昨日の卒業試験から翌日、また俺達はアカデミーのある教室に集められていた。
しかし昨日と比べて違う事が一つだけあった。
今この場にいる生徒の数が昨日に比べ減っているのだ。
どうやら全員が受かる事は出来なかったようだ。
その事もあり教室の中はかなりざわついている。
それからしばらくして、くノ一クラスの子達も教室に入ってきた。
くノ一クラスも来たという状況からして、多分今から下忍の班分けの説明でもあるのだろう。
俺達四人はその入ってきたくノ一クラスの中に知った顔を見つけ声を掛けた。
「多由也~こっちこっち」
俺は手招きしながら多由也を呼んだ。
多由也も俺達に気付いたらしい。
一緒に来ていた女の子と話をしていたみたいだが、その子と別れてこちらに近づいてきた。
しかし去り際に一緒にいた子に何か言わたようだ。
ここから見てても分かるくらい、多由也の顔が赤くなっていた。
……大きな声で呼んだのが恥ずかしかったのかな?
まぁいいや。そういえば多分彼女だろう。
この間、くノ一クラスに忍び込んだときに多由也が笑っていたとき一緒にいた子は。
そして俺達の近くまで来た多由也が一言。
「大きな声で呼ぶなクソヤロー!!」
…あのね多由也、そんな赤い顔で言われても可愛いだけなんだけど…
いやそんな事よりも重要な事が。
「多由也、一緒にいた子あれ誰?」
「一緒にいた子? あぁキンの事か」
「キン? そうかキンというのか…」
キンか、そういえば原作ではザクたちとスリーマンセル組んでた内の一人だっけ?
…何はともあれ彼女には感謝しなくては。
俺と鬼童丸に多由也の笑顔という貴重なものを見せてくれたのだから…
「…君麻呂、キンの事気になるのか?」
多由也が何故か不安げに聞いてきた。
どういうことだろう?
「…は? いやまぁ気になるといえば気になるというか」
そこまでいった時少しだけ多由也が暗くなったように感じた。
「感謝しなきゃいけない人だな」
「感謝? キンはお前に何かしたのか?」
それは愚問と言うものだよ多由也さん。
彼女は奪っていきました…俺と鬼童丸から多由也、あなたの笑顔と言う名の宝を…(ルパンの銭型風に)
まぁそんな事言える分けも無く、俺は一言だけ言っておいた。
「ヒ・ミ・ツ」
ドカッ!!
ウィンク付で言ったが多由也はお気に召さなかったようだ。
だからって無言で殴るのは酷いんじゃないの。
俺を殴った多由也はそのまま無言でキンの方に行ってしまった。
「何だ? 多由也の奴ちょっと機嫌悪すぎじゃない?」
「いや、今のは君麻呂が悪いぜよ」
そうなの? という感じで左近と次郎防を見たが二人とも頷いていた。
後で謝っておくか…
それからしばらくして教師達が入ってきた。
班分けの説明と担当上忍の説明などがされていく。
説明が終わった後、スリーマンセルを組むメンバーが発表された。
ザク達は原作道理の組み合わせのようだ。
肝心の俺たちは、俺、多由也、鬼童丸の三人になった。
どうやら生贄は左近と次郎坊らしい。
「あらためてよろしくだな、鬼童丸に多由也」
「そうぜよな~」
ここまでは友好的にいけたが多由也だけ「フンッ!」と言ってそっぽを向いてしまった。
いかん相当怒っているらしい…
とりあえず謝らなくては。
「あ、あの多由也さん」
そこまで言ったとき別の声に俺の謝罪はかき消された。
「君麻呂たちの三人、担当上忍の紹介があるから別室に行ってくれ」
教師のヤローだ…人の謝罪を邪魔しやがって。
とりあえず俺は教師を睨んでおいた…教師もそれに気付いたらしく顔がだんだん青くなっていく。
これはこれで面白いかもしれない…
「フンッ!! クソヤローども、さっさと行くぞ」
「ラジャー」
まるで訓練された兵隊のような声だっただろう。
今の俺と鬼童丸は多由也に逆らう術を持たなかった。
向かった部屋にいたのは大蛇丸だった。
何故? という感じだ…
まさか大蛇丸が担当上忍? なんて考えたがそんな事ありえあないだろうし。
「君麻呂、私があなた達の担当上忍になるから…」
ありえる事だったらしい。
こちらとしてはお断りしたいのだが…
「大蛇丸様がですが? しかし大蛇丸様は忙しいのでそんな暇などないのでは?」
「大丈夫よ…担当上忍といっても名前だけだから…あなた達の場合下手な上忍よりは力はあるしね…だから任務とかも基本的にはあなた達だけでやってもらう事になるから…」
これは喜ぶべきなのだろうか? なんかめんどくさいから任務は勝手にやって頂戴。という風にも聞こえるのだが。
まぁ大蛇丸が常に身近にいるよりは何十倍もましか…