに見通せたというだけだ。

そして、ナルトが着地する直前、さらにリーのチャクラが跳ね上がった。

「第5、杜門…開ッ!!」

立ち込めていた砂煙がリーのチャクラで全て吹き飛んだ。

そして流れるような仕草でリーは跳んだ。ナルトが着地をする筈だった地点へと。

「なッ!?」

今まで以上の速さで繰り出された『拳』、玉砕覚悟での掌低ではない拳がナルトの後頭部へ突き刺さろうとした時、またナルトの身体が曲がってはいけない方向へ曲がった。

そして上段蹴りからの正拳突きを眼を瞑りながら避け続ける。

ありえない光景だった。が、すぐに決着はついた。

「木ノ葉ァ烈風ッ!」

「ッ!?」

ギロチンのような回し蹴りを地面に這い蹲るかのように上体を低くさせて避けた後に、

「木ノ葉ァ大旋風ッ!!」

「ーーーーくッ!?」

上体を低くしていたナルトへ回転を殺さずに放たれた下段蹴り、そして跳んだ避けたナルトへ上段蹴りと踵落しが見事に決まった。

上段蹴りを防ぐ際に防御に用いた左腕は完全に折れていた。そして最後に決まった踵落しはなんとか首を回転させて逸らそうとしていたナルトのコメカミに綺麗に入った。

壁まで一直線に吹き飛ばされたナルトを見届けたリーは安心した顔で見届けた。





「勝ったぞ、リーが勝ったんだ!」

ガイがリーの勝利に心から喜んでいた。

俺やサクラ、サスケは心からは喜べなかった。

俺等は想像できなかった。あのナルトが負けるという事実を。確かに、ナルトは俺が想像していたよりも遥かに強かった。下手な中忍よりもよっぽど強い。

それだけにショックが強い。

サクラとサスケは俺以上にショックを受けているだろう。アイツ等は俺以上にナルトを絶対視していたと思う。誰にも負ける筈が無い。そう思っていたに違いない。

確かに、リーの実力は素晴らしいの一言だった。

仕方がなかった、あれだけの天才が相手だったのだからあのナルトでも、仕方ない。と無理矢理納得させて審判のリーへの祝福を聞こうとしていた時に聞いてしまった。

「ナルトが立ち上がったぞ!」そんな声を聞いてしまった。

それこそ在り得ない、分かっている。

あの蹴りを後頭部に受けてしまったのならば中身はグチャグチャになっている。良くても気絶して何日、何ヶ月か眼を覚まさない筈だ。

しかし、本当にナルトは立っていた。












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