重大なことに気がついてしまった…
憑依系ってやつ?
そう、今自分は君麻呂なんだ。
なのに、お約束の事をやってない事に…
あの有名なセリフを言ってない事に…
とりあえず上を向かなきゃ。天上見なきゃできないからね。
「知らない天井だ…」
自分で言っといてなんだけど、知らないってのは間違いの気がする。
ここはNARUTOの世界で、自分は君麻呂。今いる場所は牢屋、というところまでは分かっているのだから。
けど、まぁ気にしないでおこう。
そんな事を気にしてるほど、今の自分には余裕が無いのだから…
とりあえず外に出るか。ここに居たって何も始まらないからね。
そういえば、君麻呂ってどんなキャラだったっけ?
外に出るまでに、とりあえず自分の知ってる事をまとめてみるか。
え~と、名前は君麻呂。うん、これは間違いない。というか、間違ってたらこれから思い出すのはすべて無駄になるし。
実力は結構あったと思う。骨を操る血継限界を持ってる一族(名前なんだっけ?)の生き残り。
顔も良かったと思う。これはラッキーとしか思えないね。念願の彼女ができるかもしれないし…
誰がいいかな?
サクラ、いの、ヒナタ、テンテン。 若さがあふれてるね。
年上に目を向けてみると、アンコ、紅、シズネ、綱手。 お色気たっぷり。
……何というか、ハーレム?
はっ、いかんいかん。かなり話がそれてしまった。アホな事を考えてる間にもう外が見えるじゃないかか…
外に出ると結構な人数が待っていた。お出迎え? と思ったけど違うらしい…
多分この場所は、村か何かの広場なんだろう。少し離れたところに何軒か家が見えるし。
周りを観察してると、近くにいた人から声をかけられた。
「遅かったな」
誰? と思ってよく見たら、牢屋の鍵を開けてくれたおじさんだった。
とりあえず、遅かったらしいので謝っておいたけど…何なんだろう、変なのだ。
いや、おじさんが変なわけじゃないが、周りの雰囲気が変なのだ。
全部で30人ぐらいはいるだろうか? それだけの人たちが月明かりの照らす中集まっているのだ…それだけならいいかもしれない(よくないけど)、一人だけ、この集団の中で一人だけ目立つように、広場の中心にある大きな岩に立っているのだ。
みんな、その一人に注目している。
空気がピリピリと緊張しているというのはこういうことなのだろう。
そんな雰囲気をものともせず、岩の上の男は口を開いた。
「……全員集まったようだな……」
話し始めのタイミングからして、どうやら自分が最後の一人だったらしい。
「……ついにこの時が来た……我ら…かぐや一族が至福を感じる時……」
いきなり話し出したと思ったら、かぐや一族の至福って……何至福って? いきなり至福とか言われても……
ん? かぐや一族? そうか、一族の名前かぐやだった。思い出した思い出した。
でも、かぐや一族って事は『かぐや君麻呂』がちゃんとした名前になるのかな?
「……血飛沫の中で我らは踊り……悲鳴の中で我らは歌う……」
拳を握り締めながら危ない事を言う人って……
あれ? そういえば、かぐや一族って何で滅びたんだっけ?
「……戦いの……殺戮の中でこそ輝ける我ら……」
そうだ、たしか水の国に攻撃しかけて、霧隠れの里の奴等と戦って負けたんだっけ? あれ? それって今回の標的なんじゃなっかった?
まぁいいや。で、たしかその後に君麻呂は大蛇丸に拾われたんだよね……
…
……
………大蛇丸!?
忘れてたよ大蛇丸の存在を……一番忘れちゃだめな人じゃん。
大蛇丸って君麻呂の体が目当て……(表現が卑猥だな)……え~と、そう血継限界が目当てだったよね?
どうしよう……君麻呂、といっても今の俺じゃなく、オリジナルのほうは大蛇丸を崇拝してたみたいだけど……無理、あんなオカマっぽい。というかオカマじゃなくても、あんな超が付く危険人物なんて崇拝どころか、会いたくもない!!
それに、今思い出したけど君麻呂ってさ、不治の病で死んだんじゃなかったっけ?
もう未来絶望的だし……
いや、待て。不治の病、綱手なら何とかなるんじゃないのか?
あの時治療してたのは薬師カブトだったはず。
そのカブトが、綱手ならどうにかできるかも…って言ってた気がする。むしろ、言って無くても言った事にしとかなきゃ希望が持てないし……
後は一族の事とか、病気についての事が書いてある本を見つければ生存率アップだよね? この事も言ってた気がするし…
とりあえず、これからやる事は決まったかな。
生き残るための三ヶ条
その一 大蛇丸に会わない為にも、霧隠れの里に行かない。
その二 一族の事や、病気の事などが書いてある本を探す。
その三 綱手の治療を受けるために、木の葉に亡命する。
まぁこんなところでしょ。
「……さぁ……行こうではないか……」
演説もそろそろ終わりそうだし。
「……水の国を屍で埋め尽くすのだ!」
その言葉が言い終わったのが合図だったのだろうか…周りに居た人たちは、演説を行っていた人を先頭に出発したようだ。
「いってらっしゃ~い」
この言葉は彼らに届かないだろう。木の上をピョンピョン飛びながら、凄い速さで旅立ってしまったのだから…
そして気付いた。もし大蛇丸の事を思い出さず、一族の人たちと一緒に水の国に向かう事になっても、一緒に行かない…いや、行けないだろう。
木の上飛ぶなんて芸当、俺にはできないのだから……
皆いなくなったことだし本を探すか。
目の前には一番大きな民家。で、こういう時やる事といえば一つ。
ゲームでお馴染みの家捜し。
勝手に人様の家に上がりこんで、またもや勝手に人様のタンスや本棚を調べるという勇者? のみに許された行為…
そう、世間一般では犯罪の行為も勇者になら許される。
俺は勇者じゃない…俺がやれば間違いなく捕まるだろう。
しかし、それでも俺はやらなきゃいけない。生きる為に、生き残る為に本を見つけなければいけないのだ……仮に、本を見つける過程で偶然女性ものの下着が見つかっても、それは不可抗力でしかないのだから
「おじゃましま~す」
………
……
…
うん、誰もいないみたいだね。誰かいても困るけど。
では失礼しまして、家捜し開始~
それにしても広い家だな~ 何部屋ぐらいあるんだろ? 手前の部屋から探してくか…
タンス発見!!
まずは一番下から…変わったものは何もない。
二段目…同じく何も変わったものはない。
三段目…服の下に怪しい袋がある……お金っぽいのをゲットした。
四段目…あ、あれ? と、届かないじゃないかー!!
もう一時間近くは探してるのかもしれない。
「自分が小さくなってるの忘れてたよ…」
そう呟いた彼の手には、いくつものタンスと本棚を攻略する為に使われたイスが握られていた。
「次で最後の部屋か…」
もう疲れ果ててクタクタだった。
「大体、こんなに探してるのに女性ものの下着が出てくるという、うれしはずかしのトラブルが無いってどういうことだよ!!」
もはや当初の目的とずれていているのかも知れない。
でも、長かった家捜しの旅は終わりを迎えることになる。
「これで下着がなかったらこの家燃やしてやる……」
結論。下着はあったよ、あったけど……
「男物はいらんわっ!!」
投げ捨ててやった。今までの憎しみを込めて…
そして、イスから降りようとしたとき見つけたのだ。
何冊かの本がパンツの下にある事に…
中を見てみたが、何冊かは血継限界を使った技が載っている事は理解できた。
後の一冊が多分探していた本だと思う。 正直、理解はできなかったが、それらしい内容が書いてあるような気がした。
「でも、普通こんなところに隠すか? むしろ隠していたのか?」
まぁいいだろう…見つかったんだから。
今日はこの家に泊まってこう。もう眠すぎるし…
あの家で見つけた本やお金は、同じくあの家で見つけたカバンに入れて持ち歩くことにした。ついでに食料も貰ってきたけど…
問題があった。木の葉の里がどこにあるのか分からないのである。
どっちに向かおうか悩んでいたけど、昨日の夜、一族の人たちが向かった方と反対の方に向かうことにした。
大蛇丸に会う可能性を少しでも減らしたいからだ。
いつのまにか暗くなっていた。一日中歩き続けたのだけど、それほど足や体は痛くなってない。
これは君麻呂の体が凄いのが理由なのかもしれない。多分そうだろう。元の世界の俺じゃ、こんなに長時間歩くなんて絶対無理だから…
「今日はここで野宿か~」
獣が出てきたらどうしよう……
とりあえずカバンを広げ、持ってきた食料と本を一冊取り出す。
片手に食料、片手に本。という状態で本を読んでく。
「あの家で見た時、気になる技があったんだよね~」
本は技の事が書いてある本らしい。
「あった、あった! え~と、名前は十指穿弾(テシセンダン)か…十本の指先より放たれる骨の弾丸。高速回転しながら飛来し、対象物をドリルのようにえぐる」
この技だよ。この技を見たとき無性にやりたくなってしまったんだよね…
何故かって? そりゃあの技に見えたからだよ…
とりあえずできるか分からないけどやってみるか。
チャクラとかいまいち分からないけど、とりあえず指先に意識を集中。
骨が出るのもイメージして…
目標は先にあるあの茂み。
発射。
「俺の両手は機関銃(ダブルマシンガン)!!」
ダダダダダ!!!ダダダダダ!!!
出せた…や、やればできるじゃん俺。もしかして天才!?
ガサッ!!
何?動物かなんか? 悪いけど、今の俺は獣ごときに負ける気しないよ。
そう思って、さっき的にした茂みを見る。
「気配は消してたつもりだけど……やるわねぇ、面白いわあなた…」
………
……
…
骨は出せるようになった…
けど……出ちゃいけない人まで出てきた……
神様、あなたは僕のことが嫌いかもしれない……でも、今なら言えます。僕のほうがあなたの事嫌いです……