「・・・・・・・・・」
シギはどう反応をすればいいか分からなかった。
というかそもそも、この事態をまるで想定していなかったと言える。
忍者アカデミーだぞ?普通の学校とは違うんだぞ?有り得ねえだろおい!みたいな。
ニッコリと、自分からすれば化けの皮もいいところの微笑で立つ某水色少年一名。隣のお下げ髪の娘は知らないが、多分あいつの知り合いか何かだろう。・・・何故ああも嬉しそうなのかはともかく。
「初めまして、白亜刹那です。学校に通うのは初めてなので、色々教えてもらえると助かります」
ぺこりとお辞儀。それだけで教室中がぽわ~っとした空気に包まれてしまった。無論例外もいるが・・・・・・気づけお前等。そいつの笑顔は擬態なんだよ!外見は確かにほんわか美少年風でクラスにないタイプだが騙されるなーっ!
・・・・・・と、叫びたい。叫びたいがしかし、さっきから口を開こうとするたびに視線と殺気が飛んでくる。しかも器用なことに俺1人にだけ中てているらしく、中忍の先生もそれに気づいてない。・・・なんて奴だ畜生。
「弥遥ナズナと言います!ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします!」
・・・・・・うん、こっちは見たまんまの純情天然っ娘か?そして、刹那の手を握りたそうにそわそわしてるように見えるのは俺の気のせいか?
「えー、2人はカシワという商隊の子で里に住んでたわけではないのですが、お勉強のためにこのたび編入することになりました。皆さん仲良くしてあげてください」
はーい!と年相応に応えるクラスメイトたち。応えない奴(シカマルとか)もいるがともかく。
・・・・・・留学ならまだしも、編入なんて制度があったのか?
さっきからつっこみたくて堪らないのにできないこのもどかしさ。耐えきれず、シギは机に突っ伏した。
・・・地味に辛いっての。
「えー、それでは何か質問などあれば、」
「特技!なんか得意なもん教えてくれってばよ!」
フライングして叫んだのは金髪、ゴーグル、髭模様の子供。言わずと知れたうずまきナルト。別にチート設定など存在しない原作通りの主人公。
普段のナルトの行動力を知る人間なら、この程度いつものことだと気にもしない。第一まだ7歳の子供・・・前世に則せばたかが小2の言葉だ。目くじら立てるようなことじゃない。
だというのに、目の前の中忍ははっきりと眉根を寄せた。・・・・・・教え子の前だから自重してるんだろうが、これが誰も見てない・・・いや、見られても問題ない場所だったら、どんな顔すんだか。
「ナ――」
「おい刹那、お前何が得意なんだよ?」
敢・え・て・先公の言葉にかぶせた。中忍が一瞬迷惑そうな目を向けるのを感じたが、無視。
ナルトに構ってやれる余裕は、まだない。だからできるのはせいぜいこの程度だ。後は本人の努力次第。
・・・・・・俺がかばったことに気づく奴はまずいないだろうが、刹那辺りは怪しい。びみょーに笑みが深くなってやがるし。
「あ、シギ。いたんだ」
にこやかにたった今気が付いたと言ってくれる刹那。・・・やっぱこいつ酷え。
若干口元をヒクつかせていると、他の奴が反応した。
「え?シギくん知り合いなの?」
淡い金髪をポニーテールにした、くの一連中のリーダー格、山中いの。こちらも原作同様サスケ一筋に進軍中。
「あー、まあ一応な。つっても5日前に知り合ったばかりだ。大したこた知らねー。・・・で、二人の得意なもんは?」
長く話してるとボロが出そうなので、刹那に早く答えろと目で訴える。
「んー・・・何が得意かな?」
「刹那くんはすっごく計算が早いんだよ!」
ウキウキと表現したくなる笑顔で、隣のナズナとやらが答えた。
「だから商隊でもお金の計算任されたりしてたの!」
「いや、それ違うから。任されてたんじゃなくてちょっとチェック入れてただけ」
「頭が良くてね、何でもいっしゅんで覚えちゃうんだ!」
「買い被りすぎだって」
「それに忍じゅ――」
と、言いかけたところで、突然ナズナの身体が傾いた。何だ?と皆が疑問に思うのも僅か。とっさに刹那がその身体を支える。
「ナズナ、ナズナ?・・・・・・いつもの貧血かな。先生、編入早々悪いんですけど、保健室に連れて行ってもいいですか?」
「え?あ、ああ・・・それなら、仕方ないな。早く戻ってくるんだぞ?」
「はい。聞きたいことがあったら、休み時間に聞いてね?」
途中からクラスメイトへと言葉を向け、刹那は笑顔のままナズナを背負い教室から出ていった。
ざわざわと、ざわめくクラス。それも当然だ。編入生というだけで珍しいのに、ホームルーム終わる前に保健室行きとか、どんだけレア?
・・・・・・つーかよ・・・
ナズナが倒れる直前、刹那の手が霞んだように見えたんだが・・・
・・・・・・・・・気のせい・・・じゃないよな?
あいつ、どこまで外道なんだ・・・・・・?
まったくナズナは・・・朝しっかり言い含めといたのに。
『僕のことを聞かれても、ぺらぺら喋っちゃダメだよ?特に忍術とか、僕の能力に関しては』
『えぇ~!?それじゃ「刹那くん自慢」できないよ!』
『・・・あのね、ナズナは何のために学校に行くの?僕を困らせるため?』
『そ、そんなことないっ!』
『それじゃ、聞かれても黙っててよ?僕が困るから』
『はーい・・・・・・』
――という具合に。・・・あまり意味はなかったみたいだけど、ナズナに血継限界のことは教えてないから、最悪の事態は避けられるかな。
さて保健室の場所だけど・・・うん、この角を曲がった先だ。この間見学した時記憶しといたから、迷うはずもない。
コンコン、とノックして。
「誰かいますかー?」
「あ、はい!ちょっと待ってくださー」
い、という言葉は、直後響いたドガターン!!って騒音に掻き消された。・・・・・・いや、最後まで言えたかも分かんないけど。
というか、この声は・・・
「アイタタタ・・・・・・はい!お待たせしましたどうぞ・・・こちら・・・・・・へ・・・」
ドアが開けられこちらを視認した途端どんどんと尻すぼみに小さくなる声。
その、声の主に、僕はニッコリ笑って言ってやった。
「ミミ先生ってすっごくドジなんですね」
「せ、せ、刹那くん~っ!?何でここに!?」
「編入の話を持ってきた人がそれを言いますか・・・・・・ああ、分かりました。頭が緩いんですね。そうと気づかずすいませんでした」
「はぅ・・・このブラックさ・・・・・・間違いなく刹那くんだ・・・・・・」
何やらくずおれるミミナをほたって、刹那は保健室に入る。他に人はいないようだ。
「へぇ・・・ミミ先生って保険医だったんですね」
「い、一応これでも医療忍者なのよ・・・?」
「だったら職務を全うしてください。はい、患者」
「へ・・・・・・?ってもう1人いたぁ!?」
今ごろ僕の背にいたナズナに気づくミミナ保健教諭。・・・・・・この人、本当に忍者か?
「何故か、いきなり気を失ったんです。貧血だとは思うんですが・・・」
「えっと、どれどれ?・・・・・・うん。貧血・・・じゃない気がするけど、この子貧血持ち?」
「・・・違ったはずです」
「ん~?じゃあ何だろう?特にこれといった異常は見つからないし・・・・・・」
「とりあえず、ナズナはミミ先生に任せますね。僕はこれから授業なので」
「はいは~い!しっかり任されましたよ!大船に乗ったつもりで――」
「実は大穴が空いてたんですね?期待せずに教室に戻ります」
「・・・せ、刹那くん、友達少ないでしょ!?」
「百人規模でいますが何か?」
部下だと千人規模でいるが。・・・どちらにせよ新羅専用だけど。
「・・・・・・何でもない。グスン・・・」
・・・このぐらいで止めておこう。下手に刺激して業務(ナズナの看病)に差し障りが出たらマズいし。
まあ、ナズナに何の異常もないことは、僕が一番よく分かってるけどね。
さておき。僕はそろそろ1限が始まるだろう教室へと足を向けた。・・・・・・うーん。原作キャラにはどう関わっていくべきかなぁ・・・?
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・・・木の葉のアカデミーって謎が多いんですよね。ナルトの留年しかり入学卒業の時期ズレしかり。後は飛び級とか人数とか。なのでその辺りは深くつっこまず、学年別に1クラスずつ存在するということにしました。男女で別れる授業があったりはするでしょうが。
ニッコウさん、・・・はい、引っかかりました。あれで気づかれたのか~、て感心してたんですがオイ!みたいな。一楽はいずれ是非とも行かせてみたいですね。
波洵さん、超新星ですか。そこまでですか。ありがとうございます!いやはや、こんな風に喜んでいただけるとゆめうつつも嬉しい限りですよ!
野鳥さん、そうは言いますが別れのシーンは要ると思うのですよ。アゲハはいいですけど、刹那の本体的に。
柳太郎さん、ご指摘ありがとうございます。早速削っておきます。その辺りのことは詳しくないので、またこういった指摘がいただければ幸いです。
というわけで始まった学園編!・・・でも自己紹介って妙に書きにくいんですよね。少々更新が遅くなるかもです。そこでたった今思いついたのが、うちは編と学園編で完全に分けてしまおうか~、という物。交互に書いていったりとかもできるし・・・未定ですが。それでは皆さん、またいずれお会いしましょう。