今日は下忍になるための演習があります。
僕たちの班の担当上忍は、はたけカカシ先生です。
カカシ先生も、僕のことを「九尾」とは見ていないようですが・・・
やけに僕のことを懐かしむような目で見ているんです。
それで昨日の夜、火影邸でカカシ先生についてちょっと調べてみたら、
カカシ先生は父、四代目のお弟子さんだったそうです。
以前、カカシ先生を森で発見した時、
カカシ先生は僕・・・その時はミコトの姿でしたが、
僕を見て、確か「先生」と言っていましたよね。
・・・そんなに似ているのでしょうか。
今は四代目と重ねて僕を見ているのでしょう。
父には悪いですが、僕として見てもらえるようがんばらなくては!
あ!それとカカシ先生を調べてみると、カカシ先生の担当の下忍班は今まで一度も合格が出ていないようです。
上忍と下忍では差がありすぎます。
真剣勝負では絶対に勝てません。
きっと力ではないものをこの試験では求めているはずです。
班で一緒になったサスケ!
やっと彼に近づくチャンスができました。
僕は彼と友達になりたいです。
だけど彼は今、力を求めるために焦りすぎです。
僕は目立つ忍術は使わないようにしましょう。
そうしないと、彼はどこかへ行ってしまいそうで・・・
とは言っても、僕は医療忍者になるのですから、目立つ忍術なんてないんですけどね!
サスケが独りじゃないことを教えてあげたいです。
サスケとサクラちゃんの3人で下忍になってみせます!
NARUTO ~大切なこと~ 第16話
ナルトは言われた通り、朝食を抜いて家を出た。集合場所は試験の行われる演習場だ。
力勝負でないと分かっているナルトは朝食を抜くのも何か心理的に使われるのだろうと予測をつける。
3人とも集合時間前に着き、あとは先生が来るのを待つだけだ。
――気配は近くにあるのですが・・・
そう、カカシの気配は確かに近くにある。しかし、こちらの様子を見ることができるような位置でもなく、カカシの気配はじっとその場に佇んでいる。
――何かそこにあるのでしょうか?
ナルトは疑問を浮かべるが、カカシが来ないことには始まらないので、とりあえず待ち続ける。
その間、その場所では、サスケは木に寄りかかり澄ましているようだが、よく見ると眉間がピクピクと動いており、サクラは苛立って暴言を吐き始めるのをナルトがなだめるという珍しい構図が見られた。
それからだいたい3時間くらい過ぎた頃だろうか。
「やー諸君、おはよう!」
「「おっそーい!!!」」
――本当にサクラちゃん怖かったんですよ!?
片手を上げながらカカシはやっと現れた。それに対し、サクラとナルトが非難する。
なぜか少し涙目になっているナルトにカカシは首を傾げた。
丸太が三本並んだところに移動をして、カカシはその中心の丸太の上に12時にセットした目覚まし時計を乗せる。
今はまだ11時を少し過ぎたところだ。
「ここに2つの鈴がある。これを俺から昼までに奪い取ることが課題だ。」
カカシは2つの鈴を3人の前に掲げながら、今日の演習の内容を説明する。
「もし昼までに俺から鈴を奪えなかった奴は昼飯抜き!あの丸太に縛り付けた上に目の前で俺が弁当を食うから。」
そう言うと、子供たちの方からぎゅるるるる・・・という音が鳴り始める。
みな朝飯を抜いてきた証拠だ。
「鈴は1人1つでいい。2つしかないから必然的に1人丸太行きになる。そしてそいつは任務失敗とみなし」
学校へと戻ってもらう。
その言葉に子供たちはゴクリとのどを鳴らす。
――そういうわけですか。
ナルトはその話を聞いてふむと考え始める。
――わざと鈴は2つにする・・・
上忍から1人で鈴を奪うことなど困難だ。よって3人で協力しないと無理だろう。しかし、鈴は2つ。それによって仲間割れを生じさせる。
そしておまけに空腹だ。空腹は思考を鈍らせてしまう。
――まずはどうやって2人を協力させるかですね・・・
サクラちゃんはなんとかなりそうですがサスケは・・・
ナルトは1人、思考の海へと飛び込んでいる。その最中もカカシの説明は続く。
「手裏剣を使ってもいいぞ。俺を殺すつもりで来ないと取れないからな。」
これによってますます“1人で奪う”という意識を子供たちに植え付ける。
この言葉にサクラは困惑する。
「でも!!危ないわよ先生!!ねぇ、」
ナルトもそう思うでしょ、と言いながらサクラはナルトを振り返った。それにつられてカカシやサスケもナルトの方を見る。
しかし、そのナルトは腕を組み、何かをぶつぶつと呟いている。
まるで話を聞いていないその様子にカカシが口を開く。
「ま、話を聞かない“ドベ”はほっといてッッ!!!!」
ナルトから目を逸らした瞬間、突然カカシの語尾が強くなった。それとほぼ同時にカカシの後ろの方でドスッ!!!!と何かが刺さった音がする。カカシを見ると、首を思い切り右に倒している。
そして後方にあった木には、カカシのちょうど頭くらいの高さのところにクナイが深々と刺さっている。しかも煙まで立てて。
かなりの摩擦が起こらなければ煙など立つはずがない。
一体どれだけの速さでそのクナイが投げられたのか・・・。
その木を振り返って見ていたカカシとサクラとサスケはもとの位置に顔を戻す。と、そこにはまるで野球のピッチャーが振りかぶって投げたあとのフォームをしているナルトがいる。そして
「ほら、サクラちゃん。全然大丈夫ってばよ。」
姿勢を戻したナルトはニコリと笑ってサクラを見る。
「まぁ、“ドベ”である俺のクナイなんか簡単に避けられるだろうけど!」
腕を頭の後ろで組みながらニシシと笑うナルト。どうやらナルトは“ドベ”という言葉が癇に障ったらしい。
――正直、あれは危なかった・・・
反射神経がよくて本当に良かったとカカシは内心冷や汗をかきながらも己に感謝した。
「ま、まぁこれでわかったろ?じゃ、始めるぞ!よーい」
スタート!!
カカシの合図で3人は一斉にその場を離れた。
――忍びの基本、気配を消して隠れなければなりませんが・・・
“ドベ”としてやりますか!
まずサスケとサクラにはこの演習が1人では無理なことに気づいてもらわないといけない。だからまずは1人1人戦わせよう、と考えたところでナルトはカカシの前に飛び出す。
「いざ尋常に勝ーーー負!!」
カカシの目の前で腕を組み、堂々と立ちふさがる。
「あのさぁ・・・お前ちっとズレとるのぉ・・・。」
カカシは呆れた顔でナルトを見る。それでもカカシは相手をしてやろうと思い、
「それ、なんだってばよ・・・。」
ナルトは思わず突っ込んだ。そう、カカシは“イチャイチャパラダイス中巻”と書かれた本を取り出し、読み始めたのだ。ナルトにはこれで十分ということだろう。
「ふんっだ!!“ドベ”でもやるってところ」
見せてやるってばよ!
実はナルト、先ほどの“ドベ”という言葉をかなり気にしていた。
強さで認められようというわけではないが、見下されるのは癪なのだ。
ナルトは言葉とともに一瞬でカカシの目の前へと迫り、右腕を振りかぶる。
――速い・・・!!
カカシはその一瞬で間をつめた速さに驚いたが、後ろへと跳び退いて、その攻撃を回避する。その瞬間、
ドゴォォオ!!!!
音とともに先ほどまでカカシが立っていた地面はひび割れ、でこぼこと隆起している。
それを隠れて見ていたサスケやサクラは目を見開いた。それはそうだろう。その状態を作ったのはあの「ナルト」なのだから。
――うっわ、やりすぎました!!
ちょっと叩くつもりだったのですが・・・とナルトは心の中で呟く。これが人にあたったら、ちょっと叩くどころではなかったことは間違いない。
「・・・おい、お前・・・。」
今の出来事で静まり返っていたところにカカシが呟く。
「お前、綱手様を知ってるか?」
「え?あ、はい。」
その言葉にナルトはパッと顔を上げ、思わず素で返事をする。そして、
「俺が医療忍者になろうと思ったのも、綱手様のおかげだってばよ!」
前に1度、助けられたんだ。と懐かしむようにナルトは言う。
その顔を見たカカシはそうか、と呟き、
「綱手様もかなりの怪力の持ち主だった。」
医療に関しては右に出る者はいないぞ。と、にこやかにカカシは話し始める。
その話に飛びついたのはもちろんナルトだ。
「そんでそんで!!」
ナルトはキラキラと目を輝かせ、綱手の話を聞きだそうと促した瞬間、
「油断は禁物だよ。」
突然ナルトの背後でしゃがんでいるカカシから声がかかる。ナルトの目の前にはもうカカシはいない。一瞬でナルトの背後に回ったのだ。
そのカカシの手には虎の印が構えられている。
その印を見たサスケとサクラは動揺する。まさかこの演習で下忍にもなっていない自分たちに忍術を使うとは思っていなかったのだ。そして
「木の葉隠れ秘伝体術奥義!!」
千年殺しーっ!!!!という声とともに、ものすごいカンチョウがナルトに決まるところだった。が、
「え?」
サクラが思わず呟く。
技が決まったと、思いきや、そこにはナルトくらいの大きさの木があるだけだった。
「変わり身の術・・・ね。」
ポツリとカカシが呟く。そう、ナルトは咄嗟に変わり身の術でその技を回避したのだ。
――・・・ただのドベじゃなさそうだね・・・
カカシは頭を掻きながら、ナルトの評価を付け直した。
変わり身の術で回避したナルトはというと、
――あんなの食らったら、痔になってしまいます!!
木の葉隠れ秘伝体術奥義・・・恐るべし・・・!!
近くの森の中で、腕をさすりながら先ほどの技に恐怖していた。
――ま、でもこれで2人も何かを起こすでしょうし
なんとか協力してくれるよう頼んでみましょう、とその場を後にした。
あとがき
中途半端なところで切ってしまいすみません!
次が少し長くなりそうだったので、こんなところで切ってしまいました。
すぐに続きは更新します。