敵
味方
同郷だろうと、断定はできない。
「よーし好きなモン頼んでいいぞ!おととい給料日だったからな」
「自分で払いますのであしからず」
「・・・かわいくねーガキだなおい・・・・・・」
「借りを作りたくないだけですよ、おじさん」
「誰がおじさんだ!俺はお兄さんだコルァ!!」
・・・・・・精神年齢はガキだね。憑依型かな?
などと、意味のない予想を立ててみる刹那。
近くの茶店に連れてこられた僕は団子を注文し、目の前の恐らく同世界の人物は饅頭を頼んだ。・・・・・・ていうか、ここイタチと鬼鮫が休憩してたとこじゃない?ある意味レアスポットだ。
「とりあえず自己紹介だな。俺は赤蔵ヒグサ(あかくらひぐさ)。これでもいちおー上忍だ」
「白亜刹那。カシワ商隊の護衛やってます」
「・・・・・・商隊って嘘じゃなかったのか?」
大まじめな顔でそう聞いてきた。頭から信じてなかったとはなんて奴だ。・・・・・・僕みたいな立場の忍びが希少種なのは認めるけど。
「気になるなら後で調べるなりなんなり自由にしてください」
「まあ、今更どうでもいいことだな」
いいのか。・・・いいのか?・・・・・・うん、それこそどうでもいいことだね。
おまちどおさま~、と運ばれてきた三色団子あんこ付きと、栗饅頭。・・・・・・む、なかなか美味い。後でお持ち帰り頼もう。
周囲で誰も聞き耳立ててないのを確認して、ヒグサが聞いてきた。
「それで、お前がこっち来たのは何年前だ?」
「4年前ですね。転生か憑依かは判断付きませんが」
「ああ?お前どう見ても4歳じゃねえだろ。憑依に決まってんじゃねえか」
そう簡単な話じゃないのだ。そもそも本来の白亜刹那は馬車から転落死しており、僕が死んでこの世界に来た時は火葬される寸前だった。・・・・・・実際されかけた訳だけど。悲しいことに。で、その死者の肉体に僕という新たな命が入り込み転生したのか、はたまた精神が憑依した際に何らかのショックで息を吹き返したのか、2つ考えられるのである。
不思議満載ご都合主義満載の世界だから何が起きてもおかしく無いというのがまた悩みの種なのだ。・・・・・・全く、もっと分かりやすかったら良かったのに。別にそれが分からないから問題があるという訳でもないが、のどに小骨が刺さった感じですっきりしない。
といったこと説明したら、なんとも複雑な顔をされた。
「めんどくせー奴だなぁ」
うるさい。好きでそうなった訳じゃないんだよ。
「ヒグサさんはどうですか?」
「俺はかんっぺきな転生者だな。もう20年にもなるか」
「二十歳だったんですか・・・・・・」
まるで見えないが、おじさんと言われて怒る訳だ。
「おい、何だその今初めて知りました~、大変驚きました~、みたいな反応は」
「さあ?子供の僕には分かりません」
「嘘付くなテメェ。もうそろそろいい年したおっちゃんだろうがよ。なんだその若々しい身体は、このショタコン!」
「失敬な。これでも精神年齢は19ですよ。20代前ですよ」
「――はあ!?嘘だろお前!4年前だから・・・享年15歳!?」
「声が大きいです。自重してください」
緑茶をすすりつつたしなめると、赤蔵ヒグサは慌てたように口を手で覆った。・・・・・・本当に上忍なのかな、この人。
チラチラと横目で辺りを確かめるヒグサ。
「・・・・・・マジか?マジな話か?」
「マジですね。残念ながら」
「・・・・・・そいつは、悪かったな。死因とかは聞かん。断じて聞かんぞ」
それは聞く気満々だったと捉えていいのだろうか?・・・・・・とりあえず話題を変えとこう。
「それにしても、忍界大戦とか九尾事件とか、よく生き残りましたね」
「あー・・・忍界大戦な、あれ途中で大怪我して後ずっと入院してたな」
「何という悪運・・・・・・」
「九尾の方は、その時期に無理矢理長期任務入れて回避したぞ」
「あくどいですね・・・・・・てか、事前に口寄せを潰そうとか考えなかったんですか?」
「は?口寄せ?九尾は天災の一種だろ?」
何言ってんだお前、みたいな目を向けられる。・・・・・・ふむ。転生時期のズレ、そして死亡時期のズレ、か。なんか本当に知らない感じだし。・・・現状では黙っておこうか。
「そうでしたっけ?どうも記憶が曖昧で・・・」
「はっはっは!頭も鍛えんとダメだぞきみぃ~」
たとえ誰が相手であってもそれだけは言われたくない。・・・・・・くそ、会話の流れ上言い返せないのが腹立たしくてたまらない。
「うるさいですよ。・・・・・・原作への干渉はどうしてます?」
さて、ここからが本題だ。この上忍は敵となるか味方となるか。
「干渉?んなもんほとんどしてねーぞ」
一瞬、間が空いて。
「・・・・・・えっと、ナルトとかは?」
「誰があんな死亡フラグだらけの奴に近づくか。そのうち勝手に助かるんだから放置に決まってる」
「・・・・・・・・・・・・シカマル以上のめんどくさがり?」
「きちーことなんざ一切ごめんだ。その分お前が何しようと俺は干渉せん。好きにしろ」
これは・・・・・・ある意味ありがたいけど、味方に引き込むのも無理かな。唯我独尊じゃないけど、我が道を行くというか。
「あー・・・そうですか。ではお互いのやることには不干渉ということで」
「茶飲み友達ぐらいならなってやってもいいぞ」
「あはは・・・・・・たまにはお話でもしましょうか。ちなみに、ヒグサさん以外に転生人はいますか?」
「さあな。俺は特に気付かなかったが」
「そうですか・・・」
そんな感じで同郷人とのファーストコンタクトは終了した。得るものは特になかったけど、僕以外の転生人がいると分かったことが収穫といえば収穫か。
ナルトや他のキャラにもこれといった干渉はしてないらしいから、僕もやり易い。
「ところで、アカデミーどこだか知りません?」
「いきなりやる気かよお前・・・・・・」
呆れたような目を向けられて、僕はとりあえず愛想笑いしておいた。
「・・・ったくめんどくせーことに何でわざわざ首突っ込むかねぇ」
ずず・・・と冷めた茶を飲みながらヒグサはぼやく。
見た感じ気のいい美少年である白亜刹那。その実若干15歳で死亡した、自分と同じ転生人。・・・・・・憑依の可能性もあるにはあるが、それはともかく見かけによらず辛い人生を送ってきたようだ。
実力の程はさっぱりわからん。落ち着いた奴だが、全てに対して反応が希薄というか・・・・・・いや、詰め所でのつっこみは激しかったが、とにかくわからん。一度苦無を握ってみたがまるで無反応。・・・・・・素か演技かすらわかんねーし、実力に関しては保留だな。
饅頭の残りを口に放り込む。刹那もここの味は気に入ったようで、去り際にしこたま買っていった。団子30本は買いすぎだろーが。
「どう介入していく気か、見といてやろうじゃねえの」
カカシ曰くの物騒な笑みを浮かべて、ヒグサは勘定に向かった。
「・・・・・・え?既にお支払いされてますよ?」
「あのガキ・・・・・・大人がおごられちゃ立つ瀬ねーだろうが・・・・・・」
刹那の所有金額を知らないヒグサは、世間体を考えガックリ肩を落としたそうな。