姉さんがいなくなって2年が経ちました。
僕はその間、医療忍術の修行に励みました。
医療忍術はとても細かなチャクラコントロールが必要で、すごく難しいですが、
やりがいがあってとても楽しいです。
その修行の中で、
失敗するたびに姉さんを思い出すんです。
姉さんは僕の中でずっと生きていました。
独りなんかじゃなかったです。
だいぶ使えるようになった医療忍術は森の動物たちの治療にとても役立っています。
忍術以外にも薬草とか、いろいろ勉強するために時々変化しては里で本を読んでいます。
里では新しい噂が流れていました。
「ナルト」としてはますます里に近づけそうにありません・・・。
そうそう、医療忍術に興味を持ったのは「ツナデ様」のおかげです。
腕の毒を抜いてもらった時のあの温かい手。
本を読んで分かったことは、
ツナデ様に手刀を打ち込んだ時、神経系にチャクラを流し込んだのですが、
それは乱身衝と言う医療忍術だったんです。
時々僕も姉さんにやられて、身体を上手く動かすためのコツを掴むのに一苦労しました。
それをツナデ様は一瞬で・・・よく動けましたよね。
また会えるでしょうか?
もし、もう一度会えたら
精一杯のごめんなさいと
たくさんのありがとうを
NARUTO ~大切なこと~ 第9話
ナルトは姉が亡くなっても、一人でまたいつものように変化をして里へと行き、図書館の本は読みつくしたため、今はある本屋に通っている。医療の本はとても高くて買うことなんかできないが、その本屋のおばさんと仲良くなったナルトは立ち読みの許可をもらったのだった。
「ミコトちゃん。」
これは去年、ナルトが4歳(見た目14歳)の時のある日のこと、いつものように医療の本を立ち読みしているとそこの本屋のおばさんから声をかけられた。
「はい?」
おばさんとは時々談笑するが、おばさんは今までに見たことも無い真剣な顔でこちらをじっと見ていた。
「最近ね、また「ナルト」の噂が流れてるのよぉ。」
「はぁ。」
噂好きのおばさんはよくいろいろな話を聞かせてくれる。
「それが今までは姿かたちについては何にもわかってなかったんだけどね、新しい噂によると、なんでも金髪青目の幼子らしいのよ。噂が流れはじめた頃は3歳くらいって言われていたんだけど、その噂はもう1年も前らしいから今じゃぁそいつも4歳になってるのかねぇ。」
怖い怖い。と腕をさするおばさんが目に入る。
ナルトは内心冷やりとした。それに気づかずおばさんは続ける。
「ミコトちゃんも、綺麗な金髪に青目だけど、歳が全然違うからね!でも、もし見た目だけでいじめられたりしたら私に言いなよ。」
そんなやつ私がはっ倒してやるよ。ミコトちゃんみたいに良い子が九尾なわけあるもんかい。とおばさんは豪快に笑う。
「・・・ありがとうございます。」
ミコトことナルトはにこりと微笑んでおばさんにお礼を言う。
――チャクラの質を変えたほうが良いかもしれないです・・・。
噂が去年ということはきっとあの忍びを倒した時のころからだろう。
その後ツナデ様には自分のチャクラで攻撃したのでチャクラの質を知られている。
いくら変化をしていても忍びにはチャクラの質でわかってしまうかもしれない。
その日からナルトはミコトに変化した時、チャクラの質も変える修行を始めた。
ミコトのときのチャクラ質は服の下にいつもつけている首飾りのチャクラ質、四代目のチャクラ質に出来る限り近づけようと努力した結果、5歳になる頃には全くといってよいほど四代目と同じチャクラ質に変えることが可能になった。
ナルトのチャクラ質と四代目のチャクラ質、どちらのチャクラ質でも忍術が使えるように今までの倍は修行に励んだ。
その甲斐あって今ではどちらのチャクラの質でも全く同じ術を使えるようになっていた。
そうして今に至る。
真夜中の森の中、ボンッと煙が上がった。
その煙の中からは15歳ほどの金髪青目の少年が姿を表す。
そう、ナルト(ミコト)だ。
空のような青い目と綺麗な腰まである金髪を一つに束ねている姿は変化ができるようになった頃と何も変わっていないが、顔は精悍さが増している。
変わった点と言えばチャクラの質だ。変化と同時にチャクラ質を首飾りに残っているチャクラ質と同じものに変える。
――・・・姉さんごめんなさい!!僕は犯罪者になります・・・!
今夜ナルトは罪を犯そうとしていた。
その罪の名は“住居侵入罪”だ。
狙うは火影邸。
なぜそのようなことに思い至ったかというと、医療忍術をもっと極めたいという純粋な思いからだった。
忍びが集う里の中心地「火影邸」。ナルトはもう里にある本という本はほとんど読みつくし、それでも足りないと思う知識欲から、そこに行けばきっと読んだことも無いような本を読めるだろうと考えたのだ。
――もっともっといっぱい勉強して、
自分の手で大切なものを守れるようになりたいんです!
ナルトは目にも留まらぬ速さで里の中心地へと闇の中を疾走する。
そして、火影邸の中へ。
意外なほどにすんなりと中へ入れてしまったことにナルトは驚いた。
――こんな状態で里は大丈夫でしょうか・・・?
確かに火影邸には何人もの忍びの気配がしている。だからナルトは見つからないようなルートを通ってきているのは確かだ。しかし、気配をよむことに長けているはずの忍びがナルトの侵入にまったく気づいたような様子も見せない。
実はナルトは自分の気配が全く無く、いかに自分が空気同様の存在になっているのかということを知らなかった。
ナルトの中では何に対しても姉が全て一番であり、自分は姉には勝てないと思い込んでいるのだ。(余談だが、姉の次は綱手が位置している。)
火影邸の暗い廊下を小さな青い炎―狐火―で照らしながらどんどん奥へと進んでいく。
――こ、ここは!!
ナルトはある扉の前で足を止めた。
その扉には“禁”の文字がでかでかと書かれているのだ。
そう、この部屋にはナルトがずっと知りたがっていた禁術の巻物が保管されているのだ。
――・・・分かりやすすぎやしませんか・・・?
そんなことを思いながらも、ゴクリと咽を鳴らす。
そしてナルトの手がまるで引き寄せられるかのように扉へと触れる。
カチッ
ナルトの手が触れた瞬間扉から小さな音が鳴った。
「?」
どうやら鍵が開いた音らしい。
ナルトはそのまま扉を開け中へと入り込み、また扉を閉じた。
部屋の中を見ようと狐火を少し大きくすると
――!!!!
そこには大量の巻物が棚の中に並べてあったのだ。
おもむろに一番近くにあった巻物を手に取り広げてみる。
――多重影分身の術・・・やはり禁術の巻物です!!!!
ナルトは宝を見つけたかのように目をキラキラとさせ、その巻物を読み始めた。
そうして読みふけっているといつの間にか朝が近いことに気づき、また忍びに見つからずにナルトは森へと帰っていった。
初めて罪を犯した日から約1ヶ月は経った。
あの日からナルトは夜になるたびに毎日不法侵入を繰り返している。
例のごとく今日もミコトとなり火影邸へと忍び込む。
しかし、今日はいつもと違ったことがあった。
あとがき
がんばって早く原作に入りたいと思います。