== NARUTO ~うちはサスケと八百屋のヤオ子~ ==
北アジトを見つけるため、近辺の島々の探索が続く。
水面歩行を続けるヤオ子の頭の上で、タスケが質問する。
「なぁ。
さっきの戦闘……いくつか質問していいか?」
「いいですよ」
タスケは、ヤオ子に実験体との戦闘での質問を始めた。
第91話 ヤオ子のサスケの足跡調査・北アジトへ③
タスケは、経過の順に質問をすることにした。
「まず、何で一回目の攻撃で仕留めなかった?」
「誇りを守るんだから、不意打ちはNGです」
「じゃあ、あの加速の使い分けは?」
「気になります?」
「ああ」
「深い理由はないんです。
ただ、あたしはインチキをしていただけですから」
「インチキ?」
「はい。
おじさんの攻撃する速度を知っていました。
怒りをぶつけて暴れていた時の情報を持っていましたから」
「それでインチキかよ……」
(コイツ、しっかりと情報を収集した上で、喧嘩をふっかけてたんだな……)
タスケは感情だけで動かされたのではないのだと思い、ヤオ子が戦略を立てれる能力を持っているのだと思った。
「本当は、二回目で終わりにするつもりだったんですけどね。
あの再生能力は予想外でした」
「じゃあ、三回目の攻撃は思い付きだったのか?」
「いいえ。
奥の手です。
一回目で、警告とあたしの移動速度の情報を提供。
二回目で、あたしの加速させる術の情報を提供。
三回目で、罠を仕掛けました。
・
・
つまり、印を組まないことで加速がないと思わせて、
一回目の移動速度でカウンターを合わさせたんです。
でも、実は瞬身の術で、あたしはもう一段加速できる。
だから、あたしの攻撃を先に当てることが出来ました」
「なるほど……。
お前、駆け引きも出来るんだな」
「ええ。
お母さんに叩き込まれました」
ヤオ子は母親との修行を振り返ると、少しテンションが下がった。
ドS的修行方法が頭の中を駆け巡ったのが原因だった。
タスケが最後の質問をする。
「最後の、あの術……何だ?」
「あれ、術じゃないですよ」
「は?」
「印を結んでなかったでしょ?」
「そう言えば……」
「あれね。
ただの性質変化なんです」
「え?」
ヤオ子がデイバッグから巻物を取り出す。
「ヤマト先生の修行方法に、ナルトさんの術が書いてあるんです。
まあ、ナルトさんの情報が漏れないように、簡単にですけどね。
その中の形態変化を極めた術に螺旋丸っていうのがあるんです」
「ふ~ん……」
「それでね。
あたしは、性質変化の修行中だったでしょ?
逆に性質変化を極めると『どうなるかな?』って、修行しながら試していました」
「うん」
「結果、使えるのは火遁か雷遁だけでした。
そこに留めるならエネルギー体でないといけませんから。
でも、雷遁は未完成でしょ?
だから、火遁を使いました」
タスケがヤオ子の頭に寝そべって質問する。
「でもよ。
留めるなら形態変化が必要だろ?」
「はい。
だから、印を使わないこれです」
ヤオ子の指からチャクラ糸が垂れると、タスケは首を傾げる。
チャクラ糸は、既に一つの形態のはずだ。
ヤオ子は五本の指からチャクラ糸を出すとあやとりの要領で形を作っていく。
そして、さっきの戦闘で使用した掌が出来あがった。
「これ、あたしの手の動きとリンクしているんです」
ヤオ子の手の動きに合わせて、チャクラ糸で出来た掌が同じ動きをしてみせた。
「でね。
これに火遁の性質変化の極めたものを流すと……」
熱量の制限をなくした性質変化のエネルギーがチャクラ糸に流れると徐々に輝き出す。
瞬間的な術ではないため、熱が留まり続けているのが特徴であった。
「こんな感じです」
「すげぇーな……」
ヤオ子はコリコリと額を掻く。
「でも、あまり意味ないんですよね」
「ん? 何でだ?」
「これ、範囲が掌でしょ?
相手の情報がある時とか状況が有利じゃないと使えません。
まず、当たらない。
それだったら、至近距離で必殺技ぶっ放した方が確実です。
当たる範囲は必殺技の方が大きいから」
「そうだな……」
「今回は、忍らしく急所狙いだったので無理しました。
そして、頚動脈を斬っても死なないって反則だったから、
この性質変化を疲労することになりました」
「なるほどな」
「それに発動まで少し時間掛かるんです。
糸状にしたら、空気に触れる分だけ温度が上がるのに時間が掛かるし、
何かの形にチャクラ糸を編み上げるのも時間が掛かるし……」
「微妙だな……」
「はい。
だから、火遁で試してある程度の成果が確認できたら、
雷遁の熟練度を比較するのに便利でいいやぐらいにしか思っていませんでした」
「なるほどね……」
「ただ、名前だけはカッコよくしました」
「は?」
「あたし、ジョジョのスタンドでエコーズが好きなんです。
そこから『ACT2』を貰ってカッコよくしました」
「何の拘りだよ……」
やっぱり、ヤオ子はヤオ子だった。
…
いくつかの島を巡るうち、ある島に物資が送られた形跡が目に付くようになり始めた。
ヤオ子達はその島へと足を伸ばし、遂に目的の北アジトのある島に到着する。
しかし、到着早々、嫌な予感がヒシヒシと伝わってくる。
「滅茶苦茶見られてますねぇ……」
「敵意剥き出しだな」
上陸五分で、ヤオ子達は異形の者達に囲まれていた。
誰も彼もが、ここに来る前に戦った実験体と似た姿をしている。
「まず、敵対心を取らないと話も出来ませんね。
・
・
あの~──」
ヤオ子は緩い笑顔からの接触を試みるが砲撃された。
足元には威嚇の意味も込めて、小さく地面を抉った跡が残る。
これも先の戦いの時と攻撃方法が酷似していた。
「ダメです……。
聞く耳を持ってません……」
ヤオ子はガシガシと頭を掻くと、少し吹っ切れた感じで叫ぶ。
「お尋ねします!
この中にうちはサスケさんのことを知っている人は居ませんか!」
『うるせー!
ここに来た奴等は、そう言って荒らしていくんだ!』
「荒らす?」
『ここには、お前らが欲しがるような大蛇丸の情報はない!
オリジナルの重吾も、サスケが連れて行った!』
「……サスケさん?
そこを詳しく教えてくれませんか?」
更に砲撃。
「うわ!」
威嚇ではない狙われた攻撃をヤオ子は体を反らして躱す。
『帰れ!』
ヤオ子に『帰れ!』の声が連呼される。
だけど、帰るわけにはいかない。
ようやく出てきたサスケの名前だ。
ここで引くわけにはいかない。
「大事なことなんです!
教えてください!」
『帰れ!』
「イヤです!
教えて!」
『帰れ!』
「っ!」
ヤオ子が奥歯を噛み締めると、タスケがヤオ子に声を掛ける。
「先客がコイツらに手を出したんだろうな。
警戒している……。
・
・
しかし、余程の手練れだったんだな。
コイツらが、さっきの奴と同じ力を秘めているんなら、こんなに多人数は相手に出来ないぞ」
「…っちが、下手に出ていれば……」
「ん? ヤオ子?」
「…にも聞かずに……」
「オイ?」
ヤオ子が目を吊り上げ、大音量で叫ぶ。
「よく聞け!
こんな可憐な美少女が質問してるんだから、話ぐらい聞け!」
『どうせ化けているんだろ!』
「チッ!
いらないところだけ、忍の知識を引き合いに出して!
一人ぐらい話を聞いてくれる人は居ないんですか!」
『その手で仲間が殺されたんだ!』
「じゃあ、どうすれば話してくれるんですか!」
『話すことはない! 帰れ!』
「が~~~ッ!
話がループしてる!」
ヤオ子は頭を抱えて叫んだあと、目が座らせる。
「もう、いい……」
ヤオ子は囲まれて不利な条件にも関わらず、チャクラを練り出した。
タスケが慌てる。
「お前!
この人数相手に喧嘩吹っかけんのか!?」
「殺しませんよ……。
殺したら情報聞けませんからね……。
フフフ……」
異形の者達が警戒する。
禍々しいチャクラを練って薄ら笑う雰囲気は、かつて自分達をこの島に縛りつけた者に似ていたからだ。
そして、ヤオ子が印を結ぶと、ヤオ子を囲んでいた先頭の三人が大量の鼻血を吹いて気絶した。
「くっくっくっ……。
一度、この術を制限なしで使ってみたかったんですよ……。
木ノ葉じゃ禁術になってしまって、こっそりとしか使えませんでしたからね……」
異形の者達は、恐怖で硬直している。
得体の知れない少女は、謎の術で仲間を失血死させてもおかしくないぐらいの鼻血を出させた。
しかも、何故かやられた仲間の顔は恍惚に微笑んでいる。
「お前ら! 一人残らずぶっ倒してやる!
木ノ葉のピンクの淫獣!
八百屋のヤオ子さんが、極楽に連れて行ってあげるわ!
・
・
おいろけ・走馬灯の術!
乱れ打ち!
百花繚乱!」
使ったのは『おいろけ・走馬灯の術』。
真人間で変態性が弱い者ほど耐えられない。
脳みそがエロの負荷要領に耐え切れずにショートして気絶に至る。
そして、体は馬鹿みたいに血圧が上がり、血は鼻血になって解放されるのだ。
「走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! おいろけの術!走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術! 走馬灯の術!
走馬灯の術~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!」
多分、忍の戦いにおいて、かつてない最悪の戦い方。
使っちゃいけない術を使われ、異形の者達は次々に鼻血を吹いて倒れていく。
「温い! 温いぞ!
お前らのエロさは、そんなものか!」
そこには、正しく魔王が居た。
スケベ大魔王が……。
『が…がががががが……♪』
『あ、あへ♪』
『おっぱいが……♪
おっぱいが……♪
おっぱいが……♪
おっぱいが……♪』
全ての異形の者を倒しつくし、ヤオ子は前髪を掻き上げる。
「ふっ……。
また、詰まらんものを斬ってしまった……」
「本当に詰まらない術だな……」
タスケは項垂れ、呆れる。
そして、ヤオ子の頭から後ろを見て呟く。
「ここで『蝕』でも起きたのかよ……」
タスケの目の前には、鼻血によって形成された血の湖が広がっていた。
…
痙攣している一番近くの異形の者に近づくと、ヤオ子はペシペシと異形の者の頬叩く。
やがて、異形の者は意識を取り戻し、ヤオ子の顔を瞳に映す。
そこにあったのは、天使のような悪魔の微笑み。
「すこ~し、お話を聞かせてくださいね♪」
「お前…なんて術を掛けるんだ……」
異形の者は流れ出る鼻血を止めながら、ヤオ子に返した。
「皆さんが真人間でよかったです。
変態には効きませんからね」
「ある意味、回避不可の術だ……。
男に生まれた以上、避けられない……」
「木ノ葉でも、ナルトさん、木ノ葉丸さん、カカシさんぐらいしか耐えられないでしょうね」
「カカシ……。
さすが写輪眼の使い手だ……」
(血が足りなくて頭が回らないんですかね?
写輪眼は関係ないし。
この術に耐え切れる時点で、ダメ人間確定なんですけどねぇ)
朦朧としている異形の者に、ヤオ子は話し掛ける。
「ようやくお話出来ますね。
情報を貰えませんか?」
「お前……。
本当に話を聞きに来ただけなのか?」
「初めっから、言ってるじゃないですか」
異形の者が苦笑いを浮かべる。
「悪かったな……。
ここも何度か悲惨なことがあったから……」
「少し分かります。
別の島で見て来ました」
「そうか……。
知りたいのは、うちはサスケだったな?」
「はい」
異形の者は目を瞑ると、何かを思い出しながら語り始めた。
「サスケは、ある意味英雄なんだ」
「英雄?」
「大蛇丸を倒して、オレ達を解放した」
(そういえば、サスケさんは体を狙われてたんだ……。
大蛇丸さんを逆にやっつけたんですね……。
・
・
相変わらずのドSっぷりです)
「その後、各地で仲間を集めているようだった。
ここに来た時には、既に二人居た。
男と女……。
そして、ここに居た重吾を連れて行った」
(仲間……。
小隊を組むなら四人。
人数的には揃ったことになりますね)
「そして、暫くして島を離れた……」
タスケがヤオ子に駆け寄る。
「ヤオ子。
サスケは小隊を得たから、行動範囲を広げたんだ。
戦力や足りない能力を補ったに違いない」
「そっか……。
それで各地で……。
・
・
でも、知りたいのは他なんですよね」
ヤオ子は異形の者に向き直る。
「ねぇ、おじさん。
サスケさんが大蛇丸さんのところに居た時の状況とか知りませんか?」
異形の者が頷く。
「噂話でもいいか?」
「ええ」
「サスケは……無益な殺しはしないらしいんだ。
戦った相手を戦闘不能に陥れて決着をつけている」
「そうなの?」
「ああ」
「じゃあ、今の何でも有りみたいなのは、どういうことなんだろう?」
「どういうことだ?」
ヤオ子は腰に手をあて、反対の手を返す。
「何か余所の里で迷惑掛けて、抹殺命令が出てしまったんです。
おじさんの話し通りなら、そんなことするはずないし……。
仇討ちも終わったのに……。
・
・
やっぱり、マダラさんに接触してから、おかしくなったみたいですね」
「他の奴等にも聞いてみな……。
中には手合わせしたりしている奴も居る……。
・
・
オレが面通ししてやるよ」
「ありがとう」
ヤオ子は、周りを見る。
「でも……。
先に血を作らないと、聞けそうにもないですね」
ヤオ子は、やり過ぎたと頭を掻いた。
…
岩だらけの島でリズムのいい包丁の音が響く。
大きな鍋が三つ用意され、どれも具材がたっぷり入っている。
ヤオ子は、まな板の上で刻んだ薬草を三つの鍋に均等に加えていく。
「隠し味OKです♪」
鼻歌を歌いながら、大きな釜で炊いている、ご飯の炊き上がりにも耳を澄ます。
「もう少しですね」
ヤオ子は、ぶっ倒れている異形達に声を掛ける。
「ご飯できますよ~!
鍋から、どうぞ~!」
ヤオ子の声に反応して、異形の者達がゆっくりと立ち上がる。
そして、直ぐに匂いが鼻をくすぐり出した。
『いい匂いだ……』
『久しぶりに普通の飯だ……』
ヤオ子はにっこりと微笑むと印を結び、影分身を出して、それぞれの鍋で配給を始める準備をする。
「勝手に皆さんの食料庫から作らせて貰いました。
だから、遠慮しないでね」
配給するヤオ子を見て、異形の者達が一斉に指を差した。
『『『『『変態女!』』』』』
「酷い言われようですね。
まあ、褒め言葉と受け取っておきます」
異形の者達が葛藤する。
目の前の変態を警戒するべきか?
食欲に負けるべきか?
ヤオ子は左手の掌を返す。
「どっちにしろ、血を補給しないと死に至りますよ?
あたしは、もう一回同じ術を使うだけでいいんですから、絶対的有利は変わりません。
毒を盛る必要もないし、不意打ちする必要もありません。
警戒も必要ないですよ」
それもそうかと、一人の異形の者が前に出る。
「一杯、貰えるか?」
「はい♪」
ヤオ子から、鍋の具を盛り付けられた器が手渡される。
異形の者は、慎重に一口啜る。
「旨い……」
そして、がっつき出すと他の異形の者達も続いた。
「やっぱり空腹がイラつかせるんですよね~」
「オレは違うと思うがな」
ヤオ子はタスケの言葉を軽く受け流すと、配給に勤しんだ。
…
ヤオ子の料理で、異形の者達とすっかり打ち解けた。
大蛇丸のところに居た時のサスケの情報も幾つか入る。
ヤオ子は、この島でサスケの情報をかなり得ることが出来た。
「少し整理が必要ですね」
ヤオ子の状況整理は、次回……。