「今日で卒業、か……」見上げる空には雲一つない。満天のスカイブルー。まったく、狙ったかのような天気じゃないか、神様よ。そう心中で思いつつ、視線は再び前を向く。周りには晴れてアカデミーを卒業し忍者となった少年少女と、それを祝福する保護者たち。仕事の都合で私の親は来れなかったが、まあいい。これだけ華やかなら、それだけで気分も盛り上がるというものだ。……だが、それもどうやら、卒業生限定の話らしい。ここはこんなに華やかだというのに、一人、離れた所で俯き、どんよりとした雰囲気を醸し出している奴がいる。うずまきナルト。何故か里総出でリンチにしている、私と同年代の少年だ。大人たちはその姿を見て陰口を叩き、子供たちは石を投げる。……まったく、暗い話だ。そんな被虐待少年に向かって、しかし、私は話しかけようと歩き出す。同情したといえばそうだが、一人ぐらい私みたいな奴がいてもいいだろ?ナルトは、ブランコに座って項垂れていた。「や。へこんでるじゃん、ナルト」その言葉に、ナルトは顔を上げる。「サ、サクラ……」私の名前を口にしていくナルト。……しかし、私の理性は次の瞬間に消し飛んでいた。「……サクラ“ちゃん”……」「“ちゃん”を付けるなァアアアアアア!!」「ふぎゃ!?」私の右拳がナルトの顔面に吸い込まれ、ナルトは悲鳴をあげながら吹き飛んでいく。……自業自得だ。私、本名・春野サクラ。桜色の髪に、女性ものの服装。アカデミーのクラスでもしっかりくの一クラスだった私は、しかし、ちゃん付けを世界中の何よりも嫌う。私は――――――男である。~お隣さん家のサクラ“君”は、暗殺者~翌日。私の足は、昨日卒業したばかりのアカデミーの教室へと向かっている。任官し、晴れて忍者の卵、下忍となった卒業生が集められるのだ。「……ああ、憂鬱だ……」しかし、私の気持ちは下り続けている。何故そんな気持ちなのかって?それはこの、目の前にある教室の扉を開ければわかることだ……。……ああ、憂鬱だ……。「皆~、おはよ……」扉を開ける。その向こうにははたして、予想と寸分違わぬ光景があった。「「「おはよう、サクラ“ちゃん”!!!」」」「“ちゃん”を付けるなァアアアアアア!!」春野サクラはモテた。しかも、“同性”に。……憂鬱だ……。