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No.3089の一覧
[0] NARUTO うちはルイ暴走忍法帖[咲夜泪](2010/06/23 02:13)
[1] 巻の2[咲夜泪](2010/06/23 02:30)
[2] 巻の3[咲夜泪](2010/06/23 02:36)
[3] 巻の4[咲夜泪](2010/06/23 02:54)
[4] 巻の5[咲夜泪](2010/06/23 03:02)
[5] 巻の6[咲夜泪](2010/08/03 21:09)
[6] 巻の7[咲夜泪](2010/06/23 03:13)
[7] 巻の8[咲夜泪](2010/06/23 03:23)
[8] 巻の9[咲夜泪](2010/06/23 15:36)
[9] 巻の10[咲夜泪](2010/06/23 15:47)
[10] 巻の11[咲夜泪](2010/06/23 16:44)
[11] 巻の12[咲夜泪](2010/06/23 17:00)
[12] 巻の13[咲夜泪](2010/06/23 17:16)
[13] 巻の14[咲夜泪](2010/06/23 17:23)
[14] 巻の15[咲夜泪](2010/06/23 17:37)
[15] 巻の16[咲夜泪](2010/06/23 17:45)
[16] 巻の17[咲夜泪](2010/06/23 17:52)
[17] 巻の18[咲夜泪](2010/06/23 18:01)
[18] 巻の19[咲夜泪](2010/07/01 23:34)
[19] 巻の20[咲夜泪](2010/06/23 18:13)
[20] 巻の21[咲夜泪](2010/06/23 18:42)
[21] 巻の22[咲夜泪](2010/07/01 23:39)
[22] 巻の23[咲夜泪](2010/06/23 19:09)
[23] 巻の24[咲夜泪](2010/07/01 23:54)
[24] 巻の25[咲夜泪](2010/07/01 23:59)
[25] 巻の26[咲夜泪](2010/07/02 00:10)
[26] 巻の27[咲夜泪](2010/06/23 19:42)
[27] 巻の28[咲夜泪](2010/06/23 22:52)
[28] 巻の29[咲夜泪](2010/06/23 23:01)
[29] 巻の??[咲夜泪](2010/06/23 23:07)
[30] 巻の30[咲夜泪](2010/07/02 00:43)
[31] 巻の31[咲夜泪](2010/06/23 23:29)
[32] 巻の32[咲夜泪](2010/06/23 23:36)
[33] 巻の33[咲夜泪](2010/06/23 23:51)
[34] 巻の34[咲夜泪](2010/06/24 00:31)
[35] 巻の35[咲夜泪](2010/06/24 01:19)
[36] 巻の36[咲夜泪](2010/06/24 00:38)
[37] 巻の37[咲夜泪](2010/06/24 01:00)
[38] 巻の38[咲夜泪](2010/06/24 01:05)
[39] 巻の39[咲夜泪](2010/06/24 01:26)
[40] 巻の40[咲夜泪](2010/06/24 01:37)
[41] 巻の41[咲夜泪](2010/09/10 01:08)
[42] 巻の42[咲夜泪](2010/07/07 03:50)
[43] 巻の43[咲夜泪](2010/07/20 02:03)
[44] 巻の44[咲夜泪](2010/07/30 20:06)
[45] 巻の45[咲夜泪](2010/08/03 02:20)
[46] 巻の46[咲夜泪](2010/09/07 06:26)
[47] 巻の47[咲夜泪](2011/01/12 13:50)
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[3089] 巻の26
Name: 咲夜泪◆ae045239 ID:ceb974ce 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/02 00:10




 一つ、昔話をしよう。ある女の子の物語である。

 ――自分の運の無さには諦めの念すら抱いていた。
 土影を何代にも渡って輩出した一族の系譜に生まれ、それ故に尾獣を封印されて人柱力になった岩流ナギは自らの不幸を嘆かざるを得なかった。
 そもそもNARUTOの世界に転生した経緯も、道端を歩いていたらビルの上から鉄材が落下し、運悪く直撃して即死したという宝籤の一等賞を取るより稀有な確率を引き当てた事にある。悲惨過ぎて泣くに泣けなかった。

 勝手に埋め込まれた正体不明の同居人に脅え悩まされる事、数年余り。幾多の死傷者を出した暴走を持って、ナギは正体不明の同居人――六尾・渾沌が脅威と恐怖の根源であると認識した。
 その暴走以来、内の封印が弱まったのか、渾沌のチャクラが時折漏れ、制御不能の暴走に陥る事が度々起こった。程無くして里人から隔離されたが――今でも里人達の心底から恐怖し憎悪する眼が忘れられない。

 それから数人の世話係と一つ年上の友達のレンとしか会わない日々が続いた。
 尾獣の力を宿す恐るべき兵器として生み出された彼女は、今やいつ爆発するか解らない危険物に過ぎなかった。
 人柱力の上に前世の記憶まであるという誰にも理解出来ない境遇故に、泣きたくなるほどの孤独と意図せぬ殺人を犯した罪悪感、内に蠢く尾獣の恐怖に蝕まれ、徐々に心が病んでいった。
 年々被害妄想が酷くなり、暁の者が来たら里の皆は喜んで自分を差し出し、尾獣を吸い出されて死ぬのでは――そう思い至った時、ナギは居ても立ってもいられず、半ば錯乱状態で里抜けを実行した。

 木ノ葉隠れの里を一心不乱に目指したのは原作の舞台だったから、それが一番強い理由だったかもしれない。
 心神喪失状態のナギは人柱力の自分でも保護され、安全を保障される理想郷だと思い込んでいたのだろう。原作でのナルトの境遇や我愛羅の境遇など、ナギは完全に失念していた。

 程無くして岩隠れの暗部に追いつかれ――ナギは自らの意思で尾獣の力を暴走させ、完膚無きまで殺戮し尽くした。
 圧倒的な暴力で自分を蔑んでいた者達を一方的に殺す至高の愉悦、如何なる負傷も瞬時に再生する人外の治癒能力、積年の負の怨念を吹き飛ばす爽快感にナギは歓喜狂喜し――それらは一瞬にして反転し、全てが罪悪感となってナギの心を際限無く責め立てた。

 一般的な道徳概念を持ち得たが故に壊れそうになった心を保とうと、全ての憎悪を内に封じられた尾獣に向け、先に進もうとしたが、心は折れかかっていた。
 ――もう、諦めて自殺した方が楽なのでは? そんな悪魔が耳元で呟いたような甘言が魅力的に感じ始めた時、ナギは彼女達、うちはルイに出逢った。

 ルイは出逢った当初から滅茶苦茶だった。
 永遠に理解し合えない友人レンの死体に起爆札つけて彼女の仲間の下に放り投げたり、恐怖の象徴だった六尾・渾沌を七十二時間ずっとフルボッコにして服従させたり、果てには現実世界からの転生者で、自分と同じ境遇の者だった。
 尾獣の器だったナギの事など、どう転がっても良かったルイは意図せず、ナギの内に蔓延っていた全ての既成概念を破壊し、絶望を砕いて生きる活力を与えた。――黄金の輝きに匹敵する、希望という名の光明を、ナギはルイに見たのだ。

 それでも口寄せされた六尾・渾沌と初対面する間際、今までの十二年の総決算と言うべき憎悪と怨念がナギの脳裏に渦巻いていた。この尾獣さえ自分に埋め込まれてなければ、と思わずにいられなかった。
 だが、その暗い情念は出会った瞬間に喪失した。
 子犬状態の渾沌はただ空を見上げていた。あれだけ自分の中で意味不明なまでに暴れ回っていたのに、微動だにせず見続けていた。

「元々コイツに五感無いけど、宿主がいる御陰で感覚が繋がったから、物珍しいんじゃない?」

 逆に言えばナギの中に封じられていなければ写輪眼で制御出来ないと不機嫌そうに示唆したルイの言葉で、ナギは雷に打たれるような衝撃を受けた。
 ――この尾獣も、この澄み切った蒼空を見たかったのだ。だから自分の内で暴れ回ったのだ。あの暗い暗い世界の中で、何度も何度も――。
 長い間、自分を苦しめ続けた六尾すら自分と同じ被害者だった事を知り、ナギは不覚にも涙を零した。
 この時に、十二年間積もりに積もった負債は、全て流し尽くしたとナギはしみじみ思う。

 目指すべき者を得て、同じ境遇の友と師も得て、憎みに憎んだ六尾とも和解し、ナギは一人で無くなった。こんなにも幸せな事は無いと、この暖かい日々に感謝した。
 うちはルイや黒羽ヤクモ、日向ユウナに青桐カイエと一緒に、今まで忌避した尾獣の力とも前向きに付き合い始めた。
 ――この平穏が、硝子細工のように儚く壊れ易い事を、ナギは身をもって知っている。だからこそ命に賭けても守りたいと、彼女は切望したのだった――。


 巻の26 木ノ葉崩し開幕、土の国以来のAランク任務に従事するの事


 状況を把握出来ずに無防備を曝すサクラは敵にとって絶好の鴨だった。
 致命的な隙を狙って迫ってきた二人の音隠れの忍を始末しようとした時、はたけカカシは自分以外に割って入る影に気づいた。――うちはルイだった。
 ルイと眼が合った瞬間、二人の音隠れの忍は不自然に硬直し、成す術も無くその頭部にクナイが突き立てられて絶命する。
 ――その彼女の双眸には、頬と衣服を染めた返り血より紅い写輪眼が浮かんでいた。

(まだ発展途上のサスケとは違い、三つ巴の写輪眼か。やはり相当前から開眼していたようだし、催眠眼による幻術が此処まで強力とはな……)

 げに恐ろしきはうちはの血か、落ちこぼれの彼女を此処まで鍛え上げた青桐カイエか、これまで実力の片鱗を隠してきたうちはルイの才覚か。
 それとは別に、開眼したら自分に指導させるという、里の方針を完全に無視した青桐カイエに、カカシは軽い殺意を覚えた。
 九班と見知らぬ少女がサクラとルイの下に移動する最中、黒羽ヤクモは観客席を乗り越えて襲い掛かった音隠れの忍を、擦違い様、神速の居合いで斬り伏せて馳せ参じる。

「! ユウナ後ろ!」
「解ってる!」

 更に飛び掛ってきた二人の音忍を、日向ユウナは掌に集めたチャクラを超高速の掌底をもって撃ち放ち、触らずして二人を試合場に打ち落とした。

「チィ……!」

 此処に至って彼等四人を容易ならぬ敵と認識した音隠れの忍達は不用意に近寄らず、クナイと手裏剣を暴雨の如く投げ込んだ。

(もう少し見ていたかったが……!)

 幻術で昏倒する観客にも被害が及ぶと判断し、ガイとカカシは手助けをしようとした。
 その前に、大量の黒泥が眼下に広がり、飛来したクナイと手裏剣を全て遮って防ぎ――黒泥は投擲した者達の下に雪崩の如く流れ込み、無情に飲み込んで遥か下の試合場に流れ落ちた。品の無い悲鳴は落下の途中で途切れた。

「あ、ナギ、観客に被害が及ばない程度にしてね。多少死んでも音隠れと砂隠れのせいに出来るけど」
「……う、手動操作だから、多分大丈夫、だよ?」

 生命を散らす戦場に似合わぬやり取りに、カカシは度胸が据わっていると称賛した。
 あれほど大規模な術を使いながら、見慣れぬ少女・岩流ナギに疲労の色は欠片も無かった。
 ナルトを思わせる桁外れのチャクラの量で、カカシに我愛羅と同様の危惧を抱かせたのは別の話である。

(……嬉しい誤算だ。四人とも中忍級とはな――)

 これならばこれから彼等に言い渡す任務に、貴重な戦力である上忍を後詰に回す必要は無いと、カカシは冷静に任務の粗探しを進めた。




 ――予想通り、音隠れの忍は精々中忍級だった。
 右腕の薬師カブトがはたけカカシに匹敵するぐらいで、その次の実力者が呪印でドーピングした四人衆だか五人衆――新興の里故に上忍級の人材は極めて少ないのだろう。
 この程度なら万華鏡写輪眼を使うまでもなく、サクラとの対戦で磨きに磨いた写輪眼の幻術か、未来視じみた見切りによるカウンターで容易に仕留められる。
 天照は使えて三発、無理して四発が限度なので上忍級の敵と遭遇するまでチャクラを温存しておきたい。

「カイエ先生、カカシ先生、ガイ先生、どうするんですか? こんな状況下じゃ下忍に過ぎない私達は呆気無く殺されちゃいますよ」

 私達は身を屈め、次々と襲い来る敵を上忍達に任せながらさっさと任務を寄越せと強請る。先程の血祭りで襲撃の頻度は少なくなっているが。

「ハハ、下忍ね……サクラ、幻術を解いてナルトを起こせ。久々の任務だ、ナルトも喜ぶだろーよ」

 やはり物語の流れに巻き込まれるのか、と私は心の中で溜息を吐いた。
 想像していた流れの一つに該当するので、対応策を思い出しつつ、周囲を警戒しながらカカシの言葉に耳を傾ける。

「サスケが砂の我愛羅達を追っている。七班と九班と其処の少女」
「あ、初めまして。如月ナギサです」
「の二小隊でサスケの後を追跡し、合流して止めろ。そして別命があるまで安全な所で待機だ」

 四人以上の行動は迅速さに欠け、敵から身を隠す事を難しくするのがアカデミーでの巡回実習の基本だ。
 だが、私達四人が加わるこの場合、小隊の戦力が十分と見做されて、追撃者対策で来る上忍は期待出来ないと考えて良いだろう。
 有効な戦力を他に使えるのは全体から見て有益だが、私達にとっては若干厳しい事態である。

「う、オレもなのかよ。任務参加への拒否権は……?」
「この激戦区に留まって殺されたいなら構わないわよ」

 尻込みするシカマルを私は即座に一分未満の望みを断つ。
 人間諦めが肝心だからさっさと思考を切り替えるようにと私は無言でシカマルを睨み、彼は諦めたようにがっくりと肩を落とし、盛大に溜息をついた。

「後はこのパックンがサスケの後を臭いで追跡してくれる」

 カカシは喋る忍犬パックンを口寄せする。……どうせなら戦闘に役立つ忍犬をつけて欲しいものだ。
 あ、また一人、カカシに擦違い様、クナイで腹を引き裂かれて返り討ちになった。

「あれ……犬なら――」
「コンちゃんはその、忍犬じゃないからっ。あは、あはは……!」

 サクラがナギの右肩に乗っかるコンに眼を向けたが、残念ながら戦闘以外役に立たない。
 元々五感が無いコンはチャクラに敏感だが、それは大小程度で個人を見分ける事は出来ない。というより、うちの班だとユウナがいるから必要無い。便利だね、白眼。

「……あー、やっぱりオレは此処で一緒に踏ん張らないといけないのか?」

 襲い来る音隠れの忍と応戦していた我等が担当上忍・青桐カイエはシカマル以上にやる気無く問う。今すぐこの場から立ち去りたい気持ちは痛いほど解るが、上忍という立場が許さないだろう。
 受け答えたのは奥の壁に音隠れの忍を拳のみで叩き付け、そのまま冗談みたいに穿ち破って巨大な穴を開けたマイト・ガイだった。

「当たり前だカイエ! お前とて木ノ葉の主力の一人だぞ! いい加減、その自覚を持て!」
「な、ガイ、勝手にテメェ等と同列扱いにすんなぁ! 凡人から先に死ぬなんざ真っ平御免じゃって、何勝手に仕掛けてきやがるんだぁボケェ!」

 全力でガイに文句を叫ぶカイエが隙だらけと錯覚したのか、音忍が背後から襲い掛かって来たが、腐っても木ノ葉の上忍である。
 カイエは振り返る事無く背後に掌底を繰り出し、瞬間的に発生させた螺旋丸で音忍の頭部を丸々抉り取った。……のり突っ込みのような即死攻撃で呆気無く逝った音忍が哀れ過ぎる。

「……カイエ先生も十分仲間入り出来ているな」
「……同感だな」

 ヤクモとユウナは転がり落ちる首無し死体を正視してしまったのか、青褪めた顔になっている。

「……アレ? どうしたの、サクラちゃん……?」
「話は後よ!」

 サクラは寝転んでいたナルトを起こし、私達は挙ってガイの開けた穴から這い出る。
 私が穴から飛び出す前に、結界忍術に囲まれた中央の物見櫓を眺める。三代目火影と大蛇丸の戦いが終わるまで一時間程度、恐らくは人生で最も長い一時間になるだろう。
 己が生命を賭けて戦い抜くには長すぎる時間、絶対に全員で生き延びて見せると私は私自身に強く誓った――。




「おい、お前等もっとスピードを上げろ!」
「え? 何なの!?」
「後ろから二小隊、八人……イヤ、もう一人、九人が追ってきとる!」

 サスケの臭いを辿って森を駆け抜ける最中、カカシの忍犬パックンは敵の臭いを察知し、慌てながら催促する。

「おいおい、もうかよ!? 冗談じゃねぇぞ!」
「まだワシらの正確な位置までは掴んでないようだが、待ち伏せを警戒しながら確実に迫ってきとる!」
「チィ、くそ! 恐らく中忍以上の奴ばっかだ。追いつかれたら全滅だぜ!」

 シカマルが文句を言って舌打ちする。
 数の上では一人の差に過ぎないが、突発的に編成された二小隊のメンバーは悉く下忍であり、恐らくは中忍のみで編成された敵の小隊と遭遇すれば全滅するのは火を見るより明らかだろう。

「ユウナ」
「ああ、大丈夫だ。全員目視した」

 ルイは慌てた様子無く横目でユウナを見る。
 既にユウナは白眼を発動させており、八人の小隊と追随する残りの一人を発見していた。

「なら決まりね。追手は私達九班が引き受けるわ。サクラ達はサスケをお願い」
「な、死ぬ気か!? 待ち伏せに見せかけた陽動なら追跡は撒けるが、どう考えても死に役だぜ!?」

 その迷い無き即断に、シカマルは囮の危険性を必死に説いたが、対するルイは絶対の自信を持って微笑んだ。

「私達を見縊らないで欲しいなぁ。追跡者を全員始末した上で援護に回るから安心して」

 最初から、自分がその死に役を担当しようとする辺り、シカマルの意地っ張りも男の子特有のものだなとルイは微笑ましく思う。
 ナルト達三人と一匹が笑いながら死地に赴く四人に様々な感傷と葛藤を抱いている中、ヤクモとユウナとナギは顔を見合わせて、ルイの意図を即座に察した。

(間違いない。ルイちゃん、絶対助けに行く気無いね……)
(でもまあ、九人殺して身を隠せば楽々生き残れるな。サスケの方は原作通りに事が進めば、ナルト達に任せるだけで終わるし)
(……我愛羅とナルトの怪獣大戦に巻き込まれたら住民Aや脇役Bの如く死ねるしな。あんな展開になったら自分の白眼など塵屑同然だな)

 自ら進んで囮役を務めて恩を売り、最も楽な道を進む。そのルイの魂胆は物の見事なまでに三人に以心伝心した。

「でも、パックンがいないんじゃサスケ君の場所解らないんじゃ……」
「だ、大丈夫だよサクラ。こっちには白眼持ちのユウナがいるし!」
「ああ、必ず追いつくから安心してくれ」

 本当のルイに一ヶ月間触れ合ったサクラに悟られぬよう、ナギとユウナは内心冷や汗を浮かべながら必死に大丈夫だとアピールする。
 サクラは一瞬だけ疑問符を浮かべたが、緊急事態ゆえに深く追及せずに受け入れた。

「お前達こそ気張れよ。砂隠れの我愛羅、ありゃ只者じゃないぜ」
「わ、解っているってばよ、ヤクモに言われなくてもな! それじゃ頼んだぜ!」

 最後にさり気無くヤクモが話題を方向転換させてナルトを焚き付け、小隊は二手に別れた。

「じゃーねぇー。――さぁて、言わずとも解っていると思うけど」
「追手の九人殺して、隠れて静観だねー」

 ナギの何処か愉しげな言葉にルイは屈託無い表情で笑った。

「そそ、主人公補正の無い脇役は粛々と身を潜めないとねー」
「お前が言うなと突っ込みたくなる発言だがな」

 釣られて、ヤクモは気軽に笑う。周囲への警戒こそ怠ってないものの、最初にあった緊張感は何処かに吹っ飛んでいた。
 ルイと、そしてこの仲間達と一緒ならどんな困難も乗り越えられる。そんな根拠無き確信さえ、不動のものとして信仰出来る。

「気にしない気にしない。さ、殺るかね」

 ルイは徐に巻物を取り出し、中に封じられた武具を口寄せする。
 出てきたのは中国の昔の仙女が持つような巨大な団扇だった。左右には三つ巴の写輪眼の模様が、中央にはうちはの家紋が堂々と入っていた。

「ルイがうちはの家紋入りの巨大な団扇を持つ? それはひょっとしてギャグのつもりで――」

 ユウナが思わず突っ込みたくなったのは無理も無い。それすら見越して、ルイは艶美に微笑んで見せた。

「あら、うちはの家紋は火を操るうちはを持つ者の意よ。これからその一発芸如きで焼け死ぬ忍に同情するんだね」




 一体どうしてこうなっているのか、運命とは不思議なものだと、先行する二小隊に追随する音隠れの忍は思った。
 何でNARUTOの世界に何処ぞの二次小説が宜しく転生したのに、よりによって一年前に出来たばかりの音隠れの里に所属する事になろうとは、自身の不幸を嘆かざるを得ない。
 里抜けして抜け忍になるにも大蛇丸が脅威であるし、そのオカマを心酔する忍達もまた同類というべき悪党揃いなので既に諦めている。
 現在、彼は木ノ葉の中忍試験の試験会場から抜け出した七名の下忍を追うという楽な任務の真っ最中だった。
 先達が追い回して殺すだけなので彼自身は見殺すだけで済むなと完全に楽観視していた。それは戦場において、あるまじき油断だった事を次の瞬間に思い知る事になる。

(待ち伏せか、小癪な――あぁ!?)

 突如、先行する小隊に猛烈な突風が吹き荒れ、その猛威の中心にいた五人の動きを完全に束縛する。
 それが砂隠れの風遁・カマイタチの術であると彼が認識した瞬間、烈風の中に打ち込まれた苛烈な炎の球体が一瞬にして燃え広がり、大炎上した。

「グギャアアアアアアアアアアァアァ――……!?」

 聞くに堪えない断末魔は程無く消え失せる。今の火遁で五人の焼死体が出来上がった事に、彼は戦慄を覚えた。
 先手を打った下忍は木の頂上に立っていた。右手に刀を、左手に巨大な団扇を持ち、一本の三つ編みおさげを靡かせた写輪眼の少女が勝気に嘲笑いながら見下していた。

「この、小娘がァ――!」

 生き残りの三人がクナイや手裏剣を投げに投げたが、団扇の一閃によって生じた烈風が全てを薙ぎ払い、それどころか燃え盛っていた猛火を三人に誘導する。

(や、やべぇ。どう見ても下忍の領分じゃねぇぞ!?)

 一人逃げ遅れて熱風に全身をこんがり焼かれて殉職し、それでも残りの二人は肉体改造して持ち得た音隠れ特有の術で対抗しようとしたが、一人は黒い泥で圧殺され、もう一人は辻斬りにあって首を斬り落とされた。

(うわ何あれ。この世界の十二歳ぐらいの少年少女って化け物しかいねぇのかよ!? 幸いオレは見つかってないようだから、さっさとトンズラしよ――!?)

 音を立てずに彼が離脱しようとした瞬間、背後からの襲撃に反応出来ずに何者かの掌底を喰らい、地に墜落した。

「ぐがっ!?」

 この程度なら支障無く逃げられる。音隠れの忍は逃走用の土遁の術で身を隠そうとした時、口から血を吐いて地に這い蹲った。

(な、チャクラが練れねぇだと……!?)

 そして彼が最期に見た光景は、上から飛び降りて掌底を打ち込もうとする白眼の少年の姿だった。道理で、完璧に不意討ちされる訳だと絶望した。
 心臓に柔拳が打ち込まれ、男の意識が途絶える刹那――最後に読んだNARUTO十二巻からどれだけ話が進んだかな、と夢心地に考えたのだった。




「……案外、呆気無く片付いたものだな」

 焼き爛れた肉の臭いに眉を顰めながら、ユウナは周囲を白眼で警戒しながら三人の下に戻って来た。

「先制で五人葬ったしね。まともにやって、実力を発揮されていたら厄介だったよ」

 実力を出させずに勝つのが理想とは今の戦闘そのものを評した名言である。
 それにしても風遁に煽られた火遁があそこまで強力になるとは思ってなかったと、ユウナは先程の突っ込みを心の中で前言撤回した。

「反撃されたら即死だけど、攻撃される前に先制攻撃で片付けたって感じだねー」

 RPG風に話しながら、ナギは逆も在り得たらまずいなと心配する。
 しかし、ユウナの白眼が常時発動している中、九班プラス自分一人の小隊に不意討ちするなど不可能に等しいだろう。
 ナギが心配したり安堵したりと百面相していた時、自前の兵糧丸を口に含んでいたルイは里の外の方角から何かを感じ取った。

「! ユウナ、向こうの方角見て」

 この悪寒に等しき勘は今まで外れた試しが無いと、ルイは内心毒付いた。

「敵か? ――っ、何で此処に……!?」
「どうした! 何が来てるんだ!?」

 いつにないユウナの鬼気迫る表情に、ヤクモは焦りを抱く。
 それに伴って、三人の緊張感が否応無しに高まる。やはり楽には終わってくれないか、とルイは一人残念がった。

「大蛇丸のアレだっ! 呪印の化け物が四体、物凄い速度でこっちに向かって来てる!」





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