久しぶりの胸糞悪い木の葉の里と目の前にいる、
「おかえりなさい」
笑顔のヒナタだった。
家に帰り次第に家の中にはヒナタがいて、無性に抱きつきたくなったオレがいた。
「ただいま」
ヒナタから太陽に匂いがして、ちゃんとヒナタの匂いもした。
甘く、眠たくなるような、どんな麻薬よりも芳しい最上級の癒し。
ああ、オレは帰ってきたんだなぁ、とどれだけ時間が経とうともヒナタの髪に顔を埋もらせながら深く息を吐いた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
背中越しに感じるヒナタの手はとても小さく、とても暖かかった。
狂った歯車の上で
気が付けば日にちは変わっていて、同じベッドにヒナタがいて、目の前に先生がいて、場の状況が読め始めたオレがいた。
「……おはようございます」
頭を下げるときは斜め45度、本に書いてあった通りにした筈なのに相手からの返事はなかった。
「まぁ、いいんだけどね」
「何がかな?」
いや、忘れてください。
先生は任務から帰ってきたオレを見に来ただけだったらしくそそくさと帰っていった。
まぁ、女の子と同じベッドにいる弟子が目の前に居たならばしゃあねぇさ。しゃあねぇのさ。
「ド畜生…」
「どうしたの!?」
コーヒーを入れてくれていたヒナタが驚きの顔を上げる。
「何でもない」
何でもないんだよ。ああ、本当に何でもないんだって。
それよりも、
「何でヒナタはオレの家で寝てたんだ」
「寝るところがベッドしかなかったからだよ」
誰が寝場所のことを聞いたんだよ。このスポンジ頭が。
「家に帰んなくてもよかったのか」
「掃除中は何度か泊まってたし大丈夫じゃないかな」
泊まってたのかよ。こんなぼろ屋にヒナタが泊まってのかよ。
「本しかなかっただろ」
この家には本しか置いていない。
アカデミーから帰ってきたらここで次の登校時間まで寝ずにここで本を読んでいた。
無知は罪、馬鹿なヤツに力なんて宿りやしない。それを信じて知識を貪り続けてきたオレの幼少期。
おかげで筋肉なんて少しもありゃしない。
まったくを持って不便だ。
「難しい本ばかりで驚いちゃった」とヒナタは笑って言うが一体どこまで理解したのやら。
一応一通り読みはしたが未だ理解していない部分も多々ある。
ヒナタは急に顔を上げてこう言った。
「お父さんがナルト君を呼んでいたよ。疲れが取れ次第に来て欲しいって」
「面倒だなぁ」
ああ、本当に面倒だ。
あの才能主義の糞野郎のところにいくのは非常に面倒だ。
正直行きたくないが、
「まぁ、行ってみるか」
「うん」
ヒナタの笑顔が見れるなら行ってもいいか。
今日も空は青いなぁ。
オレは道場でヒナタと対峙している。訳がわからねぇ。
当主様の話ではヒナタと一度手合わせして欲しいという用件だった。
「始めッ!」
そして糞当主様の掛け声で試合は始まった。
こうまでハナビやヒアシの前で手の内を見せるということはしたくない。
手合わせを頼むと言われた瞬間帰ろうと思ったのだがヒナタの前で逃げるなんて選択肢は見つからなかった。
「何時でもいいぞ、強くなるために修行したんだろ」
ポケットに手を突っ込んだままでいるとヒアシから物凄い視線で見られたが知ったこっちゃない。
言っちゃ悪いがヒナタ程度にやられはしない。
百回戦っても百回勝つ自信がある。
ヒナタはオレの態度に嫌な顔一つせずに構えている。あんなに毛嫌いしていたヒナタ流の構えで。
ああ、早く帰って一人になりたい。
「はっ!」
「―――ッ!?」
間合いの外にいた筈のヒナタが目の前に、
そうじゃない、今は回避を――――ッ!!
ヒナタの柔拳が急いで後ろに跳び退ろうとしていたオレの脇腹に、、、、微かに入った。
急な転回に手加減が出来ずに壁に背がつくまで跳んだオレは胃液が逆流する感覚を覚えた。久しく味わっていなかった、あの酸味のある味が。
吐いて楽になりたかったが、
「……………随分と変わったな。いや、変えられたのか?」
嘔吐を我慢し、激痛を回線毎断ってオレはそう言った。
結論、ヒナタは強い。強くなった。
才能が無いだなんて三流映画のような陳腐な嘘っぱち。
そしてヒアシが急に手合わせを頼んできたのかがよく分かった。
ヒナタが強くなった、それを見せつけたかったんだ。
蓋を閉じていたヒナタが開いたらそこには天才がいたんだということが修行中にヒアシには分かったんだ。
オレが柔拳を受けて表面に出していないのをヒアシは眼を見開いて困惑した顔で見ている。
そうか、ヒアシは一度味わったのか。ヒナタの柔拳を。
ふざけやがって、糞野郎が。
「強くなったヒナタには……二割くらい本気を出してやるよ」
ほざけ、と確かに聞いたぞ糞当主。
ヒナタは顔を嬉しそうに弾ませている。
ヒナタには分かるのだろうか、オレが本気を出していないって事が本能的に。
ふざけやがった結末だなぁ、おい。苛立ちを通り越して呆れてくる。
天才に囲まれた不良品が、狂わないとでも思っているのか。
思っているんだろうなぁ。
「行くよ!」
ヒナタが跳躍する。
0.2秒後には右手、
「ハァッ!」
その直後に回転を殺さずにチャクラの篭った左後ろ蹴り、
「――ッ!」
眼を開いて見るまでも無い。
その直後、間合いを取り直して白打を三度、
「――――ッ!」
四度だった。ヒナタの実力を修正を施し、次は体当たり後肘鉄から右ひざ蹴り、
呼吸と心拍音、筋肉の軋み具合から距離を割り当てて、逸らす。
「どうして!?」
「…どうしてかな」
答えなんて簡単すぎるよ。型にハマるからだ。
柔拳対策などネジと対峙した時から既に二年、とっくに完結している。
同じ流派、そしてネジ以下のヒナタがオレに勝つ? 不可能なんだよ。
それ以前に、ネジと比べることが間違えている。
アイツは強かった。オレを越そうと立ち上がり続けた。覇気も視線の強さもオレを脅かすほどに。
「ネジに比べるにも及ばないよ、ヒナタの柔拳なんてな」
ネジはオレのライバルだ。
アイツの憎悪は心地よい。
「強くなったヒナタには……二割くらい本気を出してやるよ」
ほざけ、そう私は無意識的に口にしていた。
ヒナタが自分から修行を始めてからそう時間は経っていない、それでも大きく変わった。
本当に、強くなった。
ハナビを超えて、当主候補として大きく育った。
だから故に今期最強と言われた彼に手合わせを頼んだのだが、ふざけた態度でこんな者にヒナタが惚れこんでいるというのが信じられん。
このままいけば、ヒナタは日向家宗家当主として見事に開花するだろう。
分家であるネジを超える天才、私はそう思っている。
「行くよ!」
ヒナタは勢い良く飛び出した。私が教えたチャクラのコントロールも完璧に近い。
霞んだかのように柔拳を繰り出したのにも関わらず、彼は明らかにヒナタが手を振るう前に回避運動に動いていた。
白眼で見たから分かる。
彼は眼を瞑りながら天才であるヒナタと戦っている。否、戦ってすらいない。
「ハァッ!」
ヒナタの蹴りを伏せるかのような体勢で避ける。なんという体のバランス、すぐさま立ち上がりヒナタの柔拳を左右に体を振って避け続ける。
「どうして!?」
それは私のセリフでもあった。
ヒナタは始終白眼を開眼している、故に分かるのだ。眼を瞑りながら避け続けている彼の異常性が。
本当に二割なのだという事実が脳裏に移る。
ハナビも唖然としている。
ヒナタはハナビとは真剣に戦わない。故にハナビはヒナタの本気を見たことが無いのだ。
そしていい機会だとこの場にいさせたが、こんな試合を予想できただろうか。
「ネジに比べるにも及ばないよ、ヒナタの柔拳なんてな」
そして彼は唇を歪めながらそう言った。
まるで自分を否定されたかのような言葉だった。
「柔拳とはチャクラを籠めた拳で相手の内臓を破壊する防御不可能の体術、白眼を使わないという条件下であるのならばオレにだって猿真似くらいは簡単に出来る」
「あっ」
ヒナタの声は私の声だった。
ヒナタの白打を同じ動き、同じチャクラの量の手の平で受け止められた。
「後は如何に相手の内臓にこのチャクラを叩きつけるかということ、こればかりは白眼を使わなければならない」
彼はヒナタから間合い取りまた両手をポケットに入れた。
それに激昂しなかったのは私が納得してしまったからだろう。
彼は正しく実力の二割でしか戦っていなかったということを。
「だが、オレは違うぞ。オレは人間の臓器を熟知している。どんな体型でもどこに何の内蔵があるかも分かる程にな、だからオレは柔拳を扱おうとすれば可能だ。だがオレはそんなことはしない。分かるか? オレは二割で戦うって言ったんだ。こんな体術が二割に入るとでも思っているのならばこんな体術止めちまえ」
それは柔拳を認めているのだろう。
彼は強い。既に下忍の枠から超えている。
これが今期の最強のルーキー。
正確には多少難癖があるが、いいじゃないか。
ヒナタがほれ込んでいるんだ。白眼を持っているヒナタがほれ込んでいるんだ、それが間違いである筈が無い。
面白いぞ、これ程に面白いのは久しぶりだ。
笑う私が珍しいのか、ハナビは不思議そうな顔で私を見ていた。
「前回の任務で心地よい殺し合いがあったから疼いてんだ、これ以上はヒナタでも危ないぞ」
そう言ってうずまきナルトは出ていった。
『だからオレは柔拳を扱おうとすれば可能だ』
そんな訳が無い。いつかは出来るようになるだろう。それでも今のオレには不可能だ。
たとえ体の構造を把握していたとしても出来るものと出来ないものがある。
どうやったら腕を叩いただけで心臓を破壊できるというんだ。道端で二人が肩をぶつけ、そしてそれに乗じて心臓をぶっ壊せるか? 出来る筈が無い。
柔拳に近い真似事ならば分からないが、長い時を研究に費やし、自ら体験しなくては本家の柔拳など出来やしない。
「前回の任務で心地よい殺し合いがあったから疼いてんだ、これ以上はヒナタでも危ないぞ」
これ以上はいけない。
オレは間違いなくヒナタを傷つけることになるだろう。
同じ道具であった白、そして仮面を外した道具同士の殺し合いは確かに心地よかった。
忘れたくても忘れられない。
互いに全てを出し合って、出し尽くした殺し合いはこれ以上の無い極上の快感だった。
だから、それを忘れないために今は眠りたい。
最後に見たヒナタの顔が悲しそうだったのは、自分に嘘をついて納得させた。
「おい、ナルト」
ああ、なんでこんな時に、
「うちはの坊ちゃん…か」
うぜぇなぁ。
「俺の名前はうちはサスケだ」
「なんでオレがオマエの名前をちゃんと言わなきゃいけねぇんだよ、かったりぃなぁ」
今は早く帰って寝たいんだよ。
早く、早く、早く帰ってヒナタの顔を忘れたい。あの悲しそうな顔を忘れたいんだよ。
「俺とナルトは対等だろ!」
「いい脳外科を教えてやるよ、そこでちょいと手術してもらってこいよ」
もちろんカブト先生の病院なんだが、本当にいい病院だよ。
あれだな、白と戦って死に掛けたから傷の熱が頭にいっちまったんだろう。軽い脳炎と見たな。
「ふざけるな、俺は一度だって違うと思ったことは無い」
額を指差してうちはの坊やは何か言っている。狂言の一種だろう。
可哀想に、才能はあったのによぉ。
「オマエこそ勘違いするなよ。オレは一度だって一緒だと思ったことは無い」
うちはの返事は拳だった。そしてそれに対するオレの返事は蹴りだった。
見事に鳩尾に入ってもがいている。腕と脚ではリーチが開き過ぎている、届く筈が無い。
苦しそうだなぁ。いい気味だ。
うちはがこんなもんなら中忍試験で注意して措かなければならないのはネジとリーくらいか。まぁ、ヒナタは別の意味で注意しておこう。怪我されたら嫌だしな。
「さて、帰「ッまだだッ!」
何時の間に復活したのやら、写輪眼を舐めていたようだ。オレの蹴りは一瞬ハズされていたみたいだ。
ズドンッ! とオレの写輪眼でも予測不可能だろう死角からの膝蹴りが殴りかかってきていたうちはの丹田に突き刺さり一瞬浮き上がる。
「オマエ、本当にうぜぇなぁッ!」
両手を組んで、チャクラを籠めずに腕力だけで全力で後頭部を殴る。
「ぎゃっ」
奇妙な声を上げてうちはの体がくの字に曲がって嘔吐しながら泡を吹いている。脳震盪だろう。
「お前みたいのに対等に見られるのは迷惑なんだよ、クソガキ!」
オマエが上でオレが下。オレは一度だって対等に思えたことが無い。
任務明けで体中が穴だらけだが一人生活ってのは不便だ。こんな傷でも飯の準備は疎かに出来ない。
メモを片手に歩いているとダラリと肩を垂らしているナルトが歩いていた。
「おい、ナルト」
「うちはの坊ちゃん…か」
何時もコイツはオレの名前を呼ばない。
カチンと来るときもある。
「俺の名前はうちはサスケだ」
頭はいい筈だ。俺がコイツ以上にアカデミーのテストで取ったことはない。お互いに満点だからな。
ようやく振り向いたナルトの眼は何時も以上に冷たかった。
「なんでオレがオマエの名前をちゃんと言わなきゃいけねぇんだよ、かったりぃなぁ」
まるで俺のことを見ていないかのような、いや実際に見ていないのだろう。顔はこっちを向いているが視線が合っていない。
いつもだ。何時もナルトは俺を見ていない。
イタチには確かに劣るだろう。確かに劣化品なのかも知れない、それでも天才と言われた、ナルト自身が羨ましいと言った俺を蔑ろにするのは我慢ならなかった。
「俺とナルトは対等だろ!」
同期の下忍、同じ班、仲間なんだろ、俺達は!
俺達は対等だ!
「いい脳外科を教えてやるよ、そこでちょいと手術してもらってこいよ」
ゲラゲラと耳障りな笑い声でナルトはコメカミ、つまり脳と現しているのだろう箇所を指で突っつきながらそう言った。
目の前が真っ白になる。視界がクリアになり、何をすればいいのか、具体的な段取りが高速となって脳へ集まっていく。
「ふざけるな、俺は一度だって違うと思ったことは無い」
この額当ては同じ木の葉の忍びの証なんじゃないのか! 俺達は同じスリーマンセル、仲間だろうが!
「オマエこそ勘違いするなよ。オレは一度だって一緒だと思ったことは無い」
ふざけるな! という言葉を言おうとするよりも拳が出ていた。
オレの拳がナルトに届くよりも、ナルトの稲妻のような蹴りが俺の鳩尾に入―――らせてたまるかッ!
思いっきり頭を後ろに振って身体をぶらせてナルトの蹴りを胸で受け止める形で後ろに吹き飛ぶ。
穴だらけの身体が傷口を開いたようだ。服の裏が湿っぽい、血だ。
このままでは危ないだろう。自分の身体だから分かる、まだ血が足りない。
だが、ナルトをこのままでいいのか?
俺を見下した状態で、本当にいいのか?
「ッまだだッ!」
まだだ! まだ終わらせられない。俺がこのままじゃ俺じゃなくなる。
まだ終われな―――
ズドンッ!
―――オエェッ!
ナ、ルトの膝が何時の、間にか、腹に、
「オマエ、本当にうぜぇなぁッ!」
何も分からない、ただ頭に何かが、
「ぎゃっ」
ぐるん、と身体が勝手に回って、地面に叩きつけられて、なにもかもが分からないくなった。
「お前みたいのに対等に見られるのは迷惑なんだよ、クソガキ!」
もう俺にはナルトが何と言っていたのかも分からなかった。
みっしりと葉の生い茂った梢が、オレ達の頭上をドームのように覆っている。
太陽の光は、分厚い葉群に遮られてほとんどが差し込んでこない。
森の中はまるで海の底のような青みを佩びた薄闇と静寂に包まれている。
「まったく、どこにいったのかしらねぇ」
オレの背後から不愉快な声が聞こえてきた。オレ以外が聞いたらきっと可愛らしい声なのだろうが、オレには小煩くにしか感じやしない。
オレは無視と決め付けて耳に集中して歩き続ける。
「ちょっと! なに無視してんのよッ!」
「喋らずに探せよ、二人しかいねぇんだぞ」
あのうちはのクソガキはどういう訳か入院中だし、いつも役に立たねぇ。
「なんでサスケ君、今日はお休みなのよ!」
「知るかボケ」
「ボケってどういう意味よ、ナルトのくせに!」
なんで春野と一緒に任務しなくてはいけないんだ。
どれもこれも全てうちはが悪い!
「えっ、任務は中止じゃないんですか!?」
今日はうちはが来ていないというのに任務を行なうといったカカシを疑うかのように春野はカカシを問い詰める。
カカシは自分も困惑しているとアピールしているかのように眉を潜め、
「依頼人の方から強いプッシュがあってな、断りきれなかったんだよ」
報酬は多めに出してくれるみたいだしさ、とカカシは苦笑する。
断りきれなかったというのは本音だろう。
「他の班に変われなかったのか」
「どれも埋まっていてな、もう少ししたらでっかいイベントもあるし皆は点数稼ぎさ」
春野は訳がわからない顔しているが、要するに中忍試験に向けての任務数を稼いでいて今は空いてなかった、と。
「オレ等は急いでいなさそうだが、いいのか? まだ規定の回数を越していないぞ」
カカシは一瞬ギョッとしたが、すぐに隠した。
微かな筋肉が動いただけだったからオレも本当に動いたのか分からないが、まぁどっちだとしても変わらんな。
「情報が早いな…まぁ、今回ので丁度規定の数値を超えるからいいんじゃないか」
「さては元から断る気はなかったんじゃないか」
「さて、どうでしょう」
ドロンと煙と一緒にカカシは消えてしまった。
そこに二枚の紙が置いてあった。内容は今回の任務について、アイツはさぼるつもりか。
と、いうことが今朝にあったのだが、如何せん既に夕刻になっているのにも関わらず未だに見つかりもしない。
ターゲットはペットの犬。散歩中に逃げたらしいのだが、ふざけたことに臭いを追っていっても途中で途切れてしまった。
依頼人は木の葉の大名の一人で一つの大きな山を持っていた。そしてその山の散歩中に犬と逸れてしまい未だに帰ってこないから依頼をした、ということなのだが。
たった二人で山の中を散開して犬一匹を見つけられると思っているのかねぇ。
「山狩りしねぇ?」
「はぁ!?」
火ィつけてよ、追い込むんだよ。犬は臭いに敏感だからすぐに上に目指して逃げるだろうし、焼け死ぬ前に拾えば良いんじゃないか、かなりいいだろう。
「おい、火の準備を「見つけたわッ!」
なんだって? 今から面白いことが起きると思っていたのに。
「チッ、走るぞ!」
「わかってるわよ!」
地面を走るよりも木の上を伝っていった方が速い、春野のチャクラの扱いは頗る上手い、オレよりも早く犬の真上まで辿り着き、
「捕まえ――――キャアァァアッ!」
飛び込んだ春野は身体毎地面に填まり、犬を掴みながら落っこちた。
落とし穴か、先に行かせておいて良かった。
「助けてナルト!」
助けるかよ、と思っていたのだが何かといわれるのがめんどくさい。
「まぁ、これは貸しだからな」
忘れるなよ、と瞬身の術で春野の目の前に移動して穴から外へと放り投げる。
「な、ナルト!?」
なんだ? オレがオマエを助けるのが意外かよ、つまんねぇ。
なんにしても、
ズズズズズズズッ! といくらチャクラを籠めようが湿った土じゃくっついてもすぐに剥がれて中々止まってくれない。
犬探しにをするのにクナイは危ない、と依頼人に言われてなんにも持ってきてねぇし。
それが狙いだったの? って感じだ。
やけに押しが強かったのもそれか。
ああ、次ぎ会ったら実験材料行きだな。しかもオカマのな。
「やったか?」
「ああ、三人とも落ちたのを確認した」
「ふふ、そうか」
「ああ、家に帰って眠りたい」
変な笑い声も聞こえてきたよ。
ヒュ――――、とヒモ無しバンジージャンプも心地よい。BR>