木の葉の里から少し離れた森の奥、
そこに一人の少年がお墓の前で手を合わせていた。
姉さん、
僕は三代目火影様のおかげで無事、アカデミーに入学することができました。
入学式での里の大人たちの反応は・・・やはり、すぐに解決できることではないのは分かっています。
僕は理解してもらえるように、里に来たんです。
あきらめません。
でも、この前のように石を投げつけられるようなことはなくなりました。
あとは僕のがんばりしだいですね。
姉さん、また来ますね。
そう、あとは僕のがんばりしだい・・・
NARUTO ~大切なこと~ 第13話
アカデミー入学後、初めての授業、僕はとても楽しみにしていた。
授業が始まると周りの子供たちも新しい教材を睨むように一生懸命見ている。
その教材を使って分かりやすく説明している教師。本当に楽しくて、僕はつい質問をしてしまった。
その質問の内容は今日学んだことの応用のようなことだ。
周りの子供たちは僕の質問自体が分からなかったようで首を傾げながら、教師の返答を待っていた。
教師は「あー・・・」と言葉を濁している。と、その時ちょうど終わりの鐘が鳴った。
すると教師は、
「お前、ちょっと来い。」
と僕を呼んだ。僕は嬉々として着いていった。
だって、質問の答えを聞かせてもらえると思っていたから。
教室から出て廊下を歩く。僕の前を教師は無言で歩いている。
教員室にでも行くのだろうか、と思いながら僕は着いていく。
しばらく歩いていたその時、突然教師は立ち止まった。
僕は教師があまりにも急に止まったので、教師の足にぶつかりそうになるが、なんとか立ち止まる。僕は教師を見上げる。するとゆっくりと教師は振り向いて無表情で僕を見る。
周りを見ると、ここは使われていない教室の前の廊下で、滅多に人が通らないようなところだった。
「先生?」
僕は先生を見上げて首を傾げる。質問に答えてもらえる・・・はずがない。
僕だってここまで来たらわかっている。
そして先生は腕を振り上げて僕の頬を思いっきり叩いた。
僕の身体は叩かれた反対側へと吹っ飛び、壁へとぶつかる。痛いのは当たり前だ。頬が赤く腫れていくのが触らなくたってわかる。
先生は僕をギラギラとした目で睨みつける。
「お前はもう、授業に出るな。」
あまりにも理不尽な要求だ。僕は「はい、わかりました。」なんて簡単に言ってやらない。
だって、負けるわけにはいかないのだから。
忍者について学ぶことももちろんだが、僕は友達を作りたいのだ。
こんなことで負けるわけにはいかない。
せっかく忙しい中、僕のために火影様が準備をしてくれたのだ。
先生は気が済んだのか、そのままどこかに行ってしまった。
負けるものか。
そして次の授業ために戻ると、教室に入れてもらえなかった。全ての授業に参加できなくなった。仕様が無い。担任があの先生なのだから。
僕は仕方なく、放課後になるまでひっそりと修行をする。そして放課後、誰もいなくなった教室に自分の荷物を取りに行き、里中にある新しい家へと帰っていった。
次の日、やはり全く授業には出られなかった。
とりあえずその日にある授業の教材は持ってきていたので、使われていない教室に行き、一人で勉学に励み、時には修行をした。
そして学校が終わるとミコトとして火影邸へと行き、医療の本を読み漁る。
そんな毎日を過ごしていると、アカデミーには試験というものがあった。
とりあえずそれにはさすがに先生も僕を参加させた。
久しぶりに姿を現した僕は、クラスの子供たちの中で不良と思われていた。心外ではあるが仕方が無い。授業に参加していなかったのは本当だ。そう思われても無理は無い。
手裏剣投げの試験。
僕の番がやってくると、決まった枚数の手裏剣を手渡される。
僕は気づいてしまった。
その手裏剣の一枚一枚が部分的に重さの違うことを。
これをそのまま投げては、あらぬ方向へ飛んでいくのは投げなくても分かる。
それでも僕は意地でも的の中心へと当てて見せた。試験しか参加できないのだ。ただでさえ授業に出ていないのだから、試験で良い点を出して挽回しなければならない。
試験だけではとても挽回できるとは思わないが・・・。
先生の悔しそうに歪んだ顔が見えた。
筆記試験。授業に出てはいなかったが、教科書はしっかり読み込んで覚えている。
まだまだ初歩的な問題しか出ていない紙に答えを書き込む。
そしてその試験の採点が終わった頃、僕は初めて教員室に呼ばれた。
僕はその部屋の扉を開き顔をのぞかせると、僕の担任がおそらく僕のだろう答案を手に持ち、椅子に座って眺めているのが見えた。
僕は先生の前まで行く。
そして、僕に気づいた先生はこちらを向き、鋭い目つきでこう言った。
「お前、カンニングしだろう。」
するはずがない。僕は先生が持っていた紙をちらりと盗み見る。
答案には全て丸がついていた。しかし点数は書かれていない。
僕は思わず眉をひそめる。
先生はその僕の反応が気に入らなかったのか、大声で叫ぶ。
「どうせカンニングしたんだろ!?そんなことわかってんだよ!!」
突然の大声に、教員室にいた教師たちがこちらを見る。しかし、僕を見た瞬間その内容に納得したという顔をする。
あぁ、そうか。
僕は今やっと気づいた。
僕は自分のことを「人間」だと思っている。
でも、この人たちにとって僕は「九尾」なのだ。
「九尾」である僕が力をつけることに恐怖しているのだ。
そのことに気づいた僕だが、気づくのが遅すぎた。
それからというものの、やはり授業は出られないが、試験だけは参加していた。
「くそぅ!なんでできないんだってばよぅ!!」
唯一クラスの子たちと会える試験の時。
僕は少しでもみんなと話したくて、わざと派手なオレンジ色の服に頭にはゴーグルなんか着けて、わざと変な口癖でみんなの気を引こうとした。
今の試験は変化の術の試験だ。もう前みたいなことはしない。
別に担任の先生に負けたとかそういうのではない。先生にも僕が「人間」であることを認めてもらいたいんだ。だから、無害であることを示さなければならない。
クスクスと教室内の子供たちの微笑がもれる。
得意な術で失敗をして笑われるのはとても恥ずかしいが、みんなが僕を見ている。
それは少し嬉しかった。
先生はニヤニヤとしながら僕を見ていた。・・・まだまだ道のりは遠い。
僕は時々いたずらをするようになった。
僕は学校に来ているんだ、とクラスのみんなに気づいてほしかったから。
すると何人かの男の子が僕に気づいて一緒に遊んでくれた。本当に嬉しかった。
だけど、次の日にはもうその子たちとは遊べない。
遊んだ次の日には、その子たちは僕に言いに来るのだ。
「親がさ、お前と遊ぶなって・・・。ごめんな!」
みんなそう言って僕の前から去っていく。
すごく寂しい。
でも、これもわかっていたことだ。
みんなのすまなそうな顔を見れただけでも、その子たちの意思ではないことが窺える。
それだけでも今は良いじゃないか。
そうして3年はあっという間に過ぎ、卒業試験がやってきた。
一緒のクラスだったみんなは、全員その試験には合格して額あてをつけて親たちと喜んでいる。
僕は問題外だ。
授業の出席日数が足りなくて試験さえ受けさせてもらえなかった。
次の年も同じ担任だった。やはり僕は授業に出させてもらえず、試験ではヘマをやってはみんなの笑いをとっていた。
その年は同じクラスに日向ネジという少年がいた。日向一族は白眼という血継限界の持ち主である。
僕はネジが正直うらやましかった。
ネジは授業でも試験でも遺憾無く己の力を発揮していた。うらやましくないわけが無い。でも僕は確実にみんなに認められるために試験で失敗する。
きっとネジの目には僕のことなど入れたこともないだろう。だけど、僕はよくネジを見る。
僕にとってうらやましい環境にいるのに、ネジの目はどこか達観していて、何かあきらめたような感じがする。
なんだかそれがとてももったいないと思った。
その年には他にもすごい少年がいた。
ロック・リーという少年だ。彼は忍術を使うことが出来なかった。
だけど、あきらめず必死に自分のできることを磨き続けていた。
僕はそれを見て励まされた。
僕も負けてはいられないと思えた。
だから、もっとみんなが僕に気づいてくれるようにいたずらをする。
長く付き合える友達はできないけれど、その一つ一つが今の僕の宝物。
そしてその年も僕は去年と同じ理由で卒業は出来なかった。
しかし、そんな僕にもチャンスが訪れた。
「今日からお前たちの担任のうみのイルカだ!」
よろしくな!
そう言ったのは、今僕たちの目の前にいる鼻の上の一文字の傷に、髪を高い位置で結んでいる先生。
今年は担任の先生が変わったのだ。
僕はこのチャンスを手に入れてみせる。
あとがき
まだ原作一歩手前でした!すみません。
しかも短くて申し訳ございません。
今回は全てナルトさん視点からでした。
次の話から本当に原作通りに話は進む予定です。