巻の?? 勇気が世界を救うと信じての事
「ルイちゃん、どうしたの? 難しい顔して」
「……ああ、ナギか。丁度良いかどうか知らないけど、これを見て」
ルイは気怠げに読んでいた雑誌をナギに投げ渡す。
突然の事にびっくりして受け取ったナギはその雑誌の表紙をまじまじと見る。無数の漫画キャラが華々しくポーズを取る構図は何処か懐かしいものがあり、でかでかと表示されたタイトルにナギは更に驚いた。
「え? 何故にジャンプ? あー、あったあった。NARUTOもある、懐かしいー! ……て、あれ?」
ナギがページを捲ってみれば、丁度今週号のNARUTOはポスター型の巻頭カラーだった。
連載九周年突破記念という文字を見て、結構進んでいるなぁとナギがしみじみ思った直後、それが九人の人柱力の集合図である事に気づいて愕然とする。
いる。いるのだ。指の数で何尾か示しており、シャボン玉を膨らませながら堂々と六本指の男性が其処には居た。
「まさかの人柱力大集合。三尾のは野良だった気がするけど――六尾の人柱力もいるね。ついでに五尾は岩隠れにいたのか」
「え、えぇー!? で、でも私の中に確かに六尾いるし、岩隠れの里に五尾の人なんて欠片も見当たらなかったよ!?」
混乱しながら慌てるナギに、ルイは清々しいまでに爽やかな笑顔を浮かべて答えた。
「――えー、想定外の事態が発生した為、これ以降の展開は用意されていません。『納得いかない!』とお怒りのお客様は、次の中から好みのエンディングを自由に選んで下さい」
エントリーNo.001『戦いはこれからだ』
「くく、くぁーっはっはっ。はぁーはっはっはっはっはっ!」
「え? 何この馬鹿っぽい笑い方……って、表紙の六尾の人!?」
「ふっ、貴様は自分が六尾の人柱力のつもりだろうが、自惚れるな。貴様など我等六尾666衆の中で最も格下ッッ!」
「多っ!? 広げた風呂敷畳むつもり欠片もないでしょそれ!?」
「五月蝿い、問答無用ッ! 行くぞォ掛かって来い!」
「行くのか来るのかハッキリして下さいって、あれ、何で戦うのぉ~!?」
エントリーNO.002『希望を胸に すべてを終わらせる時……!』
大蛇丸「さあ来いナギイイイ! 私は実は一回刺されただけで死ぬわああ!」
ナギ「くらえぇ、混沌・針千本の術ー!」
大蛇丸「グ、グアアア! こ、このザ・不死身と呼ばれる三忍の大蛇丸が……こ、こんな小娘に……バ、バカなアアア」
イタチ「大蛇丸がやられたようだな」
デイダラ「ククク……奴は暁の中でも最弱だ、うん」
鬼鮫「人柱力如きに負けるとは暁の面汚しですねぇ……」
ナギ「喰らええええ」
九人「グアアアアアアアア」
ナギ「やった、遂に暁を倒したぞ……これでうちはマダラのいる終末の谷の扉が開かれる!」
マダラ「良く来たな岩流ナギ……待っていたぞ」
ナギ「こ、此処が終末の谷だったんだ……! 感じる、うちはマダラの瞳力を……!」
マダラ「ナギよ……戦う前に一つ言っておく事がある。お前はオレを倒すのに初代の木遁秘術や、オレの秘密を暴く必要があると思っているようだが……別になくとも倒せる」
ナギ「な、何だって!?」
マダラ「そして像に封印していた尾獣達は野に帰し、ついでにカブトとダンゾウも葬っておいた。あとはオレを倒すだけだなクックック……」
ナギ「ふっ……私も一つ言っておく事があるわ。ルイちゃんがこの物語の主役でラスボスだと思っていたけど別にそんな事は無かったわ!」
マダラ「そうか」
ナギ「ウオオオいくぞオオオ!」
マダラ「さあ来いナギ!」
ナギの勇気が世界を救うと信じて……! ご愛読ありがとうございました!
エントリーNO.012『オレはようやく登りはじめたばかりだからな。
このはてしなく遠い男坂をよ…未完』
エントリーNO.044『正史』
「デイダラが一尾、飛段が二尾、サソリ(トビ)が三尾、鬼鮫は四尾、イタチは九尾――」
「え? 何それ?」
「つまりね、ナギ。二部開始時点までにペインかコナンかゼツに殺される予定なのよね。我愛羅の一尾の前に五尾と六尾と七尾の内、二体は封印されていたみたいだし。運良く生き延びても飛角コンビが死んで四尾が封印される間に、最後の一匹が何時の間にか封印されるようだし。逆算的に考えれば角都が八尾担当だったのかねぇ?」
「えーと、そんな事はどうでも良いんだけど、その奇抜な人達は何方様で? 全員暁っぽいマント着て、六人は変な眼で黒い棒全身に突き刺さっているし、一人は紙っぽい女の人だし、最後の人はトゲトゲアロエで何処の男爵ぅ!?」
「やだなぁー、ナギ。わざわざ木ノ葉くんだりまで来てくれたんだから感謝しないと。頑張って死亡フラグを打ち砕くべし。私は影から応援だけするわ」
「え、いや、無理無理っ! てか何でその三人と纏めて戦う事になるのよおぉおおおおおぉ!?」
「……うぅー、本物は、いない……うぅ……!」
ナギの魘される声は遠くから響く爆音で掻き消される。
気を失っているナギとヤクモを気合で担ぐユウナはその巻き添えを食らわないよう四苦八苦していた。
「なんで怪獣大戦より被害拡大してやがるんだ!? ルイの馬鹿、自分達諸共焼き殺す気か!」
遠くでは無数の爆発が止め処無く起こり、火は徐々に燃え広がっている。
もはや白眼でも戦況が見極められない中、ユウナは三人の親友の無事をただただ祈るばかりだった。