奇遇
奇縁
歴史として見れば、定められし遭遇。
行商をしながらの旅路だったため、木の葉到着に3週間もかかった。忍びがどんなに急いでも3日かかるとか書いてあったけど、僕達はのんびり馬車の旅。このぐらいは妥当かな。
この前、砂の暗部らしい覆面男が接触してきた。本来ならこちらが一方的に色々と報せるだけなのだが、暁に関してさらに詳細な情報を持ってないかという文が届けられたのだ。全く良い勘してるよ。
口座には既に一千万両が振り込まれている。仕事が速いのはいいことだ。
さてさて・・・・・・暁、ね。どの情報なら問題ないか迷った結果、サソリの人傀儡について少し書いた。
ズバリ、サソリは風影三代目を傀儡としている――
・・・・・・数日後、預金通帳の中身が3倍になっていたのは驚いた。そこまでの情報だったとは思えないのだが・・・能力に関しては何も言ってないし。人によって情報の価値は変わるけど、普通2千万両も出すかなぁ・・・?
実際はこれでも少ないくらいだと風影(と言うよりはチヨ婆)は思っているのことを、刹那は知らない。
馬車に揺られつつ入国審査をパスして見上げれば、木の葉名物火影岩。・・・・・・どうやって彫ったのかな。やっぱり忍術?
ここに来るまでの街道でもそうだったけど、火の国は豊かだ。肥沃な土壌と広大な土地。これだけで国として発展するだけの可能性を秘めている。砂とは大違いだ。
「木の葉、か・・・・・・」
「刹那くんどうかしたの?」
「何でもないよナズナ。ただちょっと、どっちを先にしようか悩んでるだけ」
「どっち・・・・・・?」
「くすくす・・・・・・ナズナが気にすることじゃないよ」
「あー!刹那くんってばまた私を子供扱いしてる!」
「ナズナは子供だよ?」
「刹那くんもだよ!子供が子供を子供扱いしちゃいけないの!」
「早口言葉・・・・・・?」
・・・・・・ナズナの理論には意味不明な箇所が多々存在する。
それとも、これが子供の世界の理論なのだろうか?
さて、ナルトはまあ後回しで問題ないとして・・・・・・うちは。
虐殺事件の回避は可能だろうか・・・・・・?
原作上のうちは一族虐殺は来年だ。つまり里の上層部との関係は悪化の一途を辿っていることだろう。イタチは既に二重スパイ。マダラにも気を付けないと。・・・・・・やること多いなあ。
かといって投げ出す訳にも行かない。僕のささやかなる野望のためにもうちはをどうにかしないと。
暇な時間になったのを見計らって、僕はいそいそと外出準備を始めた。
「刹那、どこか行くの?」
「公園にでも行って、未来の木の葉を担う子供達の顔を拝んでくる」
「・・・・・・貴方、また何か悪巧みしてるでしょ」
ぎくり、と僕は身を強張らせた。さすがはお母さん。鋭い。
「あ、あはは・・・・・・無茶はしないから大丈夫だよ」
「程々にしときなさいよ・・・・・・?」
そこは多分大丈夫。軍縮でてんやわんやな砂と違い、木の葉の忍びは粒ぞろいだ。程々でないと命に関わる。
「じゃ、行ってきまーす」
元気良く部屋から出ていく息子を見送り、アゲハは静かに溜息した。
「・・・・・・眩魔。あの子、今度は一体何する気かしら?」
《碌なことじゃねーのは確かだな。ここでも人柱力に干渉すんじゃねえのか?》
「一理あるわね・・・・・・ちゃんと見張っておいてよ?」
《完璧は無理だぜ?刹那の奴最近やけに鋭くなっててよ》
「それでもやって」
《へいへい、契約にのっとりますよっと。・・・まあ1人勝手に風影と交渉するようなバカだしな》
「ちょっと眩魔、それ聞いてないわよ!?」
《お?そうだったか。最近物忘れがひどくってよぉ》
「嘘おっしゃい」
《バレたか。でまあその内容なんだがな――》
刹那の知らないところで、こっそり秘密は受け渡されていた。
「おー・・・いるいる」
適当な公園を見つけて、僕は木の上から子供達を観察していた。全部で十人ちょっと。砂と違って気候は温暖、普通に昼間から遊んでてくれて助かった。
んー・・・・・・でも知らない顔ばっかり。木の葉は広いし、名家の子はここにはいないみたいだ。どう見ても5歳とかその辺だし・・・・・・あ。
「アカデミー・・・忍者学校か」
・・・・・・相変わらずこういう常識には疎いなぁ。そもそも前世どころか今生でも学校に行ってないから、意識に上ることすらまずないのだ。今日は平日なので、普通の子でも学校に行ってるだろうし、まだ昼を過ぎてそう時間は経ってない。・・・直接行ってみようか。
そう決めて木から飛び降り、一歩踏み出したところで足を止める。
「・・・・・・」
・・・・・・アカデミーって、どこ?
前にも言ったが木の葉は広い。よって僕は足で探すより人に尋ねることにした。間違いなく妥当どころか最善の手段――だったはずなのに・・・・・・
「それで坊主、昼間っから学校にも行かず何してたんだ?」
「だからですね、僕は木の葉の子供じゃなくて商隊の」
「若気の至りって奴は分かんねえでもねえ。けどよ、子供の仕事はやっぱり勉強にある訳だ」
「いや、ですから」
「それなのに勉強もせず外をほっつき回ってるってのは・・・・・・どういう了見だコラ!」
「いきなりキレるな!それ以前に人の話を聞けーっ!」
・・・・・・何の因果か補導されてました。てか、何なんだこの人。補導だとか言って近くの署までしょっ引いたかと思ったら話すら聞かず一方的にしゃべり倒す・・・・・・仕事する気あるのか?
「ったく・・・見たところ忍タマってとこだが、やる気ねーならお前忍者やめろ」
「言いがかりも甚だしいんですが・・・・・・って忍タマ?」
「おうよ。忍者見習いすなわちこれ忍者の卵だろうが。略して忍タマだ」
あれー?これってひょっとして・・・・・・
「発案者・・・もとい、言い出しっぺは誰ですか?」
「俺だ、俺。以前これで流行語大賞取ったこともあるぞ、恐れ入ったか!」
赤髪を逆立たせた目立ちすぎる髪型のそいつは、子供相手に自慢話らしい。しかし・・・
「・・・・・・もしかしなくてもそれ、忍タマ乱太郎から取ってます?」
「そりゃ当然――ってお前!?」
泡を食ったような反応で確信した。
「奇縁というのはあるものなんですね。初めて見ましたよ」
「お前・・・・・・いや、本当にそうなのか?」
「言うなればしんべえにきり丸にヘムヘムといったところでしょうか」
転生だとか憑依だとかいう単語を使わず、暗に相手の言を肯定する。ここには僕達以外にも人がいるのだ。迂闊なことは口にできない。
「・・・・・・よし、飯おごってやる。そこでじっくり語り明かそうじゃねえの」
目の前の赤髪も僕の意図に気付いたらしい。ニヤリと笑った顔が・・・肉食獣めいて見えたのは気のせいだろうか・・・・・・?
てか、朝まで話す気はないですよ?早いとこサスケに接触したいし。
はたしてこの出逢いが吉と出るか凶と出るか・・・・・・