俺に新たに与えられた任務。
ガトーという男の殺害。
この男、ガトーカンパニーを経営する大富豪らしいが、裏では麻薬の販売などいろいろやってるらしい。
まぁ殺害と言っても、方法は自由なわけでそう難しい任務にはならないだろう。
そんな中、今ひとつの問題が発生していた。
「…ま、迷った…」
そう、道に迷ったのだ…
道に迷うなんて忍者失格かもしれない。
こんな事が他の連中に知れたら何を言われるか…
そもそも鬼童丸に地図なんか借りるのが間違っていたのかもしれない。
借りる前に確認しなかった俺も悪いが、地図が世界地図なんて大雑把すぎるよ…
…クソッ!! 鬼童丸め帰ったら殺してやる!!
一方そのころ音の里では
「ぶえっくしょい」
鬼童丸が盛大なクシャミをしていた。
「なんだ鬼童丸。風邪か? うつすんじゃねぇぞ」
「違うぜよよ。多分誰かが俺の噂をしてたに違いないぜよ」
「噂~? 誰がテメーみたいなクソヤローの噂をするかよ!」
「分かってないぜよ多由也。今この場にいない君麻呂がしてるに違いないぜよ。きっと一人が寂しくて俺の事でも話してるぜよよ」
鬼童丸はフフンと偉そうにしながら言っている。
「…は? 君麻呂がテメーの事なんか噂するわけ無いだろ! アホな事言ってないでさっさと持ち場に着け!!」
多由也がそんな事認める分けも無く、鬼童丸に持ち場に着くように促していた。
音の里は概ね今日も平和のようだ。
しかし本当にどうしよう…
やっぱりあれか? こういう時にはあれしかないのか??
そう思い俺は身体の中から骨を一本取り出した。
そしてその骨を地面に立てて手を離す。
すると骨は当然の如く重力に負け倒れた。
骨の先は右を差していた。
「あっちだな」
そう言い残し俺は歩き出した。
二、三十分歩いただろうか…
どうやら俺の骨占い? は正しかったらしい。
少し先に二人の人間の姿が確認できた。
遠めで見た感じだが、一人は黒くて長い髪の女。多分歳は俺とさほど変わらないだろう。そしてもう一人は金髪の少年…というかあの服装って本来の主役のナルトじゃないか…?
俺は迷子から抜け出せる事と、やっと主人公のナルトに会える事の嬉しさで駆け出した。
「誰です?」
ある程度近づいたとき、いきなり女の方から此方に向かって声が掛けられた。
一応気配とかは隠していたつもりだったんだけど、女の方はそれを見抜いたのだ。結構な実力があると思っていいだろう。
一方ナルトの方はまったく分かってないらしい。キョトンとした顔で女の方を見ている。
それにしても、此方から声を掛けるつもりだった俺は完全に出足を挫かれてしまった。
どうやって出て行こう?
「誰です?」 って聞かれたから「君麻呂です」って行くべきか…? いやそれじゃ馬鹿丸出しだな…
無言で立ち去る…いかんまた迷子に逆戻りだ。
そんな風にいろいろ考えていると今度は殺気が送られてきた。
発生源は女。
「あぁちょっと待った! こっちは戦う気なんてないから」
俺は争うつもりなんてまったく無いので、そう言い飛び出した。
「…何のようです?」
向こうは此方の姿を見てそう言ってきた。
ナルトの方は急に俺が出てきたので驚いてるらしい。
顔を見れば一目瞭然だ。
「すいません 手伝わせちゃって」
「いいって、こっちは道教えてもらったんだし」
今俺達は薬草の採取をしている。
あれから俺は、恥ずかしいけど自分が迷子という事を話すした。
そして道を教えてもらったお礼に手伝う事にしたのだ。
「それにしても、姉ちゃん朝から大変だな」
「君こそ。こんな所で朝から何をやってたんです?」
「修行!!」
張り切ってナルトはそう答えた。
そういえば、先ほど話している間に思い出したのだが、確かこの女に見える奴って白って名前だったと思う。勿論性別は男で…
二人の話は進んでいくが俺は少しでも原作の事を思い出すのに必死だった。
確か他にも再不斬って奴がいたと思う。
そこまで思い出したとき不意に俺に声が掛けられた。
「あなたのその格好、あなたも忍者ですよね?」
「まぁ一応ね。そこのナ…金髪の子みたいに有名な里じゃないけど」
危なかった。まだ自己紹介とかしてないのに名前呼ぶ所だったし…
でもこのままじゃいつか名前呼んじゃいそうだし、手を打っておくか。
「そういえば自己紹介がまだだったよね。俺は君麻呂。あんた等二人の名前も教えてくれると助かるんだけど…?」
「白です」
「俺の名前はナルトだってばよ。将来火影と言うスゴイ忍者になるスーパーヒーローだ!!」
…白のは短すぎだし、ナルトもそこまでは聞いてないし。
まぁいいか。これでうっかり名前を呼ぶなんて事無くなったし。
「火影ですか…?」
ナルトの自己紹介にあった火影という事に白は反応した。
「そう火影だってばよ! 俺は里で一番の忍者になって、皆に俺の力を認めさせてやんだよ!!」
「……それは誰かの為ですか? それとも自分の為にですか?」
「…………は?」
どうやらナルトには少し難しい質問だったらしい。
白はクスっと可愛い顔して笑っている。
これで本当に男というのだから驚きだ…もし大蛇丸が白の事を知ったら間違いなく狙われるだろう。
「何がおかしいんだってばよ!」
「…君には…いや君達には大切な人はいますか?」
ムカッとしているナルトに冷静に白は言った。ナルトだけでなく俺にもだが…
そして白は何か考え込むように俯いた。
多分再不斬に拾われる前の事でも思い出してるのだろう。
それにしても大切な人か…
俺にとっては誰だろう?
大蛇丸……絶対に違う。これは断言できる。
カブト……一応命の恩人だが、大切な人か? と聞かれると違うだろう。
やっぱり現時点では多由也達かな? 仲間、と呼べるのは彼等だけだし…
俺自身大切な人について考えてると俯いてた白が顔を上げ言った。
「人は…大切な何かを守りたいと思ったときに、本当に強くなれるものなんです」
ナルトは少し考えた後に答えた。
「うん! それは俺も良く分かってるってばよ」
白はナルトの答えを聞いた後、今度は俺の方をみている。
どうやら俺の答えも待っているようだ。
「…まぁなんとなく俺も分かるかな」
俺はそう答えた…正直そんな気持ちで戦った事などないから分からないが、多分そんなものなのだろう。
アニメや漫画だと何かとそういう奴が強かったし。
俺の答えも聞けて白は満足したのだろう。立ち上がり俺たちに背を向け言った。
「ナルト君、君は強くなる。そして君麻呂君、あなたも……それでは二人ともまたどこかで会いましょう」
「あぁ」「うん」俺とナルトの返事を聞き白は歩き出した。
だが少し歩いたところ立ち止まった。
まだ言い残した事があるのだろう。
「……あ……それと……僕は男ですよ」
ナルトはそれを聞き大口を開け頭を抱えている。
よほどショックだったのだろうか…
「サクラちゃんよりかわいいのに」とブツブツ言っている