「あ~う~・・・」
「はい、お水」
「ああ・・・・・・ありがと」
ナズナから受け取って、コップ一杯、一口。一息。人心地。
なんだか語呂がいいなぁ・・・・・・なんて考えてることからして、僕の脳はきっと多分まともじゃない。
2日酔いがこうもきついモノだなんて・・・・・・もうお酒やだ。苦いし。何であんなに飲んでしまったんだろう・・・・・・?
缶ビール一本空けたとこから記憶ないし・・・・・・はあ。
「うー・・・2日酔い専用の医療忍術考えてみようかな・・・」
「刹那くん、それ才能の無駄だと思う」
・・・反論が思いつかなかった。くっ、ナズナにも勝てないなんて・・・・・・
「――てか、何でナズナは平気なの?」
「?・・・・・・なんで?」
いや、首傾げられても。・・・体質の問題?
でも薬使わないで忍術で2日酔いは治せそうな気がするんだよね。毒の代わりに血中のアルコールを取り除くとかで。
・・・・・・薬飲めばいいだけか。
「お母さ~ん・・・」
「はいはい、最後まで言わなくても分かるわよ」
「・・・・・・ありがと」
粉末を水で流し込む。後は薬が効くまで待つだけだ。
時刻は朝の9時ぐらい。でも昼には木の葉を出発することになってるから、早く回復しないと見送りができない
僕はぐったりソファに寝っ転がったまま、時が過ぎるのを待った。
昼過ぎ。さすが母さん特製酔い覚まし。綺麗に頭痛が取れた。今度僕も造ってみよう。
「お母さん、1本忘れてたよ」
「あら本当。ありがとね、刹那」
僕から苦無を受け取った母さんはすぐにそれを収納した。
「ナズナ、刹那くんに迷惑かけちゃダメよ?」
「お前のことは、昨夜しっかりお願いしたからな」
「お母さんお父さん・・・刹那くんの心配は無視ですか・・・・・・?というか、ナズナはそんなに信用ないですか?」
「「・・・・・・」」
返事に詰まる夫妻。そりゃ普通7歳の子供2人を自活させようだなんて考えないよね。でも、そこに僕が加わることで話は変わるらしい。・・・・・・信頼されるのはいいことだけど、買い被りすぎな気が。
「アゲハ、スズナ、ハコベ。そろそろ出発するぞ」
御者台の上で時計を見ていたしゃこつさんがそう言った。
「それじゃ、お母さん行ってらっしゃい」
「ええ、行って来るわ。・・・・・・刹那」
「?」
・・・・・・あ。
ぎゅっ、と。
母さんが、僕を抱きしめた。
「1年以内に絶対会えるから、そんな顔しないで。・・・ね?」
トン、トン。
むずがる子供をあやすように、母さんが背中を・・・叩く。
・・・・・・気づかなかった。僕は、そんな顔をしてたんだ・・・
この世界にやってきて、4年と少し。
その間、1日たりとも母さんの顔を見なかった日はない。
つまり今回が初めてになるわけだけど・・・・・・ホームシックになるのを覚悟しとくべきかもしれない。
「それに刹那と私に限って言えば、会おうと思えばいつでも会えるのよ?」
「・・・・・・うん」
「だからくよくよしないで、明日から元気にアカデミー行って来なさい」
「――はい」
「それとアレさえ使わなかったら、力加減は好きにしていいわ」
「あはは・・・まあ、程々にするよ」
最後に頭をなでて、母さんは幌馬車に乗った。ナズナの方も別れは済ましたみたいだ。
ガラガラガラガラガラガラ・・・・・・轍の音が馬の嘶きに続いていく。
出国手続きが済んで、一斉に走り始めるカシワ商隊。
手の空いてる者は別れを惜しむように(実際惜しんでいるが)馬車の後ろから姿を見せ、手を振っている。
僕もナズナも、手を振り返し、点となって見えなくなるまで見送っていた。
「・・・・・・行っちゃったね」
「行っちゃったね」
今まであったものがない。この感覚が寂しいという心なのだろう。
「・・・・・・さて、いつまでも余韻に浸ってたってしょうがないし、帰ろうか?」
「帰る・・・うん。もうあそこは、ナズナたちの家だもんね」
「晩ご飯どうしよっか?作ってもいいけど・・・初日だし、外で食べる?」
「刹那くんに任せる!お金どのくらいあるか知らないもん」
「じゃあ、外食に決まり。どこがいいかな?」
「おいしいお蕎麦屋さん!」
「・・・ナズナ蕎麦好きだしね」
そんな他愛ない話をしながら、僕たちは新居に向けて歩く。ここからかなり距離があるけど・・・まあいっか。のんびり、ゆったり。そういう時があっても。
今日ぐらいは、ね。生活が落ち着いたら、修行始めるし。・・・・・・ナズナ、覚悟しといてね・・・?
「ああ心配心配心配心配心配心配心配ぃ~っ!」
「・・・・・・うるさいわよ、スズナ」
「だってアゲハ!うちの娘があの子がナズナが刹那くんがいるとはいえ子供だけで生活するのよ!?これが心配じゃなくてなんだって言うのーっ!?」
・・・・・・さっきまで娘に見せていた毅然とした態度はどこいったのかしら?
やれやれ、と息を吐くアゲハ。まだハコベの方がしっかりしている。
「・・・そんなに心配だったなら、残ればいいじゃないの」
「ダメよアゲハそれはダメなのよ!老後商隊から外れるようなことがあった時に備えて貯められるお金は貯めないといけないの!」
・・・・・・心配性も過ぎれば毒。・・・過ぎなくても、毒かもしれないけれど。
「・・・まあ、安心していいわ。あの子たちの様子なら毎日報告させるつもりでいるから」
え?と目を丸くさせるスズナをよそに、アゲハは先ほど刹那に渡された苦無を取り出した。
「もう出てきていいわよ」
ボンッ!馬車の中が数秒、煙に包まれ。晴れた時そこにいたのは――
「・・・・・・せ、刹那くん・・・?」
「の、分身です。忍術ほとんど使えないので護衛はできませんが、お手伝いと1日の報告ぐらいは問題ないで――」
「本当に!?」
驚きから立ち直ったスズナは、今度は興奮で我を忘れ、
「本当に本当に無事かどうか手紙なんか使わないで確かめられるのね!?」
「ぐ、苦し――」
「ああありがとうアゲハ刹那くん感謝のしようもないわ!!」
「・・・っ・・・・・・ぁ」
「・・・スズナ、首、首極まってるわ」
「――え?」
はたとスズナがよくよく見てみれば、肩ではなく首を掴んでいた。両手で。
・・・・・・ガクリ。
「あああ刹那くん~っ!?」
「・・・・・・初っぱなから締め落とされるなんて・・・刹那も不憫ね」
この性格がナズナちゃんに遺伝してなければいいけど・・・・・・
やれやれと。吐息ではなく、溜息を。
先が思いやられる。
「あー待ってよ刹那くん~!ムフフフフフ・・・♪」
「・・・・・・」
どんな夢を見ているのか甚だ気になる。
夜。寝る頃になって、ナズナが寂しいから一緒に寝ようと申し出て、上手い反論が思いつかなかったのでそのまま今に至る。2人とも子供だから、シングルサイズでも問題はなかった。
・・・・・・ダブルの備え付けはあったけどね?おっきすぎて逆に落ち着かないとかで、こっちになってる。
ふふふふふ・・・
・・・・・・不気味に笑うナズナ。怖いから寝言やめてほしい。
それはまあ、さておいて。
「・・・アカデミー、か」
まさか通うことになるとは思わなかった。うちはの虐殺にしても、鏡像を置いてどうにかするつもりだったし。
現状の方が成功の確率高いから、文句はない。・・・・・・それでも、成功率は低いわけだけどね。
最大の難関は、イタチでもマダラでもない。そこがどうにかなれば後は楽だ。
「・・・シギにも協力してもらって、新羅も使わないとね」
カブトの動向も気になるし・・・まだ、大々的に動くようなことはないだろうけど、注意するに越したことはない。
気になると言えば・・・僕のチャクラ量。
全っ然覚えてないけど、爆発的に上がってたとか何とか。・・・・・・う~ん。推論は立つけど、こればっかりは仕方ないかな。もう一度お酒飲む気にはなれないし。
・・・・・・万が一のために、常備はしておくべきか。うん、ホント万が一の時だけね。母さんに口を酸っぱくして言われたけど、危険みたいだし。
ていうか、僕の酒癖リーより悪いんだね。・・・・・・ショックだ。
そんな感じにつらつらと思考を巡らしていたら、ようやく眠気が訪れた。
・・・お休みナズナ、お母さん。・・・・・・明日が楽しみだよ。
くすり。1つ笑みを漏らし、刹那は眠りについた。
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最近では早い部類に入る投稿です。こんにちは。
トンズラ・エスケープさん、言われてみれば確かに、矛盾でした。指摘ありがとうございます。なので『年間』を『合計』に変えました。これでいいですかね?・・・・・・カシワにフラグ?そんなの知りません。ゆめうつつの信条は『面白く』ですから。
おもちまるさん、ありがとうございます!身体に気を付けつつ執筆も頑張りますよー!
ニッコウさん、・・・・・・何やら思わせぶりな口調ですね(汗)。さておき、刹那にしても使い所の難しい設定です。・・・下手すると地獄絵図になりますし。
野鳥さん、誤字(抜け字?)指摘ありがとうございます。次回から学校生活に入りますが・・・どうしよう。未だに決まりません。カップリングとか・・・・・・ああ、悩みは尽きぬ(楽しいですけど)。
カスタネットさん、・・・えー、そこまでダークに見えましたでしょうか?ルイはゆめうつつも呼んでます。更正した感じですけど、面白いですよね、あれ。
ダークなくせにシリアスに走れないのが、ゆめうつつの密かな悩みだったり。気分転換に書いてたなのはの方も、最初シリアスだけど執筆中の1話目の途中でギャグ入ってますし。・・・・・・どうしてもギャグというか、コメディみたいなのがないと、ダメなんですね。
さて、カシワと別れた刹那とナズナ。明日は何が起こるのか!斯うご期待!!