*季節はずれな話を更新してしまってすみません。読み流してくださって構いません。
山のような小箱が歩いている。
NARUTO ~大切なこと~ 番外編(?) もしもNARUTOに○○があったら
ここは火影邸の廊下。今はまだ夜の9時頃だろうか。
その廊下に髭面の熊と顔の大半が隠れている怪しい男がいた。そして彼らの目の前には、
「・・・箱が歩いてる・・・。」
どちらかが呟いた。
そう、彼らにだんだんと近づいてくる、可愛い包装紙で包まれた小箱の山。しかし、よく見るとその箱たちの下には人間の足がついている。そしてその箱の山の横からちらちらと金色の尻尾のような髪の毛が見え隠れしている。
「ミコト・・・君?」
怪しい男がその小箱の山に声をかけると、その小箱の山の持ち主がひょこりと顔を覗かせた。
「こんばんは。はたけ上忍、猿飛上忍。」
小箱の山の持ち主、それは特別上忍見習いの神影ミコトだった。そのミコトは目の前の2人にニコリと微笑む。
「その箱・・・どうしたんだよ・・・。」
やけに可愛いのが多いな・・・。
そう呟いたのは髭面の熊こと猿飛アスマだ。
「アスマ知らないの?」
アスマの質問に答えたのは、顔の大半が隠れている怪しい男ことはたけカカシだ。
「え!はたけ上忍は何か知っていらっしゃるんですか?」
カカシの言葉に驚いたのはミコトだった。
「ミコト君・・・。何も知らないでそんなにもらったの?」
「え・・・いや、今日はやけに怪我をしたくの一の方たちが多くて・・・。それで治療をしていたのですが、そのくの一の方々が治療のお礼と言ってみなさんが置いていったもので・・・。」
いつもはこんなことなかったのですが・・・。と苦笑いを浮かべているミコト。
物をもらうなんてことは今までに無かったために、もちろん袋などというものを持っていなかった。捨てるなんてことは考えられなかったミコトはこうして腕に抱いて歩いていたのだった。
――もしかして・・・
あれか?
アスマはふと今日の出来事を思い出す。
それは今日の昼過ぎ頃だっただろうか。
下忍の任務が早く終わり、報告書を持ってきている時だった。
その時たまたま通った医療班の部屋の前の廊下に、大きな塊があったのだ。
「なんだ・・・あれ?」
その塊を良く見ると、どうやら中忍以上のくの一たちのようだった。その人数は数えるのも面倒だ。というか、みなそんなに暇なのだろうか?
「私が先に渡すのよ!!」
「何言ってるのよ!!私に決まってるでしょ!」
「私よ!」
「私が!!」
くの一たちの怒鳴り声が廊下に響き渡っている。と、そこへ
「あんたたち!!何言ってるの!!私が一番に決まってるじゃない!!」
「「「「「アンコ!!?」」」」」
くの一たちの塊に腕を組んで立ちはだかった特別上忍みたらしアンコ。
「いくらアンコが初めて見つけたからって、そうはいかないわ!!」
「「「「そうよそうよ!」」」」
「フン・・・こうなったら・・・。」
アンコはそういうとサッと印を組み始める。
――おいおいおい・・・!!
こんな狭いところで忍術かよ!?
そう、ここは火影邸の中の廊下だ。こんなところで忍術を発動なんてしたら、たまったものではない。アスマは持っていた報告書をちらりと見る。そしてアンコのほうへと目を向けると、もうアンコの印は組み終わった。逃げている暇はないようだ。
――まじかよ!?
アスマは報告書をサッと後ろに隠す。どうやらアスマは混乱して、報告書だけでも守ろうと思ったようだ。そしてアンコがチャクラを練りこもうとした瞬間、
「やめぇぇぇい!!!!」
「「「「「ッ!!!!」」」」」
怒鳴り声とともに現れたのは三代目火影様だった。火影様はなんだかげっそりとしている。
「お願いじゃ・・・こんなところで忍術や忍具を使わんでくれ・・・。」
屋敷が壊れてしまう、と呟くように懇願する火影様は、いつもの威厳が全く感じられなかった。
それを聞いたくの一たちは目の色を変える。と、突然殴りあいに発展したのだ。
――・・・・・・怖すぎる!!!!
アスマと火影様の心の声が見事に一致した。
それをしばし呆然と眺めていたが、アスマはハッとして、そのまますぐに報告書の提出に行ったのだった。
――アレは本当に怖かった・・・
まるで一種のトラウマのようになってしまったアスマだった。
そんなアスマに気づかないミコトは、
「今日のくの一の皆さん・・・何故か打撲がひどかったんですよね。」
何か激しい体術の訓練でもしたのでしょうか?と首を傾げる。カカシはふ~ん、とどうでもよさそうに相槌をしていたが、すぐにニヤニヤとした顔でミコトを見る。
「ミコト君。今日は何月何日でしょう?」
「え?」
カカシの突然の質問に思わず呆けるミコト。
「・・・・・・あぁ、そうか。」
今日だったか。とカカシの言葉で納得しているアスマの顔は何故か青白い。
アスマの反応にミコトは首を傾げながらも、カカシの質問に答える。
「今日は2月14日・・・ですよね。」
それがどうしたんですか?とますます首を捻るミコトを見た2人は顔を見合わせて笑っている。
「最近ね、里である噂が流れているんだ。」
「噂・・・ですか?」
ミコトは少し嫌な顔をする。
噂といえば自分には良くないものばかりだ。今でこそだいぶ落ち着いてきた「ナルト」の噂。しかし、また新たに何かできたのかと不安に思ったのだ。
「そう。実は今日、女の子たちがチョコをあげる日なんだって。」
「チョコ?」
「本当に何も知らないんだな。今日はな、バレンタインって言って、好きな奴にチョコをあげるんだとよ。」
アスマの言った“好きな奴”という言葉にミコトは思わず顔を真っ赤にさせる。
そんなミコトにカカシはまたニヤニヤとした目で見る。
「ミコト君、22歳だったよね?好きな子とかいないの?恋人は?」
ミコトは設定上22歳だ。見た目もそれくらいに変化している。しかし、まだ中身は12歳の少年。色恋沙汰にはかなり疎いナルトは、カカシの質問にブンブンと顔を横に振っている。そんなミコトを見て楽しんでいるカカシに呆れたアスマが、
「バレンタインは今年が初めてなんだとよ。去年までなかったもんな。でも必ずしも好きな奴にあげるってわけじゃぁねぇんだ。そういうのを義理チョコって言うらしいぜ。」
その言葉にミコトはほっと息をつく。しかし、アスマは
――お前の場合、全部本命だと思うぞ・・・。
とか思っていたりする。
落ち着きを取り戻してしまったミコトをつまらないと思うのは、ミコトをからかっていたカカシだ。カカシは何かを考え、ニヤッとした目でミコトを見る。そのカカシにアスマはまた何か企んでやがるな・・・とこっそりため息をついた。
「バレンタインにはまだ続きがあるんだ。」
「え?」
そうなんですか?と首を傾げながらカカシに尋ねるミコト。その顔は本当に22歳なのだろうかという可愛さがある。
「実はね・・・来月、3月14日をホワイトデーって言うんだけど、その日にチョコをくれた子にお返しをしなくちゃいけないんだ。」
「そうなんですか!それは良かったです!何かお返しをしなくてはと考えていたんです。」
そんな日があるなんて、良かったです。
と素直に笑って喜んでいるミコト。しかし、
「でもね・・・お返しにはくれたチョコの値段の倍以上のものをお返ししなくちゃいけないんだ。」
「え!」
もちろんこれはカカシの嘘だ。そんな決まりなど聞いたことも無い。
見たところミコトの持っているチョコは30個以上ありそうな勢いだ。しかも
「うわぁ。アスマこのチョコ見て。」
そう言ってカカシはミコトの持っているチョコの箱の山から崩れないように上手く何個か取り出す。
「このチョコなんかゴ○ィバだし、ほら、こっちなんてピエール○コリーニのだよ。うわ!ロ○ズにモ○ゾフまで!」
むしろそんなことを知っているカカシのほうに驚きである。
「ていうか、ほとんど高級チョコレートだね。あ~ぁ、ミコト君大変だね、こりゃ!」
そんなことを言いながらカカシはミコトの持っているチョコを漁る。
そして変なものを発見した。
それはプラスチックの入れ物に入っていて、中身が見えている。
――アンコだな・・・。
カカシとアスマの心の声が重なった瞬間だった。その中身・・・串に刺さった3つの丸い物体が、チョコでコーティングされている。きっとチョコの下はダンゴだ。しかもそれが10本近く入っている。
カカシは見なかったものとしてそれを箱の山の中へと戻した。
「じゃ!がんばってね!」
カカシは片手を上げてそのままミコトの横を通り抜けていくと、アスマは「おいっ!」と言ってそのままカカシを追いかけていく。ミコトはじっとその場に佇んでいた。
その時のミコトの顔は真っ青だった。
「おい!カカシ!何あんな嘘ついてんだ!」
あいつお前の命の恩人だろ!
カカシを追いかけてきたアスマはそう告げる。そう、以前カカシはミコトに助けられたのだ。そんな恩人に向かってあれはないだろう。
「だって。俺だってあんなにチョコもらってないんだよ!」
ずるいよね!先生に似てるからって!
カカシは擬音語で表すならプンプンと怒っている。はっきり言って可愛くは無い。
アスマは呆れるしかない。思わず「そんなことで・・・」と呟く。その呟きに透かさずカカシは攻撃をしかける。
「何?アスマは悔しくないの?」
「・・・・・・俺は1個で十分だ。」
「どうせ紅でしょ。」
ラブラブだねぇ。とからかうように言うカカシにアスマは少し頬を赤くする。こちらも可愛くは無い。と、アスマはふと思い出したようにカカシに言う。
「お前ミコトにあんな嘘吐いてたけどよ・・・お前はどうすんだよ。」
お返し。
カカシはその言葉に腕を組んで、う~んと何かを考えているようだが、
「それはひ・み・つ。」
何も考えてはいなかった。アスマはもう呆れてものが言えなかった。と、その時歩いていたカカシが「ねぇ」と言って足を止めた。つられてアスマも止めてしまう。
「ミコト君これからどうすると思う?」
「・・・どうするだろうな・・・。」
真っ青だったからな・・・顔。
アスマはミコトのことを思い少し不安に思う。きっとカカシの話を鵜呑みにしてしまっている。あの高級チョコレートの山だ。本当に倍返しをするとなると、とんでもないことになるだろう・・・。ますます心配になるアスマだが、逆にカカシは何だかわくわくしていた。
そして次の日。
火影室に行くと、ミコトがSランク任務をください、と額を床につけて土下座している姿が見られた。しかし、ミコトはまだ特別上忍見習い。正式な忍者ではない。
見習いになってからもう7年も経っているがいまだに任務に行っていないのは、ミコトの医療忍術が綱手並み、もしくはそれ以上の腕があったため、危険なことをさせるわけにはいかないと過保護な火影様によって禁止されている。
結果はミコトの敗退。Sランクおろか、まだ任務は早いと他のランクでさえもらうことはできなかった。
それからというもの、ミコトは病院の手伝いを今まで以上にがんばった。朝から晩までは当たり前。そしてそれはもう里の民家の方まで出張するほどに。しかし、それはほぼタダ働きに近い。必要最低限しかミコトはいただかないようにしている。
そしてついにはミコトが倒れてしまった。まさに医者の不養生である。これによってミコトは病院に何日か入院することになったが、その入院期間中にたくさんのくの一が見舞いに来ていたという。なんともうらやましい奴め。(カカシ談より抜粋。)
そしてあれから1ヶ月近く経ち、次の日にはホワイトデーが迫ってきている。
ミコトはなんとかお金を貯めることに成功した。が、しかし、
「みなさんの好きなものがわかりません・・・。」
チョコレートの値段の倍以上といわれても、相手が気に入るものでなければお返ししても意味が無い。ミコトはかなり悩んだ。
チョコをくれた人に尋ねる?
いや、もうホワイトデーは明日だ。間に合わないだろう。そして悩みに悩んだミコトの考え出したお返しはというと・・・
「これミコトさんが作ったんですか!?」
「うわ!すっごいおいしそう!!」
はしゃいでいるくの一たちの手に持っているものは、可愛くラッピングされたもの。それを開けてみると、そこにはチーズケーキが入っていた。
「僕、お菓子作りとかそういうの好きなんです。料理とかも自分で作りますからね。」
チーズケーキ嫌いだったらごめんなさい。
そう言ったのはミコトだ。
ミコトは結局、値段よりも彼女たちの喜ぶものを選んだのだった。女性が好きなもの、それは一般的には甘いものだろう。そう考えたミコトは1日でせっせと大量に1人用の小さなチーズケーキを次々と作り、自分でラッピングしてくの一たちにプレゼントしたのだった。
それをもらったくの一たちは、それはもう大喜びしていたそうだ。
そしてその日、信じられないものを見た特別上忍たちがいた。
「アンコが・・・ケーキを食ってる・・・。」
「・・・食べてますね・・・ゴホ・・・。」
「あぁ・・・食べてるな。」
くわえていた千本を落とす者や、思わず咳をする者(それはいつものこと)、拷問・尋問部隊隊長を驚愕の表情に変えてしまった人物。
それは目の前でおいしそうにチーズケーキを食べているみたらしアンコだ。
それを見た特別上忍たちは、アンコがそれを食べ終わるまで動くことができなかったそうだ。
そんなことを起こした張本人、ミコトはというと・・・
「これあんたが作ったの?・・・意外ね。あんたがこんなのできるなんて・・・。」
「ひでーってばよサクラちゃん!俺ってばお菓子作り得意なの!」
「うん!ほんと!このクッキーおいしいわよー!」
「あ、あの・・・ナルト君、あ、ありがとう・・・。」
ナルトはにっこりと笑う。
そう、ナルトはナルトとしてもサクラ、いの、ヒナタからチョコをもらっていたのだった。
この3人にはクッキーを作って、きちんと包んでプレゼントしたのだ。
みんなに喜んでもらえて大満足なナルトだが、気になることがあった。
それはサスケだ。
サスケはとにかくアカデミー時代からモテていた。そんな彼はやはり、バレンタインデーに大量にもらっていた。サスケは甘いものが苦手だが、そんなことを言ってはいられないようなほどの量をもらっていた。
そんなサスケがもらった相手にお返ししていないのに気づいたナルトは、サスケに尋ねてみたのだった。
サスケは「別に何も返さなくてもいいんだぜ。」(それはそれで失礼)なことを言っていた。
それを聞いたナルトはあの必死でがんばったのは一体・・・と少し気を落としたが、みんなの喜ぶ顔を見れたからいいか、と思い直した。
そしてここにも1つ疑問を抱いている者が1人。
「ミコトさんとナルトの包みが一緒?」
実はミコトとナルト、2人にチョコを渡した人物がいた。
「どうしてかしら。」
そう言って首を傾げているくの一。
「ま、偶然よねー。」
チーズケーキもクッキーもおいしいわー。
その人物はいのだった。
さて、2月14日に猿飛アスマの見たくの一たちの争いがあったが、いったい誰が一番にミコトにチョコを渡したのだろうか。それは・・・
「ミコトさん!!」
里中を火影邸へと向かってのんびりと歩いていたミコトはふと歩を止め、後ろに振り返ると、そこには1人の少女。
「いのさん。」
どうしたんですか?と言って、目を細めて微笑むと、いのと呼ばれた少女の顔はだんだんと赤くなってくる。と、その時、バチンッ!と両手でいのは自分の頬を叩いた。そして、思い切り深呼吸をすると、きょとんとしながらこちらを見ていたミコトに向かって叫ぶように声をかけた。
「ミ、ミコトさん!今お時間はありますか!?」
「え・・・あ、はい。ありますよ?」
今ちょうど病院の手伝いが終わって、火影邸に帰るところなんですよ、と言ってまた微笑むミコトにいのは見えないようにガッツポーズをした。そして、
「私も今下忍の任務が終わったんです。ちょっと一緒に来てくれませんかー?」
と尋ねてはいるが、そう言い終わる前にミコトの腕を取って引っ張り始めていたいのに、ミコトは苦笑をもらした。
「下忍の任務って、まだお昼過ぎたばかりですよ?」
早いですね、と誉めるミコト。ミコトの腕を前で引っ張っているいのは、そんなことないですよーと答えているが、こちらから見える耳が赤くなっている。いのの返答にミコトは本当にすごいですよ!と言い返す。なぜなら、
――僕たちの班では考えられませんからね・・・
まずはカカシ先生が来ないことには・・・と内心だけで苦笑する。
そんなことを話しているうちに、どうやらいのの目的の場所に着いたらしい。
その場所は、
「ただいまー!」
「お帰り、いの・・・って、やぁミコト君!」
よく来たね、と言ってにこやかに迎えてくれたのはいのの父、いのいちだ。
そう、ここは「やまなか花」だ。
「こんにちは、山中上忍。」
実はミコトはよくこの花屋に訪れている。植物好きなミコトにとって、ここは本当にありがたいのだ。
「今日はどうしたんだい?何かまたほしい花があるのかな?」
「いえ、今日は・・・。」
「もう!お父さん!私が今日はミコトさんに用があるの!」
ミコトさんちょっと待っててー!と言って、いのは店の奥へと入っていく。そんな娘の慌てように、いのいちは「あ、あれね。」と言って笑っている。それを見てミコトはこくりと首を傾げた。
と、そこへ小さな箱を持ったいのが奥から戻ってきて、はい!とその箱をミコトの目の前へと突き出した。ミコトは突然のことに困惑していると、その様子に気づいたいのが口を開いた。
「これチョコレートケーキです!」
自分が作ったんですけどー・・・食べていただけませんかー?と上目遣いでミコトに尋ねる。と、そこには目をキラキラとさせたミコトの顔があった。
「これ・・・僕が本当にいただいてもいいんですか?」
「・・・もしかして嫌いでしたか・・・?」
いのは心配になってそう呟く。その後ろではいのいちがものすごい形相でミコトを睨んでいたが、そのいのいちに気づいていなかったミコトは本当に運が良かっただろう。
「いいえ・・・僕、お菓子大好きなんです。作るのも好きですが、食べるのも大好きです。」
男がそんなこと言うのって・・・やっぱり変ですかね、といのから受け取った箱を、頬を赤く染め、はにかみながら見ているミコト。
――か・・・可愛すぎる!!!!
そんなミコトの様子に思わずいのといのいちは顔を真っ赤にしてミコトから目をそらした。
私より可愛いじゃない・・・反則よ!!と、いのが少し落ち込んでしまったのに、いのいちがハッと気づいてミコトに声をかけた。
「ミコト君!良かったらそのケーキ、食べていきなよ。」
紅茶も出すからさ、と言って有無も言わさずミコトを店の奥へと連れ込む。そのいのいちの提案に透かさず元気を取り戻したいのが、私が紅茶入れるわー!と言ってミコトの背中を押しながらついていった。
そしてそれからだいたい3時間がたった頃、いのがサクラたちと他の男の子たちみんなにチョコを渡しに行ってくると言うまで、楽しくケーキと紅茶をいただいたのだった。
ミコトがやまなか花から出る時に、こっそり影分身を家に送ったのは言うまでもない。
――ケーキと紅茶おいしかったです!
ミコトはにこにこと機嫌よく火影邸の中を歩いている。そして、医療班の部屋へと向かう廊下を歩いているときだった。
「ッッ!!!!」
ミコトの目の前の廊下には無数の何かが倒れている。
まだ時間帯的に夕方だが、この廊下は明かりが少なく暗いため、夕方にはもうはっきりとものが見えなくなる。ミコトは恐る恐るその物体に近づいていくと・・・
「だ、大丈夫ですか!?」
それは人間だった。しかもみな中忍以上のくの一たちだ。ミコトはそばに倒れていた1人を抱き起こそうとしゃがんだその時、その倒れているくの一たちの中心から、ガバッと立ち上がった“何か”。
「ひッ!」
ミコトは驚きで声を上げる。そしてその“何か”はのろのろとこちらに近づいてくるではないか。
――ま、まままままさか・・・幽霊!!?
この前の下忍選抜試験で、自分は父に変化をした。もしかして、それが父の怒りに触れてしまったのだろうか!?
ミコトが混乱している間にもだんだんと迫ってきている“何か”。思わず、
「わぁぁ!!!!ごめんなさい!!父さ「ミ・・・ミコト・・・。」ん・・・って、」
アンコさん!!?
もう目の前へと来ていた“何か”が自分の名を呼んだ。その声はアンコの声だった。
今にも倒れてきそうなアンコにミコトはサッと立ち上がると、アンコはそのままミコトの胸の中へと倒れてきた。そして、
「か・・・勝ったわ・・・。」
「あ、アンコさん!?」
謎の言葉を呟き、幸せそうな顔を浮かべて気を失ったアンコ。それを見たミコトは、廊下へと顔を向ける。そこには足の踏み場もないほどにたくさんのくの一が倒れている。そしてそんな倒れているくの一たちを見て一言。
「いったい何があったんですかー!!!!」
その問いに答えてくれるものはいなかった。
とりあえず、ミコトは腕の中にいるアンコから治療を始めると、すぐにアンコは意識を取り戻し、これ!お礼ね!と言って何かを置いて去っていった。それに唖然としたミコトだったが、そんな暇はない!とばかりに廊下中に倒れているくの一たちを治療していく。
そして冒頭へと戻る。
こうして木の葉の里初めてのバレンタインデーとホワイトデーは過ぎていった。
あとがき
バレンタインの頃はちょうど受験の真っ只中のため、こんなにも早く書かせていただきました・・・本当にすみません。
これは波の国後に入れる予定にしておりましたが、皆様がミコトさんのことを気にしてくださっていたので、ここで入れさせていただきました。
皆様に少しでも笑っていただけたら幸いです。
来年の木の葉の里のバレンタインはなくなります。それは男性陣がホワイトデーなるものを知らなかったためです。(知っていて返さなかった者もいたそうです。)女性陣は、もちろん好きだからあげた方(主にサスケにあげた方々)もいらっしゃいましたが、大半はお返し目当て(酷)だったそうです。この年だけのバレンタインでした。
ミコトさんの任務に出られない理由は本当のことです。なんとも過保護な火影様です。
そしてミコトさんのホワイトデーまでの行動を追ったのはカカシさんです。途中の“カカシ談より抜粋”というところに私情が入ってしまっていたのはそのためです。文章は抜粋したものなので他にもこんな話をアスマさんにしていたそうですよ↓
おまけ
「ミコト君ったらさ、火影様に土下座までしてたんだよ!ほんと面白いやつだよね!
そのときのミコト君がさぁ・・・ブフッ!ご、ごめーんね・・・ぶっ!!いや、ちょっと思い出しちゃって。え、何がって?そりゃぁ先生のことだよ。そ、四代目のこと。先生さぁ、よく火影の仕事サボるから、俺が探して見つけ出しては火影室に連れ戻すんだけど、その時の先生、いつも額を床につけて俺に土下座して謝んの。ミコト君って先生とそっくりでショ?もうそれが面白くて・・・懐かしくて。・・・・・・なーにクマしんみりしちゃってんの!あ痛っ!・・・別にクマでもいいじゃん、ケチ。う、ごめーんって!ま、あんな先生を見れたのって俺だけだろうなぁ。あの情けない顔!!・・・ブッ!まさかまた見れるなんて思わなかったよ。いやぁ、あんなこと言ってほんと良かったなぁ!」
と全く反省の色など皆無なカカシさんでした。