最近めっきりこなくなったねぇ・・・
ん?誰って、そりゃぁミコトちゃんよ。
ミコトちゃんは勉強熱心だったからいつも本を読みに来てくれてねぇ。
私が見込んだだけあるよ!
ミコトちゃんたら、15歳で特別上忍になったんだから!
そんなミコトちゃんももう22歳。いい男になったよまったく。
でもね、やっぱり忍者ってのは大変なんだろうねぇ・・・。
ここ最近近く、全く来てないのさ。
そのミコトちゃんの代わりに来るようになったのが・・・
NARUTO ~大切なこと~ 番外編 『本屋のおばちゃん』
「おばちゃ~ん!!新しい医療の本入ったぁ!?」
バンッ!と店の中に入ってきたのは金髪青目の元気な少年。
「・・・入ったよ。」
ほれ。と本屋のおばさんは少年の言った本を投げ渡す。少年はおっと、と言ってキャッチし、本の表紙を見て目を輝かせ、パラパラとページをめくり始めた。
――ミコトちゃんと同じ色を持ってるんだけどねぇ・・・。
あの「ナルト」じゃぁ全然違って見えるねぇ。
おばさんはため息をつく。そう、ミコトが来なくなってから、この有名な少年、「ナルト」が来るようになったのだ。こちらの嫌そうな態度をナルトは本を見ながらも、ちらちらと伺っている。
――こいつもミコトちゃんと同じで医療忍者を目指してるなんて・・・
おまえなんかには無理だよ、と心の中で罵倒する。
おばさんがはっきりとナルトにものを言わないのは、ナルトが一応この店の常連だからである。ナルトはかなり高額な医療の本を買ってくれる。とても高い医療の本はなかなか買い手がいない。そんな本を好んで買ってくれるなら、こちらとしては大助かりである。
「ちゃんとそれ買えるのかい?今までのよりずっと高いよ。」
「大丈夫ってばよ!この前Cランク任務もらって、お金貯めてきたからさ!」
ナルトは今下忍である。アカデミーを卒業したと聞いた里人たちは大いに恐れたが、今のところ何も起こってはいないため、そのままにされている。
――ま、私はきちんとお金さえ支払ってくれればいいさ。
心の中ではそんなことを思っているが、思い出すのはある日に商店街で見かけたこの少年こと。
「お前なんかに売るものなんてねぇよ!!」
帰んな!!
昼前の商店街。たくさんの里人で賑わっている中、大きな罵声が飛んだ。
その時たまたま通りかかっていた本屋のおばさんは、何事かと思い、声のほうへと顔を向けると、そこには八百屋の前でポツンと突っ立っている金色の子供。
――ああ、噂の。
オレンジ色の服に、見事な金色の髪、あれは噂の「ナルト」だ。そいつはなんでも、先日下忍になったらしい。少し前まで忍術アカデミーに通っており、落ちこぼれのドベで、2回も卒業試験に落ち、今年やっと卒業したダメ忍者。
おばさんはそいつを見て不愉快に思う。バケ狐のくせに、それは自分のかわいがっているミコトと同じ色を持っているからだ。そんなやつをもう視界に入れたくないとばかりに目を逸らしたその時だった。
「あぁ・・・!!」
悲鳴とともに次々に何かが落ちる音がする。おばさんはすぐにそちらへと顔を向ける。と、そこには地面に膝をついている1人の老婆。その老婆の周りには色鮮やかな果物が転がっていた。
――あのおばあちゃん・・・確か目が悪いのよね。
何かにつまずいてしまっただろう老婆はよく見かけることがある。その見かけるときは決まってミコトがいたのだ。
老婆は目が悪いため、1人で買い物が困難だった。それに気づいたミコトは以前から荷物持ちを進んでしていた。その光景は実に微笑ましいものだ。しかし、今日はいつも付き添っていたミコトがいない。そういえば最近、自分の店にも訪れないミコト。
――やっぱり・・・忍者ってのは忙しいのかねぇ。
おばさんは軽くため息をつき、まだ動けないでいた老婆に手を貸そうと思った時だった。
「おばあさん、大丈夫ですか?」
老婆を立たせて、足についた泥を払い、にこりと微笑んだ「ナルト」。老婆はその少年を見てただ呆然としている。ナルトは落ちていたリンゴやオレンジを老婆の持っていた袋に入れなおし、その袋を抱きかかえるように持った。
「僕が家まで運びますよ。」
そう言って優しく微笑むナルトに、老婆はハッとして初めてそこで口を開いた。
「ありがとう、ミコトちゃん。」
老婆が微笑んだ。するとその言葉にナルトは苦笑をしていた。
その老婆はとにかく目が悪かった。ものの輪郭などがぼやけてしまい、唯一まだ分かるのは色彩くらいだ。「ナルト」の色彩だけを見れば「ミコト」と勘違いをしてもしょうがないだろう。
ナルトはその言葉を否定せずに荷物を片手に持ち直し、老婆の手を取ったその瞬間、
「ばあちゃん!!そいつの手を離しな!そいつは」
あの“ナルト”だ!
その言葉に金色の少年の顔が強張った。繋いでいるおばあさんの手が震えているように感じた。いや、震えているのは自分の手だった。
大声でそう叫んだのは先ほど「ナルト」を追い出していた八百屋の男だった。この里では子供以外、「ナルト」を知らない者はいない。
男はすごい形相で「ナルト」を睨みつめている。ナルトには背後にいるおばあさんの顔を見ることができなかった。震えている手をおばあさんから離そうとしたその時、
「あなたナルトちゃんって言うのねぇ。」
後ろから聞こえてきたのは老婆の声。ナルトは恐る恐る振り返った。老婆の声音はとても優しかった。いったいどんな顔をしているのだろうか。
「ごめんねぇ、私、目が悪いから、知り合いの男の子と間違えちゃったみたい。ナルトちゃん、」
荷物お願いしてもいいかしら?
そう言った老婆の顔は柔和に微笑んでいた。それを見た瞬間、ナルトの体の震えが止まった。その手はしっかりと繋がれたまま。
「・・・うん!」
ナルトが返事をすると、ますます笑みを濃くした老婆。2人はそのままゆっくりと商店街を後にしたのだった。
本屋のおばさんはそれをただじっと眺めていた。最後に見せた「ナルト」の顔。
泣きそうな顔をくしゃっとして、いかにも笑うのに失敗してしまったというような微笑みが忘れられなかった。
それからというもの、商店街では「ナルトちゃん」と呼んでいるおばあさんの声と、それに嬉しそうに付いて歩いている「ナルト」が見かけられるようになったのだった。
本をめくる音でハッとしたおばさん。
その音のした方を見れば、もう4分の1ほど読んでしまっているナルトが目に入ってきた。どうやら長いことぼうっとしていたらしい。
ああ肩が痛い、と言ってナルトを視界にいれないように後ろを向いてから、おばさんは肩を回し始めた。あの時見せた顔が忘れられないが、なんといっても目の前の少年はあの「ナルト」だ。やはり、嫌なものは嫌である。
回している肩は一向に良くなる気配がない。
――ミコトちゃんが来てくれるときは、いつも治療してもらってたからねぇ。
13歳の頃から来ていたミコト。いつもお金も払わずに読ませてもらっている代わりだと言って、腰痛や肩こりを治療してくれていたのだ。
本屋の仕事は重労働もある。本の持ち運びはもちろんのこと、こうやってお客を待つのにずっと座っていたりするのだから、身体が悲鳴を上げるのも時間の問題だ。
歳には勝てないねとため息混じりに呟き、今度は首を回した時だった。
――・・・あれ・・・肩が痛くない・・・?
ふと突然肩が軽くなったように感じた。それと同時に肩に別の重みを感じ、見てみると、そこには小さな手があった。その手を辿っていくとたどり着いた先には、閉じた本を片手に持った「ナルト」がいた。
「ナルト」は振り返って目が合ったおばさんに、にこりと微笑む。
「おばちゃん、無理しちゃダメだってばよ!」
お金置いていくね!!
と言って本を持って「ナルト」は飛び出していった。
おばさんはあっという間の事に目をぱちぱちとしている。と、今の出来事にふと違和感を覚えた。
「あれ・・・?」
今の言葉はそう、
――「コムギさん、無理しないでくださいね。」
そう言って微笑む金髪の青年。
おばさんの目に映った今の「ナルト」と重なったあの青年。
――・・・・・・なんだいミコトちゃん・・・そういうことだったのかい。
おばさんは少年が出て行って虚空になった店の中をぼんやりと眺めていた。
――コムギさん・・・肩こりがひどかったです。
明日にでもまた行ってあげましょう。
本を持って自分の家まで走っているナルト。心の中では本屋のおばさんのことを思って。
次の日。里のとある本屋を覗いてみると、
「コムギさん、肩こりがひどいですよ。」
無理はよくありません、と金色の青年が本屋のおばさんの肩に触れて注意している。
「なぁに!まだまだ若いもんには負けられないよ!」
はっはっはと笑うコムギに青年は苦笑する。と、コムギの笑い声が突然止まった。
どうしたのかと青年は治療していた手を止め、コムギに顔を向けると、そこにはやけに真剣な面持ちをしたコムギの顔があった。
「ねぇミコトちゃん。」
「はい?」
どうしたんですか?とにこりと微笑むミコト。その笑みにコムギはさっと顔を背けて、ポツリと呟いた。
「あの坊主・・・いつでも来いって言っときな。」
本代は・・・肩こりと腰痛の治療してくれればいいよ。
それはほんとに小さな呟きだった。
ミコトは一瞬何のことだかわからず、きょとんとする。が、その言葉の意味がわかり次第に満面の笑みへと変わり、
「はい!」
と、嬉しそうに返事をした。
その後、その本屋には金髪の青年が来ることはなかった。
が、しかし、
「おばちゃん!今日も来ちゃったってばよ!」
「お!ナル坊!ちょうどよかった。今肩が痛くてねぇ。」
「よぉし!まかせろってば!」
その本屋の前を通ると、よく2人の明るい声が聞こえるようになったそうだ。
あとがき
ナルトさんと里人のちょっとしたお話でした。
オリキャラができてしまいました!
本屋のおばさんは名前を考えていなかったのですが、電車に乗っていてふと思いついたので勝手につけてしまいました。
ついでにおばあさんはヨモギさんだそうです。どうでもよい設定ですね。
次からやっと原作沿いにもどります。
もう、本当に下手な小説で申し訳ございません!!