僕の名前はナルト、2歳です。僕には姉が一人います。姉の名前は華代(カヨ)です。
姉はとても厳しい人ですが、僕は大好きです。
姉は僕が2歳になると、まるで地面を歩いているような木登りや水の上を歩く水面歩行を教えてくれました。これを修行と言うそうです。
1歳の頃はとにかくずっと気配を消す訓練をしました。気配を消さないと回りの動物たちに気づかれてしまい、ご飯の食材が上手く手に入らないのです。
最初の頃は気配を消すなんてことはできなくて、姉に迷惑ばかりかけてしまいました。でも、姉の厳しい指導のおかげで2ヵ月後には姉でも分からないというくらい気配を消せるようになりました。
今やっている木登りや水面歩行は“チャクラ”というものをコントロールするのに大切なことなんだそうです。
木の天辺まで行くのに1ヶ月近くかかりました。今は水面歩行の修行中です。
だいぶできるようになってきたのですが、まだまだ姉のように長い時間できません。
「ナルト!修行するわよ!」
あ!もうそんな時間。姉は厳しいですが、やったことが成功したり、失敗しても成功するまでがんばって、それができるようになったりするととても喜んでくれます。そんな姉が大好きです。
「は~い!!」
だから僕はとても幸せです。
NARUTO ~大切なこと~ 第1話
木の葉の里から少し離れた森の奥深く。
滅多に人の入らないところに、金髪青目、頬の3本のひげのような傷が特徴的なナルトと呼ばれる幼子はいた。
ナルトの今いるところはとても澄んだ水が流れている川の上だ。早朝の日差しが森の木々の間からこぼれ、川に反射してキラキラと輝いている。そんな中、ナルトは川の上に沈むことなく見事に立っている。ナルトにはまったく気配がなく、目に映っているはずなのに全くいないかのような錯覚を引き起こす。
「今日は午後から里に行くわよ。お昼まで川に沈んじゃダメよ。お昼ごはんについでに魚を取ってきてね。」
その言葉を聞いてナルトは顔を輝かせる。
「は~い!姉さん、里に行ったら本読んでもいいですか!?」
九尾の襲撃があって2年が経った。
里は復興に向けて里人も忍びも力を合わせがんばっている。ナルトはそんな人たちを見るのが好きだった。人々の輝きがまぶしくてキラキラしていて。
姉は苦笑をする。
「お昼まできちんと川に立っていられたらね。」
ナルトが里を姉と訪れるようになったのは2歳になって木登りができるようになってからだった。そして初めて習った忍術が“変化の術”だった。
これを境にナルトはますます修行に励むようになった。忍術に興味を持ったのだ。
変化をしたまま初めて里を訪れたナルトは本というものにふれて感激し、里に行くたびに図書館に篭もっては本を読み漁っている。今ではそれが里に行く一番の目的になっている。
本当だったら毎日でも行きたいのだが、姉が一緒に行かないとダメだと言っていたので、しぶしぶ我慢をしながら森で修行に励む。
初めて里に変化をしたまま行った時は何も思わなかったが、2回目、3回目も変化をして行くことに疑問を覚え、4回目の時、どうして変化をして行かないとダメなんですか?と尋ねたところ、
「ナルトが3歳になったら教えてあげるわ。」
と返された。
1歳の時は気配の消し方、2歳になって木登りや水面歩行・・・だんだんと修行は厳しくなるが姉の喜ぶ顔が嬉しくて、3歳になったら何を教えてくれるのかとナルトは楽しみでしょうがなかった。
「変化!」
ボンッと煙を上げ、その中から12歳ほどのTシャツに短パン、つま先だけ見える黒い靴を履き、その足首にはさらしを巻いた少年が現れた。見事な金髪に、大きな青い目。それはただ、今のナルトを10歳ほど成長させ、頬にあるひげのような3本の傷をなくした姿だ。
違うところと言えば綺麗な金髪が腰まで長く、それを下のほうで一つに束ねているところくらいだ。
そして、この姿に変化した時は“神影 ミコト”と名乗っている。姉がつけた名前だ。
お昼頃になり、ずっと川の上で立っていたナルトは腰を曲げて手だけを川の中に突っ込む。そして川を泳いでいる魚を難なく捕らえ、姉と過ごしている小屋のような家に持ち帰り、食事を済ましたと思ったらすぐに変化をしたのだった。ナルトはとにかく早く里に行きたくて、それが行動に表れている。
「早く早く!!姉さん行きましょう!!」
食事の片づけをしている姉の服の袖を満面の笑みで引っ張る姿は、見た目は12歳でもまだ中身は幼いのだと主張をしているようで苦笑がもれる。
「ちょっと待ちなさい。すぐに片付けるから。」
片付け終えると、姉は変化で茶髪・茶目に変化をし、すぐに里へと出かけて行った。
里に入るとナルトと姉は別行動をとる。
「あら。ミコトちゃんお久しぶりね。」
「こんにちは!」
図書館に着いて司書のお姉さんに声をかけられたナルトは挨拶をし、静かに目的の本を取り、空いている席へと座る。手に取った本はどうやら歴史書らしい。
――何冊も読んだのに、九尾の封印場所がわかりません・・・。
何度か里に訪れたナルトはまず、図書館に置いてある忍術の本を片っ端から読み倒し、それからいろいろな種類のものを読み始めたところ、疑問を持ったのが歴史関係だった。
この里には深く九尾が関係している。ナルトが好きだという里の人々の復興への努力の輝きはまさしく九尾の所為だ。しかし、その九尾に関して記録がほとんどない。九尾の封印場所だけではなく、なぜ九尾に襲われたのかさえ全く記されていないのだ。
ナルトはふと、このことに関して姉に尋ねた時を思い出す。
その時の姉は痛みを堪えたような辛い笑みで
「ナルトが3歳になったら教えてあげる。」
と言っていた。
・・・何があったのだろう。どうして姉にこんな顔をさせてしまったのかとナルトは後悔した。
がしかし、それでもナルトの好奇心は冷めることなく燃え続けている。
今日も今日とて本を読み漁り、一生懸命調べるナルトだったが、真実を知るのはやはり3歳になってからだった。
ナルトと別れた華代はひたすら里中を歩き回る。
・・・いまだに消えない里の噂。
華代は空を見上げる。
そこにはナルトの目のような青い空が広がっている。
――いつか・・・いつかはナルトも里で暮らせるように・・・。
華代の願いとは裏腹に無くならない噂。
そう、―九尾は生きていて、その九尾は「ナルト」と言うらしい―という噂だ。
今では、また襲ってくるのではないかなどと恐れられてしまっている。
まだナルトの耳には入っていない。
華代が里へ来るのはナルトのためである。
ナルトが少しでもこの里に馴染めるように・・・。
里には「ナルト」の名は広がっているが、姿は知られていない。現に、年齢は違うが、ほとんど見た目の変わらない“神影 ミコト”は図書館の人たちを中心に可愛がられている。いつも森で過ごしているナルトに人との触れ合いをしてもらいたかった。
と言うのも、早くナルトに森から出てもらいたいからだ。
年々ナルトと華代の住んでいる森に入ってくる人の気配が増えている。その気配は普通の人よりもかなり薄い。それを示すものは―忍者―だ。
華代はナルトに気づかれないようその忍びたちの行動をいつも見ていた。
・・・それはひどい光景だった。
忍びたちは森に住んでいる狐を狩っていたのだ。逃げ回る狐をまるで遊ぶかのように殺していく。
怒りで我を忘れそうになる華代はなんとかしてその怒りを静める。
――やり返してしまっては、父上の二の舞だ!!
ナルトを悲しませるわけにはいかないと必死に気を静める。
そんなことが年々増えてきているのだ。
一刻も早くナルトには里で過ごしてもらいたいと思う一方、「ナルト」として過ごせそうにない里の様子。だが人との触れ合いができなければ、もしナルトが「ナルト」として里で過ごせるようになったとしてもナルト自信が心を開かなければ意味がない。だから、時々里へと出かけて「ナルト」ではないが、人と会話をさせるようにしている。
華代はこの2年ずっと里を観察してきたが、まだナルトには危険だと確信するだけだった。しかし、そんなことを言ってはいられない。
家には華代が幻術をはっているが、狐を狩る忍びたちに見つからないとは言い切れない。
――里人は家族・・・・・・か。
ふいにあの男の顔を思い出す。
――私も、ナルトなら大丈夫と思うわ。
私も大概親馬鹿ね、と苦笑をもらす。
華代は上げていた顔を前に向けひたすらまた歩き続けた。
そしてまた、森では修行をし、時々里で過ごす日々を繰り返し、ナルトは3歳になった。
あとがき
最後まで読んでくださりありがとうございます!!
誤字がないか何度も読み直して、やっぱり下手だなぁと嘆いています、小春日です。
小説というものを書くのは本当に難しいと痛感しております。
里とナルトの関係が上手く表現できるよう精進します。