――私はただシズネから逃げるのにたまたまここを通りかかったんだが・・・
いったいこの子に何があったんだい。
目の前にはくの一の腕を引っ張って歩いている幼子。
――それにしても、この子の髪といい、目といい・・・この色を見ていると思い出すねぇ。
なぁ、四代目。
NARUTO ~大切なこと~ 第8話
木の葉の里と反対方向である森の奥へとひたすら歩く。
幼子が必死にくの一の手を取って引っ張っている。
ずっと同じような景色の森の中をしばらく歩いたところでくの一は口を開いた。
「お前、こんなところに姉さんなんて・・・?」
最後まで言い終わる前に幼子はパッとくの一の手を放し、目の前の少し開けたところへとトコトコと走っていった。
くの一は幼子を目で追っていると、毛で覆われた塊に気づき息を呑んだ。
――でかい狐・・・。
幼子が狐の首の部分にしがみつき、今にも泣きそうな顔をくの一に向けている。
「姉さん・・・助かりますか・・・?」
消え入りそうな涙声でポツリと呟く。
それを聞いたくの一はハッとして、すぐにその狐のそばに寄る。
――あぁ・・・、もう死んでいる・・・。
すでに狐は冷たくなっていた。
じっとしているくの一を見て幼子もこの狐が助からないことに気づいたのだろう。
我慢していた涙がこぼれた。
「お墓を作ろう。」
しんと静まり返っていた空気をくの一が揺らした。
「お墓・・・?」
幼子は首を傾げくの一を見上げた。
「そう。お墓。この狐、お前の姉ちゃんなんだろう?何かい?お前姉ちゃんをこのままにしておく気かい?」
幼子は目を見開いてぶんぶんと首を横に振った。
くの一はそんな幼子の様子を見て苦笑する。
幼子は花好きだった姉のために、花がたくさん咲いているところに埋め、上に木で作った十字架を立てた。その十字架には作った花冠をかける。
できたお墓の前で二人は目を瞑り両手を合わせた。
そしておもむろに幼子は口を開いた。
「あ・・の・・・ありが「綱手様ーーーー!!!!」っ!!?」
幼子がお礼を言おうとした瞬間、先ほどから気づいてはいたが、自分たち二人に近づいていた一人と一匹の気配から突然声が上がったのだ。
「うぉっ!!!!こうしちゃいられない!!坊主、元気でな!!」
綱手と呼ばれたくの一は声のする方の反対側へと消えていった。
幼子はポツンとその場に一人になる。
「・・・・・・・・・お礼言いそびれてしまいました。」
――ツナデ様・・・。
綱手が消えていったほうを見て、先ほどの綱手の慌て様を思い出し、幼子は目を細めクスリと微笑む。
そのまま目の前のお墓へと目を向ける。
――・・・姉さん。僕は独りになってしまいました・・・。
僕はずっと姉さんのそばにいたかったのに。
また幼子の目からホロリホロリと涙が落ちる。
と、そこへ湿った温かいものが幼子の頬に触れた。
幼子は驚き、目を向けると周りには狐やウサギ、熊や鳥などが集まっていた。
――・・・あぁなんだ。僕はいつも独りになったことなんか無かったんですね。
幼子は頬を舐めてきた狐の頭を優しく撫でる。
――負けてはダメ・・・やっと思い出しました。
“心”が負けてはいけなかったんです。・・・僕は勘違いをしてしまいました。
姉さんを殺した忍者に復讐しても、何も残らなかったです。
姉さんがもどってくるわけでもない・・・。
僕は“心”に負けてしまいました。感情に流されてしまいました。
でも、
忍びたちは、姉が狐の前に飛び出してきたと言っていた。と言うことは、姉は忍びたちを攻撃することはしなかったのだ。憎い相手を前にして、感情に流されず、その狐を守ろうとした姉。なんて強いのだろう。
姉は“心”に負けることはなかったのだ。
いつの間にか涙の止まった幼子の青い目には火が灯っている。
――でも、もう絶対に負けません!
僕の周りにはたくさんの守るものがあったんです。
大切なものはすぐそばにあったんです。
姉さん僕は今度こそ、失わないように守って見せます・・・!
幼子は立ち上がり動物たちと共に森の奥深くへと姿を消した。
それから幼子は医療忍術に興味を持ち、里へ変化をして行っては本を読み漁り、森では今まで以上に修行に励む幼子の姿が見られたと言う。
しかし、幼子は知らない。
ナルトによって殺された忍のうち1人は殺気で震える身体をクナイで切りつけ、痛みで恐怖を押さえ込み里へ逃げ帰ったことを。
そうして新しい噂が里中に広がることとなった。
―九尾の「ナルト」は3歳くらいの金髪青目の小さな子供だった― と・・・
あとがき
とても短くて申し訳ありません!
綱手様にご登場いただきました。
原作に入る前にあと何人か原作のキャラが登場する予定です。
こんな小説ですが、お時間があるときに読んでくださったら大変喜びます。