今日はハナビちんの誕生日。どうやら俺、若干早く帰ってきてた模様。さーて、今年は何をあげようかしら。 in Wonder O/U side:Uなんだか今年は豪勢だ。うちはに日向分家は二年前に来ていたけれど、今回は犬塚、油女が。猪鹿蝶は来てないみたいだけど。ふむん。血継限界の展示場みたいだ。そんなことを考えつつ、せっせと料理を運ぶ俺。くそう。俺も宴会に参加したい。児童虐待だぞこれ。「薙乃さん」「なんですか主どの」「お腹が空きました」「我慢してください」ため息を吐きつつ手を止めない薙乃さん。家事が得意だなぁ。ちなみに彼女は、いつもの俺と似た白ジャケットにスカートではなく、着物です。俺もだけど。いつから俺たちはお手伝いになったんだ。A.弟子入りしてから。くそう。涙を飲みつつウェイター。そんなことを繰り返していると、師匠に呼ばれた。だだっ広い居間は、宴会場と化し、アルコールの臭いが充満している。いいなぁ。俺も呑みたい。見つかったら薙乃さんに蹴り飛ばされ、師匠におしおきされますが。くそうくそう。なんだってこんな目に遭わないとなんだ。ハナビちんの誕生日なのは別にいいさ。俺だって祝福する。だけれども、何故このような仕打ちを受けねばならぬのだ。上座に座っている師匠の隣には、おめかししたヒナタとハナビちん。ハナビちんは猫を被っているみたいで、俺を見ても反応しなかった。まあ、ぴくり、と動きはしたけど。「なんですか師匠」「こいつが、内弟子の玄之介です。……挨拶をしろ」「初めまして、名家の皆様。如月玄之介と申します」正座し、頭を下げる。けれども、そんなかしこまった様子に犬塚のマダムは苦笑した。「歳に似付かない振る舞い、というのは本当らしいね」「はあ……」「それに、君だって名家だろう? 如月。今は忘れた者も多いが、歴史は君の方が深い」……そうなの?うーむ。しかし、今日だってパパンとママンは来てないし、それほど偉いってわけでもないと思うんだけど。「確か君は九歳だったね? ウチの倅の一つ下か。おい、キバ――」と、マダムは声を掛けるも、その先には誰もいません。「……あの馬鹿息子!」「玄之介。探して来い」「分かりました」師匠の命令に二つ返事。こんな場所で逆らう勇気は俺にはない。宴会場を後にすると、庭に出る。さて、キバの行きそうな場所ってどこだろう。屋敷の中は……興味なさそうだなアイツ。よし、思考を子供に合わせるんだ。子供が興味を持ちそうなのは不思議スポット。そんな場所、日向宗家に――あったわ。庭の先にある森。アホみたいに広い上に、私有地だから普段は入れない。多分、そこだろうなぁ。一旦部屋に戻って普段着に着替えると、探索開始。ふーむ。どこから探そう。薙乃に協力頼んで、物音でも探してもらおうか。まあいい。それは最後の手段ってことで。取り敢えずたたら爺さんの工房へ行こうか。玩具感覚で触れられたらヤバイ物が多いし――って、なんかドア開いてるんですけど。うお、ガチャガチャと音が。まずいぜ。「何をしている小僧――!」「う、うわ?!」瞬身で小屋に飛び込み、怒鳴る。そうしたらキバくん、手に持っていた変態忍具を取り落としました。あ……見覚えある。あれ、昨日ようやく骨組みが出来たと自慢された一品だわ。んで、その自慢の一品は床に落ちて粉々。「……何やってんの。たたら爺さん泣くぞ」「お前誰だよ!」「さあて、誰でしょ。ほら、帰るよ。お母さんが探してるし」言いつつ、しゃがみ込んでパーツを拾い上げる。あー、砕けてるのもあるな。作り直しだわこれ。「……壊れた」「お、俺のせいじゃないぞ! お前が悪いんだからな!!」赤丸、と彼が叫ぶと、たたら爺さんのソファーの上で丸くなっていた子犬が跳ね起きる。「言いつけてやる!」「なんですと?!」悪いのは貴様だろうが小僧!「待てや!」変態忍具の残骸を作業台に乗せ、キバの後を追う。追い立てられているキバくんは楽しそうに逃げております。あんにゃろう。忍法・瞬身の術。そして先回り。「とても遅いですねぇ」「な?!」「ふはははは、さあ、懺悔の時間だ犬塚キバ。たたら爺さんは怖いぞ。俺も一度変態忍具壊して、酷い目に遭ったからな!」苦無射出機の的にされたぜ、あの時は。簀巻きの状態でな!しかし犬塚キバくんは自分の非を認めないようです。「赤丸!」わん、と応えて俺に飛びかかる子犬。「ほう、このジェントリーに刃向かう気ですかな?」「ジェントリー……それがお前の名前か!」いや、違うけど。原作通りアホの子だコイツ。赤丸を避けつつ指を鳴らしてキバへ接近。どうやって捕らえようなかな。変態忍具ホルダーの手甲は置いて来ちゃったし。まあいいや。ゲンコツ一発くらわせてから引きずって行くか。俺も新製品の変態忍具壊されて微妙にブルーな気分だし。悔しがって血圧上がった、たたら爺さん慰めるのは俺の役目なんだぞこの野郎。放っておくと脳梗塞で死にそうだぜ。さて、一発お見舞い――と思ったら、俺の拳を虫の大群が受け止めた。これは……。「……友達は助けるものだ」「シノ!」おお、援軍ですかキバくん。って言うかシノくん。君も脱走してたんかい。「シノが来たからにはお前なんて目じゃないぜジェントリー!」いや、だから違うって。そしてキバくんに急かされるように、シノくんは虫を放つ。うーむ。虫か。よし。火遁・炎弾。こうかは ばつぐんだ!「……虫たちが」燃え落ちる羽虫の大群を見て呟くシノくん。なんかすげえ悪いことした気分なんですけど。結局その後、キバとシノくんは大人しく戻ってくれた。何故か遊び相手として俺も宴会に参加させられたが。「なあ、ジェントリー」「俺は玄之介だっつーの!」「……そうなのか?」あ、なんか殺気を感じる。ギギギ、と首を動かせば、薙乃とハナビちんがこっちを睨んでました。すみません。一人で遊んで。そしてシノくんですが。「……虫が」「……ごめんなさい」「……いや、いい。無謀にも戦いを挑んだ俺が悪かった」「……本当にごめんなさい」うおー、やりずれぇ!「……気にしないで欲しい、玄之介」「ああうん。ところでシノくんは森で何をしていたの?」「……虫を探してた。閉鎖された食物連鎖の中なら、貴重な虫がいるような気がして」そうですか。キバと同じく遊び盛りなのかなぁやっぱ。この子、虫の採集が趣味だったし。「なあジェントリー」「だから違うってば。二度ネタ禁止な?」「分かったぜ」へへ、と笑うキバ。ふむ、お子様らしいお子様ってのも、久々に見た気がする。ハナビちん以外に、って意味ね。あの子はキングオブお子様だから。いや、クイーンオブお子様? 可愛いからいいけど。宴会が終わるまで、俺はキバとシノくんの相手をさせられました。で、誕生会が終わった後、ハナビちんに怒られたり。なんで私と遊んでくれなかったの、と。いや、猫被っていたでしょうが君は。誕生日プレゼントでぬいぐるみあげたら機嫌を直してくれましたが。