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No.36294の一覧
[0] こんなNARUTOは嫌だ[さば](2013/02/24 01:08)
[1] こんなNARUTOは嫌だ2~もう一人の化け物~[さば](2012/12/27 04:07)
[2] こんなNARUTOは嫌だ3[さば](2013/01/01 22:00)
[3] こんなNARUTOは嫌だ4の1[さば](2013/02/24 01:47)
[4] こんなNARUTOは嫌だ4の2[さば](2013/04/07 23:03)
[5] こんなNARUTOは嫌だ5[さば](2014/03/28 03:58)
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[36294] こんなNARUTOは嫌だ
Name: さば◆cc5fc49e ID:f15c353b 次を表示する
Date: 2013/02/24 01:08
 その少年には、両親というものがいなかった。
 少年が持つ金髪蒼眼の風貌は、両親のどちらかから受け継いだものなのだが、知る由は無かった。
 物心がついた頃には、少年は自身が周囲の大人たちから疎まれている事を知る。しかし少年には、なぜ自身が疎まれるのか、その理由はわからなかった。陰口を叩かれたり、後ろ指を指されたりするのはまだ可愛い方で、ひどい時には暴力を振るわれるようにもなっていた。『化け物め!』という、罵声とともに。

 最初は自身の風貌が大人達をそうさせているのかと思ったが、里には金髪なんてざらにいるし、自分より妙な見てくれの人間だってたくさんいる。ある時、来る日も来る日も続く差別の毎日に我慢の限界を超えた少年は、泣きじゃくりながら大人達に理由を聞いた。しかし、少年が理由を聞くと大人達は途端に罵っていた口を閉ざしてしまう。少年はいわれのない暴力の理由を知ることはできなかった。
 大人達がこのような具合なので、周りの子供達も同じようになってしまう。子供は思っている以上に人を見ているのだ。木の葉隠れという少年の故郷に、彼の居場所は無くなりつつあった。

 他の子供達と同じように遊んだり、大人に甘えてみたいと少年は夢を見ていた。少年は白い目で見てくる大人達に媚びたりへつらったり、時には悪戯をしたりと、『構ってもらうため』の努力を続けたが、少年の望む結果を得る事はできなかった。
 そんな絶望的な毎日が続くなか、少年は日頃から意地悪をしてくる大人達を黙らせる事ができる方法を知る。
 それは、『金』であった。
 少年が『金』を持って里の商店にいけば、大人達は嫌悪感を出しながらも一応の対応はしてくれた。大好きなラーメンを食べる事だってできた。その事を知って以来、少年が『金』に対して異常な執着を持つようになったのは、言うまでもない。
 誹謗中傷と暴力の日々の中に『金』という希望を見つけてしまった少年、うずまきナルト。生来は明朗で活発であったはずのナルトの精神が崩壊するのは、簡単であった。



 金に異常な執着を示す少年ナルトは、相変わらず続く里での差別の日々をしぶとく生き抜き、他の子供達と同じようにアカデミーへ入学する年を向かえた。『金』を唯一の拠り所とするナルトにとって、アカデミーで学ぶ忍術は眼中になく、入学してもお金の事ばかり考えていたので一年は落第してしまった。里での差別に耐え抜いたナルトの精神は予想以上に逞しくなってしまい、周囲からは『落ちこぼれ』と目されようと気にもとめず、相変わらずお金の事ばかりを考えていた。
 ナルトは『効率良くお金を得るには、他人を出し抜く必要がある』という、自論をもっていた。これは、幼少より虐げられてきたナルトの歪みきった精神がはじき出した、危うい答えである。正解かどうかは別として、ナルトは他人を出し抜く為、先生や同級生達の前では悪戯や失敗を繰り返し『ドジでマヌケな落ちこぼれ』を演じ続けていた。しかし、その内面は『蛇』であった。

 ナルトの留年が無事に決まった頃、木の葉隠れの里は新しい春の季節を迎えた。森では小鳥達が自慢の喉をここぞとばかりに披露しあい、表では盛りのついた猫達がけたたましい鳴き声を方々であげている。この春に新入生となる子供達は、アカデミーでの新しい生活に期待と不安の心を躍らせていた。

 そしてナルトは、里の外れで数人の子供達を前に、腕を組んで立っている。

「……お前ら、ちょっとジャンプしてみろってばよ」

「…………」

 つい先刻、ナルトは『アカデミー入学前の子供に対するカツアゲ』という、道徳的に最低とされる荒業をやってのけたばかりであった。そして今、ナルトは子供達が隠し持つ小遣いを、更に巻き上げようとしている最中である。ナルトの前に整列させられている子供達のなかには、目に涙を浮かべている子もいた。

「ジャンプしろって言ってんだってば!」

「……!」

 ナルトの怒号が響く。怯えきった子供達は言われるがまま、一斉にその場でジャンプした。

「あれぇ~?今、チャリンって音がしたぞぉ~?」

 研ぎ澄まされたナルトの聴覚が、子供達のポケットの中から鳴ったごくごく小さな金属音を捕える。ナルトは獲物を見つけた蛇のように、舌なめずりをしながら音が鳴った方向へと向かっていく。

「おっかしいなぁ~、さっきお前、『もう持ってないぞコレ』とか言ってなかったっけぇ~?」

 ナルトが近づいた子供は、五代目火影の孫に当たる人物、木の葉丸であった。子供達がナルトにカツアゲされるきっかけになったのは、木の葉丸が里では落ちこぼれ忍者と有名だったナルトを見かけ、侮辱した事に始まる。ナルトは、最初は他愛のないガキ同士のケンカのように木の葉丸達を追い駆け回し、里の外れの方へとうまく誘導していた。そして、人気のないところで木の葉丸達を捕獲すると、態度を豹変させてカツアゲを敢行していたのである。

「持ってないのに持ってる……どういう事なんだってばぁ?コレェ!?」

 ナルトは木の葉丸の髪を掴むと、前後に激しく揺さぶった。
 木の葉丸は火影の孫という事で、周囲の大人達からは箸も持たせないような扱いを受けてきた。年端もいかない木の葉丸に媚び、へつらってきたのは、いつも大人達の方であった。ナルトとは対照的な人生を送ってきた木の葉丸は、生まれて初めて媚びへつらわない人間に遭遇した。それどころか、恐喝されている。木の葉丸は激しく揺さぶられながら、人生で初めてとなる年上からの恐怖というものを味わっていた。

「つまりぃ~、この金は『お前の物じゃあ無い』って事なんだってば?……なら俺がありがたく貰っとくんだってばよ!」

 ナルトは揺さぶっていた木の葉丸を突き飛ばすと、辺りに落ちた小銭を素早く回収して懐へと収めた。そして、カツアゲした子供達の前からそそくさと姿を消す。その後ろ姿は子悪党と呼ぶにふさわしい小さな背中だったが、木の葉丸の目には何故だか異様に大きく見えていた。 
 火影の孫という事で、何かしらの恩を売って将来の利益に繋げようとするのが普通だが、目先の小利にこだわるのがこのナルトであった。

 金の為なら魂すら売り得る『金の亡者』
 うずまきナルト

 木の葉の里に、一人の化け物が産れた。
 ……いや、化け物はもう一人。 


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