*誤字を発見して修正させていただきました。
本当に申し訳ありません!
投稿するときはもっと気をつけて投稿させていただきます。
俺には2人の兄ちゃんがいるんだ、コレ!
2人ともすっごくかっこよくて、俺の憧れなんだ。
俺は火影になる男だ!!
まだ兄ちゃんたちより弱いけど・・・
俺が絶対兄ちゃんたちを守るんだ!
NARUTO ~大切なこと~ 番外編 『俺が絶対守るんだ』
火影邸のある廊下を走る小さな足音。その足音を慌てて追いかけるのは黒い丸サングラスをかけた特別上忍だ。
その小さな足音は、ある一室の前まで行くと、手裏剣を片手に持ち、静かにその部屋の扉を開けて、
「じじぃ!! 勝負だぁ、コレ!!!」
勢いよく飛び込んだ。その部屋は忍者登録室だ。
部屋に飛び込んだ小さな足音はまだ小さな少年で、その子は頭の天辺だけ開いたヘルメットのような帽子をかぶり、少年の背よりも明らかに長いマフラーを首に巻いている。
――それが俺、木の葉丸だ、コレ!!
今日、じじぃはこの時間に忍者登録室にいるという情報を手に入れた俺は、早速じじぃに勝負を挑みに来たのだ。(この情報を手に入れるのに、じじぃの孫であることを利用・・・してないぞ! コレ!)
その部屋に飛び込むと、目に入ったのはじじぃだけではなかった。
時々火影邸で遊んでくれる兄ちゃんと同じ金髪を持ち、何故か頭にゴーグルをつけた奴がいた。俺がそいつの髪に見とれていたら、
「いってぇぇーーー!!!」
思い切りこけてしまった。
「くっそぉお、トラップか、コレ!?」
いや、きっとトラップに違いないんだ。痛む額を押さえながら立ち上がると、
「だ・・・大丈夫でございますか!? お孫様!! ちなみにどこにもトラップはありません!!」
後からついて来ていためがね教師が、俺のトラップ説を否定しやがったんだ、コレ!! それにいつもこいつは俺をお孫様、お孫様って・・・俺にはちゃんと名前があるんだ。俺はキッとめがね教師を睨み付ける。すると、めがね教師は俺の鋭い睨みに構わず、金髪に顔を向けた。と、その途端、めがね教師は今まで見たことも無いような目でそいつを見た。それはすごく冷たい目で。
金髪はその視線を気にしないで俺の前まで歩いてきて立ち止まった。そこで俺はハッと気づいた。
「フム! そうか!! 貴様が何かしたんだな、コレ!!」
めがね教師はトラップなんてないって言ったけど、こいつが何かしたに決まってるんだ。
そう言うとそいつは、
ガッ!
いきなり俺の胸倉を掴んで持ち上げてきた。その顔は無表情だけれど、目がすごく怒っているのが分かった。・・・でもこいつも俺を殴ることなんてできない。
「コラ!! ナルト!! 手を放さないか! その方は三代目火影様のお孫さんだぞ!!」
メガネ教師がそう叫んだ。こいつナルトっていうのか。
「なぐれるもんならなぐってみろ!!」
そうなんだ。俺はこの部屋にいるじじぃの孫だから、みんな俺を見てくれないんだ。だから早くじじぃを超えたいんだ。そして、俺を認めさせ・・・
「んなの知るかってばよ、ボケ!!!」
「いってぇぇえーーー!!」
こいつ俺を殴りやがった。しかも容赦なく思い切りだ。
「何が“勝負”だ!! 今は俺が下忍になれたことを報告しに来てたんだってばよ!! その時間をとりやがって・・・!」
こいつはどうやら今年下忍になったらしい。
そう言えば・・・部屋の前に来た時、こいつの嬉しそうな声が聞こえたっけ。
「お、俺は早く火影の名前がほしーんだ!! みんな俺が火影の孫だからって、俺自身を認めてくれない・・・もうやなんだ、そんなの!! 俺は早くみんなに認められる名前がほしーんだ!!」
みんながみんな見てくれてないわけじゃないけれど。でもそれもたった1人。あの兄ちゃんだけ。そんなの辛いんだ。それにみんな気づいてくれないんだよ。
殴られたところを押さえながらそう叫んだら、急におとなしくなったそいつ。
それを不審に思い、顔を上げたら、
「俺も・・・俺を認めてくれる人がやっとできたばかりなんだ。」
そいつはひまわりみたいに笑っていた。
「それでもスゲー大変だったんだぞ!!」
その“大変だった”時のことを思い出しているのか、苦笑いを浮かべたそいつ。
こいつも俺と同じなのか・・・?
「・・・みんながみんな認めてくれる、火影ってスゲー名前を語るのに、ぜってー近道はねぇってばよ。」
今度は目を細めてすごく優しく笑った。
――やっぱりこいつ、あの兄ちゃんに似てるよ、コレ。
ボーッと見つめていたら、そいつはまた口を開いた。
「1つ1つ小さなことを積み上げて大きくしていくんだ。それがとっても大変なんだってばよ。でも、お前が今のこの辛い、苦しいって気持ちを忘れなかったら、ぜってースゲー火影になれるからさ。だからさ、がんばれよ!」
木の葉丸!!
そう言って二カッと笑ったそいつに、思わず目を丸くする。
確かに、みんな俺がじじぃの孫だから、火影になることを否定する奴はいなかった。でも、こんな風に心の底から思ったことを言ってくれたのはこいつが初めてだ。それに
――木の葉丸って呼んでくれた・・・
いつ俺の名前を知ったのか分からないけれど、しっかりと俺の目を見てそういったこいつは、確かに俺を認めてくれていた。
こいつの言った通り、本当に大変なんだ。
人に認められるって、すごく難しいんだ。無条件で認めてくれる人なんて、自分の親くらいだ。でも、俺には親がいない。それで俺の面倒を見てくれているのはじじぃとめがね教師。じじぃが俺を認めていないわけではないけれど、忙しくてなかなか会えないし、めがね教師は問題外だ。
目の前の金髪は俺を見ながらずっと笑っている。
俺がこいつの楽しみにしていただろうこの時間を奪っているのに。
「ごめんなさい。」
ごめんだなんて、こんなに素直に言えたことがないのに、今日はすんなり出てきた。
そいつを見ればきょとんとして、すぐにニシシと笑った。
――あぁこれはもう決まりだ、コレ!!
俺はガシッとそいつの腕を掴んで、
「ナルトの兄ちゃん!! 俺を子分にしてくれ!!!」
「「えぇ!?」」
部屋の中にわんわん響くくらいの声で頼んだ。兄ちゃんはそれはそれは驚いた顔をしている。兄ちゃんの声にかぶったのはめがね教師だ。何をそんなに慌てているのだろうか。・・・ムッツリスケベのくせに。(なんでこいつがムッツリスケベだというと・・・おっと、これはあとで話すぞ、コレ!)
こんなにかっこいい兄ちゃんはあの兄ちゃんの次だ。あの兄ちゃんは病院のお仕事が忙しいから時々しか会えないけれど、ナルト兄ちゃんは下忍だっていうじゃないか。
俺はナルト兄ちゃんについて行くぞ!
「お、お孫様!! そいつは・・・」
慌てているめがね教師に口を挟んだのはじじぃだった。
「エビス・・・それ以上はわしが許さん。それと、ナルト。」
めがね教師を一度睨んだじじぃはナルト兄ちゃんに向きなおすとニコリと笑った。
「木の葉丸を子分にしてやってはくれんか。」
「え・・・でも、俺に子分だなんて・・・と、友達なら・・・。」
さっきの威勢はどこにいったのか、ナルト兄ちゃんはじじぃにたじたじだ。いや、正確に言うと俺に困ってるんだな。
「いや! ナルト兄ちゃんは俺の親分だ、コレ!! 一生ついていくぞ、親分!」
そう言うと、兄ちゃんは苦笑した。
「そういうわけじゃ・・・忍者登録書は受け取ったから、そいつと遊んでくれんかの?」
じじぃがそう言ってくれて、俺は思わずニカッと笑ったら、兄ちゃんはフッと息を吐くと、
「じゃぁ、木の葉丸! 修行しに行くってばよ!!」
「オウ!!」
またひまわりみたいに笑って、俺の腕を掴んでくれた。
この時から俺はナルト兄ちゃんの子分になったんだ、コレ!!
それからナルト兄ちゃんとはよく遊んでもらった。この前の兄ちゃんなんて、最高にかっこよかったんだ。その話をする前に、もう1人の兄ちゃんの話をするぞ!
・・・ついでにムッツリスケベの話だ、コレ・・・。
これはナルトの兄ちゃんに会う前の話。
ある日の火影邸の廊下での出来事だ。
めがね教師から見事に逃げきった俺の目の前には、見覚えのある長い綺麗な金髪を1つに括った兄ちゃんが歩いていた。
「ミコト兄ちゃん!!」
そう呼べば、振り向いてニコリと笑ったその人。ちょっと前、俺が火影邸でこけた時(ト、トラップがあったんだ、コレ!!)、たまたま通りかかったこの兄ちゃんが手を貸してくれたんだ。その手があったかくて、やさしくて。
その時名前を訊きたかったのに、めがね教師がやってきて結局訊けなかった。が、めがね教師に訊いたらあっさりと分かった。
ミコト兄ちゃんはめがね教師と同じ特別上忍というじゃないか。しかも医療を専門とする忍者。
「木の葉丸君、どうし・・・!」
振り向いた兄ちゃんの言葉が言い終わる前に、思いっきり飛びついた。
この兄ちゃんはめったに昼間にはいないから、こうやって会うのは久しぶりだ。
兄ちゃんは驚いた顔をしたけど、またニコリと笑って俺を下におろす。と、
「兄ちゃん・・・どおしたんだ?」
俺の背丈に合わせてしゃがんだ兄ちゃんが、突然目をぎゅっと瞑った。
何か目にゴミでも入ってしまったのだろうか。
パチパチと何度か瞬きを始めた兄ちゃんの目から涙がじわじわと出てきている。
「ちょっと目にゴミが入ってしまったみたいです。」
「わ! 兄ちゃんごめん!」
きっと俺が飛びついてしまったからだろう。慌てて謝ると、兄ちゃんはピンと人差し指を立てた。
「こういう時は、目をこすらないで涙と一緒に出してしまうのがいいんです。」
目薬があればそれを使うといいですよ、とちょっと得意げに役立つ情報を話す兄ちゃん。ゴミの入ってしまったほうの目を閉じたままにしているので、まるでウインクをしているようだ。なんだかそれがかわいらしい。
しばらくすると、瞑っている目からゆっくりと涙が流れてきて。
思わずドキッとしてしまった。
流れてきた涙を拭おうとしている兄ちゃんは、なんか、なんか・・・
――色っぽいぞ! コレ!!
兄ちゃんはかっこいいのだけれど、綺麗でもある。男の色気とでもいうのだろうか・・・? 兄ちゃんの場合、髪が長いから女の人に間違えられそうだ。
今自分の顔は赤いかもしれない。バッと自分の顔を手で隠そうとしたその時、
「お孫様!!」
「げ!!」
しゃがんでいるミコト兄ちゃんの後ろに現れたのはめがね教師だ。
そのめがね教師はいつもに比べて息が荒い気がするが・・・そんなことは関係ない。
せっかくミコト兄ちゃんと会えたのに。
兄ちゃんが俺の名前を呼ぶと、すごく嬉しいんだ。じじぃの孫じゃなくて、“木の葉丸”っていう1人の人間として認めてくれているのが伝わってくるんだ。
めったに会えない兄ちゃんとの時間をとりやがって・・・!
兄ちゃんは涙を中途半端に拭うと、立ち上がって振り返ると、「エビスさん、こんにちは」とあいさつをする。今は兄ちゃんの背中しか見えないけれど、振り返る前の兄ちゃんの目は涙でキラキラとしていた。
――まだドキドキするぞ、コレ・・・
俺が兄ちゃんの色気でやられて目を瞑って胸をぎゅっと押さえたその時だ。
「あっ!」
兄ちゃんが突然声を上げた。何事かと思い目を開けると、兄ちゃんが腰につけていたポーチから何かを取り出した。それは
――ティッシュ・・・?
兄ちゃんが取り出した物は確かにティッシュだった。「これを使ってください」という兄ちゃんの横からサッと顔を出せば、
「げっ!!」
めがね教師が鼻血出していた。しかもダラダラ出と。めがね教師も兄ちゃんの色気にやられたのだろうか・・・いや、そうに違いない。
「ありがとうございます」とお礼を言っているめがね教師に兄ちゃんは、
「顔は上げないで下さい。」
顔は下に向けたまま鼻を強くつまんで、壁に寄りかかってしばらく安静にしておいてください、と医療を勉強しているだけあって、適当な対処をしている。さすがだ、コレ!・・・って感心している場合じゃないぞ!
「逃げるぞ兄ちゃん!」
「へ?」
「お、お孫様!?」
ガシッと兄ちゃんの手をとると、ダッと廊下を駆け出す。突然のことにめがね教師が驚いているが、そんなことは気にするもんか。
――お前なんか今日からムッツリスケベだ、コレ!!
どこか怪しいと思っていたんだ。まじめな顔しておいて、スケベだったとは・・・!
ムッツリスケベの前にいたら兄ちゃんは危ない。
「こ、木の葉丸君!」
無我夢中で走っていると、兄ちゃんが俺の名前を呼んだ。その声でハッとしたら、もうムッツリスケベはとっくに見えなくなっていた。
「急にどうかしたんですか?」
立ち止まって振り返れば、兄ちゃんが不思議そうな顔で俺にそう尋ねる。
・・・・・・どうかしたに決まってる。
「あの・・・めがね教師・・・・・・ムッツリスケベだ、コレ!」
「ムッツリスケベ・・・?」
「そうだ、コレ!!」
はぁはぁと息を切らしながら叫ぶ。走ったせいで俺は息が上がってしまっているのに、兄ちゃんは全く息を乱していない。さすが兄ちゃんだ。
なんとか息を整えるが、あのめがね教師・・・兄ちゃんの顔を見て鼻血を出すなど、ムッツリスケベすぎる。
俺の言葉にきょとんとしていた兄ちゃんが、突然クスクス笑い始めた。
「ミコト兄ちゃん?」
何が面白いのか分からなくて首を傾げると、兄ちゃんがやわらかく笑った。
「エビスさん、今日熱があるんです。」
「え・・・?」
「今朝、エビスさんが医療班に薬をいただきにきたそうですよ。」
僕はその時いなかったのですが、と告げる兄ちゃん。ふと兄ちゃんの言葉であいつを思い出せば、確かに今日のムッツリスケベの様子はいつもと違った。簡単に逃げることが出来たし、何より追いかけてきたムッツリスケベはかなり息が荒かった。
「風邪をひくと鼻の粘膜が弱まりますし、それにエビスさん走ってこられたみたいじゃないですか。興奮したり、血の巡りが良くなったりすると出たりするんですよ。」
きっとそのせいです、と笑う兄ちゃんを見て顔を顰める。兄ちゃんはそう言うけど、さっきの兄ちゃんには俺もドキッとしてしまうくらいだったんだ。
――あいつの場合、“興奮”だけだ、コレ!
絶対にそうだ。それに、ミコト兄ちゃんは前から思っていたが、絶対に“天然”だ。
チラッと横目で見れば、兄ちゃんが視線に気づいてニコッと笑う。
間違いない、兄ちゃんは“天然”だ。
そこまで考えて、俺はハッとした。
「ミコト兄ちゃんはあーゆーのよく見るのか、コレ!?」
兄ちゃんは自分のことにはかなり鈍感だろう。兄ちゃんは自分がモテることに気づいていない。くの一からはかなりの人気だ。
それに、兄ちゃんは後姿だけを見たら、くの一と間違えられてもおかしくない。
・・・考えたくはないが、めがね教師以外にもあんな風に兄ちゃんの前で鼻血を出した奴はいるはずだ。
「ああいうの・・・ですか?」
俺の質問に首を傾げた兄ちゃんに頷いて見せれば、兄ちゃんは少し辛そうな顔をした。
「そうですね・・・よく見ますよ。」
できれば見たくはないですね、と困ったように笑った兄ちゃん。と、思ったらため息を吐いて目を瞑ってしまった。
やっぱりだ。
――よっぽど悩まされてるんだな・・・コレ。
ちらりと伺えば、兄ちゃんはまだ目を瞑ったまま顔を下に伏せていた。
めがね教師がムッツリスケベと分かった以上、ミコト兄ちゃんに近づけないようにしなければ。めがね教師は・・・一応俺の家庭教師(悔しいけど、教えるのは上手いんだ、コレ・・・。)だし、今の俺でもめがね教師1人見張ることならできる。
ミコト兄ちゃんは俺が守らなければ。
兄ちゃんに背を向けて、そう固く誓う。と、その時、
「木の葉丸君。」
ギクリとして振り返り、顔を上げれば兄ちゃんがニコリと笑った。
「僕はそろそろ行きますね。」
「・・・・・・あ。」
そうだ。兄ちゃんはいろいろとムッツリスケベと違って忙しいんだ。
「またね」と言って背を向けた兄ちゃんに慌てて叫ぶ。
「兄ちゃん! 困ったことがあったら俺に言っていいぞ、コレ!」
そう言うと、振り向いた兄ちゃんが苦笑をして「ありがとうございます」と言った。そして、背中を向けて歩き出した兄ちゃんに、ぶんぶんと手を振る。
兄ちゃんの背中が見えなくなると、軽くため息を吐いた。
兄ちゃんにはいろいろと悩みがありそうだ。
――ミコトの兄ちゃんは俺が絶対守るんだ、コレ!!
兄ちゃんはめがね教師のことをああ言ったけれど、
――あいつは絶対ムッツリスケベだ、コレ・・・
兄ちゃんの顔を見た瞬間に鼻血を出すなどタイミングがよすぎる。
まずはムッツリスケベから兄ちゃんを守らなければ。拳を握りながら、再び心に誓っている時だ。
「お孫様、探しましたぞ!」
「・・・・・・。」
兄ちゃんと別れて少してから、鼻血が止まったらしいムッツリスケベが現れて、思わずジロリと睨む。しかし、ムッツリスケベは俺の睨みに怯むことなく(フッ・・・さすがムッツリスケベ。なかなか強敵だ、コレ!)、俺の襟首を掴んで引きずっていく。俺はふとミコト兄ちゃんの言葉を思い出し、
「今日熱があるのか?」
引きずられながらもムッツリスケベに訊いてみた。
ミコト兄ちゃんが嘘を吐くはずがないから、疑ってはいないけれど。
「え、ああ、ミコト君からお聞きしたんですか?」
実はそうなんですよ、もうだいぶ下がりましたけどね、と言うムッツリスケベに「フム」と言葉を返す。と、なぜかムッツリスケベは少し嬉しそうにフフ・・・と笑った。
「私のことは大丈夫ですから、きちんと修行しないと火影にはなれませんぞ!」
「・・・・・・ムッツリスケベの心配はしてないよ、コレ。」
そう言ったムッツリスケベにボソリと呟けば、「・・・何かおっしゃいましたか?」と振り向いてきたのでニコリと笑ってやった。すると、ムッツリスケベは何か言いたそうな顔をしたが、何も言わずに顔を戻して、また俺を引きずりながら歩く。
――そうだ、コレ!
突然ポンッと手を叩いた俺に、ムッツリスケベが何事かと振り返ってきたが、それは無視だ。今のムッツリスケベの言葉で、良い事を思いついた。
火影に早くなればいいのだ。
いや、もとから俺の夢は火影なのだが。
少しでも早く火影になればいいのだ。
じじぃを倒せば、自分も認められる。それにミコト兄ちゃんも守ることができる。
――そうと決まればじじぃに奇襲だ、コレ!
俺はその日そう決意したのだった。
でもそれはナルト兄ちゃんのおかげで、少し考えは変わったけれど、ミコトの兄ちゃんを守ると誓ったことは変わってない。
思い出したくもないムッツリスケベの話の後は、かっこいいナルトの兄ちゃんの話で気分を変えるぞ、コレ!
ナルト兄ちゃんとはよくモエギとウドンも一緒になって修行という名の遊びをしてもらっている。ナルト兄ちゃんと一緒にいて気づいたことは、やたらと人の視線が多いということだ。あの時のめがね教師みたいに冷たい目で大人たちが兄ちゃんを睨んでいるんだ。
・・・わけがわからない。
兄ちゃんに訊いたら、ただ優しく笑うだけで結局分からないけれど。何かあるのは分かった。でも、俺はそんなの気にしない。だって、兄ちゃんは最高にかっこいいんだ、コレ!
それはある日のこと。
今日は兄ちゃんが下忍の任務が早めに終わると聞いて、モエギとウドンと一緒に兄ちゃんを待ち伏せすることにした。任務が終わった兄ちゃんを発見した俺たちは、驚かそうと思って岩の中(ダンボールで作った自信作だ、コレ!)に隠れてこっそり後をついていった。だが・・・
「木の葉丸とモエギにウドン・・・どうしたんだってばよ。」
すぐにバレてしまった。さすがナルト兄ちゃん。
「さすが俺の見込んだ男! 俺の親分なんだな、コレ!!」
そう言っている間にも、兄ちゃんは早速俺たちの頭の上の物に気づいてくれた。
「木の葉丸たち・・・それ。」
「へへへぇ昔の兄ちゃんのマネしちゃったのさ、コレ!」
俺たち3人はみんな頭にゴーグルを着けている。今の兄ちゃんの額には額あてが光っているけれど、前はゴーグルを着けていたから。少しでも兄ちゃんに近づきたいんだよ。でも、
「ふ~ん。」
「“ふ~ん”ってコレ!! 兄ちゃんリアクション冷たいぞぉ!!」
笑ってくれると思ったのに、予想外に冷めた反応をした兄ちゃん。俺が透かさず言い返せば、兄ちゃんはプッと笑った。
「だってさ、お前たちのそこにはすぐに額あてがくるだろ?」
そう言って、兄ちゃんが指差すのは自分が着けている額あて。その言葉にモエギとウドンも目を開いて驚いて、その後は目をキラキラと輝かせている。それは俺も同じだ。
――ほんと、兄ちゃんは最高だ!
すごく、かっこいい。
兄ちゃんの言う通り、俺たちの額にも早く額あてがくるように今はがんばるんだ。だけど、今日はあの約束の日。
「あのね! リーダー! これからヒマ?」
「ん? 特に何もないってばよ。」
モエギの質問ににこやかに答える兄ちゃん。
「今日は忍者ゴッコする日だ、コレ!」
そう、今日は兄ちゃんと約束した忍者ゴッコの日だ。
忍者ゴッコは、逃げる兄ちゃんを忍者らしく気配を消して追いかけ、つかまえるゲームだ。
それがなかなか難しい。手裏剣やクナイなんか使ったら危ないから使用禁止だ。でもそれは本当の忍ならありえないから、忍者“ゴッコ”なんだ。
兄ちゃんが俺の言葉を聞いて、「よし、行くってばよ!」と笑ったその時だった。
「フン・・・忍者が忍者ゴッコしてどーすんのよ・・・。」
暗い雲を背負ったピンクの髪の女が突っ込みを入れてきた。俺は思わず顔を顰める。
なんだ、この失礼な女は。
そう突っ込んだかと思えば、ナルト兄ちゃんをジーッと見つめているその女。
――兄ちゃんのこと、食い殺すような目で見てるな、コレ。
その女の視線を見てふと浮かんだのは・・・まさか兄ちゃんの“アレ”だろうか。
いや、その視線の意味は“アレ”しかない。
「兄ちゃんもスミにおけないなぁ。」
フッと笑ってそう言うと、兄ちゃんは「え?」と俺に顔を向けた。
「あいつって、兄ちゃんの・・・コレ?」
小指を兄ちゃんに立てて見せる。この女はきっと兄ちゃんの彼女なのだろう。
しかし、兄ちゃんは首を傾げた。その眉間には皺が寄っている。
・・・・・・兄ちゃんのこの反応は、もしかしてこの意味を知らないのだろうか・・・。
「彼女かって訊いてんだ、コレ!」
ニヤリと笑って告げる。すると、突然兄ちゃんの顔がボッと真っ赤になった。
そして、「な・・・え、う・・・」と慌てている兄ちゃんは、この女よりよっぽど可愛いと思った。と、突如、
「しゃーんなろーー!!!」
ドゴッ!!!!
「兄ちゃん!!」
ピンクの髪の女がわけの分からない言葉を言いながら兄ちゃんを殴り飛ばしたのだ。
「な・・・なんてことすんだ、コレ!!」
兄ちゃんに突然なんてことをするんだ、この女は。すると、その女はハッとした顔をして、
「つ、ついナルトがなんか私よりも可愛かったように見えたから・・・思わず突っ込んでしまったわ・・・。」
ごめんね、と舌をペロッと出し、たぶんかわいらしく言ったつもりであろうこの女は、はっきり言って非常に恐ろしい。
「やだぁー、リーダー!! 死んじゃやだー!!」
モエギが急いでナルト兄ちゃんに駆け寄る。その兄ちゃんはかなり吹っ飛ばされており、木で出来た塀に思い切り叩きつけられていた。
兄ちゃんからは「う~」とうめく声がもれている。
「このブース! ブース!!」
本当にこの女はブスだ、コレ! 兄ちゃんになんてことしてくれたんだ。俺がずっとそいつに向かって「ブス」を連呼していると・・・
「木の葉丸君、大丈夫?」
頭を押さえている俺に、ウドンが声をかけてきた。今、俺の頭には大きなたんこぶができている。
その女は俺を殴って、しかもまたナルトの兄ちゃんまで殴り、「フン」と鼻息荒く去っていったのだ。なんで兄ちゃんまで・・・。
「・・・ったく、あのブスデコぴかちん・・・アレで女かよ、マジでコレ・・・ねぇ、兄ちゃん!!」
「こ、木の葉丸・・・!」
俺の言葉に兄ちゃんが怯えたように声を上げた。どうしたのか、と思い、ナルト兄ちゃんの視線の先を見れば、
ドタタタタ!!
去っていったはずのあの女が鬼のような形相(いいや、あれは本物の鬼だ、コレ!!)で追いかけてきていたのだ。
「ぎゃぁぁああ!!」
俺たちは必死に走って逃げた。それはもう我武者羅に。と、その時だ。
「イテッ!」
何かにぶつかってしまった。その衝撃に耐え切れなくて、尻餅をついてしまう。
「いてーじゃん・・・・・・」
上から降ってきた声に、ぶつかったのが人間だと分かった。
恐る恐る顔を上げてみると、そこにはまるで歌舞伎のような模様を顔に施した男が立っていた。その男は背中に包帯でぐるぐる巻きにした何かを背負っている。隣には、大きな扇子を背負った女がいた。
――なんだよこいつら・・・!
腰が抜けてしまってなかなか立ち上がれないでいると、その男は俺の胸倉を掴んで引っ張りあげた。
「木の葉丸!!」
兄ちゃんの声が聞こえた。ここはかっこよく
「大丈夫だ、兄ちゃん!」
と言いたい。が、息が苦しくて、口から出たのは「ぐっ」という蛙のような声。
「いてーじゃん、くそガキ!」
「やめときなって! 後でどやされるよ!」
扇子の女がそう言うのに、歌舞伎の男は放そうとしない。
「こら、お前! その手を放せってばよ!! そいつを放さないと俺が許さないぞ!!」
――兄ちゃんかっこいいぞ、コレ!!
そう言いたいのに、やっぱり開いた口からは蛙の短い鳴き声がもれた。
兄ちゃんが本気を出したらきっとすごい。
まだそんな兄ちゃんは見たことないけれど。
そう叫んだ兄ちゃんに歌舞伎の男はニヤッと笑った。
「俺・・・大体チビって大嫌いなんだ・・・。おまけに年下の癖に生意気で・・・殺したくなっちゃうじゃん・・・・・・。」
「ッ!!」
ナルト兄ちゃんが息を呑んだ。この男の隣の扇子の女が、「あーあ、私は知らないよ」と呟いている。あのピンクのブス女といい、今日はいったいなんなんだ。
――く・・・苦しい・・・コレ・・・
もう息が苦しくて。ダメかもしれない、そう思ったその時だった。
ガッ!
「くっ・・・!」
何かがぶつかる音の後、歌舞伎の男が短く声をもらすと、体が急にフッと浮いた。
――え・・・
掴まれていた手が放されたのだ。
――ぶつかる!!
このままでは地面にぶつかってしまう。
俺は咄嗟に目を閉じた。が、
「あ・・・れ?」
その衝撃はこなかった。そして、
「大丈夫か、木の葉丸。」
地面にぶつかる音の代わりに聞こえてきたのは信じていたあの声。
「に、兄ちゃん・・・!」
閉じていた目を開ければ、ニコッと笑った兄ちゃんの顔があった。俺は驚いて、目を丸くしてしまった。
歌舞伎の男の手を放した瞬間、落ちる距離はそんなにあるわけじゃなくて。ほんの一瞬のはずだ。なのに、兄ちゃんはその一瞬で俺を助けてくれたんだ。兄ちゃんから俺の距離は結構離れていたというのに。
兄ちゃんはやっぱりすごいんだ。
「よそんちの里で何やってんだ、てめーは。」
「サスケくーーん!!」
兄ちゃんと俺を放っておいて、あちらでは誰かまた現れたらしい。
俺もそちらに顔を向ければ、木の上に黒髪のなんだかスカした男が座っていた。
「クッ・・・ムカつくガキがもう1人・・・。」
歌舞伎の男は腕を押さえながら振り返って、木の上にいるスカした男にそう呟く。すると、
「失せろ。」
その男はスカした顔してスカした台詞をのたまった。
「きゃーーーカッコイイーーー!!」
その男に向かってそう叫ぶピンクの女の目はハートになっていた。ピンクの女だけなら俺も別に気にしない。が、その女の隣にいたモエギの目までハートになっているのだ。
俺はそんなモエギをジトッと睨んだが、モエギは一向に気づく気配がない。
――どこがだ、コレ!!
ちらりと横を見れば、視線に気づいたナルト兄ちゃんがまたニコッと笑った。俺は兄ちゃんの笑顔が眩しくて、思わずサッと顔を背けた。
あのスカしたヤローのどこがいいんだ。ナルトの兄ちゃんのほうがよっぽどかっこいいじゃないか。
「ナルト兄ちゃんのほうがかっこいいよ。」
なんだか悔しくてそう言ったら、頭に何かがポンッと乗った。
顔を上げれば、兄ちゃんが少し頬を赤くしながら俺の頭に手を乗っけていて。そして
「ありがと。」
と小さく呟いた。
兄ちゃんが恥ずかしそうにするから、俺もちょっと恥ずかしくなったけれど、へへッと笑ってごまかした。
「おい・・・ガキ、降りてこいよ! 俺はお前みたいに利口ぶったガキが一番嫌いなんだよ・・・。」
歌舞伎の男がスカした男にそう言うと、背中の何かを下ろし始めた。それを見た扇子の女が「おい、カラスまで使う気かよ」と慌てている。と、その時だ。
「兄ちゃん?」
ナルト兄ちゃんが突然スカしたヤローのいる木を睨み付けたのだ。その視線を辿っていけば、そこには不気味な人影が。
「カンクロウやめろ。」
そう呟いたその人影は、木の枝にこうもりの様にぶら下がったひょうたんを背負った男だった。どうやらこの歌舞伎の男はカンクロウというらしい。
「里の面汚しめ・・・。」
ひょうたんの男はカンクロウを責めているが、どう見てもカンクロウより年下に見えるのは自分の気のせいだろうか。
「ガ・・・我愛羅。」
カンクロウが呟いた名前、それがひょうたんの男のものなのだろう。
「喧嘩で己を見失うとは、あきれ果てる・・・何しに木の葉くんだりまで来たと思っているんだ・・・・・・。」
俺はその言葉で今更だがハッとした。
――そうだ、コレ!
こいつらの顔は見たことが無い。それに、額あてのマークも木の葉のものではない。
「聞いてくれ・・・我愛羅。こいつらが先につっかかってきたんだ・・・!」
慌てて言い訳をするカンクロウに思わずムッとする。
確かに先にぶつかったのは自分だが、これほど騒ぎを大きくしたのはお前だ、コレ。
「黙れ・・・殺すぞ。」
ひょうたんの男の鋭い眼光に歌舞伎の男はかなり怯えている。まるで蛇に睨まれた蛙だ。
「わ・・・分かった、俺が悪かった。」
「ご・・・ご・・・ゴメンね・・・ホントゴメン。」
ひょうたんの男の言葉に、歌舞伎の男だけではなく扇子の女まで急に謝りだした。きっと、このひょうたんの男がこいつらのリーダーに違いない。
「君たち、悪かったな。」
そう言ってひょうたんは歌舞伎と扇子の間に下りてきた。
「どうやら、早く着きすぎたようだが、俺たちは遊びに来たわけじゃないんだからな・・・。」
行くぞ、と言って去っていこうとする、それぞれ背中に不思議なものを背負った3人組。しかし、
「ちょっと待って!」
その3人組にピンクの女が止めに入った。
「額あてから見てあなたたち・・・砂隠れの里の忍者よね・・・。」
ピンクの女は3人に疑問に思ったことを告げる。
「確かに、木の葉の同盟国ではあるけれど・・・両国の忍の勝手な出入りは条約で禁じられているはず・・・目的を言いなさい!」
場合によってはあなた達をこのまま行かせるわけにはいかないわ、と3人を睨み付けたピンクの女はここで初めて、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけだが見直した。
その台詞にフンと鼻で笑ったのは扇子だった。
「灯台下暗しとはこのことだな。」
何も知らないのか? と言って通行証を見せる扇子の女。何かこの里であるのだろうか。
「お前達の言うとおり、私達は砂隠れの下忍・・・中忍選抜試験を受けにこの里へ来た。」
腰に手を当てて扇子の女は偉そうに話している。
「中忍選抜試験・・・だ、コレ?」
聞きなれない単語に、兄ちゃんに向かって尋ねた。その問いに兄ちゃんはニコッと笑って、口を開かけたその瞬間、
「本当に何も知らないんだな・・・。」
訊いてもいないのに扇子の女が勝手に説明を始めた。
――兄ちゃんに訊いたんだぞ・・・コレ。
兄ちゃんは開きかけた口を閉じて、俺がムスッとしたのに気づいたのか苦笑をもらした。
「中忍選抜試験とは・・・砂・木の葉の隠れ里と、それに隣接する小国内の中忍を志願している優秀な下忍が集められ、行われる試験のことだ・・・。」
「なんで、一緒にやるんだ? コレ。」
親切にも説明してくれているので、気になったことを質問してみる。すると、律儀にも話してくれる扇子の女。
「合同で行う主たる目的は同盟国同士の友好を深め、忍のレベルを高めあうことがメインだとされてるが、その実隣国とのパワーバランスを保つ事が各国の緊張を・・・」
「ナルト兄ちゃん! 兄ちゃんもそれに出るべきだ、コレ!!」
なんだか説明がよく分からなくなってきたので、とにかく中忍になれるという試験ならば、絶対に兄ちゃんは参加するべきだと思い、そう兄ちゃんに言った。しかし、兄ちゃんは「う~ん、どーかなー・・・まだわかんねーってばよ」と首を捻っている。と、
「てめー! 質問しといてこのヤロー! 最後まで聞けー!」
扇子の女が怒ってしまった。あんな説明で分かるか、コレ。
ジトッとその女を睨み付けると、唐突にスカしたヤローが木から忍らしくスッと下りてきた。
「おい! そこのお前・・・名は何て言う?」
「え? わ・・・私か?」
スカしたヤローの視線はどう考えても扇子ではないのに、そのスカしたヤローの台詞に顔を赤らめて反応を返した扇子。
――世の中不思議だ、コレ・・・
本当に、このスカしたヤローのどこがいいのだろうか。
「違う! その隣のひょうたんだ。」
スカしたヤローがそう言うと、扇子が少し落ち込んだ。逆に、呼ばれたひょうたんは好奇の目でスカしたヤローを見つめ返した。
「・・・・・・砂漠の我愛羅・・・・・・俺もお前に興味がある・・・・・・名は?」
そう問い返したひょうたんに、スカしたヤローは少し笑みを浮かべて
「うちはサスケだ」
と答えた。なんだか面白くなくて眉間を顰める。
――みんな間違ってるぞ、コレ!!
なんでナルト兄ちゃんにみんな気づかないのか。そう思った瞬間だった。
「そこの金髪・・・。」
サスケから視線を兄ちゃんに変えたひょうたん。
「・・・さっきの動きは俺も見えなかった・・・・・・。」
ひょうたんの男がボソリとそう呟いた。
俺はその言葉を聞いて自分のことのように嬉しくなった。
兄ちゃんが自分を助けてくれた時、こいつはきちんと兄ちゃんを見ていた。
でも、見ていたはずなのに、この3人の中のリーダーでも見えなかったと言っている。
それはすごいことではないか。
「・・・お前の名は?」
――やったぞ兄ちゃん!!
俺は尊敬の眼差しで兄ちゃんを見つめる。やっと兄ちゃんが注目されたんだ、コレ!
すると、尋ねられた兄ちゃんはフッと笑って、
「名乗るほどの者じゃぁねーってばよ!」
腕を組んで堂々と宣言した。
その直後、その場がしーんと静まり返った。みな目が点になっている。が、
「兄ちゃんかっこいーぞー、コレー!!」
思わずそう叫んだ。
ちょっと使うところが違うけれど、という突っ込みはなしだ、コレ。
俺の声で固まっていたひょうたんがハッとして、「行くぞ」と振り返り、扇子と歌舞伎を引き連れて去っていく。その姿をスカしたヤローはうっすら笑みを浮かべて見つめていた。
やっと平穏を取り戻したこの場に、俺はハッとした。
「・・・兄ちゃん、今日は忍者ゴッコしないのか・・・?」
ふと思ったことを隣に立っていた兄ちゃんに訊いた。
今の出来事で分かったことは、きっとナルト兄ちゃん達も中忍選抜試験とやらに出るんだろうなということ。出てもらいたいけれど、出るならやはり兄ちゃんは兄ちゃんの修行をしなければならないだろう。そう思うと少し悲しい。
しゅんと顔を伏せると、兄ちゃんが苦笑したのが聞こえた。
「何言ってんだ、木の葉丸。」
その言葉にバッと顔を上げる。
「今日は忍者ゴッコをする約束をしただろ? 約束は守るってばよ!」
「兄ちゃん・・・!!」
そう言ったナルト兄ちゃんはひまわりのような笑顔だった。
「行くぞ! モエギ、ウドン、木の葉丸!!」
「「「オウ!!」」」
兄ちゃんが駆け出した後を俺達も一緒についていく。その背後で、ピンクの女の「あんたも修行しなさいよ!」と叫んでいる声が聞こえた。すると、兄ちゃんは「わかってるってばー!」と走りながら返事をする。
あの女にあんなにひどいことをされたのに、怒らないナルト兄ちゃん。
――兄ちゃんは俺の尊敬する男だ!
走っている兄ちゃんの隣に並んでその顔を覗き見ると、こっちを向いて、目を細めてやわらかく微笑んでくれた。
こんなナルト兄ちゃんが、大人たちに睨まれるのはおかしい。
絶対におかしいんだ。だから、
――俺が守るんだ、コレ!!
兄ちゃんが、俺は火影になれると認めてくれたから。
いっぱい修行して、努力を積んで、兄ちゃんを守れる男になるんだ、コレ!
「よーし! もっとスピード上げるってばよ!!」
「な、ナルト兄ちゃん! 待つんだ、コレ!!」
ぜぇはぁと荒く息をついている俺たち3人に対し、1人だけ元気な兄ちゃん。
早くその兄ちゃんを抜かしたいと思うけれど、
今だけはまだ、こうしていたいんだ。
あっという間にかなり前へと行ってしまった兄ちゃんに、必死で追いつこうとする。
すると、兄ちゃんは必ずそんな俺達を振り返って待っていてくれて、
「よくがんばったな!」
と、嬉しそうに誉めてくれる。
その言葉が嬉しくて、つい甘えてしまうけれど、俺が兄ちゃんを絶対守るから。
「兄ちゃん! 今日はつかまえてみせるぞ、コレ!!」
「俺も負けねーってばよ!」
目の前には大きな兄ちゃんの背中。
いつか俺も兄ちゃんみたいになるから。
だから、もう少し待っててね。
ナルト兄ちゃん。
あとがき
申し訳ございません!!(土下座)
木の葉丸さんの視点から書かせていただいたのですが・・・本当にすみません。
サクラさんやサスケさん、砂忍の3人組みもみんな大好きです。ひどい言い方をしておりますが、本当に大好きです。
第28話に少しだけ触れている部分の番外編でした。
笑っていただけたら泣いて喜びます。
この更新から次はもしかしたら1ヶ月は開いてしまうかもしれません。これから今まで以上に集中して受験に励みたいと思います。
毎日少しずつは書いていこうと思いますが、これからもよろしかったら応援よろしくお願いします。
↓にミコトさん視点を少しだけ書いております。ミコトさんが木の葉丸さんの質問をされた時の心情です。
おまけ
突然走り出した木の葉丸は、立ち止まればエビスのことをムッツリスケベという。ムッツリスケベの理由はよく分からないが、エビスが風邪を引いていることを伝えると、
「ミコト兄ちゃんはあーゆーのよく見るのか、コレ!?」
唐突にそう尋ねてきた木の葉丸に思わず首を傾げた。
「ああいうの・・・ですか?」
聞き返せばうんと頷く木の葉丸。ああいうのとは、先ほどのエビスのことをいうのだろう。
「そうですね・・・よく見ますよ。できれば見たくはないですね。」
と言って苦笑する。
医療に関わるのだから、血を見るのは当たり前だ。今さっきのエビスの鼻からの出血は、白血病などのものではない、本当にただの鼻血であったから良かった。が、出血というものは病院にいればかなりひどいものも目にするわけで。
――血を流しているところなんて見たくないですよ・・・。
思わずため息が出てしまう。
ここは忍の里だ。怪我人が絶えることはない。
怪我をしても帰ってこられるほどであればまだいい。中には帰ってこられない者もいるのだ。彼らはどんなにひどい怪我を負ってしまったのだろうか。
確かに、いくら医療を学んでもどうしようもできないこともある。
だから、せめて帰ってきてくれた者たちには、持てる力の限り治療を施すのが自分の役目。
――たくさんの人を助けたい。
それはこの里に来てからいつも心に思っていたこと。
目を瞑れば浮かんでくる、怪我を治した人々の笑顔。
こうやって、ナルトではないがミコトとして医療に携わることができ、自分は本当に幸せだ。いつかはナルトとして医療に関わることができるよう、がんばらなければ。
目を開ければ、自分に背を向けている木の葉丸。どうかしたのだろうか、と首を傾げたがとりあえずそろそろ病院に向かわなければ。
「木の葉丸君。」
声をかければ肩をビクリと揺らし、ゆっくりと振り返った彼。突然声をかけて驚かせてしまったようだ。そんな木の葉丸にニコリと笑う。
「僕はそろそろ行きますね。」
「・・・・・・あ。」
その一言で、彼も分かってくれたらしい。少ししょんぼりとしている木の葉丸に「またね」と言って、背中を向ける。すると、
「兄ちゃん! 困ったことがあったら俺に言っていいぞ、コレ!」
木の葉丸が自分に向かってそう叫んだ。その内容に思わず苦笑する。
――困ったこと・・・か。
“ナルト”である自分にならたくさんあるけれど、これは自分でなんとかしなければならないこと。でも、
「ありがとうございます。」
その一言が、気持ちがとても嬉しい。
振り返ってそう言えば、木の葉丸が思い切り自分に手を振ってくれた。
それが自分を応援してくれているようで、なんだか心があたたかくなった。
それからというもの、エビスと会う時はほとんどの確率で木の葉丸が一緒にいるし、何故か火影様に木の葉丸が奇襲をかけているという噂を聞くようになった。
あとがき2
ここまで読んでくださってありがとうございます!!
鼻血って突然出たりしますよね。鼻血を止める時、顔は上に上げるものと思っていたのですが、上には向いてはいけないんですね。これを書いていて初めて知りました。上を向くと血が喉を通って飲み込んでしまい、それによって吐き気や嘔吐を引き起こしてしまうそうです。
このお話ではナルトさんが医療忍者ということで、チャクラの“陰”と“陽”について受験生にも関わらずいろいろと考えて、自分なりにそれの定義を作ろうかと試みた作者です。結論からするとできませんでした・・・orz
私の頭では無理でした。試みる前から分かったことでしょうに。(笑
ちなみにどんなことを調べて考えたかといいますと・・・
陰と陽というものがまず医療にかなり関係していたことを初めて知りました。そこからまず知らなかったです。(笑
“陰陽”とは古代中国に成立した基本的な発想法のことで、陰は山の日かげ、陽は山の日なたを表し、気象現象としての暗と明、寒と熱の対立概念を生み、戦国末までに万物生成原理となり、易(中国の周代に生み出された占いの方法)の解釈学の用語となって、自然現象から人事を説明する思想となったそうです。(百科事典より)
この思想がのち、五行説と結合して陰陽五行説となりました。
陰は女性、陽は男性と対立したものを2つに分けることができるのですが、人間の体を陰と陽に大雑把に分けると内部が陰で外部を陽と分けるそうです。が、肉体と精神を陰と陽で分けると、肉体が陰で精神が陽だそうです。
そこまで知った作者は、四代目の九尾を封印する時に持っていった陰のチャクラとは肉体のことなのか!? と思ってしまったのです。
陽のチャクラは精神だとして、それをナルトさんの臍の緒に封印されたのか!! とか考えたのですが・・・そんな単純なものではないですよね。謎です。
陰陽を調べていて出てきた陰陽五行説なるものも気になったので調べてみました。
陰陽五行説には五元素があり、それは「木・土・火・金・水」です。
この元素には「相生」と「相剋」という関係があり、「相生」は木が火を生じ、火は土を、土は金を、水は木を生じるという順序で、木・土・火・金・水の五気がそれぞれが相手を生み出して行くという関係のことです。
そして「相剋」ですが、水は火に勝ち、火は金に勝ち、金は木に勝ち、木は土に勝ち、土は水に勝つという関係のことです。図にすると・・・
水→火→金→木→土→水
これを見ておやっと思いました。
NARUTOではチャクラの性質に火・風・雷・土・水ってありますよね。この性質の強弱は・・・
水→火→風→雷→土→水
この性質の中で不思議に思っていたのは雷遁が土遁に強いというものです。
ポケ○ンをしていた私にとって、雷が土に強いというのが不思議でなりませんでした。
そこでこの陰陽五行説です。
金を風、木を雷に置き換えたら、確かに雷が土よりも強いとなりました。
NARUTOのチャクラの性質は陰陽五行説から取っているのかなぁなんて思った作者でした。
どうでもよいことですみません。
NARUTOに嵌り始めたのが最近のため、勉強不足です。
受験の最中にこんなことを調べている私・・・ダメですね。すみません。
これからもがんばりますので、よろしかったらまた足をお運びください。