本体さん、カカシ先生についていったんですね・・・。
ずるいです!!
僕も封印術見たいですよ。
でも、大蛇丸も行かれたみたいですし、きっと何かあっているはずですね。
本体さんも大変です。
あ! 今シノの勝ちが決まりました!
シノの冷静さは本当にすごいです。
音忍の手の風穴に蟲を入れてあっただなんて、焦っていた音忍には気づかなかったでしょうね。
風穴で攻撃しようとした音忍の腕は蟲たちが詰まっていたせいで暴発してしまい、右腕が弾け飛んでしまいましたが・・・
医療班の方々でどうにかなるでしょう。
ん? やっとカカシ先生が帰ってきましたね。
・・・・・・大蛇丸とは何があったんでしょうね。
NARUTO ~大切なこと~ 第28話
「よっ!」
暢気な声がナルトとサクラの後ろから聞こえた。
2人が振り返ると、そこには片手を軽く上げたポーズをとっている銀髪の男。
「カカシ先生!」
「“よっ”じゃないわよ! カカシ先生、サスケ君は? サスケ君は大丈夫なの!?」
ナルトは銀髪の男の突然の出現にいかにも驚いたという顔をし、サクラは先ほどから気にしていたサスケのことを一方的に捲くし立てた。
「ま、大丈夫だ。今、病室でぐっすりのはずだ。」
カカシから出たその言葉にサクラは少し疑問を抱いたがホッと息を吐く。と、その時、電光掲示板に第三回戦である“ツルギ・ミスミ”と“カンクロウ”の名前が表示された。
ナルトは“カンクロウ”の名前を見て眉間をしかめた。
そんな反応を示したナルトにもわけがある。
実は中忍試験前にカンクロウを含めた砂忍3人にはナルトやサクラ、サスケは会っていたのだ。
まだ中忍試験を受けることさえ聞いていなかった(大蛇丸に消される前の影分身の)ナルトと、(ナルトがアカデミーを卒業したことを報告しに火影様に会っていた時、突然飛び込んできて「勝負だ、コレ!」とか失礼なことを言ったので叱りつけたら子分になった)木の葉丸と他2名が忍者ゴッコをしようとしていた時のことだ。
その時、ナルトのそばで何故かかなり落ち込んでいたサクラを木の葉丸が怒らせてしまい、何故かナルトまで一緒に追い掛け回されていると、木の葉丸が“カンクロウ”にぶつかってしまったのだ。
たいして痛くもないだろうに、「いてーじゃん」と言って木の葉丸の胸倉を掴んで殴ろうとするカンクロウに木の上にいたサスケが石を投げつけ、カンクロウが手を離した隙にナルトが木の葉丸をキャッチした。
その後、額に“愛”の文字がある少年が出てきてその場は納まった。が、木の葉丸に怪我がなかったものの、ナルトは子供たちに怖い目を見させたカンクロウにわずかに嫌悪を抱いたのだった。
――まぁ、ミコトとしては彼も受験者ですし、嫌悪なんてしちゃいけませんね。
ナルトの見つめる先にはすでに名前を表示された両名が下へと降りていた。そして、
「それでは第三回戦、始めてください。」
ハヤテが合図を出すと、ツルギがカンクロウに言葉による挑発をかけ、「速攻でケリをつける」と凄む。しかし、
「なら俺も・・・速攻でケリつけるじゃん。」
背負っていた包帯で何重にも巻いている物体を下ろし、堂々と宣言するカンクロウ。
そうして始まったこの試合は本当に速攻で終わってしまった。
バキッ!! ゴキッ!!
「骨まで砕けばもっとグニャグニャになれるじゃん・・・。」
「ぎ・・・ギブアッ・・・あぐわあぁああ!!」
「ただし・・・首以外にしといてやるよ。」
会場に何かが折れる音とツルギの悲鳴が響き渡った。
誰もがツルギの勝ちだと思っていた。しかし、それはカンクロウが傀儡師だったことによって覆された。
戦闘が始まってすぐ、ツルギがカンクロウを捕らえた。ただ捕らえたのではない。
情報収集の為、どこにでも忍び込めるようにと体を改造したツルギは、あらゆる関節をはずし、グニャグニャになった体をチャクラで操るという、人間離れした技を持っていた。
そのグニャグニャの体で巻きつかれたカンクロウは、「ギブアップしろ」というツルギの言葉を聞かず、挑発までして、仕舞にはゴキッと首の骨を折られてしまった。
これでツルギの勝ちは決まりだろう。
と、思われた次の瞬間、首を折られたはずのカンクロウが振り返り、ツルギの体を拘束していく。実は、カンクロウだと思われていたものは傀儡人形だったのだ。
本体のカンクロウはというと、初めにカンクロウが床に置いていた包帯でぐるぐる巻きにしていた物体にじっと隠れていたのだ。
そしてそのままツルギを拘束していた人形でツルギの骨を砕いたのだった。
「試合続行不可能により、勝者カンクロウ!!」
では続いて第四回戦を始めますね、とあっさり進めていくハヤテ。その時、ナルトはいまだに帰ってきていないミコトに疑問を抱いていた。そしてナルトと同じことに対して疑問を抱いていたのはもう1人。
――ミコトさん・・・第二回戦からいなくなっちゃったけど・・・どこにいったのかしらー・・・
白金の長い髪を高い位置で結わえている少女がため息をつく。
先ほどからこの少女はちらちらと火影様の横に立っていた金髪の青年を見ていたのだが、第一回戦が終わるとその青年はどこかへ行ってしまったのだ。
その青年は少女にとって憧れの存在だ。青年が見ているからがんばろうと思っていたが、もしこのまま戻ってこなかったら・・・と思うと、せっかくのその気合も下がってしまう。
少女はまたため息をついた。と、その時だ。
「おい、いの。さっきから何ため息ついてんだよ。」
メンドクセーと呟いている黒髪を結だ少年は同じ班である奈良シカマルだ。そして、
「そうだよ、いの。あれ見てみなよ。」
そう言ったのはぽっちゃり系の秋道チョウジだ。白金の髪の少女、いのはチョウジがどこかを指差していることに気づき、顔をそちらのほうに向ける。と、
「あ!」
そこにはハルノ・サクラVSヤマナカ・イノと書かれた電光掲示板があった。
会場の中央には2人の少女が睨み合っている。
彼女たちは第四回戦の対戦者たちだ。
「まさかサクラー。アンタとやることになるなんてね・・・。」
いのが目の前の少女、サクラに向かって呟く。すると、サクラはまるでリボンか何かのように頭にしていた額あてを取り去った。そして、
「今となっては・・・アンタとサスケ君を取り合うつもりもないわ!」
「なんですってー!」
サクラの言葉にいのは怒りの声を上げる。そんないのに対し、サクラはまだ続ける。
「サスケ君とアンタじゃ釣り合わないし・・・もう私は完全にアンタより強いしね! 眼中なし!!」
どうして突然そのようなことを言い始めるのか。
サクラはじっと睨み付けるようにこちらを見ている。
そんなサクラに対し、いのも顔には怒りを浮かべている。が、
――ありがとう、サクラ。
サクラの言いたいことが本当はそんなことじゃないのは気づいている。
サクラがこんなことを言うような子じゃないのは自分が一番知っているから。
これでサクラに言ってないお礼は2回目。
「サクラ・・・アンタ誰に向かって口きいてんのか分かってんの!! 図に乗んなよ泣き虫サクラがー!!」
自分に本気でぶつかろうと思っているサクラに応えなければ。
――それに・・・
いのはちらりと上にいる1人の人物を見る。それは金髪の青年。そう、ミコトだ。
いのたちが下におりるとほぼ同時に戻ってきたようで、今は火影様と何かを話している。
これからきっとミコトも自分の試合を見るはずだ。
こちらも負けるわけにはいかないのだ。
いのも腰に巻いていた額あてを取り去る。そして2人はそれをきっちり額に巻きなおす。
これは2人の決まりごと。
――正々堂々・・・勝負!!
2人が同時に駆け出すと、すぐにサクラが分身の術の印を組み、3人になっていのに迫る。
「アカデミーの卒業試験じゃないのよー。そんな教科書忍法で私を倒せると思ってんのー!」
いのは冷静にどれが本物かを判断しようとする。が、しかし、
「キャ!!」
いのは思い切り殴り飛ばされた。
突然目の前で速さの上がったサクラの拳が顔にあたったのだ。
「今までの泣き虫サクラだと思ってると、痛い目見るわよ。本気で来てよ、いの!」
そう言ってすごい剣幕で凄むサクラ。それに対し、
――やっと私の名前呼んだわねー・・・
いのは口の切れた部分を拭いながら立ち上がる。
思えば、サクラがサスケを好きだと言った頃からだろうか、サクラは自分のことをまともに呼んだことがなかったような気がする。
今の、本心からのサクラの言葉が嬉しかった。
いのはニッと笑うと、
「そう言ってもらえると嬉しーわ・・・お望み通り・・・本気で行くわよ・・・・・・!」
立ち上がり、再びサクラに向かって駆け出す。
そして取っ組み合うが、両者とも一歩も引かないためその場をザッと離れる。と、今度は手裏剣を投げ合う。しかし、その手裏剣も相打ちし、床へと落ちていった。
それは10分間にも及んだ。
――サクラ・・・いつの間にこんなに強くなったのよ!!
いのとさくらの拳がお互いの顔にガッと当たった。そのまま2人は後方へと吹っ飛び倒れてしまう。しかし、2人はすぐにまた立ち上がった。
会場には2人の苦しそうな息遣いが妙に耳に付く。
「アンタが私と互角なんて・・・あるはずないわよー!」
いのの叫びにサクラはフンと鼻で笑い、
「見た目ばかり気にしてチャラチャラ髪伸ばしてるあんたと・・・私が互角なわけないでしょ!」
いかにもいのは劣っているという態度で話すサクラにピクリといのは反応した。
いのの長い髪、これはサクラのために伸ばしたようなものだった。
自分を見てくれなくなったサクラに気づいて欲しくて、伸ばし続けていた髪。でも、
――もういらないわー
今こうして、サクラは自分をきちんと見てくれているから。
だからもうこの髪はいらない。
「アンタ! 私をなめるのも・・・たいがいにしろ!」
いのは左手で自分の髪を掴み、右手に持っていたクナイでザクッと切る。
「オラァァァァア!!」
こんなものー! と言って地面にその髪を投げつけると、キラキラと輝き舞いながら散らばっていった。
これでいいのだ。
「さっさとケリつけてやるわ! すぐにアンタの口から参ったって言わせてやるー!」
いのはさっと独特な印を結ぶ。すると、
「心転身をやるつもりだ!!」
同じ班の黒髪の少年の焦った声が聞こえてきた。あいつのあんな焦った声は珍しい。
「焦る気持ちも分かるけど、それはムダよ。」
この印を見てサクラはニコリと笑う。しかし、
「フン! どうかしらねー!」
そう言っていのはサクラを挑発する。すると、サクラはこの術について説明を始めた。
忍法・心転身の術とは、術者が自分の精神エネルギーを丸ごと放出し、敵にぶつけることにより、相手の精神を数分間のっとり、その体を奪い取る術。しかし、この術には重大な欠点がある。
第一に術者が放出した精神エネルギーは直線的かつゆっくりしたスピードでしか飛ばない。
第二に放出した精神エネルギーは相手にぶつかりそこねてそれてしまった場合でも数分間は術者の体にも戻れない。さらに言うならその間の術者の本体はピクリとも動かない人形状態になってしまうのだ。
「だからって何よー! やってみないと分かんないでしょ!」
いのはサクラを睨み付ける。
「はずしたら終わりよ・・・分かってるの・・・・・・ねぇ?」
そう言うと、サクラはザッと走り出す。それを見ていのは透かさず心転身の術を発動した。
それによりいのはガクリと急に座り込み、項垂れる。走り出したはずのサクラはその場にただじっと突っ立っていた。
いったい術は成功したのだろうか。
と、その時、サクラからフフ・・・と笑い声がもれた。そして、
「残念だったわね・・・いの。」
顔を上げたサクラはいのではなかった。
誰もがもうサクラの勝ちを感じただろう。だが、しかし、
「こ・・・これは!」
サクラの足に巻きついた髪の毛。それはいのが切り捨てたものだ。
「かかったわねサクラー。」
いのはいつの間にか顔をあげ、床に手をついている。その手からは髪が一本の縄のように繋がって、それがサクラの足を拘束していた。
「さっきの印を結ぶ行為はただの芝居。ちょろちょろ動くアンタをこの仕掛けに追い込むためのね。」
いのはニヤリと笑う。
「どう? 全然動けないでしょ。私の髪にチャクラを流し込んだ特製の縄よ。」
床についていた手をどけ、その髪でできた縄を足で踏みつけると、再び心転身の術の印を組む。これでこの術がもうハズれることはないのだ。
「これでアンタの体に入って“ギブアップ”って言えばおしまい! じゃ・・・」
――心転身の術!!!
今度こそ本当にいのの体はガクッと床に座り込んだ。
そしてサクラからはまたフフ・・・という笑い声がもれる。そして、
「残念だったわね・・・サクラ!」
顔を上げたサクラはサクラのはずなのに、いつもと違っていた。
それはいのの術が成功したからだ。これで勝敗は決まってしまった。
――じゃあね・・・サクラ
「私・・・春野サクラはこの試合・・・棄権・・・・・・」
サクラはスッと右手を上げ、この試合を終わらせるための言葉をつむぎ始める。が、しかし、
「ダメだぁっ!! サクラちゃん!!」
バッと振り返ったサクラの目には金色が飛び込んできた。サクラは目を見張った。それは、
――ミコトさん・・・?
いや、違った。
「ガンバってここまで来たのに・・・・・・ここで負けたら女がすたるぞー!!」
ミコトがあんな風に吼えるはずがない。そう、あれはナルトだ。
サクラの体でいのは軽く首を振る。
ナルトとミコトを見間違えるなんて、ありえない。今の自分は思っている以上にかなり疲れているようだ。
早く終わりの言葉を言わなければ。
でも、
――なんなのよー・・・!!
なぜか今のナルトの応援が気になって、心がモヤモヤしている。
ちらっとミコトを見れば、心配そうな面持ちでこちらを見ている。
その目にはどちらが映っているの?
サクラ? それとも私?
ミコトに、いや、誰でもいいから自分の名前を読んで欲しいと思った。と、その時、
――・・・ナルトの奴うるさいわねー・・・
頭の中に聞こえてきたのは体の持ち主であるサクラの声。
――それにしてもそうだわ・・・私がこんな奴相手に・・・
サクラが目を覚ましたらしい。
いったいどういうことなのか。今までこんなことはなかった。
頭が割れるように痛い。
「どうしたんですか? 棄権ですか?」
審判の声が聞こえる。そうだ。自分はなんとしても勝ちたいのだ。早く言ってしまわなければ。“棄権する”のたった一言。しかし、
「棄権なんかして・・・・・・たまるもんですかーーーーッ!!」
開いた口から出たのは否定の言葉。
頭の中では自分よりもはるかに大きなサクラが早く出て行けと手で握り締めてくる。
これではこちらのほうがもたない。
――解!!
いのはすぐに自分の体へと戻っていく。その途端に膝をついたサクラ。
「精神が2つあるなんて・・・あ・・・あんた何者よ!?」
いのは荒い息をしながら、自分の精神を追い出してしまったサクラに驚きの声を上げる。
「ふ・・・知らなかった? 女の子はタフじゃないと生き残れないのよ!!」
同じくサクラも荒い息をしながらいのに言葉を返す。
もう2人とも疲れ果てている。が、ゆっくり立ち上がると、ニッと笑って駆け出す。そして、
ガッ!!!!
2人の右拳はお互いの右頬を殴りつけた。
――あ・・・
いのは目の前が薄れていくのに対し、頭の中に鮮明に見えてきたのは、
――コスモスとふじばかまとそれから・・・
優しく笑った幽霊みたいな女の子。
フッと幸せそうに笑うといのの意識はそこで途絶えた。
ドサッと2つの倒れた音のあと、この試合の終わりを告げるハヤテの声が会場に響いた。
あとがき
予選の戦闘は飛ばして書いてしまおうかと思ったのですが、せっかくなので粘って書いています。でも、一番かわいそうなのはシノさんです。
シノさんは冒頭のナルトさんの話の中で終わってしまっています。
このお話の中で、予選後に入れる番外編の内容が少しだけ出ていました。
予選後の番外編は楽しく読んでいただけるよう、がんばりたいと思います。
次はちょっと番外編らしきものです。
よろしかったら、お読みください。