――うちはサスケ。虐殺されたうちは一族の生き残りであり、あのうちはイタチの弟である。数年前の、成す術無く敗れた生涯最高の屈辱に歯軋りしながら大蛇丸は思考の海に沈む。
木ノ葉に潜伏させた〝草〟の情報からは彼こそはうちはの全てを引き継いだ天才児であり、もう一人の生き残りなど血の薄い出来損ないに過ぎないとされる。
如何に血継限界を持つ最優の一族と言えども落ちこぼれは必ず排出される。ましてやあの少女の家系は数代に渡って写輪眼を開眼させていない。全くもって存在価値が無い。母体としても余り期待出来ないだろう。
「……だからこそ腑に落ちないのよねぇ。お前の報告でなければ見向きもしなかったわ――」
自身の右腕たる薬師カブトだけは違った評価を下している。
もう一人の生き残り、うちはルイは落ちこぼれの才能無し、という趣旨の報告は同じだが、最後に〝能有る鷹の如く爪を隠している〟と簡素に記されている。
それが真実であるならば、周囲の目を悉く欺き、あのカブトの鑑識眼をもってしても計り知れぬ少女となる。
「うちはルイ――ああ、六年前のあの少女か」
うちは虐殺で忘却の彼方に葬り去られたあの事件、最有力の容疑者に当時六歳の彼女だった事を大蛇丸は思い出す。
「――何方が私の器に相応しいか、次の中忍試験が愉しみだわぁ。この際、両方攫って子種を宿そうかしら」
そうすればうちはの血族を永劫に掌中に納める事が出来る。
その言い表せぬほど素晴らしき想像に悦楽し、大蛇丸は邪悪に哄笑する。国の情勢が一気に乱れる木ノ葉崩しなど、彼にしてみれば単なる余興に過ぎなかった――。
第二章 中忍試験開幕、大蛇の力比べ/女狐の知恵比べ
(――大蛇丸、大蛇丸大蛇丸、大蛇丸ぅ!)
別に恋焦がれてキモい変態オカマの名前を連呼している訳じゃない。むしろその逆、純粋に死ねよという怨嗟を籠めて思考を巡らせている。
ナルト達が波の国から帰ってきて二日余り。確実に迫り来る中忍試験を前に、なるべく考えないようにしていた大蛇丸対策について精を費やしていた。
中忍試験中に大蛇丸を亡き者にすれば私を取り巻く問題の半分は解決したと言っても過言じゃないが、どう考えても勝算が無い。
うちはイタチがガチで勝負して、どうして大蛇丸より強いのか、私は疑問で仕方ない。
万華鏡写輪眼の月読の持続時間は最高で七十二時間前後であるが、対象が大蛇丸の場合、精神崩壊せず耐え切られる恐れがある。三代目の呪い傷を何ヶ月も耐えているし、精神とか人間離れしている事だろう。使えば私の方が力尽きて自滅する。
ならば第二の術・天照はどうだろうか。初撃は絶対に外さないだろうが、その一発で仕留められる自信は無い。あの蛇妖怪は無駄に耐久力がありそうだ。そして二撃目以降はまず通用しないと考えて良いだろう。
出し惜しみせずに須佐能乎で永久封印すれば、いや、あれは不意を突かない限り当てれる気がしない。的が巨大で無ければ割かし無力な術だろう。
口寄せで完全体の六尾を呼び寄せて始末するか。否、木ノ葉の演習場でそんな事をすれば受験者を大量に巻き添えにしてしまうし、暁級の忍は単騎でも尾獣を仕留める反則的な手馴れ揃いだ。主人公補正が期待出来ない以上、良い結果は見込めない。
(……ああ、もう!)
思考が一方通行にぶち当たり、私は苛立って癇癪を起こしてしまう。だから考えたく無かったのだ。
原作でイタチは金縛りの術と何らかの幻術で圧勝していた気がするが、大蛇丸は幻術系に弱いのだろうか?
それで自来也の方は幻術系に鬼のように強いから奇妙な三竦みが成立しているのだろうか。思考が脇道に逸れる。
(――前提から間違っている。大蛇丸と直接交戦するような状況になった時点でゲームオーバーだ)
全くもって理不尽過ぎる敗北条件だと溜息付く。
うちはの末裔である事と薬師カブトの情報で、ほぼ間違い無く中忍試験中に呪印をプレゼントしに現れるだろう。
下手に抵抗しなければ巻物一つと呪印程度で済むが、下手に抵抗して脅威と認定されればその場で大蛇丸に攫われ兼ねない。貞操の危機である。……怖気が走る。
――つまり、二次試験で大蛇丸が私達を索敵して襲来するより疾く、天地の巻物を揃えて中央の塔に辿り着かなければならない。
だが、それを達成するには運否天賦の要素が四つも必要だ。
一つ目は開始地点のゲートの位置、大蛇丸の位置がナルト達寄りでなければならない。
二つ目は大蛇丸の優先順序、サスケを最優先に狙う事を天に祈るしかない。
三つ目は巻物の入手、運良く片割れの巻物を強奪しなければ二つの幸運が台無しになる。
四つ目は他の余分な敵に遭遇しない事、意図せず狙ってくる敵と意図して狙ってくる敵に見つからない事。
此処までの幸運を望むなど無理極まりないし、在り得ない。一つ崩れた時点で駄目になる。
私の不運を経験上から顧みて、全部裏の目になる可能性の方が高い。自分の素晴らしい運の無さに泣けてきた。
(――いっその事、中忍試験を受けないという選択肢は……)
否、駆け足で伸し上がるには今期で中忍になりたいが、リスクを顧みると一次試験辺りで落ちて置いた方が無難とさえ思える。あれ、これが最高の選択肢なのでは?
(いや、甘いか。中忍試験中でなければ好きな時に大蛇丸が訪れるだろうし。あー、やだやだ。何であんなショタ好き変態オカマ爺に狙われなければならないのかしら!)
巻の13 中忍試験が始まり、新人忍者達が顔見世するの事
縁側で一人悶々と思い悩むルイの背中を、ハナビは心配そうに眺める。
「……ルイ姉さまは何をお悩みになっているのでしょうか? まさか、恋の悩み?」
「あのルイちゃんにも恋の季節が! お相手はやっぱりサスケ君なのかな!」
「そ、そうなのかな……!」
小声で楽しげに盛り上がる本名・岩流ナギこと木ノ葉での偽名・如月ナギサに、ほんのり赤く頬を染めるヒナタ、女が三人揃えば姦しいというのは真実であるらしい。
「いやいや。ある意味一途で切実な胸が張り裂けそうになる想いだが、あれは呪詛や憎悪の類だから違うぞ」
てか日向家に上手く溶け込んでいるナギはともかく、我が妹達よ、その白眼は節穴なのか?
あんな邪悪で禍々しいオーラを撒き散らしながら思い悩むとしたら、それは恋の悩みなどではなく、邪魔者の殺害計画の段取りに相違無い。……あれ、ヤンデレ?
この時期に悩む事と言えば、中忍試験だろうが――何故だろう、思考がそれ以上進まない。記憶が不鮮明で思い出せないが、何か嫌な予感がするのだが……まあ思い出せないぐらい些細な事だから大丈夫だろう。
「あれ、ルイちゃん振り向いて――何故か私見ている気がするけどってハナビちゃんにヒナタちゃん何処へ!?」
「もう逃げたよ。まあ諦めとけ」
ルイは先程と一変し、素敵な悪戯を思いついたような晴れ晴れとした様子だった。
今までの経験上碌な事では無いのは明白だが、苦労以上に刺激的で楽しいので回避は諦めるとしよう。
「んー、おいしい。サスケも団子一つどう?」
「オレは甘いもんと納豆が苦手だ」
ある日の昼下がり、私は任務を終えたばかりのサスケと一緒に団子屋で一服していた。
こういうゆったりとした時間も随分久しぶりで安らいでいるが、向かい側に座るサスケはそうでもないようだ。
苛立ちの色を隠そうとしているのが誰の眼から見ても明らかである。
「サスケ、弓の弦はね、常に張り詰めていると簡単に切れちゃうよ」
空の串を一本手に取り、極限まで腕の筋肉を弛緩させて力無く振り被り、一瞬の緊張を持って投げる。
極度の弛緩から最高の緊張へと大きな揺れ幅をもって放たれたそれは易々と近場の樹木に穿ち貫き、尚且つ落ちない。
「――真価を発揮するには脱力も必要って事。最近焦れすぎよ」
お茶を飲みながらサスケと向き合う。
サスケは目を細め、やや思い詰めた表情になる。先程からお茶も手をつけていない。思った以上に重傷である。
「……外にはオレより強い奴がゴロゴロいるのに、腑抜けた任務ばかりでは、な」
「ふむふむ。そういう事なら、まずはカカシ先生超えを目先の目標にするべきよ。木ノ葉の上忍の中で一、二を争う手練れだし――」
――彼を倒せないようでは、うちはイタチを殺すなど夢のまた夢だしね、と言い含めるが、伝わるかどうかは微妙である。
「うん、最初に目指すは木ノ葉で一番の忍だね」
団子を頬張りながら自然と顔が和らぐ。ああ、美味しい。
何処ぞのスポーツ漫画にもあった流れみたいだなと思ったが、何が元ネタか思い出せない。後でヤクモやユウナに聞いてみるとしよう。
サスケは一転驚き、堅かった表情を崩す。
「……簡単に言ってくれるな」
「サスケなら出来るわ。他の誰でもない、私が保証するわ」
えっへんと小さい胸を張る。その仕草が可笑しかったのか、サスケは不意に破顔した。――久方振りにサスケの棘の無い笑顔を見た気がする。
はて、可笑しな感慨だなと疑問に思うものの、団子の美味しさの前では些細な問題である。
「中忍試験の時期ですね、他の里の忍をちらほら見ましたよ。はい、お団子の差し入れです。毒は入ってないのでご安心を」
「……その戯けた言い草は最近の流行か何かか?」
「私の常套句みたいなものです」
うちはルイは土産に団子を持って突如襲来してきた。
直属の暗部の護衛は一体何をやっているのか、ダンゾウは頭が痛くなった。まさか顔見知りになって懐柔されているのでは、と疑心を深めるが、彼の育て上げた忍は其処まで愚かでは無いだろうと思考を止める。
「それじゃ早速本題に入りますけど、近年誕生した音隠れの里ですが、事実上の里長があの三忍の大蛇丸という事は把握しています?」
余りにも自然すぎて受け流すところだったが、聞き捨てならぬ名を聞いてルイを見返す。
――大蛇丸。嘗て木ノ葉の三忍と謳われた三代目の弟子であり、禁術に手を染めて離反したS級犯罪者の名である。
ダンゾウに限って言えば、大蛇丸とある程度の繋がりがあり、彼の者が暗躍しているのは承知しているが、この少女が何処まで勘付いているのか、新たな疑問が生じる。
「……ほう。黒い噂が絶えぬ新興の里だとは思っていたが、彼奴めの弟子の名が出るとは納得出来る話よ。その情報の出所は?」
「私の優秀な〝草〟から、ですよ。それでお願いがあるんですけど――」
ルイは年不相応に艶やかな微笑みを浮かべる。それはまるで、哀れな獲物を罠に嵌めようとする女蜘蛛が如き恐ろしき貌だった――。
「幻術、変化、二階」
「……身も蓋も無いな。もう通っていいぞ。てかさっさと行きやがれ」
やぐされる下忍に変化した中忍達を尻目に、ルイ達三人は中忍試験の第一関門を意気揚々と突破する。
「もう中忍試験かぁ。緊張するねー」
「最初のは寝ているだけで合格するから気楽だろ。……ん、ユウナ、どうした?」
ルイの右肩に子犬バージョンの六尾渾沌が抱きついている事以外は普段と変わりなく、三人は雑談しながら渡り廊下を歩いていた。目の前に、白眼を持つ同年代の下忍を目視するまでは。
「――久方振りですね。よもやその不出来な面を今一度見る羽目になるとは思わなんだ。精神的に未熟な君にはまだ中忍試験は早いのではないかい?」
「うちはの倅に劣る分際で随分な言い様ですね、宗家。貴方こそ中忍試験に挑むには実力的に早過ぎるのでは? 今の内に棄権した方が身の為ですよ」
ユウナと白眼持ちの下忍、日向ネジは互いに眼の周囲の毛細血管を浮かび上がらせ、険悪の域を疾うに通り越して、猛烈な殺意を存分にぶつけ合った。
ルイは驚きを隠せず両者を見比べるように見合い、ヤクモはまたかと呆れた表情で溜息を付いた。
「分家になると日向の尊い血も薄まるのかな。その白眼は節穴かい?」
「宗家になると日向の愚かな血も良く馴染むものですね。貴方の敗北する姿がこの白眼に見えますよ」
ユウナとネジは一歩も引かず、殺人的な憎悪を籠めて睨み合いながら対峙する。
構えこそしてないものの、戦場を連想させるような殺伐とした空気が展開される。
一体どうやったら此処まで仲が破滅的になるのか、事情を知らぬ余人からは想像だに出来ないだろう。
「……うわぁ、物凄く険悪だね。普段のユウナからは考えられないわ」
「ああ、見るの初めてか。この二人は遭う度にこれだぜ?」
居心地悪そうにルイや小声でヤクモに話し掛け、ヤクモは半目になりながらやる気無く受け答える。
こうなれば普段は人一倍冷静な二人は、白眼を持ちながら周囲が見えぬほど短絡的になる。触らぬ神に祟り無しである。
「試験が楽しみですよ。精々背後には注意して下さいね」
「ご心配無く、我が白眼に死角は御座いません。不埒な輩が襲来しても容赦無く仕留めて見せましょうぞ」
互いに最後まで白眼の発動を止めず、一片の油断も隙も無く別れる。
願わくは二人が直接対決する機会が訪れぬよう祈るばかりだが、そうなったらそうなったで面白くはあると思うルイとヤクモの二人だった。
「今年の新人下忍十二名、全員受験とはな。めんどくせー」
「お前、めんどくさがってばかりだってばよ!」
他の里の忍で混雑する中忍試験場にて、即座に突っかかるナルトに内心溜息を吐きながらシカマルは気怠げに目を細めた。
――第七班、うずまきナルト、うちはサスケ、春野サクラ。
アカデミーの主席と最下位が一緒になった両極端の班構成である。
「サスケくーん、久しぶりー。逢いたかったわぁ~」
「サスケ君から離れぇー! このいのぶた!」
いのがサスケの背後から抱きかかり、反射的にサクラが怒鳴る。アカデミーで見慣れた光景に良くも飽きずにやるものだと、シカマルは更にやる気を下げる。
ナルトとサクラはともかく、同期の中で際立って優秀なサスケだけは油断出来ないが、チーム戦なら何とかなるだろうとシカマルは考える。個々の戦闘力だけが忍の真価では無い。
「へっ、テメェ等も相変わらずだな。随分と余裕じゃねぇか、えぇサスケ君よぉ」
「フン……お前こそ偉く余裕だな、キバ」
忍犬の赤丸を頭に乗っけて、キバは挑発するように挑戦的な笑みをにたにたと浮かべる。だが、未だにいのが背中に纏わりついているのでサスケの方も格好が付いていない。
「もうアカデミーの頃と同じじゃねぇんだよ。この試験でそこんところを証明してやるぜ!」
「うっせぇーてばよ! サスケならともかくオレがお前らなんかに負けるかっ!」
此奴等は何故こんなに熱くなれるのか、シカマルは面倒過ぎて理解すらしたくなかった。
――第八班、犬塚キバ、日向ヒナタ、油女シノ。
索敵・探査に特化した班構成でありながら個々の戦闘力も高く、チーム対抗戦なら当たりたくない部類の班である。
「ご……ごめん、ナルト君。そんなつもりでキバ君も言ったんじゃ……」
か細い声でヒナタは囀る。気弱な彼女にしては頑張った方だろう。
猪突猛進のキバに若干臆病のヒナタなど付け入る隙はあるが、冷静沈着で底知れぬシノの御陰で容易には崩せないだろう。
「元気だなぁ、お前ら。少しは緊張とかしようぜ」
「お前は相変わらず侍みたいな格好だってば! 全然忍者らしくないってばよ、ヤクモ」
アカデミー時代と変わらず侍じみた出で立ちでヤクモは飄々とナルトの言を受け流す。
――第九班、うちはルイ、日向ユウナ、黒羽ヤクモ。
七班と同じく、二位と最下位一歩手前と中間が一緒になった両極端な班構成だが、この班が一番厄介だとシカマルは常々思う。
「忍者らしく無いか。同じ班員としてはどう思う? サスケ」
「フン、聞くまでも無いだろ。ユウナ」
ナルトを見ながらユウナはわざとらしくサスケに尋ね、サスケも当然の如く切って捨てる。
話題の種にされたナルトは疑問符を浮かべ、ユウナとサスケはそっちのけで鋭い視線を交差させ、熾烈な火花を散らせている。
アカデミーの頃から互いに敵視していたな、とシカマルはその様子を観察する。
「皆、白熱しているねー。私は緊張しぱなしだよ」
その真の原因たるルイは赤丸ぐらいの大きさの黒犬を右肩に、何食わぬ顔で笑ってたりする。
サクラといのの激しい視線が先程から突き刺さっているが、当人に動じる様子は欠片も見当たらない。
剣術がずば抜けたヤクモに、同期の中で唯一人、サスケに匹敵した柔拳の使い手のユウナ、それを率いるは殆どの分野で平均以下の成績しか残せていないルイであるが、彼女の悪魔めいた頭脳はシカマルにしても理解し難いものだった。
「ルイちゃん、オレなんてワクワクしてるってばよ!」
「テメェは身の程知らずなだけだろ、ウスラトンカチ」
「なんだとぉ!?」
ナルトとサスケの内輪揉めに発展し、横でルイは苦笑する。
うちはルイが自身の能力を隠して猫を被り、無力な小娘を振舞っているのは、アカデミーの頃から薄々感じていた。
何故そんな面倒な生き方をするのか、楽な生き方をモットーとするシカマルには理解出来なかったが、そんな少女の懐を探るべく将棋で勝負する機会があった。
途中まで良い勝負になり、戦略を練る際に熟考するシカマルの癖まで引っ張り出されたが、結果はその直後に惨敗。在ろう事か二歩の反則負けだった。
腑に落ちず、何度か挑んだが、結局勝てなかった。盤上の中で千の戦略を練るシカマルは、ルイが打ち出す盤上の外からの一手に敗れたのだった。
――つまりはイカサマだった。あの澄ました少女は何ら躊躇無く迷い無く、勝利の為にあらゆる手段を使う。禁じ手など端から存在しないのだ。
将棋の中ならばイカサマを見破れば勝利であるが、現実の戦闘ではどうだろうか。手段に貴賤はあれども制限する額縁は何処にも無い。だからこそ一番恐ろしい。
「……はぁ、何でこいつらこんなに元気なのかねぇ」
――第十班、奈良シカマル、山中いの、秋道チョウジ。
戦闘力に関してはどの班より劣るが、潜入と諜報活動に関してはどの班より優れている。だが、果たして中忍試験では通用するのか、シカマルは不安を抱かざるを得なかった。