目の前で人が倒れてる…
血の水溜りを作っていた…
何か喋ってるが聞き取れない…
だんだん動かなくなってきた…
もう息もしていないんだろう…
今、名前も知らない人が死んだ…
ただ…俺の手の中には血に濡れた骨があった。
血継限界の力を使って作った、骨の刀が…
そう、彼を殺したのは俺だ…
二年…大蛇丸に拉致? されてからそれぐらいの月日がたった。
その間、ただひたすらチャクラや戦闘技術について学んだ。
そして、今も大蛇丸と組み手をしている。
まぁ、組み手といってもこちらの攻撃はまったく当たらず、一方的なものになってるが…
「椿の舞!!」
今、自分が使える技の中でもっともスピードのある技。
骨の剣を作り出し、高速の乱れ突きを放つ…
けれど、大蛇丸は動かない。
たいした動きも見せず、右手に握った草薙の剣でそのすべてを弾いていく。
(くそっ、かすりもしないじゃないか!)
大蛇丸は無駄な動作はいっさいせず、もう何分も防ぎ続けている…
(一本でだめなら二本で!!)
そう思い立った君麻呂は、己の体内で新たな剣を精製し、肩口から抜き取り一気に切りかかった。
だが、その攻撃もすべて無駄に終わる…
「悪いけど、今度はこちらから行くわよ…」
今まで防戦一方だった大蛇丸が攻撃を仕掛けてきたのだ。
君麻呂が踏み込むのと同時に振り下ろした剣を、大蛇丸は草薙の剣で打ち返した。
鍔迫り合いの形になり、君麻呂は勢いに任せて押し込もうとするが、体格差、力の差もあり簡単に押し返されてしまう。
体制の崩れたところに大蛇丸の剣が打ち下ろされた。
何とか避けようと、君麻呂は体を捻ろうとした。しかし、体制も崩れていたこともあり避け切れそうにない。
攻撃をもらうことを覚悟して、両腕の皮膚の下に最高密度の骨を精製し、攻撃の軌道上にある頭をガードする。
しかし予想していた攻撃はこなかった。大蛇丸は草薙の剣の軌道をかえ、無防備な足を払うようにして攻撃してきたのだ。
「ぐっ!!」
切られた…だが、完璧なタイミングで切られたにもかかわらず出血は少ない。切られたのはズボンと、皮一枚程度。
避けたわけではない…ただ単に大蛇丸がそうしただけだ。余裕、という事だろう。
(毎度毎度やってくれる…)
君麻呂が剣を握りなおし、再度攻撃を仕掛けようと思ったとき大蛇丸は先ほどの場所にはいなかった。
大蛇丸は少し離れたところにいた。こちらが体勢を立て直すのを待っていたのだろう。
距離にして5、6メートルというところだろうか。それだけの距離をおいて二人は対峙していた。
「行くわよ」
先に仕掛けたのは大蛇丸だった。短い掛け声を発し、君麻呂に切りかかる。
君麻呂は動かなかった。まるで、先ほどの大蛇丸のように…
しかし、先ほどとは違った。大蛇丸の振り上げた剣があたる直前、君麻呂の体から無数の骨でできた刺が突き出てきたのだ。
「唐松の舞!」
攻撃にも防御にも使える優れた術である。そして、敵の突進攻撃にあわせてこちらの威力も増すカウンター攻撃としても使えるのが、この術の利点だ。
唐松の舞は大蛇丸を捕らえたかに見えた…いや、捕らえてはいた。ただ、当たったはずの大蛇丸はボンッ! という音を残して消えてしまった…
「影分身……?」
「そうよ…風遁・大突破」
その声が聞こえたのと同時に、古い小屋なら倒壊してしまいそうなほどの強烈な風が君麻呂を襲った。
突如として発生した突風に耐えるすべなどなく、君麻呂は難なく吹き飛ばされた。
(これが大蛇丸との力の差か……多分大蛇丸は十分の一も力を出していないだろう。それでも、手も足も出ないなんて…)
そんなことを考えながら、君麻呂は意識を手放した。
前回大蛇丸と組み手をやってから一週間が経とうとしていた。
今日俺は、大蛇丸に呼び出されて広間に来ていた。
この広間は小規模の戦闘なら行える程の広さがある。前に大蛇丸と組み手をしたのもこの部屋だったりする…
(それにしてもなんだろう? 戦闘訓練の為に大蛇丸に呼ばれることはあったけど今回は雰囲気が少し違ったし…)
………
……
…
(ま、まさか愛の告白とか…)
想像中…想像中…
大「実はあなたの事が好きなの、君麻呂」
君「えぇ、僕もです大蛇丸様」
大「うれしいわ君麻呂 でも、でもね君麻呂。 私とあなたとでは歳が離れすぎてる。あなたが大人になった時、私はもうおじい…おばあちゃんなの。それでもいいの?」
君「それでも愛し続けます」
大「ダメ ダメよ! やっぱりあなたには私より若くてきれいな人が見つかるはずだわ」
パンッ!
大「痛いっ! 何をするの!?」
君「愛に歳の差なんてない! そう教えてくれたのは貴方じゃないか!」
大「そ、それは…」
君「それとも僕を好きって言ったのは嘘だったのか!?」
大「違う! 嘘なんかじゃないわ! わ、私は本気で貴方の事を…」
君「なら何も迷う事なんて無いじゃないか! 僕は君が好き 君は僕が好き 二人が一緒にいる事に、これ以上の理由なんてあるかい?」
大「そう…そうよね…私どうかしてたみたい。 愛があればどんな壁も乗り越えていけるわよね」
君「当たり前じゃないか… 僕たち二人に超えられない壁なんて無いさ」
大「君麻呂…」
君「大蛇丸…」
………
……
…
オエェ
じょ、冗談で想像なんてするんじゃなかった。は、吐き気が…
「待たせちゃったみたいね」
ビクッ!
「い、いえ全然待ってませんよ」
ハハハと笑いながら言ってみたが…いかん。顔を見ただけで強烈な吐き気が…
「そう? まぁいいわ。 今日はねちょっと趣向を変えて彼と戦ってもらうから」
彼? そういえば大蛇丸の隣に誰かいるな…誰だろう?
とりあえずその彼とやらだが、別にこれといった特徴は無く、今は大蛇丸と話している。
約束がどうのこうのと聞こえたが、まぁ自分には関係ないだろう。
「準備はいいわね?」
その問いに君麻呂と相手の男は無言でうなずいた。
男はクナイを構え、君麻呂は骨の刀を構える。
先に仕掛けたのは男だった。
振り下ろされたクナイを避けつつ君麻呂は胸中でひとりごちた。
(遅い…普段大蛇丸の相手しかしてないからそう感じるのか?)
男は打ち下ろしたクナイを今度は振り上げるように攻撃をしてきた。
だがそれも簡単にかわされてしまう。
男はまたもかわされた事にに焦りを覚えつつ、再度クナイを振り下ろした。
振り上げと振り下ろしを比べた場合、振り下ろしの方が圧倒的に速い攻撃となる
だがその攻撃さえも、君麻呂は半身を動かすだけでかわし、すれ違い様に男の甲を突き刺した。
男の持っていたクナイは床に落ち、男は悲鳴を上げうずくまる。
そして、その首に剣を突きつけた。
「俺の勝ちだね…大蛇丸様、終わりましたよ」
少し離れた場所にいる大蛇丸にそう言ったが、予想外の返事が返ってきた。
「まだよ…」
「え…? でももう勝負はついてますけど?」
「まだ、彼は生きてるじゃない…殺しなさい…」
殺す…殺すって俺が…?
なんで? もう勝負はついてるじゃないか…
「君麻呂、あなたは強いわ…けれど、どの忍びよりも弱い。 殺す覚悟のない忍びが生きていけるほど、忍びの世界は甘くないわ」
殺す覚悟…そんなのあるわけがない。
元居た世界では殺し、というものはあった。
戦争で何千、何万という人だって死んでるだろう。
でも、それは全部テレビの中でおきている事だった。
自分とはまったく関係の無いところで人は死んでいった。
けど、今は自分が当事者になっている。
「あああぁあああぁあ!!」
突如、獣のような雄たけびが聞こえた…発生源はうずくまっている男。
男はクナイを握っていた。先ほど刺されたのとは反対の手で…
(くっ! 間に合わない)
殺られる…君麻呂はそう思った。
だが、実際にはその男のクナイは君麻呂を捕らえることはなかった。
男のクナイが突き立てるよりも早く、大蛇丸が男に剣を突き立ててたからだ。
「迷っては駄目よ君麻呂。迷いは隙を生み、隙は死を生む… 今ので良く分かったでしょう…? 死にたくなければ殺しなさい…貴方にはそれだけの力があるのだから」
それだけ言うと大蛇丸は立ち去ってしまった。
目の前には男の死体。
もし大蛇丸が手を出さなければ、こうなっていたのは君麻呂だろう。
目の前の男のように血を流し、息をしなくなって、そして動かなくなる。
君麻呂は震えていた…純粋な恐怖に。死という恐怖に…
(俺はまだ死にたくない…)
元の世界に居たとき、自分の命で誰かが助かれば良いと思っていた。
自分が犠牲になって誰かが助かれば…なんて馬鹿なヒーロー精神をかっこいい格好いいと思っていた。
だが、現実はそんなんじゃなかった。
死に直面したとき、そんな考えをもてるほど俺は強くなかったから…
だから、俺は他人を犠牲にしてでも生きたいと思った。
他人を殺してでも生きたいと思った。
あれから三日後、俺は初めて人を殺した……
そして今日もいつものように大蛇丸と組み手をしている。
人を殺したのにも関わらず、これと言った戸惑いも感じる事は無かった。
人を殺したのよりもショックな出来事が起こったからだ。
できれば二度と思い出したくない…
あの日、金縛りの術で身動きが取れなくなった俺に、不気味に笑う大蛇丸が近づいてきた。
や、犯られる!! 俺はそう思い、死を感じたときより震えていた。
嫌がる俺に徐々に近づいてくる大蛇丸。
そして、その距離がゼロになった時、大蛇丸はやわらかな俺の首筋にカプッと……そう、呪印をつけられた。
あとがき
初めて戦闘シーンを書きました……いや、あれですね。下手すぎて戦闘シーンと呼んで良いのか分かりませんけど^^;
うまく書ける方法とかありましたら教えてください。
次回は、音の四人衆を出す予定ですけど、原作キャラ全然出てきてないですね。
それでは、ご指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。