そこら中で、蝉が鳴いていた。
夏。一年で最も暑い季節。けれど一日の大半を占める日照時間は、稲や作物の生長に欠かせない大切な光。
涼を呼ぶ風鈴の音色を割って、パチン、と小気味よい音が盤を打つ。
置かれた黒石をまじまじと見つめ、老人は顎をひと撫で、ふた撫で。
「…………参った」
やがて絞り出すように投了を宣言し、わっと歓声が上がる。
「やるなぁ坊主。ガキのくせに大した腕じゃぁないか。なんて名だ?」
愉快げに尋ねる老人に、対局していた目つきの悪い子供は呆れたように溜息を。
「……シカマルだって最初に言ったはずだけどな、じーさん」
「呼ぶならモリじぃと呼べ。しかし……フム、そうかシカクの孫か」
「息子だっての。何歳なんだよ俺の親父は、つーかどっちのボケだよそりゃ」
畳敷きに座り碁盤を挟んで向かう両者の年齢は、およそ最大級に距離がある。
しかし歳の差を気にするようなら、最初から二人が仕合うわけがない。
間に漂う空気は軽く、出会って一時間そこそこながら、旧友のそれと化していた。
「敬老精神が足らんなぁ……ここは一つ、ヨシノの奴にビシッと叱ってもらわんと」
「なっ……そりゃねーだろ!? 負けた腹いせにしちゃ大人げなさすぎだぜ?!」
「かっかっかっ……!」
おっかない母親の名を出されて焦るシカマルに、モリじぃは高笑い。
勝ったはずなのにこの敗北感。めんどくせーじじいだと舌打ちする。
「モグモグ……シカマルのおばちゃんってそんなに怖いの?」
「怖いっつーか恐ろしいっつーか……それよりチョウジ、お前それ何袋目だよ」
「七……あれ、八かな?」
「食い過ぎだろーが……」
本人曰くぽっちゃり系の秋道チョウジは、返事をする間もスナックをボリボリモグモグ。
いくら秋道の家系でも、まだ昼前にしてその量は食い過ぎじゃないかと、シカマルは栄養面を心配する。
「む……!」
「? どうしたチョウジ」
当の心配対象が急に目つきを鋭いものとし、開け放ち風を誘う玄関口から表通りを睨み付ける。なんとなく、獲物を見つけた猛禽類に似てなくもない。
視線を追いかけ、その先で特徴的な水色の髪のクラスメイトが歩いていた。
片手と手提げに、団子がたくさん。
「あれは……刹那か。よく気づいたな」
「このボクが、あんなに美味しそうな匂いを嗅ぎ逃すわけがない!」
「………」
こと食にかけては、もしやキバ以上の嗅覚なのか?
「それにあのお団子は……」
「団子がなんだよ」
ふるふると、そう、驚きのあまり声が上擦るように、チョウジは肩を震わせる。
「あれこそは糖蜜堂の超限定団子! ボクでさえ食べたことがないのに……!」
「まだ食い足りないのかよ……」
「甘い物は別バラなんだっ!」
「……どっちも菓子じゃねーか。めんどくせー」
果たして別バラになるのか否か。とにかく、そんな食い気ギンギンの視線を察知した刹那が、片手には団子を、もう片方には団子入りの紙袋を持って、いつもの笑顔で寄ってきた。
「おはよー……あ、そろそろこんにちはかな? 何してるのこんなところで」
戸口に立った刹那にこんなところ呼ばわりされ、渋い顔をするモリじぃ。
「……こいつもまた失礼なガキじゃぁな。最近の若いモンは……」
同意の声こそないものの、詰めていた囲碁仲間から賛同の気配が。
「ここは碁会所だぜ? 碁打ちの他に何するんだよ」
「……囲碁か。何回かやったけど、疲れるだけであんまり面白くなかったな」
「何を言うかがきガキんちょが。ほんの数回やった程度で分かった風な顔しおって」
「ガキんちょ……わー、なんか新鮮だ」
ぱくり。もぐもぐ。……意味分かんねー。何が面しれんだよ。
「と、ところで刹那、いや刹那くん!」
何故か敬称を付けたチョウジは、食い気に負け目が血走っていた。
「どうかボクに、お裾分けを!」
地に頭をこすりつける勢いで、土間に降りて本格土下座。
された当人は、きょとんと瞬き。シカマルもまた唖然と。
「オイ……たかが団子にそこまでするか? 後で買い行こーぜ」
「分かってないねシカマル……あれ一本二百両するんだよ」
「ブッ……に、二百両!? 買えるかそんなの!」
「くすくす。一日二十本限定、金蜜四餡団子。買い占めようとしたら苦い顔されてね、倍額でやっと売ってもらえたんだ」
「どこの成金だ?! 団子如きに八千両とか……ありえねぇ……」
ガキの使える金額でもねぇ……どうなってんだこいつの懐事情。
「……家計費使い込んだか?」
「人聞きの悪い。自分で稼いだの」
どうやってか問い詰めていいものか。聞かない方が身のためのような警鐘が鳴ってる気もする。
「刹那くん、いや刹那様! どうかこの通りです!」
「えー……自分で貯めて買わないの?」
「基本質より量だからな……いくら美味くても、団子一本じゃカロリー不足だろ」
「ああ……なるほど。でもこれ、後ろに並んでる人たちからの非難の雨をスルーして、しかも倍の値段払ってようやく買えた、僕の努力とお金と忍耐の結晶なんだよ? 何であげないといけないわけ?」
「嫌な結晶だな……正論だけどよ」
「そこをなんとかっ!」
食のため、団子のため、恥も外聞もかなぐり捨てられる心意気は、褒められるんだか貶されるんだか。
ここまでされて、刹那はかなり困った様子だ。あげたくない本音が見え隠れする。
「………そんなに欲しい?」
「欲しいっ!」
好感触な返事にチョウジは喜色を浮かべ、刹那はにっこりと笑った。
「じゃあ、あげない」
がくっ、とその場にいた全員がこける。よろける。畳から落ちる。
悪辣外道と言うも生ぬるい、悪魔の如き所行に非難が轟々。ふざけるな。優しさはないのか。ガキが、いや餓鬼が。ごうつくばり。鬼。団子一本ぐらい。袋置いて帰れ。などなど。
結構、いや相当、ガラの悪い言葉が飛び交う、のだが。
「もうすぐ新月ですねー。暗い夜道って危ないですよねー」
天真爛漫な笑顔で返されて、反射的に口をつぐむ一同だった。
本能が何か悟ったのかも知れない。
「…………………」
「……オイ、チョウジ? オイ? ……あー、刹那」
「なに?」
「忠告するのもめんどくせーけど、逃げろ。チョウジにそれは“禁じ手”だ」
「……は?」
「う……う…ぉ、おおおおおおおおーーーっ!!」
遅かったか、とシカマルは額を押さえた。
怒髪天を突く形相でチョウジが立ち上がり、吠える。
「よくも、よくも! 男の純情を弄んだなーっ!!」
「純情は違う……あれ、違うのかな?」
「覚悟ぉおおおおおおっ!!」
ここへ来て、冷静と言うか事態を把握してないとしか思えない呟きを漏らす刹那に、チョウジが掴みかかる。
怒り心頭火事場の馬鹿力か、めちゃくちゃ早かった。
しかし。
めきゃっ。
と、顔面に情け容赦ない刹那の靴裏がめり込んで、鼻から吹き出た鮮血が正確にアーチを描く。
食欲の権化の反撃は敢えなく終わり、顔面に足跡も生々しくぶっ倒れた。
「暑苦しいよ? ぽっちゃり系は冬場にだけ生息しなさい」
冷ややかに、でも笑顔で無理難題をのたまう刹那。
ちょっと、実力を読み違えていたかもと、一同と同様シカマルは冷や汗。
……つーか、黒っ!
むしろそっちに戦慄する。
クラスの中でもそんな気配は見せていたが、実際は焦げた炭より尚真っ黒だった。
食いすぎ食いすぎ言いはしたが、これはさすがにチョウジが哀れに過ぎて。
「……まあ、なんだ。武士の情けで一本ぐらい置いてってくれねーか?」
「やだ。僕忍者だし」
「即答かよ。事実その通りだが……じゃ、あれだ、ちょうど碁会所だし、俺が囲碁で勝ったら」
「で、僕のメリットは?」
……利益が絡まねーとやる気なしか。……めんどくせー奴。
「ていうか、めんどくさがりのシカマルが賭け碁誘うなんて珍しいね」
「………ほんっとクソめんどくせー……が、純情はともかく友情は弄んじゃいけねーからな」
ジャラ、と碁石、そして足の付いた碁盤を引き寄せ、前に置く。
「やろうぜ? チョウジの仇討ちっつーのもおかしな話だが……」
皮肉げに唇を曲げ。
「それとも、頭に自信がねーか? だったら悪ぃな、つまんねー囲碁で勝負申し込んだりしてよ」
乗るか。反るか。
挑発し、画策し、テリトリーへ誘い込む。
それが奈良の、戦術故に。
それが奈良の、性質故に。
「本気だね……ふふ、くすくすくす……」
刹那は、含み笑い。
愉快げに。それでいて、どこかつまらなげに、嗤い。
「先攻? 後攻? 僕はどっちでもいいけど」
奈良シカマルは、白亜刹那を土俵に引きずり込んだ。
白亜刹那は、敢えてその土俵に立った。
「先打てよ。誘ったのは俺だからな」
「コミは?」
「ありだ。五目半」
「……ま、そこまで甘くないか」
畳に上がり、向かい合う二人の子供の周りを大人たちが取り囲む。
アウェーの観衆が見下ろす中、黒石を取った刹那が石を打つ。
右上隅へ、いっぱしの棋士の如く。
迷いのないその打ち方だけで、大きな棋力をシカマルは感じた。
唇を湿らす。父親以外で、負けたことはない。
だが油断なく、そして勝ちに行く。
パチン、と、白石を打った。
序盤は、手の探り合い。じわじわと互いに陣地を押し広げて、隙と癖を窺う。
ちまちまとした小競り合いを繰り広げながら、勝負は中盤へ。
刹那が最初に打った左下の隅を占領され、シカマルの手が止まる。
「………………つえーな」
「ありがと……」
打つ前からうって変わって、にこりともせず短な返事が。
どこを見ているのかも判然としない、半ば瞼を下ろした双眸は、ポーカーフェイスにも程がある無表情。
「……」
――違和感。
白亜刹那という突然現れた編入生は、四六時中笑っているような少年だった。
授業中、休み時間、登下校。そしてついさっきも。
何が楽しいのか分からないくらい、刹那はいつもいつも笑っていて。変な奴だと、シカマルの認識はその程度。
だが。
この落差は何だろう。
笑みとこの空虚な表情との差は何だろう。
そして。
二種の顔を比べ。
空虚にこそ違和感を覚えないのは何故だろうか……。
「………次」
「……は?」
「早く打って」
「あ、ああ………ちょっと待て」
ともあれ。
余計な考えに気を取られている場合でもなかった。
シカマルは意識的に頭を切り換え、独自の印――ではなく、自分に最も合った姿勢を取る。
戦略を練る。
思考にのめり込む。
奈良の才覚を存分に注ぎ込む。
……よし。
選び抜かれ見据えた勝利の図。
あちこちに散らばる白石を想像の線で結び、黒を駆逐する様を思い描き。
パチン、と誘いの一手を打った。
「………」
一秒、二秒、三秒が過ぎ。
「……………」
じゃら、と石を掴んだ刹那が。
想像の線を断ち切った。
「っ…………!」
目を見開く。
それは、白石の誘いとは全く無縁な、中盤までの流れに微塵も触れない箇所。
しかして、その一手は完全な致命傷。
失策を誘った白石が、無益な悪手となり果て潰え。
失策を蹴った黒石が、巧妙な最高手を刳りぬいた。
「策士……策に、溺れる……」
……っ。
ぽつりと、刹那は囁くように。
言葉もないとは、このことか。
そうして、最後まで足掻いて、巻き返すに至らなかった。
……石寄せを、経て。
「………あー疲れた。神経磨り減らすから碁は面白くないんだよ……」
目の間を揉んで、額の汗を拭い、億劫そうに刹那が立ち上がる。
「将棋は手が限られてるから、そうでもないけどね……」
トントン、とつま先を蹴って靴を履き、戸口へ。
「じゃ、また明日学校でね。夏期休暇前の最後の週だし、サボっちゃダメだよー?」
冗談交じりに、返事も聞かず。
勝ったことに感慨すら見せず。
「十七目半……、…………くそったれ」
敗者の遠吠えまでも一顧だにせず、飄々と立ち去った。
いつもの口癖を吐く気にもなれず、ギシ、とシカマルの握る碁石が、擦れた。
「オヤジ、オヤジ」
「あん?」
先日一仕事終えて休暇中の奈良シカクが食後の一杯を楽しんでいた時、テーブルの端で碁盤と睨めっこしていた息子に声をかけられそちらを向く。
「どうしたシカマル。そりゃ……誰の棋譜だ?」
「その前に、最初から並べっから、ちょっと意見聞かせてくれねーか?」
「ほぉ……じゃ、見といてやろう」
椅子を引いてシカクは対面に座った。盤を埋める石を集め、順繰りに一から置く息子に相好を崩す。
対極を繰り返し、負かす度にどこが悪いか指導し、おかげでメキメキ腕を上達させている自慢の息子だが、自分から質問してくることは滅多にない。それが子供なりのプライドなのか、本人が言う通り面倒なだけなのか、大抵の疑問は一人で解決できるからなのか、判別は暗号の解読より難解だが、こうして偶に頼られると純粋に喜びが先に立つ。
親という者は大体にしてそんな者だなどと気楽に考えていたのだが、どんどんと置かれていく黒石に胡乱な顔をする。
「シカマル、置く順番間違えちゃねえか?」
「そう思うだろ? 俺も最初、こいつどこ打ってんだとか、思ってたんだけどな……。意味があるようなないような、攻めてんだか守ってんだか、微妙な位置だからほたってたんだけどよ」
「打ってる内に微妙が絶妙に変わってんなぁ。いや、絶好か?」
「そして、俺がここ、ここに置いて揺さぶりをかけると……」
パチン、と黒石を置き。
「ここに打たれた」
窺うように、シカマルが見上げてくる。シカクはフム、と顎に手を当て、白と黒の意味を汲み上げ咀嚼し、十数秒を経てようやく理解に至り。
「…………………相手は」
噛みしめるような重い声音で。
「ベテランの棋士か何かか?」
気軽さの吹っ飛んだ抜き身の刃の如き色で問いかけ。
「クラスメイトだ」
端的、かつ明快に答えられ。
奈良シカクは頭を抱える。
「……偶然でも何でもなく、ほんっっっっとにお前のクラスメイトが考えた末にここに打ったのか?」
「考えた末っつーか……」
歯切れ悪く息子が言葉を濁し。
「……三秒」
「あ?」
「それを打つまでに、費やした時間だ」
「………………………………」
オイオイ、待て待て、と心のどこかで否定の材料を探しながらも頭は正しく事を認識し絶句を促す。
「冗談だろう……?」
シカマルは答えない。沈黙は肯定より尚雄弁に真実性を告げる。
半笑いに引きつった表情でシカクは椅子の背もたれに身を倒し、額を叩いた。
……冗談じゃねえなら尚更笑えねぇ……。
「……結局、誰だこいつは?」
「…例の編入生だよ。白亜刹那とかゆー奴」
「白亜……白亜ね。成る程『柏』の……」
「知ってるのかよオヤジ? 白亜って、有名な家系なのか?」
口を衝いた独り言に疑問を向けられ、どう話したものかと数瞬悩む。
「そうだな……一部には超が付くほど有名だが、基本無名な一族だな」
何だそりゃ、と怪訝な顔をする息子に、伝えられることまだ早いこと、慎重に選り分けながら説明する。
「正確に言うと、名が売れてるのは白亜が所属する商隊の方でなぁ……その護衛としての付属品扱いで、白亜は有名であり、無名無実だ」
「……は? 無名は分かるけど、無実っつーのは?」
「そんじゃ逆に聞くがシカマルよぉ……名が売れる忍びの条件ってのは、何が挙げられる?」
一瞬だけ、シカマルは考え。
「まず…強さだろ? うちは、日向、五影に……伝説の三忍ぐらいしか今は思い付かねーけど、戦場で活躍しないことには話しに上るわけもねーし」
「普通はそう、その通りだシカマル。……歴史を紐解けば強さではなくその知恵で知られてるのも居るが、この際そういう例外は置いといてだ。お前の言うように、人の口から出る名前は戦場でその強さを見せ、見せられた忍びが――警戒か憧憬かはともかく、広める。つまり実が有って名が売れる。だが白亜は」
「実が無い……ってか?」
先を継いだ聡い息子に頷く。
「夜盗を返り討ちにした、どこぞの賞金稼ぎを討ち取った……。そういう木っ端な話は稀に聞くこともある。――が、それ以上は影も形も微塵も見当たらねえ。何十年と忍界大戦の時代も行商で巡り歩いてるのに、だ。そんな偶然と幸運が度重なるものか?」
「……けどよ、確率論で言うとゼロってわけじゃ」
「いいや、ゼロだ。あの悲惨な大戦下に足手まとい抱えて国中を渡るなんざ、狙ってくださいと自分から言ってるようなもんだ。しかも運ぶ荷は何だったとおもう? 保存の利く食料だ。それが馬車何台分もあんだぜ? 襲わねえ能無しが居るかってんだ」
その大戦を生き抜いた男の断言は、話に聞き書物で知るより、途方もなく重く大きく、シカマルは気圧される。
「話が逸れたな……とにかく、白亜って名前は古き商隊『柏』を知る者には有名だ。しかし誰もその実力を知る者は居ない。有名無実とは正にこのことだな。……分かったか?」
「あ……ああ」
イマイチな返事をする息子にシカクは顎髭を撫で、さて、と話を変える。
「その白亜……刹那か? お前はそいつと一局やったらしいが、めんどくさがりなお前がそんなことで俺に意見を聞くなんざ暴挙に出て、何をどうする気だ? んん?」
「暴挙って…そこまで言うかよ。……別に大した理由なんざねーよ。なんとなく、あの真っ黒クロ助に一発ぶち込みたくなった。……それだけだ」
「ほほう……」
ニヤニヤと聞く。
「ライバル意識か?」
「ばっ……そんなんじゃねぇっ!」
「照れるな照れるな。そうか……お前にもとうとうライバルができたかぁ……」
「人の話聞いてるかクソオヤジ!? そんなんじゃねぇっつってるだろ!!」
なかなかお目にかかれない息子の取り乱し模様を存分に堪能した後、落ち着いた頃を見計らい、シカクは身を乗り出した。
「で? 対処法は決まってんだろうな~? この白亜の子供は厄介極まる相手だぜぇ?」
「……刹那のセリフと打ち終わった時の様子で、大まかなカラクリ……じゃねえ。仕組みは解けた。それでオヤジが、どういう見解を持つか聞かせてくれ」
「自分の推論だけじゃ満足しねえってか? 確かにこいつは、盤石の備えを万全の構えで叩き潰すような奴だしな。恐らくだが。……シカマル、そいつの言葉とお前が掴んだモノ、全て余さず話してみろ」
「それじゃ、あいつとの会話から説明するぜ――」
そうして、シカクは息子の話と所見を聞きながら、別のことにも思いを馳せる。
商隊『柏』……カシワ商隊と共にある忍び、白亜。
有名どころと戦った話は、口にした通り影も形もない。
しかし、“影の影”ぐらいはあったのだ。
繰り返された大戦の間に不干渉条約が結ばれもしたが、それ以前はその限りでなく、糧食と情報を運ばれるのを邪魔に思った里の一つが暗部を差し向けたという噂がある。
あくまで噂であるが、差し向けられた暗部は、“一人残らず行方知れずとなった”…………らしい。
密やかに、まことしやかに、囁かれている“噂”だ。
シカクの生まれる前の話なればこそ、今となっては真偽を確かめる術も手段もない。
だがシカクは、こうも思っている。
“火のないところに、煙は立たぬ”
……いずれにしても。
一介のアカデミー生に話す内容ではなかった。
表に出てきた『柏』の護り手。
その真意は、意図は、有るのか、無いのか。
それとも無名無実そのままに、何ら思惑は持たないのか。
何もかもが足りな過ぎて。
判断は、付かなかった。
そうして。
奈良ヨシノにお叱りを受けながらも夜半まで男二人の作戦会議は続き。
「……で、どうだ?」
「…………あいつの頭ん中がこの推測で正しけりゃ――」
確信を込めて、頷いて。
「次の対局で、“勝てる”」
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ども、ゆめうつつです。記念すべき木の葉キャラ最初の題材人はシカマルでした!や、ナルトでも良かったんですけどね。……とある方からの期待が過大なモノだったので。丁度良く面白い展開も思いつきましたし。
囲碁のコミは現在六目とか七目らしいのですが、ナルト原作開始が1999年だったので、当時の五目半を使わせて頂きました。
……後編はまだ書いてないのでまたしばらくお待ち下さい。すいません。
jannquさん、……風影暗殺の時、君麻呂って動けたんですかね?彼が加わっていたならそりゃ生存は絶望的でしょうけど。……ガチでやったら刹那イタチに負けますし(多分)、向上意欲はあってもかしくないのです!(と、言ってみる)チャクラ量というか、増えてないのはチャクラの総量ですから、鏡像消しても増えたことにはならないのです……
ニッコウさん、や、スイマセンて。詳しく教えて頂き何ですが、ホント日常生活じゃ欠片も役に立ちませんね……。刹那たちみたくサバイバルするならまた勝手が違うんでしょうけど……あ、それだと冷蔵庫がないや。
シヴァやんさん、人柱力……最低一つは他里の書こうと思ってるんですよ。ナルトや我愛羅以外に。……まあ、尾獣自体に手を加えようとかろくでもないこと考えてはいるのですが。
野鳥さん、ふふふふふふふふふ。お待たせです。今回それ以上は言いません。次回をご期待に。
456さん、全くですね……ナズナの登場、もとい会話を増やさないと面白くなりようがないのもありますが。我愛羅は、テコ入れし過ぎたような、ないような……。
nataさん、えーと……二体? 三体? 多分三体ですね。本体合わせて四人の刹那がうろついてるわけですね。いやはや自分でやっておきながらとんでもないことです。
(誤字修正しました)