――負けないで。
音にはならなかったけれど、
姉さん。
僕にはちゃんと聞こえたよ。
何に負けてはダメなの?
さっきのあいつらですか?
そうだね。
僕は負けないよ?
あんなやつらになんか負けない。
だって姉さんが一緒に修行してくれたんだから。
あんなやつらに負けるわけない。
・・・殺してやる!!
NARUTO ~大切なこと~ 第7話
「ねぇ、お兄さんたち何しているんですか?」
忍びたちはふと声をした方へ振り返った。
そこには無邪気に微笑む金髪青目の小さな男の子が立っていた。
「お兄さんたち、忍者ですよね?こんな森の中で何をしているんですか?」
好奇心か、弾んだ声で幼子はまた尋ねる。
「坊主、迷子か?」
5人の忍びの中の1人が少し警戒をしながら幼子に尋ねる。
幼子に声をかけられるまで、そこに人がいたことに気づけなかった。
たとえ中忍といえども忍び、こんな幼子の気配を探れないわけがないのだ。
「いえ、僕は薬草を採りに来たんです。」
幼子はニコニコと微笑んでいる。
人懐っこい笑みに忍びたちは警戒を解いた。
「俺たちはな、この森にいる狐を狩ってたんだよ。」
「九尾の襲来があったのは坊主も知ってんだろ?」
依然として微笑んでいる幼子はコクリと頷く。
「その九尾はまだ生きているって噂が里中まだずっと広まっててよ、だったら俺たちが退治してやろうってわけなんだよ。」
「今日も狐を狩ろうとして追い込んでたら突然大きな狐が飛び出てきてよ、そいつに俺が猛毒の吹き矢を当ててやったぜ。」
あの毒は妖狐でもイチコロよ。きっとあいつが九尾だったんだぜ!
ゲラゲラと下品に笑う忍びたち。
しかし、その笑いは突然止まった。
一瞬にして忍びたちの周りに殺気が充満したのだ。
忍びたちは体中から汗が吹き出るような感覚に襲われ、立っているのも困難に近い状態だ。
その殺気を放っているのは、
そう、金髪の幼子だ。
さっきまで青だと思われた目は真紅へとかわっている。幼子を包むチャクラは九尾そのものだ。
「僕の名前ね。「ナルト」って言うんですよ。」
妖艶に微笑んだ幼子に忍たちは声の出ない口をパクパクとさせている。
「バイバイ。お兄さん。」
その言葉とともにナルトは狐皇炎を発動させる。
姉から習った九尾最高の技は九尾のチャクラを使用してもナルトには一回しか使えない。
ナルトの周りに黒いメラメラとした炎が集まりだす。それを見た忍びたちの1人が何とか手を吹き矢へとのばし、ナルトへと構えた。
その瞬間ナルトはさっと右腕を前へ突き出す。それと同時に黒い炎が忍びたちを一瞬で飲み込んでいった。
忍びたちは悲鳴を上げることなく何も残さず消えていった。
――痛っっ!!!!
突然痛みを感じたナルトの右腕には針のようなものが刺さっていた。
その針の部分からじわじわと熱を持ち始め、見た目でも肌の色が変色していく様がわかる。
しかし、死の恐怖は無い。
――姉さんがいなかったら僕は一人です・・・。
そばにあった木の幹の下に膝を抱えて座り込み涙を流す。
――姉さん・・・。辛い時は笑いなさいって、言っていましたよね。姉さん・・・僕、笑えないよ・・・。
腕の痛みにじっと堪え静かに泣いていると、ナルトの目の前に人が飛び出してきた。
先ほどの忍びたちよりもかなり気配が薄い。そのことが示すのは、先ほどの忍びたちよりも上の忍者と言うことだ。
その忍びは、額に小さな青い菱形の模様があり、長く色の薄い金髪をゆるく二つに束ね、半被のような上着を着ている妙齢の女性だ。
「おい、お前こんなところで何をしてるんだい?」
どこか偉そうな口調で話しかけてくるくの一。
しかし、声をかけた幼子は無言のままだ。
――痛みなんかで人間の気配に気づけなかったなんて!!
ナルトは無言のまま立ち上がる。そしてギラリと目の前のくの一を睨みつけ、次第に殺気を放ち始めた。
――殺してやる!!殺してやるんだ!!
忍びというものに対しての怒りが再び燃え上がった。
狐皇炎を使った所為で、九尾のチャクラはもう底を突いたが、ナルト自体のチャクラは有り余っている。
「お前怪我して・・・?」
くの一が声を出すと同時に幼子は目の前から消えた。
――いったいどこに!!?
くの一は一瞬の出来事に少し混乱する。
幼子には気配が全く感じられなかったが、さっきまで確かに目に映っていた。
だから、声をかけてみたのだが・・・。
すると突然首の項に激痛が走った。
――っっっっ!!!!
その衝撃に耐えられず、受身も取れずに前へと倒れた。
――いったいなんだってんだい!!!!
なんとか意識は保っているものの、すぐに身体の異変に気がついた。
――右腕を動かそうとすると左足が動く・・・?乱身衝!?まさかあんな幼子が!!?
なんとかして首を横に向けると、幼子の足が目に入った。
――これはやばいね・・・。でもどこを動かせばいいのかもうコツは掴んだよ!!
さっと両腕を立て身体を起こす。膝立ちの状態になるとすぐそばにいた幼子を見下ろす形になったが、その幼子の手にしているものに驚き目を見開く。
――螺旋丸!!!?やばいっ・・・!!
幼子の左手にはチャクラを凝縮させた塊が乗っていたのだ。
パァンッッ・・・!!!!
乾いた音が森に木霊した。
その音の発生源の場所には膝立ちのまま右腕を斜め上へ振り上げた状態のくの一と
左頬が少し赤くなっている幼子がいた。
そう、くの一が幼子の頬を叩いたのだ。
そのことによって幼子の左手の上にあった螺旋丸は霧散していた。
「姉さん・・・?」
幼子の震えた声がする。
すると幼子の青い目からボロボロと滝のように涙がこぼれ始め、目の前のくの一に泣きついた。
「姉さん!!姉さん姉さん姉さん!!」
仕舞にはうわぁぁぁぁああ!!!!と泣き声を上げる幼子。
――何があったんだろうね・・・。
くの一は幼子が落ち着くまでそっとしておいた。
「ヒック・・・ヒッ・・・・姉さん・・・。」
「私はお前の姉さんなんかじゃないよ。」
「っっ!!」
幼子の泣き声がおさまってきたとき、くの一はぶっきらぼうに声をかけた。
幼子が泣き止む頃には乱身衝もとけ、上手く動けるようになった。
「何があったか知らないけど、お前右腕に毒が回ってるよ。」
ちょっとじっとしてな、と言って幼子の紫色に変色していた右腕に手のひらを当てる。その手のひらはチャクラに包まれ毒を吸い上げるように抜いていく。
――温かい・・・。
そのくの一の手はとても温かかった。
いつの間にか、くの一の手の上には毒と思われる球体のものが浮いている。
「こりゃぁ、猛毒だね。お前運が良かったね!!あたしゃ医療忍術のスペシャリストだからね。こんな毒抜き取れるのは私くらいよ。」
ふふんっとくの一が堂々と胸を張って言う。
「医療・・・忍術・・・。」
幼子が呟いた。
そうよん。と音符がつきそうな返事をするくの一の服に幼子は縋り付いた。
「あの・・・あの!!お願いがあるんです!!姉さんを、姉さんを助けてください!!」
幼子は青い目をこれ以上無いというくらい開いて、くの一を見つめた。
あとがき
やっと少しずつ話が進み始めました!
原作沿いになるのはまだもう少しかかります・・・。
できるかぎり早めに更新して原作沿いに入りたいと思います。