誕生日って、本当は周りの人に感謝をする日なんだと思いました。
姉さんは正直にすべて話してくれました。
姉さん、辛かったね。悲しかったね。
そんな中でも僕を見つけてくれて、
育ててくれてありがとう。
心からの感謝を
NARUTO ~大切なこと~ 第4話
「最初ね、ナルトを見つけたときは殺してやると思ったわ。」
話し始めた頃に出ていた殺気は次第におさまり、今では淡く微笑みながらナルトを見つめている。
「でもね。ナルトの首に手をかけた時、ナルトが一生懸命私に手を伸ばして笑ったの。」
その時のナルトが私には天使に見えたわ。と少し涙声。
「なんて私は馬鹿なことをしているんだろーって。復讐なんかどうでも良くなっちゃったの。」
今度は笑いながら。
「私はナルトの笑顔で救われたのよ。」
じっと黙って聞いていたナルトの目からポツリ、ポツリと雫が落ちる。
「封印を解こうとは思わなかったんですか・・・?」
華代はニコリと微笑んで言う。
「思わなかったわ。それに私にはその封印の仕組みがわからなかったの。でも、もしわかっていても解かないわ。言ったでしょう?私、ナルトに救われたの。ナルトが笑ってそばにいてくれるだけでいいの。」
ポツリ、ポツリと涙の雨が降る。
――ありがとう・・・姉さん。
ナルトは恥ずかしくて顔を下に向け、涙と赤くなった顔を隠そうとする。そして、そのまま思ったことを口にした。
「お父さんは、妖狐でも姉さんと弟さんの立派な親だったんですね。悪いのは先に手を出した里人です・・・。」
ナルトの口から漏れた言葉に華代は首を振る。
「確かに、親としては立派だったかもしれないけれど、里のほとんどを壊すだなんて・・・父上はやりすぎてしまったわ。いくら先に契約を破ったのが里人だからって、そこまでする必要はなかった。その所為で里に大きな悲しみと怒りを残してしまったもの・・・。」
ナルトは全く関係ないのに。そんな言葉が続きそうだった。
ナルトは手の甲でぐいっと涙をふき取った。その顔はとてもすがすがしい。
知りたかったことがやっとわかったのだ。内容は辛いものだったが、それでもナルトの好奇心を静めたことに変わりない。
すると、華代がナルトに向かって手招きしている。手招きしている反対の手では自分の膝に座るように指示している。
ナルトは立ってトコトコと歩いて姉のそばに行くと脇の下に手を入れられ膝の上に乗せられた。そして姉はそのままナルトを羽交い絞めするかのように抱きしめる。
そのせいでお互いの顔を見ることができない。
「ナルトのお父さん・・・人間のお父さんのお話をしましょう。」
その言葉にナルトの小さな肩がピクリと反応した。
「僕のお父さん?」
「そう。」
姉の顔は見えないままだ。
正直に言うとナルトはとても不安だった。確かに知りたいことではあったが、同時に知りたくないことでもある。
一度も見たことも聞いたこともない父。
僕のことを嫌いだったのかもしれない。
僕は捨てられたのかもしれない・・・。
「ナルトの名前はね、あなたのお父さんがつけたのよ。」
あの手紙からすると、きっと親馬鹿になっていたわね。と楽しそうな姉の声が上から降り注ぐ。
「ナルトに九尾を封印したのはお父さんよ。でもね、ナルトに九尾を封印したのはあなたが嫌いとかそんなことじゃないわ。あなたは誰よりもお父さんに愛されていたわ。」
その言葉を聞いて、ナルトからくぐもった嗚咽がもれる。
――良かった・・・。
ナルトの目からは止めどなく涙が落ちる。
――良かった。
その姉の言葉だけで、心が満たされる。
「あなたのお父さん・・・四代目火影は九尾を封印して死んでしまったけれど、その時の顔は父親の顔だったわ。」
いつの間にか姉の腕は解けていて、すっとナルトの首に何かをかけた。
「あなたの誕生日プレゼントよ。」
ナルトの首には数本の棒がぶら下がっている首飾りがかかっていた。
「それはね。四代目火影がしていた首飾りよ。どう?あなたのチャクラと似たチャクラを感じるでしょう?」
そう聞かれてナルトは首飾りに触れる。
本当だ。
僕のチャクラと似ています・・・。
「僕、大事にします・・・!!」
ナルトの顔は涙でもうぐしゃぐしゃだった。
華代はやさしくナルトの頭を撫でる。
「里の人間は、「ナルト」が九尾だなんて言っているけれど、あなたはあなたよ。父上なんかじゃないわ。」
ナルトは力強く頷いた。
「ナルト。どんなことがあっても負けてはダメよ。」
その言葉にナルトは首を傾げる。
「でも、僕はまだ姉さんにも勝てませんよ?」
姉は首を振って答える。
「そうじゃないの。“心”が負けてはダメなの。辛い時はね、無理にでも笑いなさい。笑っていると自然と力がわいてくるの。ナルトの笑顔は私に力をくれるわ!」
だからどんなことがあっても負けてはダメよ。しっかり胸を張って生きなさい。と、姉は笑いながら言った。
「僕はずっと姉さんのそばにいますよ。僕も姉さんがそばで笑ってくれるからがんばれるんです。姉さんが嫌だって言っても離れません。」
涙の痕が残った顔に満面の笑みでそう告げるナルトをまた華代は羽交い絞めする。
華代の目には涙が浮かんでいる。
「誕生日、おめでとうナルト。」
華代の目に浮かんだ涙は嬉し涙だったのか・・・それを知っているのは華代だけだった。
あとがき
なんとか今日更新できました!
ちょうど2ヶ月前はナルトさんの誕生日でしたね。おめでとうございました。
なんだか暗い話で申し訳ございません。