音の五人衆、この名はアカデミーで一瞬で広まる事になった。
事の発端となったのは、模擬戦闘でのザク、及びドスの両名を瞬殺してしまった事にある。
ザク、ドスの二名はアカデミーの中ではトップのレベルだったらしく、教師でさえ俺たちの実力に驚愕していたほどだ。
だが、そのおかげと言っていいのかは分からないが、以前のようなあからさまな敵意を向けられる事も無くなり、イジメらしきものも無くなってきた訳だが…
「多由也が心配?」
「そうだ…」
左近の問いに、俺はうなずき答えた。
俺の不安。
それは多由也がクラスで孤立して虐めれてないか? という事だ。
「考えても見ろ…多由也のあの性格で集団行動がうまくいくと思うか…?」
「…それはそうだが…だからと言って俺たちがどうこうできる問題でもないだろ。それに俺たちには関係ない」
左近は少し考えた後もっともな事を言った。
隣にいる次郎坊も同じ意見なのだろう。左近の発言に頷いている。
だが二人のその反応が俺にはムカついた。
「甘い!! 甘すぎるぞお前達!! いいか、もし多由也がブチキレてみろ…くノ一クラスに多由也を止めれる奴がいると思うか?」
「まぁ確かにそうだが、だからと言って何なんだ…? 直接俺たちに被害が来るわけじゃないだろ」
…くっ! この左近は正論ばかり言いやがって。
「いいか!? お前達に被害が無くても、俺には来るんだ! 多由也が教室を破壊でもしてみろ、大蛇丸様の事だ、五人衆リーダーのあなたの責任ね…なんて言うに決まっている」
唯でさえまだ訓練場の修理代が払い終わってないと言うのに、これ以上借金を増やしてたまるか!
そのためにも多由也の授業風景及び、放課の過ごし方を観察してこなくては…
「というわけで、俺達はくノ一クラスに潜入してくるから…鬼童丸! 例のものを…」
俺の発言と同時に鬼童丸はある物を持って現れた。
潜入には欠かせないものである。
その名もダンボール
「行くぞ鬼童丸!」
俺はダンボールを被りながら言った。
鬼童丸もダンボールを被り準備万端のようだ。
しかし、旅立つ俺たち二人に不意に声を掛けられた。
「君麻呂、お前はなぜそこまで…」
それは誰が言ったのか分からなかった。左近かもしれない、次郎坊かもしれない、それとも名も知らぬ唯のクラスメートかも…
だから俺はこう言ってやった。
「生きて帰ったらその時教えてやる!」
……死ぬつもりなんて無いけどさ
くノ一クラスにつくまで何人かとすれ違ったが奇跡的に見つからず来れたようだ。
そして早速クラスの目と耳を傾けてみる…
………
……
…
「えぇーやっぱり右近様が責めで左近様が受けよー」
「違うわよー左近様が責めに決まってるじゃないのー」
「まぁどちらにしても、美しい兄弟愛よねー 常に繋がってるんだから きゃ恥ずかしい…」
……な、なんだここは!? 俺たち来る場所間違えたか?
鬼童丸を見てみるが鬼童丸も理解できてないらしい…
あらためて場所を確認してみたが、くノ一クラスであってるし…
あれか? やはり大蛇丸が集めた生徒だけあってまともな生徒が少ないのか?
それにしても、左近達連れてこなくてよかった…
「君麻呂、君麻呂、いたぜよ反対側に。多由也がいるぜよ」
そう鬼童丸から声が掛けられたので、俺はそちらの方に視線を移した。
視線を移した先には普段見れない光景が広がっていた。
た、多由也が笑っている。
「…き、鬼童丸……多由也が笑ってるぞ」
「見てるぜよ…」
な、何てことだ…笑うとあんなに可愛いなんて…
「何やってるの貴方達…」
……ば、馬鹿な…こ、この声は大蛇丸
この完璧な偽装が見破られるなんて…
流石は伝説の三忍というわけか…
「鬼童丸! 撤退だ!!」
俺たちは一目散に逃げ去った。
…が、そんなに簡単に行くはずもなく
「風遁・大突破」
大蛇丸の放った術により、俺たちはダンボールと共に飛び去った…
後日分かった事だが、くノ一クラスの授業は時々大蛇丸が教えているらしい…
教えてる内容が乙女心とかだったらどうしよう…そう考えてしまった…