サクラは森の中を走っていた。
――サスケ君・・・どこにいるのかな!?
サスケを探してひたすら走ると突然、
「サクラ、後ろ」
背後からかかった声にサクラはパッと、振り向く。そこにはカカシが立っていた。そして目の前でバラバラと葉がサクラの周りを舞ったと思った後には、もうカカシの姿は消えていた。
先生が一瞬で消えてしまったことにサクラは動揺するが、背後から自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。その声は自分が探していた人物のもの。
サクラは嬉々として振り返った。しかしそこには・・・
サクラの悲鳴が森の中で木霊した。
NARUTO ~大切なこと~ 第17話
――今のはサクラちゃんの悲鳴ですね。
ナルトはサクラとサスケに協力を求めに2人の気配を探していた。
今いる場所からはサクラの気配のほうが近かった。
――悲鳴も聞こえましたし、もう先生とは接触済みですね。
行ってみますか。とナルトはサクラのもとへと向かった。
「今の声・・・。」
サクラに何かがあったことを知ったサスケの背後から、
「サクラのやつ簡単に幻術にひっかかっちゃってな・・・。」
カカシの声がかかった。その言葉にサスケは苦笑したが、すぐに真剣な顔へと変える。
「俺はあいつらとは違うぜ。」
しかし、
「ぬおぉ・・・!!」
その叫びとともにサスケは地中へと引きずり込まれる。そしてサスケの頭だけが地面から生えている。
カカシの土遁心中斬首の術を食らったのだ。
「ま、あの2人とは違うってのは認めてやるよ。」
サスケの頭上からカカシの声が降り注ぐ。
「・・・にしてもお前はやっぱ早くも頭角を現してきたか。でもま!出る杭は打たれるって言うしな。」
ハハハと笑ってカカシは去っていく。
そう、サスケはもう少しで鈴を取るという、とても好い線まで行ったのだ。
トラップや体術、下忍程度ではできない火遁豪火球の術まで駆使し、あと少しというところまでカカシを追い詰めたのだ。一人でここまでできたことは賞賛に値するが、
「くそ!!」
結果としては鈴を取れてはいない。と、その時、
「よ!サスケ!」
悔しがるサスケの目の前にナルトが片手を上げて現れた。その背後にはサクラもいる。
「好い線行ったみたいだってばね。」
微笑みながらそう言って、サスケを土から出そうとナルトは素手で掘り始める。それを見てサクラも手伝う。その数分後にはサスケの身体は地上に出ることができた。
そして3人落ち着いたところでナルトが口を開いた。
「サクラちゃんには言ったんだけどさ。どう考えても一人じゃ鈴を取れそうに無いってばよ。」
その言葉にサクラは頷く。しかし、
「俺なら、次いける。」
そう呟いたのはサスケだ。そう呟いたその時
パンッ!!
「ナルト!?」
サスケ君になんてことするのよ!?とサクラはナルトを咎める。
ナルトは突然サスケの頬を叩いたのだ。サスケの左頬が少し赤くなっている。
驚いて一瞬固まったサスケだったが、すぐにナルトをキッと睨んで
「おま「サスケは焦りすぎだ!!」っ!?」
怒鳴ろうとした瞬間、ナルトがそれを遮った。ナルトの顔はいつになく真剣だった。
その場の熱気が少しおさまったところでナルトは話を続ける。
「サスケはアカデミーの誰よりも強いってばよ。今はそれだけで」
十分じゃないのか?
「カカシ先生との差に気づいたんだろ?まずは下忍に合格しないと前に進めないってばよ。お前は力が必要なんだろ?だったら」
協力しやがれ。
そう言い切ったナルトの目はとても力強かった。
2人は思わず息を飲む。そしておもむろにサクラが口を開いた。
「でも、どうして鈴を2つにしたのかしら・・・。」
これじゃぁまるで、と言った所でサクラはハッと気づく。それを見たナルトは
「その考えであっていると思うってばよ。これはわざと仲間割れを仕組んでいるんだ。」
それに
「イルカ先生言ってたってば。今後は3人1組の班で任務をこなすって。だから一人だけ落ちるなんてことは無いってばよ。」
2人はイルカの言葉を思い出し、確かにそうだと頷く。そして
「私は協力するわ!」
とサクラが力強く言葉を返す。
「・・・・・・今回だけだからな。」
サスケは目を合わせずぶっきらぼうに呟く。
その2人の言葉にナルトは微笑んだ。
「ありがとう。それと、」
サスケ叩いてごめんってば。
3人の気持ちが1つになった時、そばの木の陰でひっそりと微笑んでいる者がいた。
と、そこへ12時を知らせるベルが鳴り響いた。
4人は演習が始まった丸太のある場所へと集まっている。
「お前たち、この演習の意味に気づいたみたいだな。」
カカシは少し嬉しそうに話す。その言葉に3人は頷き、
「“協力”ですよね。」
サクラはカカシに自信を持って答える。それを見たカカシはうんと頷き、
「そうだ。協力・・・それは“チームワーク”だ。」
そう言ったカカシはその場にあった四角い石のそばに近づく。
「この石に刻んである無数の名前、これは里で英雄と呼ばれている忍者たちだ。が、」
ただの英雄じゃない。
「任務中に殉職した英雄たちだ。」
その言葉に誰一人声を出すことが出来ない。
「これは慰霊碑。この中には俺の親友の名も刻まれている・・・。」
カカシはそれをじっと見つめている。その目は悲しみにくれていた。
――うちはオビトさんですね・・・。
カカシのことを調べていてわかったことだ。四代目を上忍とした3人の班の中に、うちは一族がいた。それがうちはオビトだ。オビトはある任務で亡くなったらしい。
――その写輪眼は・・・オビトさんのものなんでしょうね。
カカシはうちは一族ではない。移植しない限り、その左目の写輪眼は手に入るはずがない。
ナルトはふと思い出す。
――カカシ先生が集合場所に来る前、ここにいらしていたんですね。
カカシが集合時間になっても来なかった時だ。近くにはいたけれど、ずっとその場で佇んでいたカカシの気配は確かにここだった。
カカシの話は続いている。
「忍者は裏の裏を読むべし。忍者の世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる。・・・けどな!仲間を大切にしない奴は、」
それ以上のクズだ。
――・・・あぁそうか。
そう告げたカカシをナルトはじっと見つめる。
カカシが自分を見ているのは、父と重ねているとかそんなことではなくて、
――過去のことに苦しんでいるんですね。
ナルトと、それにサスケを見るカカシの目はどこかいつも悲しみに沈んでいた。
カカシは過去に縛られている。
――僕たちを見ると、先生がスリーマンセルを組んでいたことを思い出すんですね。
今の先生の言葉、それには後悔の念が込もっていた。
・・・きっとそれはオビトと何かがあったから。
――カカシ先生には今を見てもらわないと。
自分は過去を思い出すものじゃない。ましてや四代目でもない。
カカシ先生に前を向いて歩いてもらわなければ。
「今から1時間後、また鈴取り合戦するぞ。」
その言葉に午前中の頃より少し成長した3人が頷く。
「で、お弁当はそこにあるから食べとけよ。」
と言ってカカシは消えた。そこと言われたところ、慰霊碑の上を見るとお弁当は2つしかなかった。
「なんで2つなのよ!?」
ケチくさいわね!!と怒るサクラにナルトが声を掛ける。
「俺ってば、実は朝ごはん食べてきたからお腹減ってないんだ!」
だからさ、2人で食べてよ!と笑って言う。
もちろんこれは嘘だ。しかし、ナルトはよく食事を抜かすことがある。
ミコトとして火影邸に行くようになって、時々食べ忘れるのだ。それに慣れてしまっているナルトはあまり空腹を感じなくなったのだった。
何いきなりルール破ってるのよ!とまた怒っているサクラと無言のサスケはとりあえず弁当に手をつけ始めた。
そして2人の弁当が残り半分というところで、
「ほらよ。」
サスケがナルトの前に弁当を突き出した。ナルトはそのサスケの行動に目を開いた。すると、すぐにサクラもナルトへと弁当を突き出す。
「お前ドベなんだからよ・・・これ以上足手まといになられたら困るからよ。」
そう言ったサスケの耳が少し赤かった。サクラも頷いている。
ナルトは2人の行動がすごく嬉しかった。
「へへへ、ありがとう!でもこんなにいらないってばよ。」
だからみんなで食べよ?そう言って今度は3人で食べ始める。
と、そこでナルトが2人に聞こえる程度の声で話し始めた。
「2人とも・・・午後の試験、俺に任せてくれってばよ。」
「ナルト!?何言ってるのよ!?あんたが1人じゃ無理って言ったんじゃない!!」
「・・・・・・。」
ナルトの言葉に思わず声を荒げるサクラ。サスケは無言だが、ナルトをきつく睨みつけている。しかしナルトはじっと何かを見つめていた。
サクラとサスケがナルトの視線の先をたどっていくと、そこには先ほどカカシが説明をしていた慰霊碑があった。
「もちろん、協力してもらうってばよ。でも、俺たちこのままじゃ下忍になれないんだ。」
「「?」」
そう言ったナルトは、いつの間にか視線を慰霊碑から森の中の一点へと移し、目を細めて見つめている。
サクラとサスケはその視線の先が何を見ているのか分からず首を傾げるしかなかった。
――そう、僕たちはこのままでは下忍になれません。
だってカカシ先生は・・・
昼食後、再び演習が始まった。
少し開けたところに1人佇んでいるのはカカシだ。
カカシは先ほどと同じように開けたところで森の中に隠れた3人が行動を起こすのを待っている。
そんなカカシの顔は午前中の生き生きとしたものではなかった。
――お前たちには悪いが、俺は部下を持つ気はない。
俺にはそんな資格がないんだ。
カカシは腰につけている2つの鈴を見つめる。
火影様に頼まれて下忍選抜試験の担当上忍として何度も、この演習を行ってきた。
しかし、それはあくまで形だけ。
自分が部下を持つなんてことはありえないのだ。
自分にはそんな資格がない。教えられることがないんだ。
唯一初めて、この3人だけが気づいた“協力”という言葉。
それさえわかってくれれば、もう自分の役目は終わったも同然だ。
“仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ”
これは馬鹿だった自分にくれたオビトの言葉。
あの頃の自分はなんて馬鹿だったのだろうか。
やっとこの言葉の意味に気づいたのに、気づいたときには遅かった。
教えてくれた大切なものはもういなくなっていた。
こんな自分が部下を持って良いはずがない。
――オビト・・・お前が最後に何て言っていたか・・・
もう思い出せないんだ
少し思い出に浸っていたカカシは、あとは3人に鈴を取られないようにするだけだ、と顔を真剣なものへと変える。
いまだに3人の気配は森の中にある。
なかなか動き出さない3人にカカシは少し不審に思ったその時だった。
「カカシ君。」
カカシは呼ばれたほうへと振り返る。そこは慰霊碑のあるところだ。
しかし、先ほどまで誰もいなかったその慰霊碑に今は座っている人物がいた。
その人物は金髪に青目の青年。
「・・・先生・・・?」
そう、その青年はどう見てもカカシの師である四代目火影だった。
四代目火影はやわらかく微笑んでいる。が、
「誰だ、お前は・・・!」
カカシは唸るように目の前にいる青年に告げる。
当たり前だ。この青年はもう12年も前に亡くなっているのだ。
自分の目の前で冷たくなっている先生を見たのだ。それに
――3人の気配はまだ森の中だ。
演習を行っている子供たちの気配はずっと森の中にきちんとあるのだ。
目の前の青年はその3人以外の何者かが変化をしているしかありえないのだ。
その青年の気配はかなり薄い。それは本当に先生みたいだ。
こいつは自分を狙ってきた刺客だろうか?
カカシはスッと低く姿勢を構える。しかし、青年は微動だにしない。それどころか、
「ひどいなぁカカシ。」
そう言って先生は生前と変わらない苦笑をもらす。
それには思わず、カカシも臨戦態勢をといてしまった。すると、青年はおもむろに立ち上がり、自分が座っていた慰霊碑を見つめる。
そして、しゃがんで慰霊碑に手を伸ばし、指である人物の名前をなぞりながら呟いた。
「カカシ、もう自分を許しても良いんじゃないかい?」
「ッ・・・・・・!!」
その言葉にカカシは目を驚愕で見開き、声を出すことが出来なかった。
目の前の青年はなぜ自分が欲しかった言葉をくれる?
いや、欲しくなかった。
自分を許してはいけないんだ。
この慰霊碑は自分の罪の証であり、過去の馬鹿な自分を咎めるものだ。
大切なものを守りきることができなかった自分への戒め。
自分を許せるはずが無い・・・はずが無いのにどうして迷ってしまうのだろう。
それは目の前の人間の姿が先生だから?
青年はそっと立ち上がり、カカシへと顔を向けた。
「もう君は十分自分を苦しめ続けてきたよ。よくがんばったね。・・・だからもう過去に縛られないで」
自分の人生を楽しまなくちゃ。
――「お前はお前の人生を楽しめ!」
「あ・・・・・・。」
カカシはまるで時が止まったかのような感覚を受けた。
周りは風がおこす木々のざわめきや鳥の鳴き声がしているはずなのに、自分の耳には全く入ってこない。
そんな中、ただ自分に聞こえてきたのは大切なことを教えてくれたあの少年の声。
――思い出した・・・
少年が最後に自分に向かって叫んだ言葉。
なんで今まで忘れていたのだろうか。
彼は自分がこうなることを望んでいなかった。
彼は自分がこうやって過去に縛られないように、言葉にしてくれていたんだ。
そのことを思い出した今、カカシの目に映るもの全てが今までと違って見え始める。
こんなにも世界には色が溢れていただろうか?
こんなに綺麗なものだっただろうか?
そんな輝く世界の中には金色に輝く青年がいる。
青年は笑っていた。そして、
「オビトもきっと、そう思っているよ。」
青年はカカシの思い出に残っているものと全く変わらない笑みを浮かべている。
目を細めて、歯を見せながら、ニカッと笑っている目の前の青年。それはまさしく
「せんせい・・・。」
カカシはポツリと呟いた。
と、その時だった。
チャリン・・・
へ?とカカシが後ろを振り返るとそこにはそれぞれ鈴を持ったサスケとサクラがいた。
そしてその後ろには地団駄を踏んでいる金色の犬。
「取ったわよ!!」
サクラは満面の笑みでカカシの前にいる青年に声をかける。
「ん!よくやったね、サクラにサスケ。」
青年は依然として微笑んだまま返事をする。それに対しサクラは、
「ナルト!早く変化解きなさいよ!あんたが影分身使えたのには驚いたけど、いくら影分身とは言え、あんたが四代目火影様に変化するなんて火影様に失礼よ!」
「影分身・・・。」
カカシはちらりと金色の青年を見て呟く。
その言葉でやっとカカシは今の状況を理解した。
ナルトが影分身を使えるのはこの前の事件で知っていた。
目の前の青年は影分身。
だから3人の子供たちの気配はずっと森の中にあったのだ。
「サクラちゃん!俺にも鈴持たせて!」
「何言ってるのよ!あんたがよーいドンで森から出て、先に鈴を取ったほうが勝ちっていったじゃない!」
「フン。ウスラトンカチが。」
「うっ・・・でもさでもさ・・・・・・いいじゃんかケチー!!」
カカシは楽しそうに笑いあっている子供たちと吠えている犬を見やる。
それには思わず笑みがもれた。と、その時、
「“仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ”・・・って良い言葉だね。」
カカシの肩に腕を回してそう言ったのはナルトの影分身。
いまだにその姿は変化をといていなかった。
ふとカカシはおかしな点に気づいた。
影分身は術者と全く同じ能力を持っている。
しかし、隣に立っている金色の青年は本体のナルトと気配の消し方が全く違うのだ。
カカシが口を開こうとした瞬間、
「カカシはその言葉の本当の意味を知っている・・・カカシはもう大丈夫だよ。」
お前が未来を育てるんだ。
カカシは開こうとした口を閉じた。
自分が未来を育てる?
そんなことができるのか。
困惑しているカカシに、青年は苦笑し、話を続ける。
「カカシの左目・・・オビトの写輪眼でもずっと先の未来は見えないけど、ほら。」
そう言って青年は指をさす。カカシはその方向へと顔を向けると、そこにはまだ鈴のことで言い合っている子供たち。
「まだ先の分からないことに目を向けるのはこわいことだけど、きっと楽しいこともあるから・・・」
未来を任せたよ、カカシ。
カカシは再び青年へと顔を向け、目を開いて凝視する。
「お前・・・どこまで知ってるの?」
カカシは思わず尋ねた。
この青年はナルトだ。
オビトのことやまだ見せてもいない写輪眼のことまで・・・。
ましてや、先生のことまで知っているのだ。
しかし、青年はカカシの質問に答えず、目を細め、まるでいたずらっ子のような顔をしてカカシに微笑む。そしてボンッと煙をあげて目の前の青年は消えてしまった。
カカシはその場で固まっている。と、そこへ、
「カカシせんせー?」
カカシは呼ばれた方へ顔を向けると、自分の袖を引っ張っている金色の犬がいた。
その顔はまるで捨てられた子犬のようだ。その子犬の後ろには先ほどまであんなに笑っていたのに、心配そうにこちらを見つめているピンクと黒の子犬。
――あぁ、そうか。
俺は未来に恐怖していたんだ。
自分の過去よりももっと辛いことが未来には起こるかもしれない。
そう思うと怖くて、ずっと止まってしまっていたんだ。
カカシは空を見上げる。
やわらかい青色の空に白い雲が気持ち良さそうに漂っている。
あの雲たちはどこへ行くんだろう?
・・・そんなこと、分からない。
先は見えないから面白いんだ。
――オビト。遅くなったな。
でもこの時間はきっと無駄ではなかった。
だって、そのおかげで目の前の未来に出会えたんだ。
後ろに振り返って見てみれば、そこには英雄として誇らしげにある慰霊碑。
それはもう自分の過去を咎めるための道具ではない。
――もう、俺は大丈夫だ。
過去を捨てたわけじゃない。
あれは忘れてはいけないことだ。だから、自分の中でずっとあり続ける。
それでいいんだ。
カカシは空に向かって微笑む。
そして子犬たちへ、
「お前ら!」
――先生、
「合格!!」
――俺が未来を育てて見せます。
こうしてここに新たな下忍班が誕生した。
あとがき
下忍選抜試験ではカカシさんについてとりあげてみました。次は番外編ですが・・・温かい目で読んでいただけたら幸いです。
カカシさんの遅刻の原因の話から考えたお話です。
本当に申し訳ありません!!皆様楽しんでいただけたでしょうか・・・。
これでカカシさんの遅刻が改善されたかというと、下にちょっとしたおまけを書いてみました。読んでも読まなくてもどちらでも構いません。
おまけ
僕たち3人は無事、下忍になることができました。
下忍としての任務と、僕はミコトとしても病院を回るという忙しい日々を過ごしております。
僕たちの担当上忍のカカシ先生。今では僕たちのことを温かい目で見守ってくれています。
本当に良かったです。だけど・・・
太陽がほぼ真上に来た頃。演習場にある慰霊碑のそばで楽しげな声がしている。
「ねぇオビト!ちょっと聞いてよ!」
その声に返事をする者はいない。
「この前の任務、子供のお守りだったんだけどさ、あの時のサスケったら・・・プッ!子供がサスケの顔見て泣いちゃってさ。あの時のサスケの慌てようが面白いのなんのって!」
そう言ってまた笑い出す。
「その子供にサクラが怒ってまた泣かせちゃってね、結局ナルトがほとんど1人で面倒見てたのよ。」
めずらしいこともあるもんだ、と微笑む。
「いつもはナルト、任務で上手くいったことがなかったからねぇ。この前の任務はめずらしくサスケも感心してたよ。」
サクラもね、と言ってやさしく笑う顔はまるで親のよう。
「あ、でもナルトったら「カカシ君。」ッ!!」
「せんせ・・・ってミコト君!?」
カカシがバッと振り返ると、そこには時々火影邸で会う人物、ミコトが立っていた。
「カカシ君・・・ってどうしてミコト君がここに?」
カカシはどぎまぎしながら尋ねた。
ミコトは気配がないため、背後に立たれても全く気づくことができない。そんな人物から突然声がかかったら、上忍であるカカシでもビクリとしてしまう。
「そのようにお呼びしてすみません、はたけ上忍・・・でもあなたもいつまでこんなところにいるんですか?」
今日は8時から下忍の任務があるのでしょう?と言いながら苦笑をする。
その言葉にハッと気づいたカカシは慌て始める。もう太陽は真上。
「だいたい、任務の話は終わったその日に言いにくれば・・・・・・ってもういませんね。」
いつの間にかそこには慰霊碑しかなくなっている。
ミコトは再び苦笑をもらす。
カカシの言葉の続き・・・この前の任務では、子供がナルトになつきすぎて、任務が終了してもなかなか離れなくて苦労をした、というものだ。
――幸せ・・・ですね。
ミコトは空を見上げる。
――お父さん・・・今日も木の葉は平和です。
そしてボンッと煙が上がったかと思うと、その場は静かに慰霊碑だけが佇んでいた。
あとがき2
結局カカシさんの遅刻癖は直りませんでした、というお話でした。
下忍任務のある日はこうやってナルトさんがカカシさんにミコトさんの影分身を送っているようです。