大蛇丸とはどんな奴だろう?
三忍の一人として名を馳せ、数十年に一人と言われた逸材である。
性格は残忍かつ冷酷。野望のためには手段を選ばない存在。
また、木の葉を抜けた後に音の里を設立。そして、木の葉崩しのための優秀な人材を集める。
第三者から見ればこれが大蛇丸という者だろう。
…しかし、俺にとって、いや、俺達にとって大蛇丸という存在はこれだけではなかった。
セクハラである。
まずはこの資料を見てもらおう。
この一ヶ月の調査票
後ろに立たれた回数 38回
お尻を触れた回数 13回
頬を舐められた回数 4回
貞操の危機を感じた回数 プライスレス
………
……
…
プライスレスなんて言ってる場合じゃない!!
確かにお金では買えないけど。
や、やばい…このままでは本当に俺の貞操が…
「―というわけで、俺達は早急に手を打たなければならないわけだが」
俺は椅子に腰をあずけ、周りを見回しながら言った。
ちなみにこの場にいるのは、俺、多由也、鬼童丸、左近(右近)、次郎坊の五人である。
集まってるのは俺の部屋。
「…で、セクハラってそんなに深刻なものなのか…?」
多由也の何気なく言った言葉に俺達四人は一斉に反応した。
「多由也!! お前はやられた事ないからわからないんだ! 笑いながら尻を触られるし、それにあの長い舌で頬を舐められたり、次郎坊なんて腹の肉をタプタプ捕まれてるんだぞ!! 」
「まぁたしかにウチはやられてないけど、それでどうするんだ?」
俺の魂の叫びも多由也には届かず、冷静な返答が返ってきた。
「そう、それが問題なんだ…大蛇丸様の事だ、遠まわしに言っても埒が明かない……そこでだ、直接大蛇丸様の元に乗り込んで直訴する!」
「お、大蛇丸様に直訴か…大丈夫なんだろうな…?」
不安げに次郎坊が口を開いた。
次郎坊だけではない、直訴と言う事に鬼童丸も左近も戸惑っているようだ。
「確かに相手は恐ろしい大蛇丸様だ…しかし、しかしこのままでは俺たちの貞操が奪われるんだぞ。俺たちに未来は無いんだ! 今戦わないでいつ戦うと言うのだ!? たとえこの身が砕けようとも俺は戦ってみせる!!」
「…君麻呂、お前そこまで…分かったぜよ、俺も戦うぜよ」
「あぁ、俺も戦うぞ」
「俺も行く」
この時初めて音の五人衆(多由也除く)の心が一つになった時だった。
そして各々手を掲げ
「自由を我らに!」
それを掛け声にして俺たちは部屋を後にした。
残った多由也はというと、冷めた目で四人を見送るのであった。
「皆の者、覚悟は良いか…?」
俺はそう言い他の三人を見た。
三人とも表情には出してないが、かなり緊張してるのは伝わってきた。
「あぁ行こう」
俺自身緊張もしていて、それが誰が発したか分からなかった。
そして、俺たちは魔王の住む扉へと手をかけた。
コンコン「開いてるわよ」そう部屋の中から声が聞こえ、俺たちは「失礼します」といい並んで部屋の中に入っていった。
大蛇丸は書類生理をやっているようだ。
「あの、今日は少しお話が在るんですけど…」
「何かしら…? あなたたちから来るなんて珍しいけど…」
そういいながらも、大蛇丸の手は休むことなく書類に向けられてる。
「単刀直入に言います。セクハラを止めてください」
………
……
…
ピキッ 大蛇丸の持っていたペンが折れた音だ。
そして、この場の空気が一瞬で変わる…
「止めろ…ですって…?」
「えぇ…今すぐ俺たちのセクハラ」
セクハラを止めろ! そう続けようとしたが無理だった。
大蛇丸からものすごいプレッシャーが発せられたからだ。
今すぐにでもこの場から逃げ出したい…それが率直な意見だ。
でも今回ばかりはそうする分けにはいかない…
俺は考えた。この場をどう切り抜けるかを。どうすれば自分の貞操を守れ、命も守れるかを…
答えは簡単だった。
誰かを犠牲にすればいい。
その考えに至った俺はすぐさま行動に出た。
「大蛇丸様、セクハラを止めてくださいといったのには理由があるのです。実は俺がセクハラをされるたびこの嫉妬する奴がいるのです」
「嫉妬…そう、それなら仕方ないわねぇ それにしても誰なのその嫉妬するのは…?」
俺は三人を見た。三人とも裏切られたという顔をしており、目で訴えてきている(君麻呂殺すと…)
だが俺はそんな視線に負けるわけにはいかなかった。
「時に大蛇丸様? 鬼童丸、次郎坊、左近。三人のうち誰が一番好みですか?」
俺がそう言ったとき三人はビクッと震えた。
「…? 三人ねぇ…鬼童丸の六本の腕で責められるのもいいし、次郎坊のお肉も捨てがたいわねぇ… 左近だと右近と二人セットで楽しませてくれそうだし…」
……聞くんじゃなかった…正直な感想がそれだ。
言われた三人を見てみると、全員顔が真っ青になってる。
命以上の危機を感じ取ったのだろう。
「…で、誰なの君麻呂? 嫉妬するほど可愛い子は…?」
今からの俺の発言に三人の命、もといい貞操がかかっているといっていいだろう。
三人の目は『殺す』から『助けて』に代わっている。
そこで俺はあることにチャレンジしてみた。
目での会話だ。
早速三人にアイコンタクトを送ってみる。
(助けてやるから何を差し出す?)
届くかどうか不安だったが蕪辞届いたようだ。
三人とも少し考えてから同じくアイコンタクトで返ってきた。
次郎坊 (一週間、君麻呂好きな献立&デザート付)
左近 (いちゃいちゃパラダイス限定版)
鬼童丸 (ゲームやり放題)
…生贄は決まった。
「大蛇丸様、実はその嫉妬する相手というのは鬼童丸なんです。な、次郎坊、左近?」
「あ、あぁ…その通りです大蛇丸様」
二人は震えながら同じ事を言った。
「あら、そうだったの? 気付かなくて悪かったわねぇ鬼童丸」
「本当ですよ、毎回触られるたびに鬼童丸に睨まれてたんですから。挙句には大蛇丸様は俺のものなんて言い出すし」
ハハハと笑いながら言った。
大蛇丸もフフフ笑ってるようだ。
次郎坊と左近は恐がってこっちを見ていない。
で、当の本人はというと
「…ぜ、ぜよっぉおおお 君麻呂裏ぎっ」
鬼童丸が絶叫したが、その声は途中で途切れた。
どすっ……
鈍い音と共に鬼童丸の下腹に俺の右手が突き刺さっていたからだ。
鬼童丸の身体は自分では支えきれなくなり二つに折れる。
そして、静かに手を抜くと鬼童丸の身体は床に倒れこんでしまった。
「やだなー鬼童丸。嬉しいからって気を失わなくてもいいじゃん。」
俺は一連の行動を流れるようにやり、笑いながら言った。
「じゃあ大蛇丸様。鬼童丸置いてきますので、後は好きにしてくださいね 次郎坊、左近行くぞー」
大蛇丸も流れについて来てないようだったが、とりあえず俺たちは鬼童丸を残し大蛇丸様の部屋を後にした。
翌日、俺と次郎坊、左近は痔の薬を鬼童丸にプレゼントした。
…が、鬼童丸は昨夜の事はまったく覚えていないらしい。
鬼童丸にとってそれは幸福な事なのだろう。
あとがき?
この話は本編とはまったく関係ないとお考えください。