カカシ先生が倒れてから、なんとか先生を連れてタズナさんを家まで送ることができました。
写輪眼を酷使すると、体にかなりの負担があるようですね。
そうですよね。カカシ先生の写輪眼はきっと開眼したままのものを移植したのでしょう。
だから額あてで隠していないと、常にチャクラを消費してしまいます。
それでもそれを受け入れたカカシ先生の覚悟はとてもすごいです。
しかし・・・あの再不斬という人物・・・
あった時はどこか感情が欠落していると思ったのですが、
カカシ先生との対戦で焦っている姿を見て。
あぁ、人間だと思えました。
霧隠れの里の卒業試験・・・
今では行われていない生徒同士の殺し合いを経験された方にしては
とても人間らしいと思いませんか?
そんな経験をして感情があんなにあるのは・・・
大切な人がいるのでしょうか。
それはあの仮面の子?
あの仮面の子の千本の技術はとてもすごかったです。
一瞬で正確に仮死のツボに入れるなんて、相当の使い手です。
あ、カカシ先生がみんなに暗部・・・追い忍について説明しています。
死体処理はその場で処理するか、殺した証拠に首だけを持ち帰ればいいんですか・・・。
へぇ。
ますます仮面の子は再不斬の仲間だと断定できますね。
・・・・・・はぁ。
NARUTO ~大切なこと~ 第20話
「おそらく再不斬は生きている!」
上体を起こしたカカシがあの仮面を被った追い忍の怪しい点を上げ、そう叫んだ。
その言葉に部屋の者たちは息を呑む。しかし、その中に1人だけけろっとしている者がいた。
「そんなの当たり前だってばよ。」
この口調、ナルトだ。
ナルトの言葉に驚き、みな一斉にナルトの方を向く。それを見てナルトは続けた。
「だって、あの千本は仮死のツボを突いてたってばよ。」
あの仮面すっげー千本の使い手だ!と、首のおそらくその仮死のツボというところを指さしながら言う。それに対し、
「ナルト・・・お前それわかっててなんで言わなかったんだ・・・。」
カカシがギロリとナルトを睨む。が、ナルトはそんなカカシに対し白い眼を向けた。
「あ、確か、あの仮面の子が木から下りてきた時、カカシ先生に何か言おうとしていたわよね・・・。」
それってこのこと・・・?と尋ねたのはサクラだった。その言葉にナルトが大きく頷く。
そう、あの時カカシにこのことを指摘しようとしたのだ。
「あんた・・・本当に医療の勉強してたのね・・・。」
いかにも意外という口調と眼でサクラはナルトを見た。それにはさすがのナルトもガックリと肩を下げて落ち込む。その落ち込み様に慌てたサクラは、
「ねぇ!ナルト。カカシ先生の身体は治してあげられないの?」
と、医療を勉強しているというナルトに、何かできないのか尋ねた。その質問にう~んと腕を組んでナルトは唸っている。そして、
「こればっかりはすぐにはなんとかならねーってば。」
これはかなりのチャクラの消費によるもの。
傷などであればなんとかできるが、チャクラは休むか何かして回復するのを待つしかない。
ナルトの言葉を聞いたサクラはなんだ使えないわね、と吐き捨てる。ナルトはただ苦笑いをした。と、その時ナルトはふと思い出したように言う。
「あの仮死の状態から完全に回復するには一週間くらいはかかるってば。」
先生もその頃には治るよね?とカカシの方を見て首を傾げる。カカシはその言葉に頷き、肯定を示すと、
「お前たちに修行を課す!!」
と子供たちに告げた。
それを聞いたサクラはちょっと修行しただけでたかが知れているとカカシに訴えるが、カカシはにこりと笑う。
「サクラ・・・苦戦している俺を救ったのは誰だった・・・。」
お前たちは急激に成長している、と子供たちを見渡す。
――とくにナルト・・・
お前は何をまだ隠し持ってるんだろうね。
カカシはちらりとナルトを盗み見るが、ナルトは何も気づいていない素振りで、カカシの“成長している”という言葉に喜んでいる。と、その時だ。
「おおイナリ!どこへ行ってたんじゃ!!」
タズナが部屋に入ってきた帽子を被った少年、イナリに声をかける。
「イナリ、ちゃんとご挨拶しなさい!おじいちゃんを護衛してくれた忍者さんたちだよ!」
イナリの母であるツナミも声をかけるが、しかし、
「母ちゃん・・・こいつら死ぬよ。・・・ガトー達に刃向かって勝てるわけがないんだよ。」
ナルトたちを指差してイナリは呟く。
――・・・・・・。
ナルトは目を鋭くしてイナリを見つめる。
そのイナリの目がとても暗くて、胸にチクリと何かが引っかかった。
どうしたらそんな苦しそうな目になるのだろうか。
ガトーだけが原因ではないように思う・・・。が、まずはガトーをどうにかしなければならないようだ。
「イナリ!ガトーは俺が何とかしてみせるってばよ!」
俺がヒーローになってやる!!
ナルトはイナリに向かって拳を突き出して叫んだ瞬間だった。帽子で顔が隠れていたイナリはナルトを睨みつけるように見て、
「ヒーローなんてバッカみたい!!」
そんなのいるわけないじゃん!!
そう言ってイナリは部屋から飛び出してしまった。サスケやサクラは突然のことに驚愕しているが、タズナやツナミはどこか暗く沈んでいる。
部屋はしんと静まり返ってしまった。
――“ヒーロー”という言葉に何かあるのでしょう・・・ね。
イナリの過剰な反応でそれはすぐにわかった。
ナルトは失敗してしまったとしゅんと反省する。
静寂の中、イナリの態度に対してタズナが4人に謝ると、カカシが口を開いた。
「お前ら外でちょっと待っとけ。」
今から外で修行の説明をする。
暗くなった場の雰囲気を変えようと、3人にそう告げる。
3人はその言葉に素直に従い、部屋から出て行く。が、サスケとサクラが部屋から出ると、ナルトが「あ」と言ってカカシの方へと振り返った。その顔は目を細めて笑っていた。
カカシが「どうした?」と声をかけると、ニッと笑って、
「万華鏡写輪眼まで使いこなせるようになったら、通常の写輪眼では倒れなくてすむようになる・・・」
先生ならできるってばよ。
そう言い残しナルトは部屋から出て行った。
カカシはその言葉にしばし呆然とした。
あいつは今なんと言っただろうか。
“万華鏡写輪眼”とは写輪眼よりさらに上の段階の瞳術のことだ。
しかし、それを開眼できた者はほとんどいない。
いったいなぜナルトはその名を知っているのだろうか・・・。
「あいつ・・・ほんとどこまで知ってるんだろうね・・・。」
その呟きを聞いたものはいなかった。
仮面の子供が再不斬の死体を前にして持ってきていた布切りバサミをスッと左手に構える。
「まずは口布を切って・・・血を吐かせてから・・・。」
仮面の子供は口に出して今から行う手順を確認している。そしてハサミを再不斬の口を覆っている包帯へ近づけた瞬間だった。
「いい・・・自分でやる・・・。」
「なんだぁ・・・もう生き返っちゃったんですか・・・。」
さっきまで死んでいたはずの再不斬がガシッと仮面の子供の腕を掴み、自分で首に刺さっていた千本を引き抜き、血を吐き出した。
「お前、いつまでそのうさんくせー面つけてるんだよ。」
再不斬の指摘で思い出したかのように、その子供は仮面をはずす。
「僕が助けなかったらあなたは確実に殺されていましたね。」
そう言って子供は並べていたハサミの数々を片付け始める。それを見ながら再不斬が口を開いた。
「仮死状態にするならわざわざ首の秘孔を狙わなくても・・・相変わらず嫌なヤローだな・・・」
お前は・・・
その言葉を聞いて子供はそうですね!と言ってにっこり笑う。それを再不斬はどこか複雑な気持ちをのせた目で見ている。と、
「一週間程度はしびれて動けませんよ。でも・・・再不斬さんならじき動けるようになりますかね。」
次・・・大丈夫ですか?
子供はまたにっこりと再不斬に向かって微笑む。
「ああ、・・・次なら写輪眼を見切れる。」
2人の周りはいつの間にか霧が晴れていた。
カカシと子供たち3人が今いるところは高い木が立ち並ぶ森の中。ここが修行場だというならば、することは1つ。
――木登りですか。
最近していませんでしたねぇ、とナルトは木を見ながらそんなことを思う。
両脇に松葉杖を挟んで立っているカカシは修行の内容を話し始めた。
「お前らには木登りをしてもらう。」
その言葉にサクラとサスケは不思議そうな顔をする。それを確認したカカシは続ける。
「それはただの木登りじゃぁない。」
ま!見てろ
そう言って木のそばへ近づくと、そのままスタスタと木の表面を垂直に歩き始めた。それには2人も驚愕する。そしてカカシは上の方の太い枝で逆さまの状態になるとニコリと笑って、
「チャクラを足の裏に集めて木の幹に吸着させる。チャクラは上手く使えばこんなこともできる。」
と言って下にいる3人を見る。
「この修行によってチャクラのコントロールとそのバランスよくコントロールされたチャクラを維持するスタミナを同時に身につけることができる。」
カカシは3人の前にそれぞれ1本ずつクナイを投げる。
そのクナイを使って今の自分の力で登りきれる高さの所に印をつけるのだ。
「お前らは初めから歩いて登るほど上手くはいかないから、走って勢いにのり、だんだんとならしていく・・・」
いいな!
それを合図にサクラとサスケがそれぞれの木に向かって走り出した。しかし、
――僕はこの修行に1ヶ月もかかりましたねぇ。
ナルトはのほほんと2歳の頃を振り返っていた。
バキィ!!
サスケが木を数歩登ったところではじかれた。チャクラが強すぎたのだ。
「ナルト、お前は行かないの?」
カカシはボーっとしているナルトに声をかける。それにナルトはハッとして、ちらりとサスケを見ると思い切り走り出し、
「いってぇぇ!!」
木に登る一歩目からツルッとこけ、後頭部を思い切り地面に打ち付けた。
頭を押さえて悶えているナルトを見て、思わずカカシはため息をついた。
――・・・やっぱり、あれは見間違えだったのか・・・
カカシは再不斬との対戦でナルトが水の上に立っていたように見えたのだが、たった今それが見間違いだと確信した。と、その時、
「案外簡単ね!」
サクラはすでに木の上の枝に座り、舌をチロっと出してへへへと笑っている。
それを見たカカシはサクラを誉める。サスケはチッと舌打ちし、悔しがっている。
――サスケはこれができるようになったらかなり成長することができます。
それまで僕が付き合います。
ナルトは悔しがるサスケの様子を見て、微笑む。
サスケにはサクラとは比べものにならないチャクラの量を秘めている。このチャクラコントロールができるようになれば、大いに前進することは間違いないだろう。
そしてまたサスケが木に向かって走り出す。それに続けてナルトも木に向かう。が、再びゴツンッと後頭部を打ち付けていた。
そんな修行の風景を木陰からこっそり帽子を被った少年が見ていた。
「あんたまでやられて帰ってくるとは、霧の国の忍者はよほどのヘボと見える!!」
再不斬がベッドで横になり、その隣に子供が椅子に座っていたところに、そう言って扉から入ってきた丸いサングラスをかけた小柄な男、ガトーだ。ガトーは傍らに2人ボディーガードを引き連れている。
「部下の尻ぬぐいもできんで何が鬼人じゃ・・・」
笑わせるな!
ガトーはズンズンと再不斬たちの方へと近づいていく。しかし再不斬はガトーの言葉にも全く反応を示さない。歩いていたガトーの前に2人のボディーガードが立ち、腰に差している刀をいつでも引き抜けるように構えた。それを子供はちらりと確認する。
「まぁ待て。」
ボディーガードたちを制し、テクテクとガトーは再不斬のそばへと近寄り、いつまでも黙っている再不斬に痺れを切らし、手を伸ばした瞬間、
「汚い手で再不斬さんにさわるな・・・。」
ガトーの腕を掴んだ子供から低い声が発せられる。そして子供はそのまま掴んでいる腕に力を入れてゴキリとガトーの腕を折ってしまった。それには透かさずボディーガードたちが子供に向かって刀を向けようと鞘から抜こうとしたその時、
「やめたほうがいいよ・・・僕は本気で怒っているんだ・・・。」
その2人の間にいつの間にか立っている子供。そしてその2人の首筋には2人が鞘から抜くはずだった刀が添えられている。それはなんて速さだろうか。子供から出ている殺気に冷や汗が流れ始める。
「次だっ・・・次失敗を繰り返せば・・・ここにお前らの居場所はないと思え!!」
子供の強さに圧倒され、えらそうにしていたガトーはボディーガードをつれて慌てて扉から出て行った。
「白・・・余計なことを・・・。」
白と呼ばれた子供はやっと声を出した再不斬の方へと振り返る。布団を軽く持ち上げ、中を見ると、再不斬の手にはクナイが握られていたのだ。それを見て「分かっています」と呟いた白は、またもとの椅子に座る。そして、
「今ガトーを殺すのは尚早です。ここで騒ぎを起こせばまた奴らに追われることになります。」
と言って再不斬に微笑みかける。先ほどの冷酷な表情が嘘のようだ。
「・・・ああ」
そうだな。
そう呟きながら天井を見ている再不斬はどこか悲しげな目をしていた。
「いってぇぇ!!」
ナルトは木から落ちて何度もぶつけた頭の痛みに耐えている。その頭には何重ものたんこぶがある。そんなに頭をぶつけて脳細胞は大丈夫だろうか。頭を押さえているナルトはというと、
――みんなで修行するのは楽しいですね!
姉さんがいなくなってからいつも1人でしたから。
心の中では痛みとは関係ないことを思っていた。
そんなナルトのそばの木の根元近くに幾重にもクナイの傷があるが、それは修行を始めてからほとんど上達していないことを示している。
近くにいたサスケもほぼ同じような状態の木のそばで息を荒くつきながらしゃがみこんでいた。
――このままじゃ埒が明きません。
修行を始めてから、木登り以外何も行動を起こさないサスケを見てそう判断したナルトは、木にへたり込んでいたサクラを見る。
サクラは、ナルトがそろそろ駄々をこねるだろうなぁなんて予測している顔でこちらを見ていた。それを都合が良いと思い、「くそ!」と呟いて、
「あのさ!あのさ!コツ教えてくんない?」
わざとサスケに聞こえるようにサクラに尋ねた。
その問いにサクラはちょっと意外だという顔をしたが、しっかりコツを教えてくれた。
チャクラを絶えず一定量を出すにはリラックスした状態で集中すること。
それはチャクラを使うのに基本的なことだ。
――これでサスケが少しでも変わってくれたらいいのですが・・・。
ちらりとサスケを見ると、こちらを少し気にしているようだったので、ナルトは思わず目を細めて微笑んだ。
「どあぁあ!!」
ナルトが思い切り叫びながら木を駆け登る。
隣の木には同じようにサスケが木を駆け登っていた。
サスケはやっと木の半分より上の方まで登れるようになった。
今そこには2人しかいない。
サクラは木登りが完璧にできるようになったので、タズナの護衛任務にもどったのだ。
――なかなか手強いですね。
ナルトはサスケを見ながら思う。
ナルトがサクラに木登りのコツを聞いている時、ちらちらと視線をこちらの方に向けていたサスケだが、尋ねてくる気配はない。
ナルトは駆け上っていた木をクナイで傷つけ、地上へともどる。もちろん今登っているサスケよりも下のところで降りている。
――少しでも早く力をつけたいのなら、
自分がほしい力を持っている人に尋ねるのが一番早いです・・・。
それは本当に簡単なことだ。
自分が上手くいかないことを1人でずっと練習しても、上手くいかないことのほうが多いだろう。そのままずっと1人で続けていては上手くいかないことに対して焦りを募らせ、そしてまた失敗してしまう。それはまさに悪循環だ。
まだ自分を自分で冷静に見つめることができないのならば、他人の目を借りるしかない。
そうすることで視野を広げるのだ。
今サスケは冷静さに欠けている。
彼が人に尋ねることをしないのは、きっとプライドのせいだろう。
成長を妨げてしまうプライドなど、捨ててしまえばいいのに。
――それを教えるにはどうすれば・・・
ナルトはまたすぐには木に登らず、悩んでいるその時だった。
「おいナルト!」
振り向くと地上にもどっていたサスケが頬を少し赤くして目線をどこかにそらしているが、とりあえずこちらの方を向いているのは確かだ。そして、
「サ・・・サクラお前に何て言ってた・・・?」
そう言ってサスケはますます頬を赤くする。
そんなサスケを見てナルトは一瞬きょとんとするが、
――まずは第一歩・・・ですね。
サスケを見ながらフッと微笑んだ。
やっと彼はプライドを捨てたのだ。
そんな彼にナルトはこう言ってあげた。
「教えな~い!!」
その場が凍りついた瞬間だった。
サスケの顔は引きつっている。一方、ナルトはニコニコと笑っている。
――教えなくても彼は落ち着きを取り戻しましたし、もう大丈夫です。
内心ではそんなことを考えているナルトだったが、サスケが尋ねてくるのにちょっと時間がかかったため、意地悪しようと思ったのは内緒だ。
あとがき
申し訳ありません!!
波の国のお話は4話と書いていましたが、書いているうちに全部で5話になってしまいました。本当にすみません。
あと2話で終わりです。すぐに更新したいと思います。