恋とは、命を賭けても惜しくないものと聞いたことがある。
恋とは、するものではなく落ちるものと聞いたことがある。
そして今俺は…
予想外の事ぜよ。
木ノ葉の里に君麻呂の知り合いがいるなんて。
今はナルトとか言う奴が、君麻呂を質問攻めしている状態だ。
話によるとどうやら前の任務、波の国に行ったときに知り合ったらしい。
……にしてもこの状況はどうにかできない物だろうか?
楽しそうな顔でナルト達と話している君麻呂はどうでもいい。
木ノ葉の忍びたちに、微妙に囲まれてる状況もどうでもいい。
問題は多由也ぜよ。
誰も気付いてないようだが、多由也の目が恐すぎる。
見つめる先にいるのは、ナルトの横で会話に参加している、ピンクの髪のサクラという名前のくノ一。
「ちょっとサクラ、誰よそのかっこいい人は?」
サクラの隣りに居たくノ一が、サクラを引き込み耳元で聞いた。
本人は小声で話したつもりなのだろうが、実はまる聞こえだったりする。
そして予想通り、多由也の視線はサクラから金髪のくノ一へと移った。
「聞いたか、鬼童丸。かっこいい人だって」
呑気に笑っている君麻呂。
そんな君麻呂に対し多由也は、
「君麻呂、ウチ等もそいつ等の事しらないんだけど…?」
当然のことを、冷たく言い放った。
結局、君麻呂が紹介できたのはナルト、サクラ、サスケの三人だけで、残りはサクラが紹介する事となった。
初めに紹介されたのは、金髪のくノ一。
多分、多由也が一番気になっている奴だろう。
名前は山中いの。
そして、その山中いのとスリーマンセルを組んでいる秋道チョウジと奈良シカマル。
次いで、犬を頭にのせてる犬塚キバに、サングラスをかけた油女シノ。
最期に日向ヒナタ。
………
……
…
そして俺は恋に落ちたぜよ。
「静かにしやがれ、どぐされヤローどもが!!」
ざわつく教室内に、白い煙と怒声が響き渡った。
煙の中から現れたのは、同じ服を纏った木ノ葉の忍び達。
「待たせたな…『中忍選抜第一の試験』試験官の森乃イビキだ…」
……
…
「どういう事だ君麻呂?」
イビキの話は続いているが、横に居る多由也から小声でそう聞かれた。
「どういう事って何が?」
「さっきの事だよ!」
さっきの事……多分ザクたちがカブトに攻撃を仕掛けたことだろう。
「ザク達はカブトさんの事知らなかった。そして、ザク達はカブトさんの事が気に入らなかったから攻撃を仕掛けた。そんなトコでしょ」
「違う! ウチが聞きたいのは、何でカブトさんがここに居るかって事だ!」
なんだそっちの事か…
カブトが居る理由なんて、
「さぁ?」
俺が知るわけもない。
「さぁ? って、大蛇丸様からは何も聞いてないのか?」
「聞いてない」
恐らく忘れているのだろう。
最近、大蛇丸の奴物忘れが酷くなってきてるし…
嫌な予感はしてたんだ。
座席番号を受け取った時から。
42
これが俺の座席番号。
そして隣りに座っているのが、
「ウフフ…筆記試験なんて何年振りかしら…」
姿形はいつもと違うが、間違いなく大蛇丸だ。
「で、大蛇丸様は何でここにいるんですか?」
気付かれてないと思ったのだろうか。
若干驚いたような顔を見せた。
にしてもだ、これだけ大勢いるのに見事に大蛇丸が隣りに来るとは…
「…流石は君麻呂ね。もうなんて言うか師弟愛?」
「いや、あり得ませんから」
全力でソレを否定する。
「ちなみに左近と次郎坊も来てるわよ」
これには俺が驚く事となった。
まぁ、確かにスリーマンセルなので人数は丁度は良いが。
「さ、無駄話はここまでにしましょう。そろそろ始まるわよ」
「試験時間は1時間だ」
大蛇丸の言うとおり、
「よし…始めろ!!」
試験開始となった。
問題用紙をめくり一問目にとりかかった。
一問目は暗号文の解読。
難しい漢字ばっかりだったので一瞬で諦めた。
二問目。
『図の放物線Bは、高さ7メートルの木の上にいる敵の忍Aの、手裏剣における最大射程距離を描いている。この手裏剣の描く楕円に表れる敵の忍者の特徴、及び平面戦闘時における最大射程距離を想定した答え、その根拠を示しなさい』
……
…
まったく分かりません。
次。
………
……
…
結局三問目から九問目まで一つも分からなかった。
まぁでも、別に答えなんて書かなくてもいいんだけどね。
この問題の本当の答えを知っているから、別に何もあせる必要はないし。
この試験、十問目だけを答えればいいのだから。
…という訳で暇だ。
周りは真剣に問題にとりくんでる者や、バレバレのカンニングをしている者など多種多様である。
その中で目に留まったのは砂隠れの我愛羅。
たしかあいつは、砂で第三の眼とかいうイカす技を使ってたと思う。
よし、やってみよう。
まずは手のひらに、骨で眼球の形を作る。
ここまでは順調だ。
続いて視神経接続。
…視神経接続。
……視神経接続!
………さっさと繋がらんかい視神経!!
クソッ! ちょっとだけ出来るかなって期待してたのに。
第三の眼なんて覗きに最高の技だ……音の里に帰ったらこっそり訓練してみよう。
「ここに残った81名全員に…合格を申し渡す」
そんなこんなで十問目も終わった。
ちなみに、やっぱり無回答では少し恥ずかしかったので、途中でこっそりと大蛇丸の答案をカンニングして答えを書いておいたりする。
こうして無事第一試験は終りを向かえた。筈だったのだが、
刹那、窓ガラスが砕け散り黒い塊が飛び込んできた。
「なっ……!!」
多くの受験生が突如として起きた出来事に困惑を隠せないでいる。
だが、そんな受験生にお構いなく事態は進んでいく。
黒い塊からクナイが二本飛び出し、天井に突き刺さった。
クナイは黒い塊(どうやら布のようだ)に結ばれており、布はきれいに広がる。
その布には文字が書いてあった。
『第2試験官
みたらしアンコ
参 上!!』
…みたらしアンコ。
何故だろう、前に逃げたせいか?
激しく嫌な予感がする……
第二試験、一波乱起きそうだ。