無事下忍の試験にも合格できました。
何回か任務もこなしています。
でもどれも報酬が少なくて・・・買いたい医療の本がまだまだ買えません・・・。
いつまでもミコトの姿で立ち読みは申し訳ないですからね!
ミコトはまだ見習いのため、任務にはついていませんし、
もう少し下忍でも高いランクをお願いしてみましょうか・・・せめてCランクのものを・・・
聞いてもらえればいいのですが・・・。
とりあえず!今日は迷子のペットの捜索です。
この森は・・・今日朝の散歩で来たところですね。
先生が懐から何やら出しています。
あ、写真か。
その写真のペットを探せばいいんですね。
・・・ん?
この猫は・・・
NARUTO ~大切なこと~ 第18話
「プー助。」
「「「・・・はぁ?」」」
ナルトの呟きに、カカシ、サクラ、サスケの3人の間抜けな声が見事にハモる。
そのハモりにナルトはコクリと首を傾げ、口を開いた。
「これプー助だってばよ。」
この右耳にリボンつけた猫、今日の朝友達になったってば。
3人はその言葉を聞いて胡散臭そうな眼でナルトを見る。その視線に気づき、ナルトは頬を膨らませ、ほんとなんだってば!と言い張っている。
「・・・その、プー助ってお前・・・まぁなんだ!こいつの名前はトラだ。」
今から探して来い。とカカシが3人に指示を出す。が、ナルトは何故かその場で思い切り空気を吸い始める。そして、
「プー助ーーーーー!!!!」
突然、大声で叫んだ。
しーん、と静まり返る空気。しかし、どこからともなく地を走る小さな獣の足音がだんだんと近づいてくる。と、その時だ。
「にゃーーーー!」
一匹の猫が藪から飛び出し、綺麗な空中回転を決めてナルトの腕の中へと納まった。その猫はゴロゴロとのどを鳴らし、ナルトの胸に頭をこすり付けている。
「「「・・・・・・。」」」
突然のことに唖然とする3人。
そんな3人の様子に気づいていないナルトは優しく猫の喉を撫でていた。
本当にその猫は写真どおり、右耳にリボンをつけた猫だった。
「お前、トラって言うんだな!」
ナルトは猫を両腕で高く掲げて微笑んでいる。そのナルトの声にやっと我に返ったカカシは、
「よ、よし、迷子のペット“トラ”捕獲任務終了!」
換金所にもどるぞ!と元気よく言うものの、今日の任務はなんとなく納得行かないと思うサクラとサスケだった。
「ああ!私の可愛いトラちゃん!死ぬほど心配したのよぉ~。」
いい体格をした女性、火の国の大名の妻であるマダム・しじみが先ほど捕獲してきた猫をぎゅうぎゅうと抱きしめている。トラはその締め付けに窒息しそうだ。
「あぁ、プー助・・・。」
ナルトは思わず猫に向かって手を伸ばし、自分でつけた猫の名を呼ぶ。
「プー助じゃないでしょ。あれはトラよ。」
それに“プー助”って微妙・・・とサクラは思わず突っ込みを入れる。
マダム・しじみは大人しくなった猫を抱いて、依頼料を支払って帰っていった。
そこへゴホンッと咳払いをかける人物、
「・・・さて!カカシ隊、第7班の任務はと、」
それは三代目火影様だ。火影様は依頼に対してその能力に合った忍者に任務を振り分ける仕事もある。
「んー・・・、老中様のぼっちゃんの子守に隣町までのお使い、芋ほりの手伝いか・・・」
どの任務も忍びとしては物足りないものばかりだ。この内容に対して透かさず
「ダメーーーッ!そんなのノーサンキュー!!」
俺ってばもう少しランクの高い任務がやりてーの!とナルトが腕を交差させて、バツの形にして反対の声を上げる。
――・・・一理ある・・・
――もーめんどいやつ!
――はー・・・そろそろダダこねる頃だと思った
上からサスケ、サクラ、カカシの心の呟きである。
ナルトの言葉に、火影様の隣に座っていた鼻の上に一文字の傷がある中忍、イルカが怒鳴り声を上げる。
「バカヤローー!!お前はまだペーペーの新米だろーが!誰でも初めは簡単な任務から場数を踏んで繰り上がってくんだ!」
隣の火影様はやれやれと言いながら、被っている“火”の文字が書いてある笠をいじりながらその場が収まるのを黙って見ていた。
「だってさ!だってさ!お金が「いい加減にしとけ、コラ!」っ!!」
足りないんだってばよう!と言おうとしたところをカカシは言葉とともにゴチン!とナルトの頭に拳骨を落とす。それでもナルトは、頭を抑えながらだって、だって・・・と呟いている。その様子にため息をついた火影様。
「ナルト!お前には任務がどーいうものか説明しておく必要があるな・・・。
いいか!里には毎日多くの依頼が舞い込んでくる。
子守から暗殺まで。
依頼リストには多種多様な依頼が記されておって、
難易度の高い順にA・B・C・Dとランク分けされておる。」
火影様は丁寧に説明し始める。しかし、
「あの本を買うにはあと・・・両か・・・。」
はぁ・・・とため息をついているナルトとどこか上の空のカカシ。全く話を聞いていなかったようだ。
「きけぇぇぇい!!!!」
思わず火影様もその2人の様子に怒鳴り声をあげてしまう。
それに素直に謝るカカシ。だが、
「あーあ!そうやっていつも説教ばっかりだ!けど俺ってば、早く医療忍者になるためにどーしても買いたい本があるんだってばよ!!」
こんなわがままを言ってすみません、と心の中で謝るナルト。
この言葉を聞いてイルカはハッとし、拗ねているナルトを見て優しい笑みを作る。
その様子に気づかないナルトはサクラに「あんた医療の本なんて理解できるの?」とからかわれ、「俺ってば早くいっぱいの人を助けられる医療忍者になるの!」と言い返していた。
それを見ている火影様も思わず顔を緩ませる。そして、
「分かった。お前がそこまで言うならCランク任務をやってもらう。」
ある人物の護衛だ。
ナルトはそれを聞いて顔を輝かせる。
「ありがとうってばよ!!」
素直にお礼を言うナルトを視界におさめた火影様は依頼人に部屋に入ってもらうように促す。そして入ってきた人物は、
「なんだぁ?超ガキばっかじゃねーかよ!」
酒を片手に、入ってきた扉に寄りかかる体格の良い老人だ。その老人がまた口を開く。
「とくに、そこの一番ちっこい超アホ面!お前それ本当に忍者かぁ!?」
お前ぇ!
その台詞にナルトは左右に立っているサクラとサスケをキョロキョロと見る。
「お、俺だ・・・。」
ナルトはずーんと肩を下げる。
――もっと寝ないとダメですかね。
睡眠時間はいつもバラバラですからねぇ、と心の中で呟く。
落ち込んでいるナルトにサクラは口を開く。
「医療忍者になるなら、まず背を伸ばす忍術でも考えたら?」
サクラに馬鹿にされ、ナルトはますます落ち込んだ。それを無視して老人は話を続ける。
「わしは橋作りの超名人、タズナというもんじゃわい。わしが国に帰って橋を完成させるまでの間、命をかけて超護衛してもらう!」
「出発ーーー!!」
ナルトが木の葉の里の出入り口である門のところで叫ぶ。
あの後、護衛につくためにカカシたち4人は必要な荷物を準備してこの門に集合した。
「何はしゃいじゃってんのアンタ。」
ナルトのはしゃぎ様に呆れたように言うサクラ。それに対しナルトは、
「だって、俺ってば始めて違う国に行くんだってばよ!」
楽しみなんだ!と子供らしい笑顔で答える。その様子に心配になった依頼人のタズナは思わず、
「おい!本当にこんなガキで大丈夫なのかよぉ!」
と、カカシに文句をつける。カカシはハハハと笑いながら、
「上忍の私がついております。そう心配いりませんよ・・・。」
そう言うものの、ナルトを見ていると少し心配に思うカカシだった。とそこへ、
「だいじょーぶ!!」
ナルトが腕を組んでタズナの前で胸を張っている。
「俺が絶対守ってみせるってばよ!」
そう言い切ったナルトの顔は先ほどのはしゃぎ様が嘘のように落ち着きのある笑みだ。
――こんなところが先生に似てるよなぁ・・・
とカカシは目を細めて見つめながらそんなことを思う。
その時、ナルトは目だけでちらりとそばにある木の上を見ていた。
――さっそく2人の忍びの気配ですね。
忍びと戦うのはCランクなのでしょうか?とナルトは疑問に抱きながらも、木の葉の里を後にした。
波の国へと出発してからしばらく歩いていた時だ。
サクラがふと、波の国には忍者がいるのか?という疑問を投げかけた。その質問に答えるのはカカシだ。
「波の国には忍者はいない。が、たいていの他の国には文化や風習こそ違うが、隠れ里が存在し、忍者がいる。」
大陸にある国々にとって忍びの里の存在は国の軍事力にあたる。
これによって隣接する他国との関係を保っているのだ。
かといって、里は国の支配下ではなく、あくまで対等な立場にある。
干渉を受けにくい小さな島国なんかでは、忍びの里が必要ない場合もある。
忍びの里の中でも木の葉、霧、雲、砂、岩の五ヶ国は国土が大きく、
力もあるため“忍び五大国”と呼ばれている。
その里の長は“影”の名で語られる。
火影・水影・雷影・風影・土影を『五影』と総称する。
五影は全世界、各国何万の忍者の頂点に君臨する忍者だ。
――火影様は本当にすごいんです!!
なんせ木の葉の里の全ての忍術を使いこなせるんですから!とナルトはカカシの話を聞きながらうんうんと大きく頷いている。しかし、他の二人は何やら違うことを考えていそうだ。そこにカカシが
「お前ら、今火影様のこと疑ったろ。」
サクラとサスケがギクリというような反応をする。
そんな2人を見てナルトはコクリと小首を傾げた。
「ま、安心しろ。Cランクの任務で忍者対決なんてしやしないよ。」
サクラはそれを聞いて安心していたが、一人だけ違う反応を示した。それはタズナだ。
タズナはビクッと肩を揺らし、少し沈んだ表情をしている。
――やはり、あの忍びの気配はタズナさんを狙ってですか・・・。
タズナを観察していたナルトは確信する。しかも、
――前方にさっき感じた同じ気配があります。
中忍くらいの気配ですかね、と判断をつけ、カカシがどう出るかを待つことにした。
そしてそのまま歩いていくと水溜りが目に入った。
――・・・・・・。
ナルトは思わず無言になる。その目の前には水溜り。このナルトの反応は当たり前だろう。
この何日か雨など降ってもいないのだ。それなのに水溜りがあるなどありえない。
その水溜りからは先ほどの2人の忍びの気配が漂っている。
――・・・カカシ先生も気づいていますね。
カカシはちらりと水溜りを見て、そのまま何もせず通過していく。
――誰が狙いかをはっきりとさせるんですね。
ナルトもカカシを見習い、無視を決め込むことにした。そして水溜りを通り過ぎた次の瞬間、
「一匹目・・・。」
カカシを二人の忍びが長細い刃のついた鎖で拘束した。カカシは驚いた素振りを見せている。
「キャーーー!!!!」
サクラが悲鳴を上がった。
カカシは鎖が引っ張られたことによって身体がバラバラに千切られ、空を舞った。
――そこまでサービスしなくても・・・
ナルトは千切られたカカシの場所をちらりと見てため息をつく。そこにはただ何本もの木が落ちているだけだった。そう、カカシは本当に死んだように見せかけておきながら、変わり身の術を使って、道の横に生えている木々に隠れてこちらを観察しているのだ。
ため息をついていたナルトの背後に近づく気配、
「・・・二匹目。」
カカシを襲った忍び2人がすでにナルトの背後へと回り、鎖を大きく振りかぶっていた。と、そこに一枚の手裏剣がその鎖を後方の木へと固定し、その手裏剣が外れないようにクナイを投げ手裏剣の穴へと突き刺した。そして鎖を拭いとめた人物はその忍びたちの頭を同時に思い切り蹴る。
――さすがサスケです!!
何も動かなかったナルトはサスケの判断に心の中で拍手を送る。
サスケは一瞬のうちに2人の忍びを相手してみせたのだ。しかし、忍びたちもそれだけでは怯まず、鎖を切り離し1人はサクラとタズナのほうへ向かっている。
――あちらはサスケに任せましょう。
そしてもう1人はナルトのほうへと迫ってきていた。忍びは鋭い爪のような武器を手に装着している。
――爪には即効性ではないですが毒が塗られていますね。
ナルトは忍びの武器を落ち着いて観察する。そしてその忍びがナルトに向かって腕を振り上げた瞬間、
「う、動かない!?」
忍びはピタリと動きを止めた。いや、動きを止められたのだ。しかし、声を出すことはできるので金縛りの術なんかではない。
ナルトを見るとただ胸元らへんの高さまで片手を上げて5本の指をこちらに向けているだけだ。と、そこにカカシが一瞬でその忍びの首を拘束する。そのままカカシはもう一人の忍びへと向かい、同じくあっという間に拘束してしまった。
「お前ら良くやった。」
カカシは子供たちを素直に誉める。が、
「ナルト・・・お前何やったの?」
一瞬こいつ動き止まってたよね?と拘束している忍びを見ながらナルトに尋ねる。
ナルトはニコリと笑って、
「別にたいしたことしてねーってばよ!」
と言って結局説明をすることはなかった。
それはナルトにとって本当にたいしたことではないことだった。小さい頃から形態変化を修行してきたナルトだからできたことだ。
ただナルトは、それぞれの指からチャクラの糸―傀儡師が主に使用する―を使って拘束していただけだった。チャクラでできた糸のため簡単には見えない。
カカシはじっとナルトを見ていたが、話す気配が感じられないため、あきらめて話を戻す。
「タズナさん。」
雰囲気の変わったカカシにタズナがギクリとたじろぎながらも返事をする。
「ちょっとお話があります。」
そう言ったカカシはいつになく真剣な目をしていた。
あとがき
あけましておめでとうございます。
とうとう波の国編に入ってしまいました。
書こうか書かないかで迷ったのですが・・・結局書いてしまいました。
波の国のお話は4話くらいになってしまうと思いますが、できれば早く更新したいと思います。
今年もよろしくお願いします。